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傾世の暗殺者異世界に物申す  作者: 伊賀良太郎
第1章〜魔王暗殺〜
3/107

03遅めのプロローグこの世界でただ一つ願い事が叶うなら( 上)

勇者目線です

――優人 守護の勇者視点――


その日は夢を見た。

遠い遠い昔に感じる昨日の夢だった。


――――――――――――

「咲良!!てめぇにバカなんて言われてたまるか!!誰がバカだ!!」

「ふん、バカにバカって言ってなにが悪いのよ。」

また始まった。なにも俺の隣でやらなくたっていいのに……。

「大体からしてバカなんて言った覚えはないわよ。良くそんな事出来るわねって言っただけでしょ?」

「いーや、お前はそんなバカな真似よくできるなって言った。窓枠懸垂をバカにすんな!!」


こいつアホだ……。


「へいへい。アンタの崇高な行動理念を解らずわるぅ御座いました。」

「ああ!元々咲良の低脳振りは考慮ずみだ。」

「アンタねぇ〜。ふん、皮肉を皮肉と解らないなんて頭の中筋肉しか入ってないんじゃないの?」


毎回毎回なんで俺の隣でやるんだか……。もうちょい静かにしてほしいな。周りの目が痛いんだけど……。ちょっ違います。俺の仲間じゃないです。


「ハン!俺より学力30も下のクセに良くいうぜ!!」

「ぐっ、前から10番上がったんだけど?」

「えっ?俺13番上がったけど?」


言ってやるなよ……正也。


「アンタ……覆水盆に帰らずって知ってる?」

「えぇーわっかんないよ〜教えて〜121番。あっ111番だっけ?」


やりすぎだ…正也。

しょうがない仲間に見られるのは嫌だったんだが……。


「今日がアンタの命日っていみぃよぉぉおお〜〜!!」

「ハン!逆上がりも出来ねぇような細腕でなにができるもんか!」


おい言い過ぎだ。なにが逆上がりもできないだ。まさかそんなことあり得ないだろ。小学生の時散々やらされただろ。


「何を言ってんの?逆上がりなんて運と補助があれば楽勝よ!」


……。正也、集合。


(正也お前言い過ぎだぞ次の日学校来なかったらどうすんだ。)

(いやいやいや俺もしらなかったんだって!物のたとえで出したら偶然…。)

(バカやろう。さっさと謝ってこい!俺も一緒に謝ってやるから!)

(お、おう。わりぃ、助かる。)


ま、俺も知らず知らず心の中でディスってたしな、そのお詫びも兼ねて……。

「ちょっとそこ!何コソコソやってんのよ!」

「あの、その、何だ。悪かったな……。逆上がりも出来ないってバラしちまってよ……。」

「俺も悪かったよ…。少し逆上がりも出来ないのか……。って思っちゃって……。」

「………………。アンタら私をおちょくってんのかぁぁあああ!」

「いや、そんなつもりじゃなくてただ……。うん、だっ大丈夫だよ。出来ない人もたくさんいるよ!」


「いっそ私を殺せぇぇぇえ!」


「まぁまぁ落ち着いて。」

なんとか咲良をなだめすかして帰り支度をする。三人とも家が近いため良く一緒に帰るのだ。

ホントに死ぬかと思った。毎度毎度ホント勘弁してほしいな。切実に。


「帰りどこ寄ってく?ゲーセン行こうぜ!」


……行かないよ?真っ直ぐ帰るに決まってんだろ。何をそんな行くこと前提みたいに言ってんの?


「なに言ってんのよ。ゲーセンなんて優人が行くわけないでしょうが。」


そうだそうだ言ってやれ。まったく。学生の本分をなんと心得ているやら…。

「行くならカラオケに決まってんでしょうが!なに考えてんの?アンタバカでしょ。」


バカはお前だ。行かねぇつってんだろうが。


「あぁ?ゲーセンをバカにすんなよ?カラオケだかカンオケだか知らねぇが、さして上手くもねぇうた人に聞かせて自己陶酔に浸ってんじゃねぇよ!」


「ゲーセンだっておんなじようなモンでしょうが。只の暇人が現実逃避にハマってるだけでしょ?そんなバカみたいな事やってる奴の気が知れないわ。」


またか……。ホントに仲が良いな。こんなときどうやっておさめるか知ってるか?答えは……

「上等だ!ゲームの素晴らしさおしえこんだらぁぁああ!」

「望むところよ!返り討ちにしてあげるわ!」


「まぁまぁ夫婦喧嘩は犬も食わないって言うし……。」


「「誰が夫婦だ(よ)!!」」


ね?


「じぁあさ、俺駅前の本や行くから三人別々の行動ってことで……。」


当然嘘だ。別れた後すぐに家に直行。悪いが逃げさせてもらう。帰宅部を舐めるな。


「「優人のバカ!!」」


うお、顔近ぇ。


「バカ言わないでよ優人!ゲーセンなら良いかも知れないけどカラオケよ!?一人カラオケはこの近くにないの!周り皆がはしゃぐ中ひろいボックスの中で一人寂しく歌えって言うの!?店員にうわっ友達いねぇのかよこいつって顔で見られて!?」

「バカ言うなよ優人!カラオケなら良いかも知んねぇけどゲーセンだぞ!?周りではしゃぐやつらにうわっガチ勢じゃんって話のネタにされること請け合いだ!その惨めさ知らんのか!?」

「分かった。分かったからじゃあ皆で行こう皆で。な?」


…しかし回り込まれてしまった。仕方なく皆でカラオケに行くことにする。正也がさっきの逆上がり事件から譲った形だ。俺たちは日常を謳歌していた。


しかしその日常は唐突に終わりを告げる。


カラオケに向かって歩き出そうとした俺たちの向こうから男が駆けてくる凄く必死そうだ。

「おらこのクソ共がどけぇ!」


……何だ?人を突飛ばしながら全速力でこちらに向かってくる男その手には……。


「おい、こいつ拳銃持ってるぞ!」


突き飛ばされた中年男性が驚愕を込めて怒鳴る。

回転式の拳銃。リボルバーという奴か?だとしたら普通は六発入りのはずだ。おかしい。そうおかしい。日本は所持が即法律違反になる国だ。入手困難なはずだ。なぜこんな身近にあるのだろうか。暴力団なのか?いや見れば若い。俺がボスならこんな奴には持たせない。

全力で男に道を譲ろうとするが男がこっちにくる方が速い。


「どけぇ!ガキ共!」


ダァァン!


「ぐわぁぁああ!」


いたい、いたい、いたい、いたい、いたい、肩が焼けそうだ!油断すると意識が全部痛みを表現するためにさかれそうだ!こんなものを後五発も撃てるのか!?冗談だろ!?

「優人!優人!だいじょぶか!?」

二人が肩を揺らしながら名前をよぶ。揺らすなよ!いてぇだろ!


これもおかしい。撃つのに躊躇がない!普通いきなり撃つか?どっかに青狸のポケットでも持ってるなら知らんが、拳銃は男が持てる物ではほぼ最終兵器とも思えるものだ。しかも六発しかない!そんなものをホイホイ撃つか?

しかもアイツまだ前に立ってやがる!アイツはどけと言ったはずだ。そんな奴がなぜどっか行かない!逃げる途中にしろどっか行くにしろここにいてはデメリットしかないはずだ。おかしいこれじゃまるでここが目的地みたいじゃないか!

クソ!何がしたいか知らんがこんなもの二人に向けさせてたまるか!

痛みを振り切り転げ回っていたところから立ち上がり唸り声をあげながら男に突っ込んでいく!

せめて無駄打ちさせてやる!

「うぉぉぉおおお!」


「くっくるな!」


ダァァン!ダァァン!


「ああぁぁああ!」

次は右肺と左脇腹だ!こいつさっきは気がつかなかったが凄い命中精度だ。

ほとんど準備がないままで当てられるなんて!一回ならまぐれで片付けられるがそれを三回だと!?至近距離とはいえ素人じゃ多分ムリだ!

こいつまさかいたぶってんのか?目的はなんだ!?


「優人!だいじょぶか!?」

大丈夫なわけないだろ!正也!右肺撃ち抜かれたからな……。呼吸音すら怪しい。

生きられるのは後数十分ってところか?

「コヒュー……コヒュー……。」

後三発!いたぶる気があるってことはまだ殺さないはずだ!

「うぉぉぉおおおあああああ!」

駄目だ起き上がろうとすると脇腹が軋む!まるで俺の体じゃなくなっちまったみたいだ!今までさんざん振り回してきやがってちぃったぁ言うこと聞きやがぁれっ!

立つ!それだけだろうが!


立ち上がると気持ちわるいので口にせり上がってきた血ともつばともいえない物を吐き出す。ねちゃりとどこか粘性をもったそれは俺にどこか親しみすらよび起こさせた。血が足りないせいで視界がゆがむ。いまなら地球が四角いって言われても信じそうだ……。


少しでも集中力を切らせば一瞬で崩れ落ちる。どこかの諜報員なら知らないが一般人に過ぎない俺にはこれが限界……。


「ぐっ……コヒュー。」 一歩一歩男に近づいていく……。いや引きずられていくという方が適当である。心の中では突っ込んでいっているはずなのだが、理想には遠く及ばない。


「化け物かよ!くっくらえ!」


ダァァン!


「ぎぃぃあああ!」

顔に被弾正確には右目下辺り。

カスったのではなく貫通顔が右向いてたおかげで顔と耳の損害のみ。

あわてて顔押さえたのはしっぱいだったな。ハデに血がでるおかげでめぇひらけねぇ。

耳元でいやみみんなかか?ひびく音のせいで倒れちまった……。

もう立ち上がれそうもないな……。あと2発でこいつは無力になる……。

だがその前に俺は死……。


「もうやめて!!優人を撃たないで!」


なっ咲良!なんで前にいるんだ!!さっさと逃げろよ!銃もってんだぞアイツ!

「くっ……!……うぉあ!ぐはぁ……」


駄目だ……声が!

ちくしょう!うらむぞ神さま!

男が口の端をつり上げる。そのまま撃つつもりだろう。うでを下ろしてはいない。

よくみれば咲良ふるえて……。

なんでだよ!なんで!?にげないんだ!

男はめぇいっぱいうでをのばしその先の立ちふさがる咲良に向けてそのゆびを引き絞ろうと……。


ガツゥン!


倒れたのは二人だ……。咲良と男。

どうやら正也が男を後ろから石で殴ったらしい。

「大丈夫か!?優人!」


正也が俺をだきおこす。いたいんだよ。肩からてぇはなせ。

「ぐっ……さ……らは?」

どうやら伝わったようで咲良の状態を確かめにいった。確認しながら正也は……。

「大丈夫だ!多分気絶してるだけだと思う。」

戻ってきた正也がそう教えてくれた。多分さっきの音で緊張の糸がきれてしまったんだろう。それか自分がうたれたと思ったか……。

よかった……。

「もう救急車も来るしお前もすぐたすかる!死ぬな!」

「むり…だ…ぐはぁ!…しゅっけ…つでし……ぬか……コヒュー……こきゅうでき……なくて……しぬ。」

もう血が流れすぎてる……。

出血多量で死ぬのがはやいか、呼吸困難酸素不足で死ぬのがはやいかってとこだ。しかも発砲音は俺たちが来るまでしなかったから先に呼ばれてるのは警察のはず。死は避けられない。

もうなに考えてるか自分でもよくわかってないんだよ……。

「なんでそんなこというんだ!優人!お前だってまだやりたいことあるだろ!生きろ!生きろよ!」


咲良はピクリとも動かない顔はみえないがうたれてないんだからだいじょぶなんだろう。

そうだな……一度くらい告白とかしてみたかったけど……。


「いい……まん……ぞく…だ。」



ダァァン!


ふはつ。だがしかしすべての注目は男に向かう……。

生きてたのか……。石で死んでおけばいいものを! 頭から血を流しながら男は憤怒の表情を浮かべている。

脳震とうでも起こしとけよ!くそっ!まだ一発残ってる!


「ちくしょうこのガキが!殺す!ぜってぇ殺す!」

こっちに向ける男の顔にはあきらめて逃げるという選択肢はなさそうだ。

こちらに向ける銃はなんの感情もなくただ黒光りしているだけだ。


正也がじゅうから俺を守ろうと俺におおいかぶさる!

なんでだ!?なんでだよ正也!さっきも言っただろ!俺はもはや死人なんだよ!俺に守る価値なんてない!頭や心臓に当たってみろ!死体が二つに増えるだけだ!逃げろ!正也!


男にもはや下卑た考えはないただ単純にころそうとしてるだけだ。


正也!はやく!はやく逃げろ!いや、もうにげてもまにあわない!俺を盾にしろ!その方がお前が死なない!

男は最後の弾が入る銃の引き金を引こうと指に力を入れ……。


その時光を見た。いやこの表現は正確ではない。正確に言うならば光だけを見た。光にすらなった気がした。どこか冷たく真っ白になった世界の中、ある声が聞こえた……。


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