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傾世の暗殺者異世界に物申す  作者: 伊賀良太郎
第1章〜魔王暗殺〜
50/107

50 メルト外伝紅の墓標31 説得

トルダの部屋の中、メルトとトルダの二人が向き合い、メルトが能力を発動させようとした。


「豪魔の巨腕!……ってあれ?」


右腕を引いて右腕の巨大化に備えるメルト。

しかしその能力の発動は不発に終わった。


「じゃあ行くわよ。塵に……」


トルダが攻撃体制に移ろうとするのを慌ててメルトが止める。


「待った!後30秒で変身できるから!豪魔の……あれ?」


もう一度発動を試みるがまた失敗してしまう。


「もう良いわね」


メルトは焦りつつトルダを止めようとして気付いた。


「あっ……」


メルトは空気が漏れるように五十音の最初の文字を言った。

この世には二つのあ、がある。

一つは何かを発見した時等に出す出ても良いあっ、と美容師がハサミを持ってる時などに出す殺傷能力を持つあっ。

メルトのそれは出てはいけないタイプのあ、だった。


「(そうだった。忘れてた……今の俺の中にはオメガが居ねぇ。つまり幾ら奴から魔力や能力を奪おうとしても無駄……不味い!)」


そう、メルトの力は全てオメガありきの物。

元々メルトには実力がないのだ。

父親が元傭兵なだけあって基本的な武術は身に付いては居るものの、精々が自衛団団長止まりであってA級など夢のまた夢だ。

事実、村の自衛団団長をやっていた時代も自らの力不足を感じていた。

それが何故冒険者、それもA級に相応しい実力を得るようになったか。

その鍵が悪魔族の元皇帝であるオメガの存在である。

それはメルトの全て始まりの日の出来事に起因する。


〜〜〜〜始まりの日〜〜〜〜〜〜〜〜


それは大きく遡りメルトがメイナム村の自衛団団長をしていた頃。

メルトが当時14歳だった時だ。

自衛団とは言っても騎士の庇護が受けられない程辺境の危険な場所に村があった為に仕方なく作られた程度の物。

まともな練度は期待するべくもないし、事実団員のほぼ全てが農家と兼業であり唯一の専任が名誉団員の5才の男の子という有り様だった。

装備もバラバラで鍬や鉈を持っている者もあり、その装備は殆ど一揆の軍勢に近かった。

メルトも腕を無くした父の農業の手伝いをしながら給料のない団長を兼任していた。

そんなメルトがいつものように父との畑仕事の合間に親友のテセトと剣の腕を磨く為に模擬戦をしていた時にそれは起こった。


ガガァン!!


「きぃやああああああ!!」


突如村の外側を囲む貧弱な柵が壊されたかと思うと耳をつんざくような悲鳴が聞こえてきた。

メルトには柵が壊されるような小さな音は聞こえなかったものの悲鳴を辛うじて聞き取った。

異変を感じた二人は即座に模擬戦を止め、現場に急行することにした。

そしてその途中、二人は最初の運命の岐路に立たされた。

二人の前に一人の魔人が現れたのだ。

「ま、魔人だと!?魔人が何でこんな所に!?」

そう叫ぶメルトを無視するようにその魔人は自らの話を進めた。

「オメガという悪魔を知らんか。我々はその討伐命令を受けた。知っているならば教えろ。時間は惜しい」

淡々と質問するロイと言うらしい魔人にメルトは聞いてはいけない質問をぶつけてしまった。

「知るかバカ!それよりどうやってここまで来た!此処に来るまで沢山の村の皆や見張り番が居た筈だ!!」

ロイのその質問に対する答えにより彼らの運命は決定付けられてしまった。

逃げるという選択肢を封じられてしまったのだから。

「命令の障害に対する排除はロレック様の名により許可されている。お前のような一村民が逆らって良い話ではない」

そのロイの冷徹な表情が殺した、とそう語っていた。

「ふざけるなッ!!」

飛び掛かろうとしたメルトをテセトが制する。

「何すんだ!!」

村の皆が殺されたかもしれないことに怒り心頭のメルトはテセトに怒りをぶつける。

しかしテセトは何も気にした風はなく冷静に現在の状況を分析していた。

「落ち着いて、コイツ一人じゃないかも知れない。既に村中に広がってる可能性だってある。だから今メルトくんは足を止めちゃいけない。団員は君の指示が無きゃ動けないよ。メルトくんは早く悲鳴の発生源に行かなきゃ」

その言葉で熱が冷めるように一気に冷静になったメルト。

しかしそれで余計に一つの疑問が湧いてくる。

「ここはどうすんだ……」

それに対するテセトの返答は簡潔だ。

「僕が引き受けるよ。おじさんが心配だからコイツ倒しておじさんの無事を確認したら直ぐにメルトくんに追い付く」

テセトのその危険な内容に思わずメルトは叫ぶ。

「そんなのダメだ!!死んだらどうする!!」

メルトは真剣に言った筈だが、それを聞いたテセトは緊張していた顔をほころばせた。

「フフッ、そういうことは僕に一度でも勝ってから言いなよ。戦績忘れちゃったの?」

「ぐっ……」

メルトは思わず唸る。

それは圧倒的な惨敗っぷりの戦績からだ。

823戦全敗。

メルトもよくもまぁこれだけ敗けを積み重ねれた物だ。

不屈の精神と言って良いだろう。

「死ぬなよ?」

メルトが聞けば打てば響くとでも言うようにテセトが答えた。

「勿論、僕は夢を叶えるまで死ぬ気はないよ」

それを聞いたメルトは直ぐに駆け出す。

後ろは振り返らなかった。

それはテセトへの信頼故だ。

そしてメルトはその後テセトを見ることはなかった……。

この会話が二人で交わした最後の会話となってしまったのだ。

こうしてメイナム村の墓地に一つの名前が追加されることとなった。

そんな未来のことは露知らず村の皆のもとに駆け付けたメルト。

そして“それ”を見たメルトは叫んだ。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

怒号の如く叫ばれたメルトの悲鳴は村中に木霊する。

メルトは恐怖した、戦慄した、後悔した、憤怒した、侮蔑した、諦観した、憎んだ、悲しんだ。

無力だった……。

太陽はさんさんと輝き大地は作物を育てる。

そんな日常の中に“それ”はあった。

それは死体。

数十人の魔人に破壊され、血の海に沈む幾つもの肉片だった。

そしてメルトは失意の中、自らの運命と出会う。

『すまなかった……彼らは私と関わったばかりに……。彼らはもうどうしようもないがもし君が条件を呑めるなら、これから増える犠牲は食い止められる。今の私には力がない。私と『契約』してくれ。条件は……』

ボロボロなオメガがメルトに救いの手を差し伸べる。

しかし条件を言う前にメルトに遮られる。

「んなもん必要ねぇ……」

メルトは下を向き、涙を堪えながら答える。

今にも泣き出しそうな子供特有の顔。

取りつく島もなかった……。

『待ってくれ……考え直してくれ。今君に逃げられれば私はこの村と心中するしかない』

オメガが必死に説得するが、メルトには効果はない。

「条件なんざ聞く必要ねぇって言ってんだよ!!」

何故ならメルトはもう、そのオメガの手を取ると最初ハナから決めていたからだ。


パシッ!!


『良いのか?この手を取れば後戻りは出来ないぞ?』

「取れっつったり取るなっつったり忙しい奴だな……。良いんだよ、今取らなかったら皆くたばるだけだ。皆を助ける可能性が少しでもあるのならそれに賭ける。それに俺はいつでもテセトに誇れるような、そんなカッケェ男でいたい」

『そうか、約束すると言え、それで『契約』は発動する。それと名前を聞こう。少年』

「約束する。メルトだ!」

『オメガだ』

「名前のセンスが最悪だな。同情するぜ」

『それはお互い様だ』


こうしてメルトは悪魔に魂を売り、皆を助ける力を得たのだ。

そして夕碧の騎士団の伝説はこの二人の出合いから始まることになる。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


このような唯一の過程でオメガの力を得た為にオメガの元々持ってた力は酷く流動的でどこにでも流されやすい。

故に内部闘争による力の分配をしてどちらがどれだけ力を持っていくか決めるのである。

その内部闘争の中でメルトは何度も苦しい思いをしながらも力を勝ち取って来た。

その精神内で戦う結果として内部の戦う敵に自分の性格が反映されるという現象が起きる。

具体的に言えばメルトのオメガ化、オメガのメルト化だ。

この現象は精神世界によるコミュニケーションツールが意味を為さなくなることでの世界への自己フィルターの増加の指標とも言える。

それは兎も角、メルトはオメガに精神闘争で勝つことでオメガから力を分取り、A級としての力を振るって居たのだ。

そしてその分取る相手が居なくなれば、分取る力もなくなるのも自明の理。

本来ならオメガが出てきた時点で気付くべき物であったのだが、トルダを止めることに熱中していてメルトは全く忘れてしまっていたのだ。

そこら辺のアホすらバカだと罵る事態だがメルトはアホ極まる奴なので全く問題ない。

そしてオメガの力を剥ぎ取られたメルトの力は村の自衛団団長レベル。

単身魔人に挑んで良いレベルではない。


「あー、そっか出ねぇのか……。まぁいいや、切り替え切り替え」


しかし、メルトは怯まない。

メルトは良くも悪くも悪くも過去は振り返らないのだ。

力が無いのなら今ある力で何とかする他ない。

力の無いことを嘆く時間があるのなら現状を打開する策を練る方がよっぽど時間を有効に使える。

……正しいことを言ってる筈なのに何か釈然としないのはメルトがアホ極まる奴だからだろう。


「じゃあ行くわよ」


トルダはそう言うと徐に近くの椅子を持ち上げるとメルトに思いっきり投げ付けた。


ヒューン。


「危ねぇっ!!」


バキバキ!!


メルトが間一髪で避けると、椅子はそのまま壁に衝突し粉砕される。


「惜しい」


トルダはそう呟くと肩に斜め掛けした大きい鞄を開ける。

そこに山盛り入っていたのは大量の石ころであり、彼女が投擲用に城の外で拾ったり、ヨキに岩を砕いて貰ったりして拵えた物。

トルダは近接戦闘を諦めたのだ。

幾ら魔人となり人外のパワーを発揮出来るとは言えその体を操るのは戦闘経験どころか殴るより殴られることの多いスラムの出。

トルダはその戦闘技術は頭打ちであることは気付いていた。

体格差も考えた上、遠くから物を投げて殺すという方法に行き着いた。

自らの魔人としての身体能力を存分に活かした作戦だろう。

彼女は驚いたことに力を得たことに対して決して慢心などしなかったし、どちらかと言えば嫌悪さえしていた。

それは彼女の根底にある権力や暴力など“力”に対する極度の憎悪や不信感に由来する。

トルダは出来れば力など欲しくは無かった。

ただ単に目的たる復讐を完遂させる為に不可欠であっただけだ。

故に諦めていた。

妹以外に復讐の術はないと。

だからトルダは涙を飲んで権力と司法と無力に殺されようとしたし、妹に対して全てを捧げてやった。

だが、ヨキとの……新しい世界との出会いによって全てが変わった。

彼らは私を汚ならしいゴミではなく人間として扱ってくれた。

彼らは私にご飯をくれた、安眠をくれた、力をくれた、そして……“怒り”をくれた。

優しい彼らは私の為に怒ってくれた。

だから私は彼らの為に戦う。

その為なら力が嫌いなんて好き嫌いを言う必要もないし資格もない。

そうトルダは考えていたのだ。

彼らの為なら彼女を嫌う世界など幾らでも犠牲に出来た。

だからトルダは目の前の男が嫌いだった。

力を振りかざしトルダを強引に地獄へと引き摺り戻そうとする悪鬼すら霞む悪事を犯そうとする。

私の幸せを壊そうとする。

トルダの先程までの純粋な怒りが再びドス黒い物が混ざっていく。

この男は敵だ。

だから真っ先に殺す。

誘いになど誰が乗るものか。


彼女はそう決めた。


次回魔王降臨予定!

因みに魔王の驚異度はSS級!

ガルシアが呼び出した神の本体と同レベルです

後全然関係ないけど

バサラの小早川とギャモンが同じ声優だったことに心底驚いた

超すげぇ

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