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傾世の暗殺者異世界に物申す  作者: 伊賀良太郎
第1章〜魔王暗殺〜
32/107

32 メルト外伝 紅の墓標13 ハッシュ女装する2

ギルド会館の外、道路の真ん中で二人が対峙している。

土の所々出ているせいで風に砂が巻き上げ、西部のガンマンのような雰囲気に包まれている。

対峙しているのバレイン、ガルシアの二人であり、【夕碧】においてよく見られる光景だ。


「殺す!」


ガルシアが宣言と共に体に炎を纏い、それをバレインに向かって射出する。

バレインはそれを避け、懐に入り込み、剣を叩き込む。


ガキン!


しかし、ガルシアの球形のバリアに阻まれ痛打を与える事が出来ない。

再び睨み合う二人。


二人の関係は語ると色々面倒臭いので省くが、簡単に言うと同じチームにいながらにして殺し合う関係だ。

水と油よりも酷い関係である。

そんな二人が同じチームに所属しているのは一重にメルトが居るからに他ならない。

彼らを殺し合わせない為の楔はただ単にメルトを悲しませない程度の物でしかない。

普段は二人とも抑えているものの、こうして時々小爆発が起こるのだ。


「おい!下らねぇ事やってんじゃねぇ!作戦会議だこっち来い!!」


メルトがギルド会館の中から口を挟む。

その言葉を起点に二人の殺気が嘘のように霧散する。


「主の命だ。仕方ないな」


「チッ!」


パチン、というバレインの剣を納める音と共に二人がもう一度会館に入る。


中には幾つかのテーブルを無理矢理くっ付けて作った即席の作戦会議室が鎮座している。

その中で既に偵察に行っているイグマとニティを慰めに行ったリタを除いた二人が座っており、メルトが背もたれにどかりと体を預ける態度が悪い座り方をしていた。


「おら、早く着け」


テーブルに足までかける育ちの悪さに彼の父親を呪わずには居られない。


「んじゃ、戦略会議開始」


メルトが告げるが諦めの悪いハッシュは疑問を呈する。


「本当に戦うの?止めない?ギルド長も言ってたしさ」


修行が嫌で10年近く母親から逃げ回っていた筋金入りのヘタレはどうしても戦いたく無いようだ。

冒険者としては兎も角、人としては真っ当な考え方である。


「俺達の名前は何だ?【夕碧】だ!」


メルトは凄まじい位に名前に拘る。

それは子供の頃、冒険者の名に似合わない人を沢山見たからであったし、夕碧の名を決めたのはメルトだったりするからだ。


「例え大海が夕(赤)に染まろうとも俺達だけは血に染まらず、決して折れず、蒼く居続けようと誓っただろう」


メルトの覚悟の決まった目にハッシュはたじたじになる。


「そりゃ……そうだけど。でも、こっちにも都合って物が……それにあんな格好したくねぇし……」


ハッシュが諦め悪く食い下がろうとするがメルトは聞く耳を持たない。いや、持ってはいる。ただし、それに一切斟酌しないだけだ。


「うるせぇ。やるぞ」


メルトは超強引な理もクソもない恫喝スタイルでハッシュに迫る。


「えー……」


渋るハッシュ。

まぁ、それも当然である。

元々ハッシュの夢は定食屋の父の跡を継ぐ事、敵と戦って死にそうな目にあっても得する事など一つもないのだ。

そして戦闘服の不安もある。


「よし、リンダさんに言い付けてやろ」


ボソッと言うメルト。

それを聞いてハッシュは「やれやれ」と肩をすくめる。

今時、俺の母親に言い付けるってガキかよ、付き合ってらんねぇな、そう思いながらハッシュは思い直す。

どうせメルトはこっちの言う事をろくに聞きやしないだろうと。

しょうがないからここが引き際だ。

ここで認めれば皆が丸く納まる。

そうしてハッシュは嫌々、渋々、めちゃくちゃ嫌そうに、しょうがないから認めてやった。


「やらせていただきまーす!!」


見事な敬礼付きで綺麗に態度を翻したハッシュ。


「それで良し」


それに満足したのかメルトは腕を組んで大きく頷く。


「不肖、ハッシュ!やります!やりますから絶対に言わないでね!!ね!?

殺されるから!!殺されちゃうから!!物理的に!!」


その一言はハッシュにとってこうかはばつぐん過ぎたのか、ハッシュのトラウマを強く刺激し、精神崩壊の一歩手前まで行った。

メルトは泣きながら足元にすがり付くハッシュにやり過ぎたか……、と少し後悔する。

そもそもメルトだってリンダは恐怖の対象だ。

いつも何を考えているか分からない人形のような能面で無口。

そんなリンダが無言で武器持って迫って来たら恐らくメルトとて泣いて謝るより他はない。

そんな事ならまだあれだけ色々酷いメルトの父親の方が百倍マシである。

流石元A+級、S級に成りかけただけの事はある。

まぁ、そんな大人物が何故ただの定食屋のおじさんと結ばれたのかはやや疑問が残るが……。

が、それは野暮になるから止めておこう。

砂糖を吐く気にはならない。


「言わねぇ、言わねぇから。墓場まで持ってくから」


ほんの少しだけハッシュに同情したメルトは優しくハッシュの肩を叩く。


「本当だな!?今言ったからな!?言質取ったからな!?嘘だったら魔人よりも先に殺すからな!?」


ハッシュは子供特有の追い詰められて放つ大口を言っているように見えるが、実はそうではない。

何故ならハッシュの対メルトの戦績は3戦2勝であり、ハッシュの方が強いからだ。

それはメルトにオメガの力を足しても同様である。

つまり決して実現不可能な強がりではなく、確かな効力を持った脅しだ。

……脅しというには少々迫力に欠けるが、元々強そうに見えないハッシュには今更である。


「ああ、約束する」


メルトが約束するとハッシュは安心したのか席に戻る。

と言うのもメルトは色々残念な奴だが、約束を破る事はない。

昔から変な所で律儀な奴だ。

紆余曲折あれど皆席に着いた所で皆で意見を交換しあう。


「いや、勝つのムリじゃね?」


ハッシュが唐突にそう言う。

しかしその意見は最も現実的に現状を直視した結果だ。

団体戦で4対0という圧倒的な力の差。

実際何時やられても可笑しくはなかった。

大体からして魔人族だけならまだしも敵には悪魔族までいる。

あのヨキという男がそうだ。

元々魔人族と悪魔族はよく人間達から一緒くたにされがちだが、実際の所は能力や性質上全くの別物である。

魔人族は数が400万と少ないものの、人間に対し全ての能力が勝り、更に300年近い寿命から最西端に大陸最大の国家を掲げ、その国の面積は人間種の国を全て併せた面積と同じ位だ。

それに対して悪魔族は全部で20万程しか居らず、国も大陸北に魔人国と人間の国に挟まれるようにして小さく鎮座していた。

国に所属するのは14万程、半数以上が所属している事に国の指導者の資質がうかがわれる。

小さく鎮座、というのは別に両種に追い詰められていた訳ではない。

逆だ。あまりに強すぎてどちらも攻められなかったのだ。

その理由は彼らの性質故。

彼らはおおよそ生物とは良い辛い。

何故なら彼らは種の増殖に対して生殖を必要としない。

増え方としてはある日今まで長い時間を掛けて培われていった物が昇華され、産まれるのだ。

増え方としてはゴーストに近い。

彼らは水も食物も睡眠も必要ない。

活動に必要なのは魔力だが、それは空気中から充分摂取出来る。

更に産まれた瞬間から成熟している。

それはつまり、国に所属している14万人全員が戦闘員という事に他ならない。

そしてその力も絶大。

魔人さえ容易く殺してしまえるのだから。

ただでさえ素の能力が全て魔人を上回るというのにそこに更に変身という手段がある。

反則も良いところだ。

故に彼らはその圧倒的な武力を背景に平和を享受していた。


そう、その皇国を魔人国が呑み込むまでは。


「強ぇのは悪魔族だけじゃねぇよ。その証拠に俺達がやられたのは魔人だ」


そう苦虫を噛み潰したみたいな顔でガルシアは告げる。

普通の魔人ならば彼らに取って敵ではない。

つまり親衛隊と名乗った彼らは普通の魔人とは戦闘力が桁外れだと言うことだ。


「俺が相手取った奴は肉体能力は普通か、普通より少し上くらいだったが、魔法がさっぱり効かなかった。どうなってんだありゃ?」


魔法使いであるガルシアに取って致命的なまでに相性が悪い相手。

何せ攻撃手段が全て封じられるのだ。

戦いどころの話ではない。


「俺が相手取ったのは剣術使い。我流だったが、洗練されてた。それも騎士を倒す為の物だな。あれは相当数が切られてる」


これまたパルトネ公国宮廷剣術を使うバレインに対して相性が最悪の相手である。

何せバレインの持つ流派は騎士に流布する最大流派。

最初から研究され尽くしているだろう。

対してバレインは初見である。

不利にも程がある。


「じゃあ、交代したら良いじゃん」


嫌々やる気を出したハッシュの超建設的な意見に返ってくる物。


「「あ?」」


それは睨み。

彼らに取って現実は二の次、三の次である。

彼らが今ここで大切なのはプライドだ。


「ふざけんな。誰がこんな奴に尻拭いして貰わなきゃなんねぇんだよ?コロスぞ。俺の獲物だ」


即座に殺視線を向けながら釘を指すガルシアをバレインは鼻で笑う。


「ふん、荷が重いなら早めに言え。お貴族様には無理じゃないのか。俺が二人分相手取ってやろう」


バレインが親切心の欠片もない余計なお世話を言えば、当然の如くガルシアは頭に来る。


「んだとコラ。テメェこそ休んでろよ。んな女みてぇな細腕じゃあその剣を持ち上げるのも辛いだろうよ」


剣士にあるまじき線の細さを嘲るガルシアにバレインの額に青筋が浮かぶ。

元々気にしている事を言われたのだから当然だ。


「ほぅ?お貴族様は目が節穴と見える。自らの体力不足を棚に上げ、人を笑うとは、相当目が悪いんだな。悪かった。

しかし、よくそんな物で社交界を渡っていこうと思ったな。その厚顔無恥さに感服だ。白狼が聞いて呆れる」


愛想0の受け答えで更に煽るバレイン。


「その喧嘩乗った。今すぐ息の根を止めてやる」


「なら、もう一度表だ。綺麗な四肢に別れを告げて置け、直ぐに死別する事になる」


もう一度席を立とうてする二人にメルトが呆れた声で会議の解散を告げる。


「止めろ、止めろ下らねぇ。解散、解散。これ以上一緒の空間にいたら際限なく殺し合いに発展しそうだ」

こうして何の解決策もなく、終ろうとしていた。

しかし、それをハッシュが止める。


「まぁ、待て。ソイツはイグマの話を聞いてからだろ?オイ!イグマ!!何時まで隠れてる!!」


ハッシュが大声を出すとどこからともなく声が聞こえる。


『ちぇ、何時から気付いてた?』


突然木の床から影が盛り上がったかと思うとそれが段々人の形を取り始め、やがてイグマを形造る。


「最初からだ。テメェが真面目に仕事なんてするか!」


仕事は出来るだけサボる。

それがイグマである。

元々敵の情勢は調べてあり、それを伝達するのを出来るだけ先伸ばしにしたかったのだろう。

自分がサボる為に。

とんでもない怠け者である。

ハッシュが筋金入りのヘタレなら、イグマはさしずめ真正の怠け者と言った所か。


「じゃあ、いっか。何が知りたい?」


イグマは面倒臭そうに聞くとテーブルに寄り掛かる。


「現状はどうなってる?」


ストレートに聞くハッシュにイグマは意味を掴み損ねたのか聞き返す。


「それは向こうの城塞の話?コッチの王都の話?」


「両方だ」


「ふーん、じゃあ結論から言うよ。長い話は得意じゃ無いしね」


得意じゃないと言うよりただ面倒臭いだけだが。


「王都はこのままじゃ三日以内に滅ぶね」


軽く告げられたその衝撃的な内容に一瞬、この場に静寂が訪れた……。


100ポイント達成!!

やったー\(^o^)/


ついでに夕碧のチーム内序列(強さ)

一位オメガ(フルパワー)

二位バレイン=ガルシア=イグマ

三位リタ

四位ハッシュ

五位メルト

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