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傾世の暗殺者異世界に物申す  作者: 伊賀良太郎
第1章〜魔王暗殺〜
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34 メルト外伝 紅の墓標15 やったぁームシキ○グが来てくれたぁー

魔人国とヴァインズの国境ノルドスの林。

多くの魔物がこの林の中でひしめき合い独自の生態系を保っており、滅多なことでは外に出てこないことから人々に「魔物の壁」と呼ばれている。

ヴァインズの人々はこの林があることで魔人国側からの攻撃はないと高をくくっており、事実、魔人国建国以来この林からの侵入はない。

その為、こんな近くに王都を建てることが良しとされて来たのだが……。

その林のせいで王都が滅びるかも知れないとは何という皮肉だろう。


そんなノルドス林に先に到着したのは先に移動し始めていた親衛隊。

彼らは作戦通りに現着すると即座に作戦行動に移った。


「ギギャ、ゲギャ」


意味の分からない鳴き声を発する生き物。

俗に言う「ゴブリン」である。

目の前の醜悪な顔を持つ緑の小鬼は通常のゴブリンとは異なる特性を持つ。

見た目的には大差は無いが、通常のゴブリンがレベル十前後なのに対して目の前のゴブリンは48と異様に高い。

ゴブリンギングが40前後という事実からその異様さが分かるだろう。

このゴブリンは王の血統をある目的に特化させたある意味人工ゴブリンとも言える種なのだ。

その特性と言うのは……。


「この通り伏して願います。我等に兵をお貸し頂けないでしょうか……」


ヨキがゴブリンに向かって頭を下げる。

当然ヨキはこのゴブリンよりもレベルが高く、通常頭を下げるなどあり得ない。


すると頭を下げられたゴブリンが声を発する。

鳴き声ではなく声だ。

まるで別の人物が喋っているかのような流暢な声だ。


『とりあえず話を聞こう。この者に付いて来たまえ』


そう、このゴブリンに戯れで付けられた名はゴブリンメッセンジャー。ただ、通信機器として発達したゴブリンである。


「ありがとうございます」


ゴブリンは道なき道を進み蛇行を繰り返したり、一度来た道を戻ったりと無駄な動きをしながら進む。

数分もしない内に皆が付いていく中、中々進まない道に皆がイラつき始めた。


「変な奴だなァ。めんどくせぇよ、何とかしてくれ」


ダルクが早々に痺れを切らしヨキに直訴する。


「無理ですね。辺りには結界が張られています。これ程強力なのは珍しいですね。それを避けながら進むとこうなります」


ヨキは結界に感嘆しながらダルクに返事を返す。


「ふーん」


しかし、ダルクは興味無さげだ。

彼の興味は早く終わらせたいという事であって結界などに興味はない。

そしてついでとばかりにツェーレが補足する。


「魔王様だよ。張ったのはね」


ツェーレが一代目であることを説明するとヨキの目に尊敬の念が浮かぶ。

彼も結界魔法をかじっているだけあり、張られている結界の非常識さが分かるのだ。


通常、結界は初期でさえなければ使用者の色が出る。

青や黄、様々な色があるが、初心者は例外無く黒でヨキもこれに当たる。

ヨキは技術ではなく悪魔の無尽蔵とも言える膨大な魔力をぶち込んで通常以上の強度を得ているだけに過ぎない。

正確さには欠けるが大抵、結界の色の明度で使用者の練度を知ることが出来る。

明度が高いほど熟練者で、明度が低いほど未熟者だ。

それに照らせば、無色透明など最高の更に上に座する。

最高級というに相応しいだろう。


「成る程それは多才ですね。一度お会いしてみたかった。

蛇行を繰り返すのはそれと結界だけではなく私達に帰り道を教えないという意図も含んでいるのでしょう。

やはりいくら親衛隊とは言え、会って直ぐに信用するという訳には行かないのでしょう」


ダルクはまたふーん、と気のない返事を返してから黙々と歩き続ける。


皆で30分程歩いた頃、ようやく目的の場所が見えてきた。


「まぁまぁでけぇな」


ダルクがそれを見て呟く。

そこに会ったのは館であり、軽めの城と言って良い程の大きさがある。

決してまぁまぁの大きさではない。

まぁ、昨日彼らが建てた城に対しては小さいが。


ゴブリンは当然何の感嘆もなくすたすたと館の中に入っていく。

ヨキは一つ深い息を吐くとそれに続くようにして館に吸い込まれていった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「つまり君達は陛下の許可を得ている訳ではない……と?」


少し小さめの玉座に座っているのは大きな昆虫、もっと言えば二メートル近いカブトムシに似た生物。

骨格は間違いなく亜人に分類される物であるが、黒光りした鎧のようにも見える外骨格を纏い、背中の羽は外羽根も中羽根も縮小されており、飾りのようになっている。 本来は腹が見えるだけの腹部にも外骨格を纏っており、伸縮性が高いのか苦しさも無さそうだ。

少し黒光りした光沢が厳粛さを損なっているが、それを補って余りある威厳が滲み出ている。


「はい、全ては私達盗賊が勝手にやったこと。陛下に責任の所在は御座いません。もっと言えば伝えてすらおりません。きっとお止めになられますから」


ヨキが決意を込めて放った言葉に大きなカブトムシはふぅー、と深い溜め息を吐く。


「成る程、人間と同じ穴を暮らそうと言う訳か……」


「はい、人間共に文句は言わせません」


「フフフ……頓知が効いている。しかしだ。陛下が許すとでも?」

静かな笑い声を上げたカブトムシは急に殺気を飛ばしながらヨキを見据える。


「問題有りません。全ては陛下の御為ですから」


カブトムシは玉座を指で叩きながら嬉しげに成る程を幾度も繰り返す。


「成る程、成る程。

……良いだろう、兵を貸す。それを持て」


カブトムシは後ろに控える蟻の従僕にアイテムを持って来させる。

ヨキはそれを手に取るとお礼を言う。

ヨキは詳細は分からなかったが、恐らく自らの願いに沿う物だろうと思ったからだ。


「ありがとう御座いますゼロ様」


ゼロと呼ばれたカブトムシは二つのアイテムを手に持つと説明を始めた。


「これにはそれぞれ我がサモンの魔法が一年分入っている。これを与えよう」


一年分、二つ合わせて二年分とは破格である。

それは内訳の凄さを見ればよく分かる。

ゴブリン3000、ゴブリンリーダー300、ゴブリンウィザード60、ゴブリンジェネラル30、ゴブリンキング3。

スケルトンソルジャー1000、スケルトンアーチャー300、スケルトンスピアマン300、スケルトンシールドソルジャー300。

占めて5293体の大軍勢である。


「ありがとう御座います!」


ヨキはそのとんでもない内容に慌てて平伏する。


「なに、魔王様からお受けした恩を陛下にお返ししているだけのこと。

この程度の労苦などあの日何も出来なかった無力に比べるべくもない。

好きに使え。

ただし条件がある……」


当然だ。これだけの物なら条件はついても得られるのならなお破格だ。

ヨキとしては何としても手に入れたい。

ただしそれが呑める物なのか……ひりつく喉を湿らし、ゼロの次の言葉を待つ。


「生きて戻れ、責任は全て私が持つ。どうなっても構わん。

……君がどうにも死ぬ気に見えてな。戻った暁には一緒に陛下に謝罪してやる。必ず戻れよ」


イタズラっぽくウィンクするゼロに一気に気が抜け、脱力するヨキ。


「そうだ、力を抜け、柔軟でなければ見えん物もある……」


少しさびしめに微笑むと手を振ってそれを追い払うように笑顔に戻る。


「しかし……本当に宜しいのですか?その……二年もかけた物を……」


返す訳には行かないのだが、そう聞かずにはいられない程の厚待遇だった。


「構わん。それは元々陛下の為に作った物、君は陛下の為にそれを使うのだろう?」


ヨキは頷くことで決意を示す。


「ならば過程は似通らずとも目的は同じだ。むしろ頭の固い老人よりも若人が使った方が良く使えるという物だ」


自嘲的に吐かれた言葉に、ヨキとしては肯定する訳にもいかず生返事を返す。


「はぁ……」


「それに渡さんとて同じ結果になった。認められなくば、この林の配下共を残らず連れていく積もりだったのであろう?」


また先程と同じ様にイタズラっぽく笑うと答えを顎をしゃくって催促する。


「いえ!そんなことは!!」


手を振って否定すればゼロは笑みを深めて静かに笑う。


「フフフ……。隠すな、隠すな。顔を見れば分かる物だ。未だ未だ青いな。香炉をを持ってそう言っても自らを貶めるだけだ。ご自重なされよ」


ヨキは思わず背中に手を伸ばそうとするもカマであることを自らに言い聞かせ、何とか踏みとどまる。


「ほぅ、若いのに良くできている……。やはり魔王軍には君のような者が必要なのだ。約を違えるなよ」


ゼロはトントンと肘掛けをリズム良く叩きながら楽し気に言う。

しかし、ヨキの顔は険しい。それは今の待遇を思ってだ。


「しかし、私は悪魔族です。純血どころか雑じりですら在りません……」


軍人がほぼ魔人で統一されている魔王軍でヨキの扱いは厳しい物がある。

現在は四天王と同じ程度の権力を持っているため感じないが、昔はそうとう酷かったのだ。

ヨキを仲間と認めず、一切働かせようとはしなかった。

その中で純血でも雑じりでもないお前がとは、聞き厭きた言葉だ。

ヨキがそう言うとゼロは豆鉄砲を食らった鳩のような顔になり、後、声を上げて笑い始めた。


「ハハハハハ!」


何がゼロの琴線に触れたのか分からずヨキがオロオロするとゼロは立ち上がろうとする従僕を手で遮り、自らの目に浮かんだ涙を拭う。


「はぁ〜、笑わせるな。」


そのまま、玉座の背もたれにもたれ掛かると笑いを堪えつつ話す。


「別に君を貶していた訳ではなかろうよ。クク……彼らは過保護なのだよ。魔王様に似たのか……。クク……魔人からすれば、庇護下にあるものが自らの種族を助けるなど考えられないのだ……。アハハ。此方の都合は一切無視でな。

お陰で戦いにも補給でしか参加できん。

全く……私が前線に出れば人間など皆殺しに出来ると言うのに……おおっと、これは魔王様の御遺言に反するな。

とにかく、月の方には幾人かそういう思想の者がいるかも知れんがそれすらも少数だろうな」


「はぁ」


「何、心配することはない。人間で思い出したが、もしそうであればあの男は今頃もっと酷いことになっているだろうな」


最後にそう言うと謁見は終わりとばかりに手を振る。

それに従いヨキは下がった。

あの男……もし魔王様の御遺言がなければ皆が殺していただろう者に幽かな怒りを覚えながら。

こうしてヨキは兵力を手に入れることが出来たのだった……。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「しかし、良くそんなに貸してくれたなァ。交渉のお蔭か?」


ダルクが軽い調子で聞く。

帰りは行きと違い幾分曲がりが少ないのと、帰れるという精神的余裕の為かダルクのイラつきは少なく、不満も少ない。


「いや、終始掌の上でした。

武星蟲王と呼ばれている位なので自分が行くと言われるのかと思っていましたが、いらない心配でしたね」


ヨキの失礼な物言いにエドガルが顔を引きつらせてヨキに抗議する。


「いや、星の名を冠する者の中で最強との誉れ高い人ではあるが、知者でもある。

さもなくば人族との国境を任せられまい。通常恨みで手を出してしまうであろう。

事実、森の全ての魔物が配下なのだ。攻勢に出れば国程度の纏まりなど吹き飛ばして余りある」


もし、この事実を人間側が知れば卒倒してしまうだろう。

人間側は先に述べたように魔物のいる林を完全に防御ラインとして作戦に組み込んでいる。

敵も魔物の群れの中を突っ込んでは来ないだろう事を前提としているのだ。

それが間違い、しかも林の魔物ごと全て向こうの戦力だとすれば作戦を根本から練り直さなければならない。


「なんにせよ兵は得られた。戦うんだろう?奴等と」


クロスバが口元に獰猛な笑みを浮かべて剣をいじくっている。

先日まではメルト達になど毛ほどの興味も無かった者が一日で意見を翻した。

それは調査の結果ゆえだ。


「ええ、彼らが戦意を失って居なければ、そうですね」


特に興味もないヨキは生返事を返すと手の中にあるアイテムの余韻に浸る。


そしてそろそろ結界を脱するといった頃。

噂をすれば……という奴なのか、ノルドス林に彼らの声が響く。


「見付けたぜ。パーティ(戦争)をやらかすにゃ、人不足だろ?手伝ってやるよ。まぁ、全力で妨害させて貰うけどな」


何を隠そうメルト達である。

待ち伏せをしていた彼らは結界を脱しようとしていたヨキを発見したのだった。


「お断りしましょう。人手はたった今足りました。敵襲!散開してアイテムを城に持ち帰るまで時間を稼げ!」


アイテムをトルダに渡し、終了すれば知らせるように一方向型合図機も一緒に渡す。


「わりぃな。強制なんだ。嫌とは言わせないぜ!!」


メルトが腕に禍を纏い、腕を絞る。

ヨキはチッ、と舌打ちしながら叫ぶ。


「散!」


一斉に飛び退き、そこにメルトの攻撃が降り注ぐ。


「≪重禍撃≫!!」


ドゴォォオン!!


凄まじい轟音と共に、木々が吹き飛び、岩盤が捲れ上がる。

そうして其々個人に別れ、個人戦へともつれ込む。

大荒れの二回戦。

開始。

これ以下は愚痴が多分に含まれます。

苦手な方は読まないようお願い申し上げます。




おかしいなぁ。

王蟲さん構成上全く登場しなかった筈なのに。

ただ香炉使って兵力を揃えるだけの筈だったのに。

どうしてこうなった。

それとトルダがメルトと戦う筈だったのに。

どうしよう。

マジでどうしよう。

間に合うかな。

次回ヨキvsメルトが無かったら、ああ、間に合わなかったんだなと思って下さい。

後そろそろ外伝が本編越えちゃう。

4話の筈だったのに。

4話の筈だったのに!

主人公が乗っ取られる!

元からイテナさん悪役兼任だからある程度は仕方ない筈だったけどこれはない。

何が悪かったんだ。

見通しか?

見通しなのか?

だいたいメルト書いててムカつくんだよなぁ。

精力的に働くバカほど周囲に迷惑なんだって誰かが言ってたの本当にその通り。

トルダとかニティだってメルトが関わんなきゃ幸せに暮らせたのに。

それを良くこんな大事に出来るな。

現在の話に既に出てて整合性が取れなくなるから我慢してたけど!

それが無きゃ何度殺そうと思ったことか!

ストレスでバナーの方が進んじゃう。

あー、こんな調子じゃ最終回までかなり掛かるなぁ。

今、どうにも立ち行かない会社を経営する社長の気分を味わっています……。

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