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傾世の暗殺者異世界に物申す  作者: 伊賀良太郎
第1章〜魔王暗殺〜
49/107

49 メルト外伝紅の墓標30 『黒雨』vs『白雷』

キースは一旦クロスバを放置し城から脱出する。

それは魔力弾により壁や床が削れる音、天井をぶち破って昇る熱線。

それらはキースの安全の定義に著しく外れる物であり、外の方が安全だろうという判断からだ。

キースは自らが切り落とした跳ね橋を渡ろうと城を出る。

そして狙いすましたのか跳ね橋の中間、水堀の上の丁度逃げ場のない所でそれは起きた。


『≪死の雨≫』


突然放射線に汚染された黒い雨がキースの周りにゲリラ豪雨のように降り注いだ。

キースは一瞬驚くが即座に我に返り自らのスキルを起動させる。

クロスバとの戦いでは発動させなかったキースの本気のスキルだ。


「『終日のイカズチ』」


その瞬間、彼は雷を纏う……。

いや、キース自身が雷になったかのようだった。

世界の全てが鈍化し、雨粒が緩慢に落ちてくる。

キースは冷静に全ての雨粒の軌道を見極めるとまさに稲妻のように動き出した。

全ての雨粒が下に落ちる前に一気に跳ね橋を抜けた所でこの雨の原因を見付ける。

即座にキースはその男に斬り掛かった。

その男の周りが自分にとって一番安全だと分かっていたからだ。


ピシャァ!!


ゴゴォォン!!


ゴロゴロ……。


キースが駆け抜けた軌跡に閃光が走り、空気の膨張により雷鳴が轟く。

雷鳴により掻き消されたキースがガルシアの球状のバリアに斬りつけた音は彼らの理性のように脆く、この雷鳴で吹き飛ばされたも同然だった。

空気の膨張により爆発的な風が起こりキースの髪が後ろに撫で付けられ一瞬オールバックとなり、キースの血のように真っ赤に染まった眼が露になる。


「てめェ……何のマネだ……」


一歩間違えれば死んでいた攻撃。

いや、確実に殺しに来た攻撃だ。

現にキースでもあの攻撃をスキルなしでは全て避けることは出来なかった。

しかも音速を越えた影響で発生した負荷によりキースの肉体にも少しガタが来ていた。

クロスバとの戦いで二刀流で遊んだ時に受けた傷と併せて結構なダメージである。


「何の真似?ハハハハハ!!下等生物には分かりやすいかと思ってやったんだがそれすら理解できないとは……憐憫を越えて滑稽ですらあるね。やはり平民はどれだけ一点を磨き上げようが貴族には足元にも及ばないらしい」


睨み付けるキースに対してガルシアは涼しい顔を崩さない。

ガルシアは別に本気でこんな選民思考を持っている訳ではない。

事実ガルシアの通っていた学術院で歴代二位の好成績を持つガルシアにダブルスコア差で一位に君臨するジンは平民なのだ。

そのことはガルシアは身に染みている筈だ。

故にガルシアがこんなことを言ったのは単に挑発に過ぎない。

キースの想い人ジェーンは選民思考を持つ貴族に殺されたのだ。

ガルシアはその性格を真似しキースの神経を逆撫でしたに過ぎない。


「言葉にゃあ気を付けろよ?返答次第じゃお前を殺さなきゃならなくなる。もう一度だけ聞く。何のマネだ……」


その効果もあってキースの眉間の皺が更に深くなり獲物が腹に入るか算段するような目で睨み付ける。


「何、負け犬に宣戦布告しに来ただけだよ」


その言葉を聞いた瞬間、キースはニヤリと笑う。

それは好意的な物ではなく単に獣が使う歯を見せるだけの威嚇行為だ。

どうやらガルシアは盛大に地雷をぶち抜いてしまったらしい。


「悪いな……今お前の死は確定した」


「君が無様に死ぬの間違いだろう」


バチィ!!


先程の稲妻のような移動よりはダメージの残らないように瞬間的にキースが離れる。

自らに攻撃を関知したからだ。


「コイツか、さっきのも……」


キースが目を向けたのはガルシアの横から出てきた女。

如何にも幸薄そうな女がキースの方を睨み付けていた。


『貴様!!“私の”ガルシアになんたる非道!!許さん!!』


私のの部分をかなり強調した言い方でキースにキレるゲヘナ。

それに対しキースだけでなくガルシアも眉間に皺を寄せる。


「君が彼と話すことを許可した覚えはないぞ。黙っていろ」


声音は静かながら確かな迫力を持って強く睨み付けるガルシアに即座にゲヘナはすがり付くとごめんなさいを連呼しだした。

その姿には自らの失言一つで消し飛んでしまうような力の差は一切感じさせなかった。

それほどこの復讐の時を楽しみにしていたのだろう。


「で、結局ソイツは誰だ?」


キースがクイッと泣き崩れるゲヘナを顎で示しながら訊ねるとガルシアは悦に入った顔で自慢気に語りだした。


「気にすることはない。ただの疫病の神だよ。君を殺すのに協力してくれるそうだ。

と言っても二級神の分霊だから主神の女神の株分けの株分けの分霊ってことでS+級“程度”の戦闘力しか持たないのだがね」


超絶な嫌みを含んだ謙遜だ。

S+級とはモンスターの脅威度でS級のパーティで挑むことが前提条件とされる難易度だ。

つまり冒険者ギルド全戦力で勝てるかどうか、現実的には外部のS級パーティに頼むしかないレベルということだ。

もう既にこのレベルで最早キースに打てる手などあろう筈もなかった。

キースが暗殺ギルドに所属していた為に付けられた討伐脅威度はS級。

S級ソロで討伐可能というものだ。

と言ってもこれは安全策であり、実際はS級ともなれば過剰戦力だろうと言われていた。

S級とその他の階級の力の差が大きすぎる為にもたらされた弊害である。

つまりキースから見ればゲヘナは完全なる格上だった。

単純に考えてキースが数人要る。

しかも今回は序でに僅か8歳で謀略により国を一つ滅ぼし伯爵から侯爵にのしあがった天才魔法使いを同時に相手しなくてはならない。


「ハン!豪勢なこって。俺を驚かせるつもりだったなら悪いが失敗だ。

キース流暗殺術其の三、俺の棺桶は血の染み込んだ汚泥の中、恐れることなど在りはしない。

ゴーストでも連れてきた方が幾分利口だったな」


しかしキースは怯まない。

この程度の差なら常に越えて来たし、ここで引けば最強の頂きは遠退く。

寄り道をしている暇はないのだ。

キースは持っていた刀を持ち上げて言った。


「おいアラヤ、こっから本気で行く。力貸せ!!」


『了解した主よ』


刀から小気味良い言葉が返ってくれば、その瞬間刀が変化した。

根元から一気に蒼白い光が刀を包む。

更にそれでは満ち足りない程光が増幅しオーラのように噴き上がる。

その様子はクロスバの不定形の刀と色が違うだけで瓜二つであった。

もっとも、クロスバの物は黒一色であったのに対し、キースの刀は刀身が蒼白い光に包まれ白い湯気状のオーラが不定形に取り巻いているという違いはあるが。

刀のこの状態こそがクロスバの言っていた刀身にルーン魔法が付与された刀である。

更にキースの変化は続く。

キースから黒色の魔力が噴出する。

キースの周りに黒い魔力が渦巻いたと思うと空間を黒で塗りつぶし、まるで空間に孔が開いたようになった。

そしてその魔力が再びキースの下に集えばキースの姿は先程とは全く異なっていた。

真っ黒い夜のような布地。

それを丈は対丈、袖口は筒袖、襟は方領の垂領。

開いた頸回りに着物の襟の上からだぶついた筒状の柔らかい布地を着けている。

そう、それは日本では着物と呼ばれる物。

元々黒に似た髪色であるキースは良く似合っていた。

これもクロスバと黒色の魔力を纏うというのは同じだがその効果は似ても似つかない。

クロスバは防御力上昇と不定形による三次元防御を主目的として黒色の魔力で全身鎧を覆っていたがキースは編み込んでいるため防刃にも優れているがその主目的は結界魔法による空気抵抗をゼロにした圧倒的な速力上昇である。

その瞬間最高速度はマッハ12。


「この程度の速度じゃあ最強の頂きにゃあまだ程遠い。ギア上げて行かねぇとな、なぁアラヤ」


そう言うとキースは着慣れた仕事着である服のだぶついた頸元の布地を引き上げ口や鼻周りを完全に隠し赤眼以外は黒一色に染まる。

これで完全に本気モードスイッチオンだ。


『そうだな主よ。それと何度も言うようだがその名は捨てたのだ。もう呼んでくれるな』


刀はそう返すとそれっきり静かになる。

キースの高揚を感じ取り、空気を読んだのだ。


「本気を出したからどうだと言うんだ。それでも所詮S級に届くかどうか。

未来がどうなるのかは誰にも分からない。

だが今確かなのは君はここで僕に無様に殺されると云うことだけだ」


ガルシアはキースの本気を鼻で笑う。

本気を出してS級程度であるならば恐れる必要はまるでない。


「こっちの台詞だ。俺の前に立ちはだかる者にゃあ容赦しねぇ。叩き伏せて進ませてもらう」


二人の反発

それは水と油のような生易しい反発ではない。

物質と反物質のように己の全てを賭けてどちらかの存在が一片も無くなるまで喰らい合う。

そんな途方もない反発だ。

では何故そんなにも互いを嫌い合うのか。

そう聞かれれば二人は苦心惨憺してたった一言を絞り出すだろう。

二人して曰く、「「気に食わねぇ(ない)からだ」」、と。

自らが最強になる為に目の前に自らより強い者が居てはならない。

自らに恥をかかせ更に無様な姿を見せた者がのうのうと生きていることは許されてはならない。

不愉快だ。

だから殺す。

その簡単にして簡潔な、そして絶対的にして論理的な思考に果たして何の反論があるだろうか。

いやない。

仮に在ったとしても力で全て捩じ伏せる。

聞く気など毛頭ない。

そうしてキースが刀を構えた次の瞬間。


ピカッ!!


キースの軌跡に閃光が走り一瞬の内にゲヘナの横を通り抜ける。


『クッ!』


ゲヘナは咄嗟に体を捻ることでなんとか無傷で回避する。

この後もまだガルシアと一緒に居る予定なのに、傷付けられては堪らないからだ。


『スピードと目だけは褒めてやる。だが早々に死ぬがよい。ガルシアとの時間が減る』


「アンタなんか眼中にゃねぇよ。オイどうしたガルシア!こんな程度か!!この程度じゃあ時間稼ぎにしかならんぞ」


決して格上に対して使うような言葉ではない。

だがキースはそれでもガルシアを挑発する。

自らの力を見せ付ける為に。

しかしそれは逆効果だった。

ガルシアはニヤリと口元を緩めたかと思うと堪えきれないとばかりに噴き出した。


「プッ!アハハハハハハ!!実に面白い茶番だよ。今の僕が全力だと“思い込み”必死に戦う。――滑稽。まさか君がここまで綺麗に踊ってくれるとは思わなかった!

さぁ、復讐劇の第二幕を始めようか。

いや、終幕かな?兎に角決して届かない壁を見ながら絶望の中で死んでいくといい」


手を天に掲げ、まるで自らが役者のような大仰な身振りでキースを嘲笑う。

しかしその目は笑っておらず憎しみのみを堪えていた。

そしてガルシアは急に真顔になると続けた。


「君に受けた屈辱は未来永劫忘れることはないだろう。その時芽生えた怒りは大樹となって僕の心に日陰を作る。

つまり君(大樹)を倒さなければ先には進めない。倒す為ならプライドを捨てようが頭を下げようが何でもない。幸運に感謝しろ。僕の力の糧としてやる。

太陽神アクトゥラ、戦神アルトス、川神二ラフ、眠神ヒュプノ。僕を助けてくれ」


その言葉と共に大気に魔力の渦が巻く。

その大気の渦は爆風を呼びガルシアに一気に吹き付ける。


カランカラン……。


ガルシアの体から一つの魔法の髪留めが溢れ風により何処かへ転がって行ってしまった。

その瞬間艶のある金髪だったガルシアの髪はたちまちの内に脱色したような白に近い灰色に変わっていった。

まるで金メッキが剥がれるように、本性が覗き見るように。


「ああ、取れたか。まぁいい、今はこの僕への侮辱の塊を甘んじて受けよう」


ガルシアは風に靡く灰色の髪を鬱陶しそうに一房摘まむとそう言った。

古来より灰色の髪は神に愛された証拠として尊ばれてきた。

この髪色を持つ者は人生の成功を約束されているのだそうだ。

何でも最初の人類の髪の色で良く魔除けに使われる色なんだそう。

しかし彼にとってこの髪色は忌むべき物であり、周りの祝福など到底理解出来る物ではなかった。

何故なら別に髪の色の(こんな)助けなど要らないからである。

自らの手柄を横取りされるように感じるからだ。

何をした所で羨望の眼差しを受けるのは灰色の髪をした人であって自分ではない。

僕の才能を誰も理解しようとしない。

だからこの髪色を魔法で誤魔化し一人で何でもやって来て全て完璧以上に出来てきた。

そうしてプライドをガチガチに固めて来たのだ。

しかし今は否定する材料がない。

この辱しめは甘んじて受け止める他ないだろう。

各々のモチーフとなる炎、水、剣、枕が現れその魔力が人の形に凝り固まりそこに四人の女性が完成した。

それぞれトーガや短弓など時代錯誤な格好をしている。

まるでタイムスリップしたかのようだ。


『喚んでくれて嬉しい、愛してるわ愛しい人』

『なぜ真っ先に私を呼ばんそなたの敵は全てたたっ斬ってやると言うのに』

『……良かった……。……忘れられてなかった……』

『んー、むにゃむにゃ……ごはん?』


続々とガルシアの元に集まる各々S+級の女性たち。 魔力(代償)ゼロの召喚に応じる奇特な女性たちである。


「アハハハハハハ!!どうだキース!!僕の才能の前に潰れて消えろ!!」


ガルシアはキースの倒れる姿を幻視しているのか普段の彼からは想像できない程上機嫌だ。

それもそうだろう、キースからすれば全員格上との多対一戦を余儀なくされる。

事実キースは額に冷や汗を滲ませていた。


「成る程……確かにこりゃあ勝てねぇな……」


キースは諦めたかのように刀を鞘にパチリと仕舞い髪を掻き上げた。

その様子にガルシアは更に上機嫌になった。


「アハハハハハハ!!降参しろ。利き腕ごと武器を落として恐怖しながら地べたに頭を擦り付け許しを乞え。そうすれば楽に殺してやる」


ガルシアとしてはその愚行を後悔させる為に散々苦しめてから最後に殺すつもりだった。

それが楽に殺してやると言うのだ。

彼としてはとんでもない譲歩だろう。

しかしキースはフンッと鼻で笑ってその提案を蹴った。


「勘違いするな。今の俺が壁を越えられないのなら、一秒後の俺が越えるまでだ!!」


覚 醒!!


キースは一気に刀を引き抜く。

着物の上から膨大な黒色の魔力が噴き出すとキースの後ろで一本の獣の爪のような物が形作られる。


「『黒猫天穿爪』!!」


キースは獣のような赤い眼でガルシアを獲物として睨み付けると言った。


「キース流暗殺術其の二。敵が俺より強いなら俺がそれを越えればいい。

俺の名はキース=バレンタイン。この名の前に倒れ伏さなかった者は居ない!!」


「ほざけ!!」


目の前の男を殺す為に全力を出す。

神5柱召喚、隠された力の解放、そして覚醒。

自らの持ちうる全ての力を使って殺す。

人に頼むのが屈辱だとか、メルトより強いのがどうとかいうのは最早関係無い。

圧倒的に、容赦なく、確実に。

ただ殺す、それだけ。

互いに認め合っているから全力なのではない。

決して、何があろうと絶対に互いの存在を認めないからこその全力。

互いに目障りな相手を叩き潰そうとする二人。

こうして二人はぶつかり合う。

どちらかが相手を喰らい尽くすまで……。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


城の佇む平原の中、一つ不自然に動く影が在った……。

イグマだ。

イグマは潜影を使うとその影に潜った状態のまま城の外に出たのだ。

影は動きを止めるとその体に飲み込んでいたイグマを吐き出した。

頭、首、肩、胸と順に地面から生えてくる様は軽くホラーである。


「任務かんりょ〜〜〜〜」


ズドォォン!!


イグマの台詞を遮るように轟音が響きイグマが出てきた直ぐ横の地面が蒸発していた。

そう、岩盤が捲れ上がったでもなくクレーターが出来たでもなく“蒸発した”である。

その証拠に出来たクレーターの表面がガラス化していた。

イグマはそちらをチラリと見ると上を見て呟く。


「ってかこれどーゆー状況?」


上にはズドォォン、ドゴォォン、という有り得ない音を周囲に撒き散らしながら激闘を繰り広げる7人が居た。

良く見るとその内二人はどうやらガルシアとバレインのようである。


「あ、いや、違うかな、二人はあんな怖い顔してないし。多分人違いだね。うん、あんな奴ら知らないし面倒事の臭いがする」


ズドォォン!!


「ウソでしょッ!!」


面倒臭そうな雰囲気が山盛りだっただけにサボタージュするためにスルーしようとしたらピンポイントで流れサンダーがイグマの近くに着弾した。

ギリギリで避けたものの数瞬遅ければ確実に当たっていただろう。

イグマはこう断言したかった。


「今の絶対わざとでしょ!!ねぇ!?」


そう叫んだのが聞こえたのだろうか。

遠くからハッシュの声が聞こえてきた。


「オーイ!イグマかぁ!?」


見るとハッシュがリタと共にこちらに向かって走ってきた。

見る間に距離が詰まりハッシュは走ってきたその速度のまま勢い良くイグマの肩を掴んだ。


「頼む!!アイツら止めてくれ!!下手な敵より始末が悪いぞ!!」


ハッシュが言うには先程から流れ弾が凄すぎて死にかねないのだそう。


「まってまって、何がどうなったらこんなことに?」


イグマの頭を激しくシェイキングするハッシュの両手を押さえてイグマは事の次第を聞いた。


「いや、俺達はニティが誰かに連れられて此処に来てたからそっちに注目しててよ。ドカンドカン音がして気付いたらこの有り様だよ。

いつもストレス発散の為に小爆発(殺し合い)してた筈なのにメルトが居なくなった瞬間コレだよ。ガルシアも数年前に一度殺されそうになったこと位水に流せばいいのに……」


どうやら聞くとドカンドカン言う音で二人で慌てて戻って来たせいでニティの方も中途半端になってしまったらしい。

後半の台詞は毎日母に殺されかけていたハッシュだからこそ言える言葉だろう。

普通の人は殺されかけたことはそうそう水には流せない。

ガルシアが普通の人かどうかは脇に置いといて。


「お前ならアイツら止められるだろ!?頼む!!」


ハッシュに拝まれたイグマは先程のクレーターとガルシアとバレインを一通り見ると答えた。


「俺とバレインとガルシア。死体が三つになるけど、それでも良い?」


その言葉を聞いた瞬間、ハッシュの顔は凄いことになった。

イグマはこの顔を絶望に歪んだ顔と呼ぶのかと深く納得した。

それほどハッシュの顔は凄い顔だった。


「クソ!!こうなったら祈るしかねぇ……。

頼むメルト……早く戻って来てくれ……世界が壊れる前に……」


ハッシュはリーダーの一刻も早い勝利を祈って手を合わせるのだった……。


神に愛された(物理)天才

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