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傾世の暗殺者異世界に物申す  作者: 伊賀良太郎
第1章〜魔王暗殺〜
25/107

25 メルト外伝 紅の墓標6

マジで遅れてすみませんm(__)m

サボっていた訳じゃないんです


「おぉぉおおお!?」


ハッシュは街を全力で疾走していた。

爆走といった方が良いだろう。

恥も外聞もなく不様に逃げ回っていた。


「ワハハハハハハ!!

逃げるな!我がブチ殺してやろう!!

ハハハハ!!」


エドガルは戦い特有の高揚感で普段の彼とは全くの別人と言っても良いくらいに凶暴化していた。


後ろにいる化け物(関わっちゃいけない物)を振り返りつつハッシュは思った。


(ムリ!

どうやったってムリ!


無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!


絶対にムリ!)


「どうやったらあんな化け物に勝てんだよ!!

無理だムリムリ!!

絶対死ぬ!!

ゼツテー死ぬ!!」


喚き散らしながら爆走するハッシュ。

どうしてこんなになってしまったのか。

数分前に遡る。



〜〜〜〜数分前〜〜〜〜〜〜〜〜


「こ、この俺様がいるって事は今日が貴様のめ、命日だ!!

そ、それが嫌ならとっとと撤退するんだな!してください」


威勢の良い事を良いながら足をガクガクさせて腰も完全に引けている情けない姿で降伏勧告をするハッシュ。


しかし当然ながらその勧告は一切相手の耳に届かなかった。


「これはこれは戦いで死ねるとは我が最高の栄誉。慎んでその勝負お受けいたそう!!」


むしろ逆効果さえ伺えるその言葉にハッシュ足の震えはギアが上がる。

最早漏らさんばかりである。


「ひ、ひぐッ!良いのか!?本当に強いんだぞ!泣いちゃうぞ!?絶対俺が勝つんだからな!?」


イグマがいれば泣いてるのはお前だろ!、とツッコんだだろうがここはだれもいない。

相手を煽ったのは完全に自業自得ではあるのだが、かなり可哀想なのは事実である。


「ああ、負けるからこそ強くなれる!!その過程で死んだらそこまでの男だったということだ!!」


一切引くどころか戦意すら向上させているエドガルにハッシュは本格的な泣きが入る。


「うわぁぁああん!!

じねぇぇえ!」


完全にやけくそのようで顔から出るもの全部出しながらハッシュは喚き散らし素手でエドガルに近付いていく。


「来い!!」


ハッシュは間合いに入った瞬間最小限の動きで魔法鞄から愛斧を取り出し袈裟に切りつける。


「≪陽火山≫!!」


ボカン!というデカイ音が上がり爆風で粉塵が舞い上がり、エドガルの姿が隠れる。

ハッシュの最高レベルの攻撃であり、一撃必殺発動までの時間も短い為不意討ちによく使う技だ。


「あれ?ぜっだい油断じたと思っだのに」


しかしハッシュが違和感を抱いたのは斧が止まった事だ。

確実に打ち据えたとおもっていたのだがどうやら止められたらしい。


演技が無駄になっちゃたじゃん、と呟くハッシュの名誉の為に本気で泣きが入っていたのは黙っておくとしよう。


「ワハハハハ!!

まさかそう来るとはな!!油断大敵と言うやつか!!

ご教授感謝しよう!!

だが……こんな力じゃ時間稼ぎにもならんぞ?

もっと本気を出せ!!」


ムン!!というエドガルの言葉と共に粉塵が少し晴れる。


「なッ!」


そこに現れたのは斧を止めたエドガル。

何でもない普通の光景だ。

たった一つを除いて。


「嘘だろ……」


止めた事が理解できない訳ではない。

いくら不意討ちだからといって避ける方法などいくらでもある。


ハッシュが理解できないのは何で斧を止めたのかだ。


粉塵が晴れた先……。


そこには体で斧を受け止めたにも関わらず、一滴の血も流れていないエドガルがそこにいた……。


ハッシュの愛斧は背丈が自分の身長程もある巨大な物だ。

両方に刃がある巨大な戦斧バルディッシュをA級ならではの並外れた腕力で敵を叩き切るのがハッシュのスタイルだ。

その巨大な戦斧をリタの支援を受け、遠心力とスキル上乗せ分も合わせて全力でぶった斬ろうとしたのだ。


それを無防備に体で受けたにも関わらず無傷。


「リタ!!逃げるぞ!!」


鎧があった訳でも魔法で防いだ訳でもない。

ただ純粋な表皮のみで受けたのだ。


避けたのなら打つ手はあった。

武器で受けたのならまだ打つ手はあった。


だが……そもそもが攻撃そのものがムダなのだ。

さっきの攻撃力を上回る攻撃はない。


ただ、逃げるしか術がなかった。


恐らく家の陰にでも隠れて俺の回復を請け負おうとしていただろうリタに大声で叫び撤退する。


「待て!!我を置いてどこへいく!!」


エドガルが追い縋ろうとするが、走り出しが早いハッシュは捕まらない。


「こんな化け物に叶うか!!誰か助けて〜」


割りとマジに助けて欲しいハッシュだったが助けられる人など居よう筈もない。


「成る程、これも作戦の内という訳か……貴様は私に何を仕掛ける!!」


盛大な勘違いをしたエドガルはビックリ箱を除く気分でゆっくりとハッシュを追う。


「違う!!違う!!違います!!

降参!!参った!!アンタ強いよ!!

ヘルプミー!!」


どうにか誤解を解こうと走りながら後ろのエドガルに降伏を宣言するが効果はない。


「ワハハハハハハ!!

もう騙されんぞ!!

次はどう来る!!」


完全に自業自得だが、オオカミ少年のように信じて貰えないハッシュは少し可哀想である。


「ホラ!!そっちが来んのなら我から行くぞ!!」


そう言うと近くにあった建物をぶち壊し投げ付ける。


「おわぁぁああ!!」


なんとかかすっただけですんだが足を止めれば殺されるので走りを止めることは出来ない。


「ホラ!!ホラ!!」


更に二軒をぶち壊し投げ付ける。


「おぉぉおおお!?」


こんなの勝てるか!!


ハッシュの割りと切実な慟哭は王都中に響き渡るのだった……。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


薄汚れたスラム街にツェーレの怒号が響き渡る。


「こっ、殺してやるッ!楽に死ねると思うなよッ!!」


その怒声と共にツェーレの体から魔力が吹き上がり、力が解放される。


ビキキ……。

ガシャン!!


スラムは元々造りが弱い建物が多いためツェーレから放たれる魔力圧で簡単に崩れてしまう。

もっとも、ツェーレの怒りがそれだけ強いということの証左でもあるのだが……。


「家……壊しやがった……!」


それを茫然を見送るイグマ……。


死ぬな殺すな目立つなが3原則の裏の世界に棲む者としては失格のツェーレの行動だ。

ド三流も良いところだろう。


だが……。


「コレは……マズッたか……」


イグマは脊髄に氷のように冷たい何かがにじり寄る。

あー、また俺のスローライフが遠ざかる〜、と悲観するが即座にまぁ、もう俺アサシンじゃねぇしこっちのがらしいっちゃらしいか、と納得する。

ある意味メルトの理不尽さに調教されている結果と言って良いだろう。


イグマが自らの不遇を嘆いている隙にツェーレが凄絶に笑いながら体各部にゴツい金属の塊のような物をつけ始めた。


そしてツェーレは自らの口の中で転がすように怨念めいた言葉を吐き出す。


「スラスター起動...ホバーオンブースト...!出力上昇!規定パーセンテージ突破!!」


ツェーレが何かを叫び終わった後、ウイィィンという音と共にツェーレの体の各部にあるゴツい金属の塊の一部が光出し、魔力による青白い炎が背中にあるスラスターと足裏から噴出し全ての準備が整う。


「PS起動!!」


その言葉と共にツェーレが高く飛翔する。


ただ飛ぶのではなくホバリングで上空に留まる様はまるで精霊のようだ。


「と、飛んだ!?」


人間の絶対的な真理を覆す目の前の現象にイグマは呆気に取られる。


「どうだ!すごいだろう!ここまで巧く使いこなせるのは僕と初代陛下しかおられないからな!!」


ネジが吹っ飛んだイカしたというよりイカレた顔で自慢されてもイグマとしては恐怖しか感じないのだが、頷く以外に為す術がない。


「さぁ!時は金だ!

喋る時間が勿体ない!

時間制限付きだからね!さっさと終わらせないと!」


そう言ってツェーレは手を広げ金属に包まれた手の平をイグマに向ける。

イグマはその手の平に集まる異常な魔力濃度を察すると即座に退避する。


「ファイヤ!!」


ドドドド!


「くっ!≪シャドウロード≫!」


ツェーレの手の平から無数の魔力弾が放たれイグマに降り注ぐ。

弾速は秒速四百メートルと拳銃レベルだが玉の大きさが拳大で次弾が機関銃レベルのスピードで発射される。


短距離移動技で辛くも脱出したイグマは呟く。


「あぶねっ!くっ!厄介だな……」

見かけはただの魔力弾だが一弾一弾に回転が加えられており、飛距離と威力と命中性が増している。

あのスピードでは一発当たるだけで即座に挽き肉なってしまうだろう。


さて……どうしたものか……。


ヒュンヒュン!


イグマが懐からクナイや手裏剣などを打ってみるが、空中に投げる事で威力を減衰させている事もあり、ツェーレはその機動力で全て避けてしまう。


「そっちが来ないんだったらこちらから行くよ!」


イグマにさっきと同様イグマに手を向けたが、先程とは桁違いの魔力圧である。

嫌な予感を感じ取ったイグマは即座に来る途中に奥の手として隠しておいた分身とキャスリングする。



「≪キャスリング≫!」


ビュイイィィィン!


その瞬間ツェーレの手からガルシアの使う神官魔法に似た白い光が分身を消し飛ばす。


「くそっ!街吹き飛ばす積もりかよ!」


見れば巻き添えを食らった近くのスラム街が光の柱を地面に当てられた事で半壊といってもいいレベルで壊れてしまっている。


くそっ……どう勝ったらいい……。


イグマは答えの出ない問いを抱いていた……

36計逃げるにしかず!

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