58メルト外伝紅の墓標39悪党一味の意地
子曰ハク「其ノ者、人ニシテ人ニ非ズ、虎ナリ。決シテ近ヅク事無カレ。然ラズンバ喰ワレン」ト。
ある盲目の女性に師事した下男が書き残した日記より。
ガキン!ガキン!
キースは刀と魔力で作り上げた巨大な一本の爪の2刀使いでユージンを追い立てる。
しかしその怒濤の連撃をユージンは全て受けきっていた。
(巧い……。教科書通りなのは確かだが、微妙に泥臭く攻めてくる。動きを予測しにくい……)
キースは歯噛みする。
この剣技はユージンが刀技大会でも使っていた物だが、あの時よりも数段巧く、数段鋭くなっている。
このどこかちぐはぐでありながら完成された動きは類い希なる戦闘センスを持つキースをもってしてもコピーし切れなかった程の物だ。
同じパルトネ公国宮廷剣術を使ってはいたが、使い手としての技量は間違いなくユージンの方が上だった。
「リベンジ、か……。思うがままに振るうがいい……。どうせ私には届きはしない」
ユージンの同情するような声音にキースはカチンと来る。
「偉そうだなぁ!!血を浴びて泥の棺桶で眠る……。俺とお前の何が違うって言うんだよ!!」
キースは吼える。
先程ガルシアとラタの言い合っていた正義か悪かなんて話はキースには興味が無かった。
そんな二元論で別けるなら武器を握るような奴は全て悪だ。
理由は各々在れど憎しみの連鎖を自ら紡いでいくことは変わらない。
“そこ”に区別なんてない。
キースはそう思う。
故に勘違いしたような目の前の男が酷く目障りに思えたのだ。
「格、気品、剣に乗せる想い、言うなれば全てだ。そもそも人と獣を一緒にするな」
「あ?」
ヒュッ……!
キースの姿が消える。
瞬間悪寒を感じたユージンは人体の可能な限りのけ反った。
パサッ……。
そしてそのユージンの顔の直ぐ上をキースの刀が通過していく。
その刀の後を一房二房の癖っ毛が追って行った。
「くっ!」
ユージンは崩れた姿勢から苦し紛れに切りつけるもキースは悠々と距離を取った。
「どうせ私には何だって?一々うるせぇンだよ。お前だけが背負ってると思うなよ。何の理由もなけりゃあ人は武器を取りゃしねぇ」
キースの脳裏にチラリとジェーンが笑い掛けた顔がよぎるが戦いには邪魔だと頭から叩き出す。
八つ当たりのようにキースになじられたユージンはフッと笑う。
「成る程……。理由、か。強い眼だ。だが所詮は獣の目、私の想いには遠く及ばない。……その理由とやらを剣に乗せるといい。慈悲だ。それごと打ち砕いてあげよう」
そのままユージンはヒュンヒュンと剣の振り具合を確かめるとキースに向き直る。
そして時は動いた。
「傲るな!!所詮は俺もお前もドブの鼠だ!!」
一言下キースは飛び出す。
だがそれを待っていたかのようにユージンは動き出した。
迫る爪を最小の動きで下にしゃがんで避けると、予備動作も兼ねていたのかそのまま立ち上がりつつキースの刀を弾いた。
回転動作を交えて優雅に蹴りあげると無防備な胸に剣を突き立てる。
ズブリ……。
何の抵抗もなくユージンの剣は心臓を貫きキースの体を貫通していた。
ドサ……。
一気に力の抜けたキースの体は膝をつく。
キースの吐血した血で濡れた剣をユージンは無感情に見下ろしながら独白した。
「そうだな。肯定しよう。ドブ鼠も同じだ。だがその汚名を甘受してでも私は前に進む。しつこい獣と遊んでいる暇はない」
ズズ……。ヒュン。
ユージンはキースから剣を引き抜くとそれを振って血潮を振り払い、パチリと鞘に仕舞った。
「倒れ伏していろ」
そう吐き捨てるとユージンはキースの顔に回し蹴りを見舞った。
教科書に載せられる程綺麗なフォームであり、一種の気品さえ醸し出していた。
ヒューーン!!ドカァァン!!
飛ばされたキースは城の瓦礫にぶつかり盛大な粉塵が舞う。
ぶつかった場所からキースの血がじわりじわりと流れているのが遠目にも分かった。
ドクン……。ドクン……。
その一つ一つの鼓動が皮肉にもキースの命を縮めていく。
度重なる戦いで失った血液はもうキースを立たせることは出来ない。
だが……。
ガラガラガラ……。
「効かねぇな……」
ボタボタと胸から大量の血を流しつつキースは立ち上がる。
瓦礫に衝突した際頭を怪我したようで頭を拭っても途切れることなく血が垂れて来る。
瀕死どころではなく、最早死んでる筈の体で動いている。
気合いだけで、だ。
人間技ではない。
まさに怪物、獣の所業であった。
「既に血が止まり掛けているな……。これだから獣の相手は嫌いなんだ……。直ぐに引導を渡そう。安らかに眠れ」
「そんなつれないこと言うなよ。漸く2刀に馴れて来た所なんだ」
バチッ!!バチッ!!
手をだらんと垂らしたキースが蒼白い雷が再び纏い始める。
「既に死に体の筈だが?」
「俺の夢は因果、運命、理、この世もあの世も全てひっくるめた全てを個人でひっくり返す最強だ。
こんな傷で躓いているようじゃ先はない。むしろハンデにゃ丁度良いさ」
「減らず口を……」
キースは右腕に持った刀を振るい、それに答えるようにアラヤが蒼白い魔力を噴出する。
「一本目の刃で喰らい付き、」
続いて左側の黒猫天穿爪を巨大化させる。
「二本目の刃で喰らい尽くす」
ユージンを見返すキースの顔は決して死に行く者の顔ではない。
例えるならば手負いの獣。
ユージンはまさしく虎の尾を踏んでしまったのだった。
「後30秒で地面にkissさせてやるよ」
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お前も悪だ。
そう言われた途端イグマの体は酷く重くなった。
ラタの勧善懲悪により弱体化してしまったのだ。
「うわっ、軽いな。お前強ぇな」
ラタはまるで紙か何かを持つように持てる巨大なバスターソードに驚きの声を上げる。
これ程の軽さを覚えたのは実験でボスに掛けた時以来であった。
「“殺す”!!」
イグマは自らの状態に何ら関心を示すことなくラタに躍り掛かった。
周りの空気が蜂蜜にでもなったのかと思う程鈍化していたが、幸いスキル等は弱体化はしないようで問題なく使えるようだ。
「クッ!魔力もか!」
早速潜影でスピードダウンを補おうとしたが、魔力が通常より大幅に減じているのを感じ断念する。
感覚との差異に大いに焦れながらもラタの下に辿り着き体に染み付いた連撃を行う。
拾われてから練習し続けた型であり、体が記憶している物だ。
疾く!!疾く疾く疾く疾く疾く疾くッ!!
コイツを殺す。
命令ではなく自分の意志で。
初めて抱いた殺意に動揺しつつもその狂気に身を委ねる。
そうでなければ今まで生きてきた全てが無に帰してしまう。
その生活をしていた時は本気で嫌だったのだが、今思えばそれしか存在意義がなかっただけに割と依存していたのかも知れない。
故に感じ取ったのだ。
コイツを殺さなければ自分が死ぬと。
逃げれば生き残れるかも知れないが、その場合は自らの生きる意義を失うことになる。
それは自殺と一緒だ。
看過出来ない。
幾ら勝つ希望を見出だせなくても。
「あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!」
怒りに焼き切れながらラタを攻め立てるが遅い動きでは圧倒的な運動能力の差によって避けられてしまう。
そしてそれが仇となった。
ガシッ……。
ラタに肩を捕まれイグマの動きが止まる。
相手との能力値の差か肩がミシミシ言い、イグマはその痛みに呻く。
そしてイグマは見た。
ラタの勝利を確信した目を。
「良い運動したお陰で段々お前の強さに馴れて来た」
そう、イグマの遅い動きでは今のラタにとって温いトレーニングにしかならなかったのだ。
それ程に二人の能力値の差が存在していた。
ラタがどれだけ努力しても届かない圧倒的な才能の差だった。
しかしそれが逆転してしまえば元も子もない。
ラタに挑む者は皆自らの才能に首を絞められることになる。
肩を掴んだラタは右腕で巨大なバスターソードを天高く持ち上げる。
「『聖なる天秤』!!」
バスターソードから白い魔力が噴出し、剣全体を覆い尽くす。
そしてそれをイグマの右半身に向けて自身の“左腕ごと”振り下ろした。
ズドォォン!!
イグマの能力値によって高威力の一撃が射出され、剣前方数十メートルに渡り地割れのような裂け目が地面に余波の痕跡として残されていた。
そしてその攻撃をモロに食らったイグマは右半身が肉塊と化し、左半身だけとなってどう、と倒れていた。
しかし、それだけの攻撃を受けながらラタの左腕は無傷。
これは攻撃を放った本人だからではなく、悪と認定した者ではないからである。
ラタの技全般はラタの主観により悪と認定した者以外には通用しない。
だからこそニティの手を取った時、躊躇なく衛兵ごと攻撃したのだ。
そして今回は確実に仕留める為に掴んだ腕ごと攻撃した。
その甲斐有ってイグマの半身を消し飛ばすことに成功した。
「しかし、こんなになるとは……。コイツマジで何者だったんだ?まぁ良いか、死んだんだ。知る意味もない……」
ラタは変えられた地形を見てその壮絶な技の威力に舌を巻く。
この技でここまでなったのは初めてだ。
余程高名な戦士だったのだろうか。
しかし死んでしまった者はもう警戒のしようがない。
情報収集は後にして先にメルト(悪)を殺そうと一歩踏み出した所だった。
グニュグニュ……。
チラリと目に入ったピンクの肉塊がうねうねとのたうち回っていた。
それは例えるなら千切れたトカゲの尻尾のような暴れ方だ。
慌てて足を止めイグマの方を見れば、そこには“右半身の生え掛けた”イグマが居た。
千切れ飛んだ筈の肉塊が再集合し始め、それぞれ足や胴を再構築し始めて居る。
それで足りない箇所は生えて来るように肉が埋めていく。
グチュリグチュリと気味の悪いことこの上なかった。
「何だ、それは……」
丸っきり理解不能だった。
呆然と呟いたそれを無視するようにイグマは新しく出来た足でゆっくり立ち上がる。
新陳代謝が異常に活性化したせいなのか左側の目の周りの皮膚まで爛れたように形が崩れ、妖しく光る魔眼が目の奥より覗き、右側の目は茶色の入った黒色の瞳。
イグマはそれを迷いなく抜き取ると落ちていた魔眼を出来た穴に無理矢理押し込む。
元々魔眼を持っていた訳ではなく埋め込んだだけであるのでスライムの回復力では復元しないのだ。
左腕でまだ出来掛けの右半身を庇いながら叫んだ。
「そんな目で俺を見るな!!見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るなッ!!……見ないで!!」
叫んで居たのは確実に人間ではない何か。
何故なら人間は半身を失って自力で生き長らえるのは不可能なのだから。 しかし、人間に似た何かはそれを真っ向から否定する。
「俺は人間だ。人間だ人間だ人間だ人間だ人間だ人間だ人間だ人間だ人間だ人間だ人間だッ!!」
自らにそう言い聞かせるように何度もそう言うイグマ。
対してラタは悪として対処する優先順位が上昇し、メルトを越えた為に完全にイグマに向き直る。
「人に化けた魔物か……?まさかこんなのが王都にまで入り込んでいたとは……」
「ちっ、違う魔物なんかじゃないッ!!俺は人間だよ!!どうして皆分かってくれないんだよ!!俺は被害者なんだ!!」
ラタを通して他の人物を見てるのか目を閉じて過去のことに怯えるイグマ。
そしてラタがその過去の人物でないことに漸く気が付いたのか少し冷静さを取り戻す。
「ふぅ、これは人魔融合実験を受けさせられただけ。意思は俺にあるし、このスライムが暴れることもない」
闇の国と呼ばれるクライシュテルスでは暗部強化の計画の一貫として人魔融合実験が進められていたが、直ぐに中止になった。
理由は成功例が著しく低かったこともさることながら、この実験を受けた者はその魔物の獣性に引っ張られ凶暴化することが多かったからだ。
暗部として酷く向かなかった為に計画自体破棄された。
そしてイグマはその実験の唯一完璧な成功例だった。
いや、より逃げられなくなったという意味では失敗作と言っても良いかも知れない。
互いの能力を掛け合わせるだけでなく、より優れた形質を持ち、凶暴化することは無かった。
まさに神の奇跡とさえ言えた最高傑作であった。
「そんなことは関係ない。少しでも罪のない人々を脅かす可能性があるのなら排除する。それにお前の場合はもしもの時の被害予測がデカ過ぎる」
人間だと訴えたイグマへの返答はにべもなかった。
魔物として排除しようとしているラタに対してイグマは天を仰ぐ。
「ああ!!どうして分かってくれないんだ!!やっぱりお前は嫌いだ。忘れたままで居たかったのに!!俺は結局命なんて与えられてなんかいなかった!!何とも知れない魔物なんだ!!」
イグマは歯を噛み締めながら涙を流す。
そして泣きながらラタを睨んだ。
「こうなりゃ八つ当たりだ!!俺の“存在意義(暗殺技術)”の全てを掛けて!!」
人にも魔物にもなれなかった者に残ったのは怒りと、少しの技術だけであった。
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「「≪メテオストライク≫!!」」
二人同時の大魔法使用。
互いに一撃決殺の為に押し潰す腹だ。
そしてその魔法の効果があらわれ天より巨大な二つの隕石が火を纏って飛来する。
「魔法の方は任せたよ」
『任せて!愛しい人!』
ガルシアは後ろに控える女神達にそう伝えるとジーンに向き直る。
そして邪悪そうな笑みを浮かべた。
「出来れば一人で倒したい所だが、君は教員達の無能の証明だ。確実に殺す為に皆の力を借りることにするよ」
人の力を借りるのは嫌だが相手が自身のキルリストの序列二位ならば話は別だ。
何をもってしても例え汚泥を啜ったとしても絶対に殺さなければならない。
そうでなければガルシアのプライドが許さない。
因みにどうでもいいことだがガルシアのキルリストの序列一位は不動でキースである。
「良いぜ!凡人は群がるのが仕事だからな!どうせ有象無象が群れた所で俺様には勝てねぇ!何故かって?この俺様が大天才だからだ!」
ジーンの傲岸不遜な宣言に気分を害したガルシアが放った火魔法が元で二人の魔法の撃ち合いが始まった。
撃ってはそれを防ぎ、相殺させ反撃する。
それは一種舞いだった。
無駄を極限まで削ぎ落とした舞いのような戦い。
ゴブリン達を一掃した巨大な隕石が迫る中、二人はそれを一切気にすることはない。
二人とも“この程度”の魔法なら何とか出来ると思っているのだ。
そしてその均衡は女神達によって動いた。
ガルシアの上空にある隕石が瓦解したのだ。
隕石は幾つかの比較的大きな破片と細々した破片とに別れ、四方に散り散りに飛んで行った。
それを確認したガルシアは自らの攻撃に更に拍車を掛け、隕石とガルシアの二正面戦闘を強いる。
そしてガルシアが風魔法の風裂を放った時だった。
ジーンは爆発的な風を上に飛んで避け上昇気流に乗りながら飛距離を延ばし、空間に透明な防御壁を張りそれを無詠唱魔法で瞬間的に上昇させた脚力で蹴り付け隕石に肉薄する。
ジーンはそのままの速度で拳を突き上げると突っ込んで行った。
「≪竜化≫!」
ガガーン!!
擬似的にドラゴンと同じ筋力と硬度を得たガルシアは隕石を腕力で砕き割る。
ジーンは隕石に宿るガルシアの魔力を解析するとそれを操り、沢山の破片をガルシアに向かい射出した。
(そんな!有り得ない!)
ガルシアは内心驚愕する。
ジーンはさらりとやってのけているが、通常相手の魔法を解析して支配権を奪うなど並大抵のことではない。
ジーンはまず隕石を破壊することにより魔法の効果を消滅させ少量の魔力を流し支配権を確立させ破片を再利用する。
それは例え天才であったとしても努力なしには出来ないような人外の所業だった。
「クッ!」
ガルシアは歯噛みすると水魔法を使い、圧倒的な水量で全て押し流した。
この一連の流れを通してガルシアはジーンの言動の著しい解離に気が付いた。
どうやらこのジーン=アイアスという男は大言壮語を言う割には彼自身は毛程もそんなことを思っていないようである。
勝利のみを念頭に勝利までの道を地道に組み上げ勝利の為には自らの身の安全など二の次だろうという勝利への執念をガルシアは魔法の撃ち合いから感じ取った。
先程の魔法支配からしてかなりの努力家であり、それでいながらガルシアを見つめる目には油断の色はなかった。
戦況を完全に客観視しながらそれでいて自らのことを相手より遥か高みに位置させている男。
ただの変人か、それだけ自分を高く評価する理由を有しているのか。
ここまで考えた上でガルシアはただの変人だと判断した。
何故なら直ぐにでも自らが捻り潰すから強者な訳がないと考えていたからである。
表面的なものは兎も角内面的なものに関してはガルシアの方が自信過剰であるかも分からなかった。
「俺様のメテオを砕くなんて優秀だな。ま、俺様の足下にも及ばないが」
そしてジーンは転がった夢見帽を被った女性に目を向けると面白いこと考えた、とでも言うようにニヤリと笑った。
「面白い物を見せてやろう。さぁ、俺様の下にかしずけ」
ジーンはそのまま眠神ヒュプノの方へ手を伸ばすと“支配権を奪った”。
ヒュプノは意識なく起き上がるとまるで操り人形か何かのようにスーッ、とジーンの所へ向かう。
そう、ガルシアの下へ降臨した神の分体の体は魔力で出来ている。
ジーンは先程の隕石と同じように魔力による被造物と神との意思の繋がりを破壊し、残った被造物の支配権を魔力操作により得たのだ。
言うは安し行うが難し。
やることは先程の工程と同じだが、難易度は比較にもならない。
それこそ大天才でもなければ不可能だろう。
「派手にやれ」
ジーンがそう言った瞬間、辺りに暴風雨が発生する。
ガルシアの居る部分は他の神の神域が被る為、先程と同じく晴れ渡った天気だ。
「効かないね」
ガルシアは笑顔で皮肉を口にするとジーンもまた口角を上げる。
一瞬二人で笑い合うとジーンが応えた。
「どうだか」
そう言った途端周囲10メートル程が突然水没する。
ガルシアはガポッと水を大量に吸ってしまい呻くが、次の瞬間には炎に囲まれていた。
「何だ!?」
水を咳き込んで吐き出しジーンにそう聞くが、既に答えはガルシアの中で出ていた。
「これが夢か……」
「ああ、そうだ。夢とは空想の中の理想の姿。ただしこれは幻でもなんでもない。夢は実現する物だからな。聞いたことはないか?夢は信じていれば必ず叶う物だってな」
それは夢違いだ、とガルシアは思ったが元々自分が使ってたものの為、睨み付ける程度でお茶を濁しておく。
そもそも元から眠神の力は対大軍戦に特化していた。
大雑把な攻撃が多いが、のべつまくなしに撃たれる攻撃は驚異以外の何者でもない。
真に恐るべきはキース=バレンタイン。
この理不尽を意識不明にまで追い込んだのだから。
「殺せ」
ジーンがクイッと喉を掻き切る動作をするとガルシアに向かい全方位から剣が襲い掛かってきた。
女神達がその大多数を押さえるものの、やはり取り残しがあり頭上から迫った刃がガルシアの肩を貫き地面に縫い止めてしまった。
「あああああぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!」
眠神による幻痛により数百倍の痛みを得たガルシアは肩を押さえ悲鳴を上げる。
「ここらで負けとけ。敵わないのは分かってただろ」
ジーンはそれを見下ろすだけだ。
明らかにトドメを差すチャンスなのにも関わらず逆転の手はないか、演技ではないか、と警戒しているのだ。
石橋を叩くように慎重であり、確実に殺しに来ている。
(つまり一発逆転さえ無ければ勝てるって思っている訳か……)
ふざけるな。
ガルシアは不愉快だった。
キースに言った貴族のプライドが本心ということでは決してない。
しかしそれでも生い立ち上有利な立場に居るにも関わらず自らを上回る結果を出すなんてことは有り得ない。
だってそれは目の前の男が自らの無能の証明になるのだから。
そんなことは許さない。
決して認可しない。
ガルシアは肩に刺さった剣を握り、血塗れになりながらそれを引き抜く。
「がぁ!」
抜いた剣を捨てると転ばないようゆっくりと立ち上がる。
「僕の名前はヨシュア・フォン・ガルシア=パーラ!!平民ごときが僕の邪魔をするな!」
肩を庇いながら、しかしそれでいて強い瞳で言うガルシアにジーンはそれを真っ向から受けて立つ。
「世界は俺様を中心に回ってる!俺様の邪魔をしてるのがお前だ。だがどうする?正直大天才の俺様とお前じゃそいつらをハンデに入れてもまだ天と地ほどの差があるぞ」
「提案がある」
そう言ったガルシアにジーンは笑い倒す。
「ハハハハハ!!今更命乞いか!?良いぜ。2度と関わらなきゃ……」
「お前にじゃないバレインにだ」
地獄耳なのかアラヤが教えたのか拗ねたような声音でかなり小さかったにも関わらずキースは応えた。
「何だ!?今忙しいんだが!?喧嘩を売るなら列の後ろに並んでくれ!半年先まで予約で一杯だがな!」
ギリギリの状況下の筈なのに軽口まで添えて返すキースにガルシアは物凄く嫌そうな顔で言った。
「提案がある。力を貸してくれ」
ドラゴンボール見てから書いたせいか擬音ばっかになりました。
後今沖縄に居ます。
最近永遠の17歳になったので修学旅行ということになりますね。
ラーメン食いたかった。
ええ、現実逃避ですとも。
全く予定量まで進んでないですm(__)m
何とか11月には終わらせられるといいなぁ。




