22 S級VS天才1
遅れてすみませんm(__)m
――――正也 視点――――――――
十メートル四方が土なだけでその周りが王城で囲まれている兵士訓練所とかいう場所で皆と教育係を待つ。
恐らく貴族が視察する為の見せ掛けのみの場所だろう。
無骨な中庭のような感じだ。
貴族の意図としちゃ、どの程度の実力か見定めたいって所だろう。
チラホラと見られてる気配とかあるしな。
正也は右斜め後方の建物に居る貴族らしき人物を盗み見る。
偉っそうに、ったく。
おっと、気を散らしてる場合じゃねぇな。
今は化け物のご機嫌取りに終始しねぇと。
正也はキーピィングスマイルを死ぬ気で維持しながら己の理不尽を嘆く。
一度のミスで死ぬとかどんなクソゲーだよ。
やべー。魔王とか以前にコイツに殺されそうだわー。
むしろコイツが魔王の可能性すらあるわ。
この胃痛に対する慰謝料は誰が払ってくれるんだよ……。
正也はイテナと関わる時間と共に加速的に増えていく胃痛を不安視しながら更に愚痴る。
大体主人公親友ポジに過ぎない俺を酷使し過ぎだと思うんだよな〜。
ほら、役割的には戦地に赴く優人を頑張れって応援するだけの役割だろ?
ラノベとかだと出番的にはプロローグの冒頭か主人公の回想にしか登場しなくね?
それを何で異世界に召喚しちゃうの?
バカじゃないの?
GALに赴く優人を応援する練習を部屋の鏡の前で死ぬ程した時間返せよ。
ノックもなしに部屋に入って来た母さんにアンタ何やってんの?って聞かれて精神的苦痛も味わったんだぞ。
まぁいいよ、まぁいいさ。
100歩譲ってそれは良しとしよう。
だがしかし。
なんで俺(主人公親友ポジ)が激戦区(イテナの隣)に送られてんだよ。
可笑しいだろ!!
ねぇ!?
何この絶望感。
何この絶望感!!
せめて……チートくれよ……。
交渉術でも処世術でも何でも良いよ……。
とりあえずこの地獄を生き残れさえすれば何でも良い……。
俺は優人みたく完璧超人じゃねぇからチートが無きゃ死ぬ確率が99、9%と純金並みなんだよ……。
なぁ、神さん……。
ダメ?
数十秒に掛けて潤んだ粒羅な瞳で祈ってみたが全く成果は得られなかった為に諦める。
チッ。やっぱ駄目か。
どうやら神さんは無神論者は対してはいくら潤んだ目で祈っても願いを叶えてくれないらしい。
こうなったら全面的に優人を頼って……、とダメ人間まっしぐらの考えを抱いている内に世間話を終わったようで新たな人物達が現れていた。
二人の名前はバナーとサリナ=フロックハートと言うらしい。
バナーの方はユルそうな性格で服をかなり着崩しており、だらしない事この上無い。
服は胸に星の修飾のある白のコート的な物と中に着た貴族用軍服っぽい服で滅茶苦茶カッコいいのだがそれを着崩してるせいで色々と最悪である。
顔がかなりイケメンである事が更に残念さを煽っている。
既に世界は私の手の中というわけさ、とか言いそうな顔でスッス、スッスと三下口調で喋ってるのは誠に残念極まりない。
サリナの方はカッコいい系女子とでも言ったら良いだろうか。
つり目気味な美人に黒のレザー服が良く似合っている。
まぁ、眉間の皺が全てを台無しにしている気がするが。
二人の会話を聞くかぎりは恋仲一歩手前のようである。
正也としては出来る限り応援してやりたかったが、会話からもたらされた二つの情報が正也のその楽観的な思考を吹き飛ばした。
情報一つ目、S級を足蹴にしていた。
正直ちょっと意味が分かんない。
え、え?
……整理しようか。
先ずS級ってのは優人によると圧倒的強者だ。
一つのパーティで10万を越す冒険者ギルドと同等の力を持つんだそうだ。
シスクスさん情報だし、騙す意図はないだろう。
シスクスさんを信用する理由?
そんなの優人が信用出来ると断言したからに決まってる。
優人が断言すればそれはもう事実だ。
外すなんて万が一にもない。
第一相手の思惑を見抜けないようじゃ優人はゲームでとっくに死んでるよ。
で、何だって?
そのS級を?
足蹴にした?
ご冗談を。
シスクスさんから優人経由の情報によると指揮官のレベルを冒険者のランクに合わせると大体BないしC程度だと言う。
そんなわきゃあねぇだろと思いつつ顔の動きであるとか反応を注意深く見たが騙してるような雰囲気は見られない。
どうやら本当の事のようだ……。
なぁ、神さん……。
思ったんだが……。
序盤からインフレし過ぎじゃね?
どーすんだよコレ!
後で敵強くなり過ぎても知んねーぞ!?
俺は言ったからな!
もう後でアレは嘘だ、とか効かないからな!
もうエイプリルフール過ぎてんだからな!?
……俺知らねー。
そして情報二つ目、サリナが説教喰らわしてずんずんとどっか行った後ハッシュが呟いた一言。
「あれバナーだよな……。何でこんな所に……」
……。
何だってぇぇええ!!
何ですか、何ですか?
まさかの因縁とかそういうパターン!?
いや、それはまだ早いよ神さん!
もうちょっと考えようよ神さん!
まだ名前も知らん奴からそんなん言われたって戸惑うだけだから!
はぁ?ってなるから!
超展開過ぎワロタだから!
もう……ぶん殴ってもいいかな……。
許されるよね?
そんな事を考えてる間にフッと胃痛が消えて行くのを感じた。
現状把握に努めるにどうやらイテナさん(胃痛の主)がイグマさんにどっかへ連れて行かれたようだ。
俺……今日からイグマさんを神と崇める事にする……。
マジサンキュー。
もう少しで胃に穴が開く所だった……。
そんな即物的な信仰心をイグマに捧げていると残りの四人から自己紹介を受ける。
「俺はハッシュ。部屋借りちまって悪かったな。そこにいるガリノッポの黒の服着たお兄さんがバレインで、その隣の金髪青目のTHE坊っちゃんがガルシアで、そこの可愛い女の子がリタな」
ハッシュさんがそれぞれ指を指しながら簡易な自己紹介をしていく。
部屋を貸した時にちょっと会って話したから今のは主に咲良への自己紹介だな。
咲良覚え悪いけど大丈夫か?
つーかガルシアさんがハッシュさんを凄い睨んでるけどあれ大丈夫かな?
あれ確実に紹介の仕方が気に障ってらっしゃるよね?
怖いから全力で見なかった事にしよう。
「で、訓練とかどうすればいいんですか?」
正直訓練とか言われても何やったらいいか分からない。
運動神経は悪くはないと思うが同じ高校にいるバケモノ共には敵わない。
まぁ、総評して一般人に毛が生えた程度だ。
魔王や優人はいいとして咲良は壊滅的と言って良いだろう。
何せ不幸の塊みたいな物だからな。
訓練以前に戦闘関連全てに向いてないだろう。
「えーと、剣は持てるかい?」
ハッシュさんが少し迷いながら聞いてくる。
まるで何か少しバカにされてるみたいだな。
中学では確か必修だったし、武道選択は優人と一緒に剣道を選んだ。
高校でも部活のオリエンテーションでだがやったぞ。
そう考えると日本の義務教育すげえなぁ。
確かに生きるのに必要なスキルだわ。
「ええ、それくらいなら大丈夫です」
優人がそう答えると隣で聞いてた咲良が驚愕に目を見開く。
「えぇ!嘘でしょう!?出来ないのアタシだけ!?」
ビックリしたのは俺だよ。
えぇ……。
確かに咲良の選択はダンスだったけどそれでもどこかで一度は触れてる筈だろ?
忘れたのか?
「えっと……コレ使って構えて見てくれる?」
空間に手を突っ込んだと思うと俺たちに対して何かを放る。
ハッシュさんから放られたのは三本の木刀だ。
あっ、反ってないから木剣か。
ガラン、ガラン。
俺と優人はキャッチしたものの咲良は失敗し取り落としてしまう。
不幸属性に付随して多少どんくさいのが咲良らしい。
「手渡してくれたって良いのに……」
取れなくて当然だとか、二人が異常だとかブツブツ言いながら咲良が木剣を拾う。
咲良が拾うのを待って三人揃った所で木剣を握り中段で構える。
ちょっと重たいが持てない事もない。
振るうには問題ないだろう。
咲良を見るが俺たちの見よう見まねで構えを取っている。
「咲良……手ぇ逆」
俺がこっそり教えると咲良は右手と左手を入れ換える。
右手の位置が柄頭を握ってないとか色々言いたい事があるが、まぁこんなもんだろう。
俺もズブの素人だし。
「ふーん、変な構えだな」
構えとしては認めてくれたみたいだ。
まぁ、変な構え云々は競技用みたいな物だししかたないか。
その後素振りをさせられたり切り方を見られたりしたが、大体OKみたいだ。
まぁ、OKを受けたのは俺と優人だけで咲良は開始3分でアッチで座っててとか言われてたが……。
咲良が不貞腐れた顔で三角座りをしてたのは少しかわいそうだったが、俺たちの訓練の為に座ってて貰いたい。
剣術については後で魔法を引っくるめた模擬戦をするそうなので、その時は優人に任せっきりにしたいと思う。
「次は魔法か……」
ハッシュさんがそう小さく呟くのを俺は待ってましたと拍手喝采の心持ちで迎える。
そう、ここは異世界、魔法が使える世界なのである!
魔法なんてロマンの塊だ。
男子なら誰でも一度は憧れる。
それが使えるかもしれないのだ。
テンションが上がるに決まってる。
「俺は専門じゃないからな。ガルシア頼むわ」
そう言って呼ばれたのは金髪青目のお坊っち……危ないっ、睨まれた。
ガルシアさんだ。
何で今心を読まれたんだろう?
魔法か?
「魔法って何!?」
ガルシアさんが何も聞かない内から質問したのが気に食わないのか一瞬俺の方を見やる。
俺はもうイテナさんでそういうセンサーはぶっ壊れているので何とも思わないが。
「うーん、魔法っていうのは体内又は体外にある魔力を女神様に捧げると起こる現象というのが一般的だな」
うん、クソゲーやってる気分だな。
分からない事を質問したらもっと分からない事が増えた。
そして全然全く説明が頭に入って来ない。
「魔力ってMPと同じ?だったらMPが0でも体外の魔力使えば魔法は使えるって事?」
ステータスを思い出しながら質問するとガルシアさんが答えてくれた。
「まぁ、理論的にはそうなるが、そういう現象は滅多に起きないな。大抵が体内の魔力から支払われる事になる」
ふーん。
永久機関は失敗かさっきの説明からすると行けそうだったんだが。
「滅多にって事は起きる事は在るんだな?どういう時だ?」
おっ!流石優人先生。
まだ体外からのエネルギー供給による永久機関は諦めて無いわけですか。
「無いわけじゃ無いが、魔法使いじゃまず無理だな。精霊魔法か神官魔法じゃないと」
早くも分からん言葉の連発だ。
リタイヤしたい。
さっき坊っちゃんって言いかけたの謝るから怒ってたなら許して。
「精霊魔法や神官魔法って?」
「精霊魔法は妖精との契約によって魔法を行使するタイプの魔法だ。契約って言っても好かれるかどうかってだけでそんなに大げさな物じゃない。
利点としては好かれるだけで理論上全ての属性を使える事と魔力の譲渡とイメージを共有する事で自分と妖精で手数が増えるという事だな。魔力の扱いも上手いから威力も期待していい。
その延長でたまに精霊に愛される者が魔力無しでも精霊の行為で魔法が使われる事くらいだ。
神官魔法は精霊が神になっただけだ」
神官魔法の説明短ッ!
分かんない事だらけなんだけど。
神官が使うみたいな感じでいいのかな?
「属性って何だ?」
優人先生気になるのそこ?
「火、水、風、土、光、闇、それぞれ神が修めてる。属性を持たない弱小神も少し居るがな。以上」
やっぱ短ッ!
何?さっきの説明で疲れたの!?
「さっき言ってた女神はどの位置だ?」
ああ、ごめん聞き逃してたよ。
流石優人先生。
「光」
「絶対神なのか?」
優人は僅かな反応も見逃さないように真剣にガルシアを見て質問していた。
何でもない質問に全力になる優人に俺は疑問を抱いた。
ん?女神が絶対神かどうかがそんなに重要なのか?
別にどうでも言いと思うが。
「ああ」
「じゃあ他の神に男は居るのか?」
この質問でようやく俺はピピーンと来た。
優人が探してるのは俺たちを連れてきたあの神だ。
「六大神は全員女だ弱小神の中に幾人か男は居るが基本女だ」
「そうか」
あれ?
男の神を調べないのか?
優人ならてっきりその男の神はどんなだ、とか聞くと思ってたのに……。
……ああ。
そういやアイツ向こうの神がどうたらとか言ってたな。
今の質問はその確認だけって事かな。
聞かないって事は優人の中であの男の神はこの世界の神じゃ無いって事は優人にとって最早事実なんだろう。
どういう思考回路でそうなったかは知らないが。
「もういい。体外から魔力を持って来れないんじゃどうせ今の俺たちの魔力じゃ魔法は使えないんだろ?」
コクンと頷くガルシアさん。
「じゃあ魔法の使い方なんて今知っても仕方ない。さっさと模擬戦でも何でもしてこの茶番を終わらせよう」
まぁ、それもそうだ。
このままじゃ貴族のいい見世物だしな。
そう思いながら正也は木剣を持って立ち上がる優人を見ていた。
優人だけで終わってくれますようにと願いながら。
優人に比べて正也の書きやすい事この上無い
正也の主人公力が段々上がってる気がする
気のせいと思いたい




