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傾世の暗殺者異世界に物申す  作者: 伊賀良太郎
第1章〜魔王暗殺〜
5/107

05テラスにて

同日 夜 スカイテラスにて


―――― イテナ 視点 ――――


俺は空を見上げながら思う。あっちの世界はどうなるだろう、と。いやそれは簡単に予測できる。

俺が解らないのはなぜローライスが俺を暗部の長から追放し多額の懸賞金をかけたのか、だ。

学のない俺ですら予測できる。それすらわからなかったのだろうか……。


所詮二代目。貴族どもにそそのかされたか?

いや記憶をたどれば公明正大な人物との噂が多かったはずだが……。


執行部の言い分としては、暗部の長イテナは私利私欲のため盗賊と結託し、盗賊連合会なるものを結成しそれを率いての国家簒奪の疑いがあり貴重で尊厳高い国民の命を踏みにじるものである。


とのことだ。

……笑わせる。


確かに私利私欲のために事実盗賊連合会会長はしていたが、別にそれで特に変わったことはない。全盗賊団を排除出来ないのであれば取り込んでコントロールする方が遥かに現実的である。

盗賊連合会というのは盗賊同士の互助組織ではなく暗部の下部組織だ。収入の何割かを納めさせ、代わりに取り締まり状況の情報を流す。たまにガス抜きとして俺の不興をかった貴族の詳しい警備状況を流してやったり場合によっては盗賊行為を手伝ってやったりした。


入らない者はいない。散々脅したし、従わない者は殺した。そのお陰で国民の盗賊被害はなかなか少ない方だし、それは俺という絶対的な存在によって成り立っている。


それを壊してみろ。どうなるかは明らかだ。


まずは盗賊被害の爆発的な増加。経験不足のせいでそれを取り締まれない国家。軍事費は増やされ跳ね上がる税。

お陰で不満は続出し、それに呼応して反乱が起こる。反乱軍と国軍のどちらが勝つにしろ多くの血は流れることになる。


何がしたかったのだローライス。


お前がなしたことは正義だろう。だがそれは悪を伴う。それはなした正義よりも巨悪だ。悪をなして平和をもたらした俺よりも百倍たちが悪い。



今考える事ではないな……。今現在、現状把握が一番優先順位が高い。


現在か……。シジマ ユウト。転移した時奴は二人をかばう位置。正確には二人に危害を加えようとしたものを確実に襲える位置にいた。アイツは俺にどこか近いもの、似ているものを感じる。向こうでなら弟子にしてやってもいいくらいだ。


さて、そろそろか……。

「ここにいらしてましたか……。随分さがしたのですよ?」


「こっ、これは姫!お手をわずらわしてしまい申し訳ございません。」


慌てて膝をつく……演技をする。近づいてるのは最初から分かってたしな。


「いえ!楽にしてらして下さい。私はあなた方に頭を下げられるようなことはしておりません!」


だよな?そもそもが俺に誰彼かまわず頭を下げるような趣味はない。スクッと立ち上がり口調をくずす。それが恐らくこいつ、王女アルメリの望みだろうから。


「これはこれは王女様なぜ僕のような者をお捜しに?」


ああ、しゃべるだけで虫酸が走る。この口調は人の好意は得やすいのだが、いかんせん喋る度に背中がむず痒くなる。


「その口調嘘ですね?」

む?顔に出ていたか?いや、そんなつもりはないんだが?

そもそも俺は詐欺師を騙せるくらいの演技力は有るつもりだし、それがたかが王女ごときに見破られるはずがない。こいつのステータスを見ても看破系の能力は見つからない。


――――――――――――


名前 アルメリ=ヴァインズ=トリスタン

年齢 16

種族 ヒューマン

職業 第三王女

レベル 2

HP 22/22

MP 19/19

攻撃 1

防御 1

俊敏 1


スキル

腹芸3


称号

王女

――――――――――――


隠蔽できる程の実力者なら肌でわかるはずだが……それもないな。どういうことだ?


「ああ、私昔から観察力というのでしょうか直感が鋭いのです。」


「あ〜ばれちゃったか〜うまくいってると思ったのにな〜。」


「それも嘘です。」


コイツ……。


「何をしに来た?用件を言え。」


「それも嘘のような気がしますけど……。まぁ、いいです。用件は……そうですね、未来のお婿さん候補を見学しに!現状では貴方が一番近いので!」


お婿さん候補?ああ、政略結婚か。大変だな。とすると魔王というのは勇者とはいえ平民に王女を降家させる程凄いものなのか?


「そういうのは分身(俺)じゃなく本体に言ってくれ。」


そう今の俺は分身だ。本体の十分の一程度の力を有している損壊前提の消耗品に過ぎない。


「でも精神は同じなんでしょう?」


「イエスでもありノーでもある。思考能力は本体と同じだが持つ情報の違いから導き出せるものは違う。」


一分身に情報は降りてこない。自分よりも弱いものが自分と同じ情報を持つ必要はない。弱点をつくるだけだ。同じ情報を持っていたら確実に分身を脅して情報を奪いにかかるだろうな。


「じゃあ同じじゃないですか?」


「そう思うんならそれでいい。」

正直どうでもいい。


「今日はなんでこんな時間に起きているんですか?」


夜になったら寝る。娯楽のない夜は当然のことだ。……昼の職業じゃなきゃな。


「夜は仕事の時間みたいなもんだ。

俺は分身だし作成された時に渡された魔力が尽きるまで動くだけ。真似くらいならできるが食事も睡眠も必要ない。」


「嘘ですね?」


「……。」


「眠れないんですか?」


「……。」


「物理的?精神的?」


「片方だったら寝たふりくらいしてる。」


――――アルメリ=ヴァインズ 視点――――――――


「何かいやな事でも?」

そう言った瞬間だった。彼が目の前から消えた。


いや消えたはず。消えたはずなのに莫大なプレッシャーが私を襲った。目も見えぬ程のプレッシャーは最初の召喚され魔王の討伐報酬の話をした時の絶望的なまでの威圧感とは比べ物にならないものでした。


濃く、隙がなく、重く、黒く、さっぱりとして、そして………どこか暖かい。


「詮索は嫌がられるって誰かに教わらなかったのか?

そんなに聞きたきゃ心臓に耳の穴増やしてやってもいいんだぞ。」


見ればいつまた戻ったのでしょうか。金属の長く鋭い針のようなものが私の心臓に突き付けられていました。


「そんな事出来ませんよ?」


「王族だから逃げられるとでも?

バカめ。どれだけ警備が厳しかろうがいくらでも自然死にだって見せかけられる。」


呆れたような口調の中にどこか自信がのぞきます。恐らく本当にできるのでしょう。


「根拠なら有りますよ?」


「ふん、言ってみろ。悪いが俺の貴族嫌いは筋金入りだぞ。」


「だって貴方は優しいですから……。」


「……。」


彼は一瞬悩み、そしてその長い時間は私に明確な答えを示してくれました。


「チッ、興が削がれた。胸くそ悪い。やめだ。」


「ほら、やっぱり。」


そう言うと彼は心底嫌そうな顔で……。

「調子に乗るなよ。誰が優しいだ。俺ほど人を殺した奴は他に知らん。命は預けておいただけだ。お前が変な噂を流せば直ぐにでも殺しに行く。」


「じゃあ口止め料としてお願いしても?」 「調子に乗るなよ。……と言いたいとこだが、残念ながら少々入り用でな。割り引き料金でなら引きうけてやってもいい。」


「じゃあ…。」


「まて、説明が先だ。俺を雇う上での条件は三つだ。

一つ、報酬は要交渉。その場での決定だ。原則前払い。

二つ、金の上での約束は死んでも守れ。これは俺もだから金もってトンズラは心配しなくていい。

そして三つ、何か契約不履行があったり俺が不義理だと判断したりしたら、お前を殺しに行く。以上だ。」


「じゃあ依頼です。……貴方の過去を教えて下さい。」


「……。一分金貨十枚な。」


高い!農民が何年それで生活できるんですかぁ!ぼったくりですよぉ!


「むぅぅ……。はい、白金貨一枚です。」


ああ、私けっこうおこづかい少ないのに……。

「俺が要求したのは金貨十枚だ。」


「価値は同じでしょう!嫌がらせですか!」


「換金する手間でもう金貨二枚足すぞ。」


これ以上足されちゃたまらないのでさっさと金貨十枚をわたすことにします。


「ふむ……。いいだろう。始めるぞ。」


「ええ。」


「男の名前はイテナ=バルサムと言った。ある日その男は路地で一人の孤児を拾った。

世襲制である己の名をその男の息子に与えるためにその息子の従者にしようと思ったんだと思う。男はその孤児を育ててみて驚いた。才能に溢れていたからだ。

息子に勝る、いや裏の世界で名をとどろかせる自分にも匹敵する程の才能は男を歓喜させ、それ以外の全てを捨て去ったも同然だった。

息子に与えられるはずだったイテナの名も名前のない孤児に与えられた。お陰でそいつの家族ともいろいろあったがな。

死にたくなるほどの過密な訓練は俺を怪物に変えた。

暗殺者と呼べば格好はつくが、所詮は人殺し。手は直ぐに血に染まり、それしか道を知らない俺は……。そう道がない。目の前の道しかな。バカな話だ。

………一分だ。」


なぜそんな事を聞こうと思ったのかは解らないでも気づけば口に出ていた。

もしかしたら話が終わって直ぐに立ち上がり、どこかへ行こうとしていた彼を引き留めたかったのかもしれない。

でもそれは間違いだったと私は直ぐに気付くことになった。


「そのバルサムさんは今どうしてるんですか?」



――――俺が殺した。


呪文のようなその言葉は私に重く重くのしかかり、こつぜんと消えた彼とは裏腹に決して私から離れようとはしなかった。

因みにお金の価値は10進法で上がっていき、農民なら金貨二枚で超質素な暮らしをすれば暮らせないこともありません。 価値としては

白金貨>金貨>銀貨>銅貨>鉄貨です。

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