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傾世の暗殺者異世界に物申す  作者: 伊賀良太郎
第1章〜魔王暗殺〜
26/107

26 メルト外伝 紅の墓標7

遅れてすみませんm(__)m


ガキン!


バレインは体に剣を添え全身でクロスバの斬撃を受け、飛ばされるようにして間合いを取る。


辺りが互いの隙を探る無言の静寂に包まれ、遠くの方からやけに現実感の喪失した爆撃音が幽かに聞こえてくる。


そんなどこか張りつめた空気を破ったのは二人ではない。


噴水が吹き上がる。


二人の静寂の内に響くには噴水は割りと大きな声で産声を上げる。


時間通りに吹き上がるため、時に時計代わりにされる噴水を尻目に毒気を抜かれたクロスバはバレインに問いかける。


「テメェら本当に俺らに勝つ積もりでいるのか?もっと強ぇ奴呼んで来ねぇと負けちまうぞ」


クロスバ達の本来の目的を達成する為の言葉であったのだろうが本人の疑問でもあったのだろう。

その証拠に強い疑念を浮かべた顔でバレインに問いかけていた。


「ああ、勝てるだろうとも」


メルトの騎士を自称するだけあり本来かなり無口で必要時以外は朴訥とした性格のバレインとしては珍しくクロスバとの話し合いに応じる。


「そこが解らねぇ。人間っつうのは何の根拠が有って大口を叩くんだ?力量差は一目瞭然だろうに」


暗にお前らの方が圧倒的に下だと告げるクロスバに少しも動じずバレインは答える。


「メルトがお前らの敵に回ったからだ」


大真面目な顔で何の根拠にもならない事を理由として告げるバレインにクロスバは少し苛立つ。


「意味が解らねぇな」


「最後の最後にに立ってるのはメルトだって言ってるんだ」


今までの経験則か本気でそう信じきっているように見えるバレインにクロスバは呆れたような表情だ。


「俺から言わせりゃ全く同じ理由で陛下に喧嘩売るお前らの方が可哀想だよ。何を根拠にそう信じ込んでるんだか」


敵に対する同情と言うよりかはどちらかと言えば自らの状況を全く理解できず、人に勝てると思い込んだ虫に投げ掛けるような憐れみの視線を向けるクロスバにバレインは噛みつく。


「フン!人間を侮っているのはお前らの習性か何かなのか?」


人間をなめるな、と暗に告げるバレインにクロスバは虫に向けるような憐れみの視線を強める。


「人間の驕りにはある種の尊敬すら出来るな。その言葉をそっくりそのまま返したいぞ。

……別に侮ってる訳じゃない。ただ単純に客観的に判断しただけだ」


クロスバは通じないだろうなと半分諦めつつそれでも諭すようにバレインに答える。


「じゃあ此方からも同じ言葉を返そう。何を根拠にそんな事を?」


バレインがそう聞くとクロスバは少し寂しそうにバレインに告げる。


「俺達(捨て駒)に手間取ってるようじゃ終わりだって言ってんだよ。

いくら親衛隊が上部組織とは言え俺達は多少強いだけのモルモットだ。

試作品として辛うじて親衛隊にしがみついちゃいるがそれも技術が完成しちまった今じゃ危うい。特にダルクやエドガルの辺りは最もそうだ。

1年もすりゃすっかり組織も変わっちまうだろう。2年もすりゃ近衛の方まで変わるだろうな」


バレインにというよりは自分自身に言い聞かせたのかバレインは半分以上意味が解らなかった。


「どういう意味だ?」


「ああ、気にしないでくれ。近衛七宝は知ってるか?」


唐突にクロスバがそう聞いて来るがバレインとしては全く聞き覚えがない。


「やっぱりな。戦場で唯一勝てそうな情報戦すらこのざまか。陸海空全てで戦力的に負けてるってのに暢気なもんだ。

そんなんでよく喧嘩売ったな。

外交にしたってお前らの落ち度が多過ぎて勝ち目ねぇぜ?」


主力となるA級ですら魔人の事をよく知らない。

クロスバはバレイン達がA級であることは知らないものの大体の強さは測れていた。

主力が敵対する軍のことをよく知らない等弛み過ぎている。

いくら膠着状態とはいえ今回のように突発的な戦闘などいくらでも考えられる。


「やってみなきゃわからんだろう」


クロスバの人間を圧倒的に下に見た発言にバレインが反発するとクロスバは笑う。


「フッ、そうだな一万回戦ったら一回ぐらいは勝つかもな」


人間側の勝率が0、01%を下回ると告げるクロスバ。

それに対しバレインはうそぶく。


「それを覆すのがメルトだ」


かつての想い出に浸りながら真っ直ぐにクロスバを見て言うバレインにクロスバは剣を構える。


「面白い。ならそれを俺を倒して証明してみせろ!」


凄絶に笑うクロスバにバレインも答える。


「元よりその心積もりだ」


パチッパチッ。


バレインの細長い両刃剣に徐々に静電気がたまって行く。


「雷魔法か……珍しいな」


2級神の司る魔法は威力が6神の物より弱い為、使う者は少ない。

より正確に言えば6神の魔法と違ってレベルが上がりにくいのだ。

一生かけて雷魔法を使って30にしかならなかった等ざらである。

6神の魔法は同条件であれば普通のスキルと同じく60レベルくらいだ。

およそ2倍の開きがある。

まぁ、才能があれば話は別だが。


帯電したのかバレインの剣が青白くボンヤリと光始める。

この両刃でエストック程の幅しかない剣は銘を「雷切」といい雷系に特化した剣であり特注品だ。


バレインが属性を解放したのを見てクロスバもまた剣に魔法を纏わせる。


ヒュゥゥゥ。


小規模のハリケーンのような物がクロスバの剣の周りに渦を巻く。


クロスバの普通のロングソードより少し短めの剣には風に対する補助効果はなく単に肉体能力への補正がかかっている。


「≪鎌鼬≫!」


先に動いたのはクロスバだ。


剣を水平に払うと剃刀状の風魔法がそこから放たれる。

バレインは雷が乗り移ったかのような速度でサッと即座に横に転がる。


「趣味が悪いな……」


しかし完全に避けきった筈のバレインの綺麗な顔には確かに赤い筋があり、そこから血が垂れている。


「誉め言葉として受け取っておく。それにしてもまさか一発で見抜かれるとは思わなかった。少し驚いたぜ」


見えていた剃刀状の風はただの目眩ましであり避けられる事前提に放たれた物であり、本命はその下に見えないように隠した右斜めに切り上げるように放った鎌鼬である。


水平に剣を払ったのも目眩ましに注目させるようにした物であったがバレインにはギリギリで見抜かれ避けられてしまった。


「それはどうも」


赤い筋を親指でなぞり身近にあった死の気配に背筋を震わせつつバレインにしては珍しく軽口を叩く。


「≪雷撃≫!」


バレインはお返しとばかりに球状に静電気がより集まった物をクロスバに放つ。


拳大の雷の球はクロスバの顔に向かって来るがクロスバはそれを体を捻り避ける。

そして放射状に広がる静電気の光から解放されたクロスバの視界が次にその目に納めたのは目一杯まで接近していたバレインである。


「くッ!」


ガキン!


ギリギリ……。


なんとか反応し剣で受け止めたクロスバはその魔人特有の絶大な腕力によって押し戻す。


「てりゃ!」


そのままバレインごと吹き飛ばし間合いを取るとバレインが着地する瞬間を狙い剣劇を重ねていく。


キンキンキンキン!


二人の剣劇を表すなら柔と剛、清と濁だ。


圧倒的な身体能力の差を存分に利用して泥臭く勝ちを目指すクロスバに対し剣劇を受け流しながらカウンターで攻撃をかけていくバレイン。


しかしその力の差は明らかだ。


最初から身体的にかなりのハンデを背負っているバレインは徐々に追い詰められていく。


更に強者に対して油断をつくという弱者の為の戦法もクロスバに対しては役に立たない。

むしろクロスバの方が手段を選ばず貪欲に勝ちを拾いに来ている。


「俺は騎士様じゃ勝てねぇぜ!何せ騎士を殺す事で磨いた剣だ」


クロスバはモルモットとして筋力上昇の人体実験の被検体だったが、その延長として筋力上昇後の神経伝達の齟齬の有無の確認の必要性があり、それを実践的に剣術で測る事になったのだ。

そしてそれに使われたのが第二次侵攻時に捕らえられた捕虜だ。

最初は剣術を先に教わる予定だったのだが行程省略のためそのまま反射速度の実験に入った。

つまりモニタリングされながらの騎士との決闘である。

そしてその決闘にて何千もの騎士を切り刻む内に磨かれていったのがクロスバの剣である。


それは最早騎士を倒す為の剣と言っても過言ではない。


「くっ!」


騎士の中でも一般的に流布するパルトネ公国宮廷剣術を使用するバレインはその次の手を先回りするようなクロスバの攻撃をさばききれず、赤い筋を段々と増やして行く。


バレインの剣は綺麗に教科書をなぞったような剣の運びでありクロスバにとってやり易い事この上ない。


「期待外れだ。この程度じゃあな」


カウンターをかけたバレインはクロスバに避けられて完全に振り切ってしまう。


「しまっ!」


その隙を逃すようなクロスバではない。


「≪風裂≫!」


体内組織が掻き回される程の衝撃がバレインを襲う。


「ぐわぁぁあ!」


バレインは吹き飛ばされ大地をゴロゴロと転がる。

埃まみれになり、倒れてピクリとも動かない。


「さて、止めをさそうか……」


バレインに対し数歩迫った所でクロスバにリリリリと脳内に音が響き渡る。

どうやらヨキからのメッセージのようだ。


「ん、なんだ?」


クロスバが耳に手を当てヨキに用件を聞くとメッセージ越しにヨキが答える。


『卵が孵化しました』


ヨキの淡々とした口調にクロスバは驚く。

卵とは恐らく黒い膜の事だろう。

それが孵化したと言うことは……。


「もうか?やけに早いな」


『ええ、通常は3時間程かかる筈ですが1時間も立っていません。実に興味深い結果ですね』


2時よりも想定時間が長いのは本来の作戦上卵は切り捨てる予定だったからだ。

それを回収出来たのは僥倖と言える。


「それは良かったな」


言葉程良かったと思ってないような口調でヨキに答えるがヨキはそのことに対して何の反応も示さずに話を進める。


『では作戦通りにフェーズ2に移行。直ちに撤退してください』


「了解」


クロスバが気怠げに返事をするとメッセージが途切れる。


クロスバは命令通り撤退しようと足に力を込めて立ち去ろうとするが。


「待て……!どこへ行く」


見ればピクリとも動かなかったバレインが手を握り締め立ち上がろうと生まれたて小鹿のように震えている。


「撤退だが?」


何をバカなと言うように当然の口調でクロスバは返すが勿論バレインは納得いかない。

押せば倒れてしまいそうな立ち方でよろけながらつっかかる。


「まだ勝負はついてないだろう……!」


クロスバを引き留める為の言葉だったがそれは何ら効果を表さない。


「命令は絶対だ。私事よりも優先される」


そんな一言で切り捨てるとクロスバは即座に風魔法を使い先に決めておいた初期ポイントへ飛ぶ。


「待て!!」


バレインも慌てて追い縋ろうとするが空を飛ぶクロスバには追い付けない。


「クソッ!」


既に小さくなったクロスバに毒づくとバレインは自らの敗北感を叩き伏せ死刑台に居るだろうメルトを目指す。

必ず勝つ、クロスバを獲物として見定めながら……。


こうしてバレインのクロスバとの初戦は完全なる敗北を喫した。


おかしい……!

当初は四回位の想定だったのに……!

どんだけ目測誤ったら気が済むんだ……!

今回の話だって……本当はガルシアと二本で行く予定だったのに!

どうしてこうなった!

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