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傾世の暗殺者異世界に物申す  作者: 伊賀良太郎
第1章〜魔王暗殺〜
16/107

16 メルト外伝 紅の墓標4

四件のブックマークありがとうございました!

嬉しかったです!

今後とも宜しく御願いします!

質問があればいつでも受け付けているので感想欄にでもどうぞ!

魔王様は私が一番好きなキャラです。

現在魔王様――!

と叫びだしたい衝動に駆られている。


メルト達は走りながら死刑台を仰ぎ見る。


まず見えるのは悲鳴を上げ逃げ惑う人々。


次に見えるのは肉塊と布切れと化した人だったモノ。


そしてそれを量産する魔人。


そして死刑台の上には四人の魔人に黒い膜のような物体。


敵はどうやら五人のようである。


攻撃範囲が一番長いのがガルシアであり、一番近くに居たのは浅黒い肌を見せびらかすように魔法耐性のついた黒いズボンと前の開いたチョッキを羽織る魔人ダルクだ。


必然、一番最初に範囲が重なる事になる。


「≪エクスプロージョン≫!」


シン……。


不発である。


「くっ……」


本来なら体一部分が内部より爆発するという当たり所さえ良ければ一撃必殺悪い時でさえ戦闘力半減という凶悪な魔法だ。


しかしそれ故に燃費が悪く更に当たっても不発が多い魔法である。


相手の魔力耐性が高かった、普通ならそう思うだけで終わるだろう。


「ハッ!ムダなんだよ!」


しかし、ガルシアは違った。


(何かおかしい……。今違和感が有ったぞ)


先程は人が多く居たために直接魔法しか行使出来なかった。


しかし、現在は既に直線上に逃げ惑うような人は居ない。


「≪ファイヤーボール≫!」


三個の大きな火の玉が大きく弧を描いてダルクに向かう。


その熱量は石畳を焦がさんばかりであり、凄まじい爆発を予感させた。


「ムダ!ムダ!ムダァ!!」


しかしそれが届く事はなかった。


三振り。


手をたった三振りするだけでそれらがかき消されてしまったのだ。


(やっぱり……普通の魔法耐性じゃない……どうなっている)


普通であればかき消える等あり得ないのだ。


無傷であるとしても爆発した後で無傷の体が残るならまだ分かる。


だが、かき消えた(、、、、、)。


そんな訳の分からない現象の前にしてガルシアは一瞬思考停止に陥った。


そしてそんな敵の油断を見逃すようなダルクではない。


次の行動の事前動作として全身の筋肉を収縮させ前屈みになる。


ゴゥ!


ガルシアがしまった、と思った時にはもう遅い。


ダルクはまるで巨大化したのかと身違う程の速さでガルシアの方へ疾駆していた。


否、ダルクは踏み切っただけに過ぎない。


しかし、その魔人の凄まじい身体能力によりたった一歩で十メートル程を走破したのだ。


「オラッ!飛べッ!」


ダルクはそのトップスピードのままガルシアの頭を掴み全力でぶん投げたのだ。


(くっ……!何てスピードだ!体勢を立て直せない!)


ガルシアの後ろには家が一軒あり、このままのスピードで叩き付けられれば命はないだろう。


「≪ガード≫!」


間一髪でガルシアの球形のバリアが間に合いガルシアの全身を覆う。


ドゴバガシァァアン!


家を円形に型抜きをし、更に飛んでいく。


「オオー!アレで生き残るとかやるな。オイ!ヨキ!俺はアレと遊んでくるぞ!」


死刑台の上にいる悪魔族に言えば打てば響くように返事が返ってくる。


「ええ、良いでしょう。まだ時間は掛かるようですし」


隣の黒い膜をチラリと見ながら続ける。


「ただし、コレが終わるか二時までです。時間が過ぎればこの子を殺して撤退します」


「ヨッシャ!」


そう歓声を揚げると意気揚々と円形の穴を潜って追撃にかかる。


「皆さんもお好きなようにコレは私が守っておきます」


魔人達は既に様子見をしているメルトを完全に敵と見なしたようだ。


「だから僕はヨキに指図されるのは大ッ嫌いなの!」


フゥ……。


少年のような姿はフッと消えてしまう。


そして気付く者は居るだろうか。


メルトの首筋に刃が迫りつつあると。


嫌な仕事はサッサと終わらせるに限ると先に敵の大将を殺そうとしたのだろう。


刃は吸い込まれるように首筋へと近付いて行き……。


ガキン!


「おいおい。まさかメルトを暗殺しようって訳?嘘だろ?俺が居るのに?」


イグマのクナイに受け止められていた。


「チッ!カウンターアサシンか。付いてこい。相手してやる」


そして背を向けて町の外れの方に疾駆していく。


これは別に間違った判断ではない。


アサシンに潜られる事になれば両方が共に多大なる損失を被る事になる。


戦闘中に気付いたら殺されていた、と言えば分かるだろうか。


戦闘力を持つ暗殺者とは斯くも危険な物なのである。


出来れば両方とも被害は少なくしたいためにアサシン同士がぶつかる事になるのである。


更に場所を移動するのは移動する間に出来る限り相手の情報を集めるためである。


相手のスピード、歩法、癖、武器、素性。


少しでも相手の情報を多く仕入れた方が勝つ。


常識である。


無論、お互い自分は隠し相手のみの情報を引き出そうとするが為にこの移動から既に勝負は始まっているのだ。


「大分別れたな。オイ!そこの剣士みたいな格好した奴!俺と来い!殺してやる!」


大声でバレインを呼ぶのは全身鎧を着た騎士風の魔人である。


「フム、ご相伴に預かろう」


口調と格好が真逆である彼らだが気は合ったのだろうか。


そう言って二人で別の広場に移動し始める。


こちらの移動はただ単に広い方が戦い易いといった実益に欠ける類いの移動である。


「3対2か……。我が2を貰うとしよう。よいか?」


割りと好戦的な二メートルを越える巨漢は隣のヨキに尋ねる。


「ええ、お好きにどうぞ。私はコレを守るのが本分ですし」


「ありがとう。では、オイ!そこの二人!我と来い。ここで暴れるのはちと不味い故な」


黒い膜をチラリと見ると巨漢の魔人はリタとハッシュに告げる。


「あのー、今の流れですと俺があの方と殺し合いをするように聞こえるのですが……」


嘘であってくれ!、とメルトに向かって揉み手をしながら聞くハッシュである。


実に情けないない話であるが、彼からして見ると当然の話である。


なぜに料理人(店主見込み)であるこの俺があんな巨漢と戦わねばならないのか。


めっちゃ強そうではないか、と。


ハッシュとしてはあんな化け物(仲間)達と一緒にするな、と高らかに言いたい。


「頑張って殺されてこい」


祈りを込めた質問のメルトの返答としては実にシンプルであった。


「そんなぁ!〜〜〜〜〜〜」


死刑台の前で死刑宣告をされた彼の慟哭が王都中に響き渡る。


ムゴい。


「ほら、行こうハッシュくん」


ハッシュはリタに引き摺られながら何事かをブツブツ呟いている。


「俺だってA級だ。やれる。やれる。相手が巨漢だなんて忘れろ。ハッシュ、お前はリタをおいて逃げるのか?否!女の子を置いて逃げるなんて出来ない。例え……リタの方が強くても……なんか自分で言ってて虚しくなって来た」


私(作者)は誠に勝手ながら彼の冥福を祈ろうと思う。


合掌。


「いやだぁぁああ!」


ハッシュがリタに引き摺られて見えなくなってからヨキはメルトに聞く。


「ハッシュ君を見殺しにしてしまって良かったのですか?」


エドガルは強いですよ?とヨキは告げる。


フッ……。


そうメルトは笑うと強く言葉を吐き出す。


「アイツはそんなヤワじゃない。殺したって死なないさ」


そしてこうも続ける。


「さて、いい具合に別れたようだし、俺たちもやるか!」


「やれやれ、死に急ぐのは人族の特権ですね」


暗に私には勝てないと言うヨキにメルトは吐き捨てる。


「ハッ!やってみなきゃわかんねぇだろうが!」


今までそんな事を吐く野郎はいくらでも居た。


だが、今メルトは此処にいる。


最後に立っているのはメルトだ。


「さぁ、伸るか反るか。試してみようか」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



カキン!カキン!


少年の放った30センチ程の手で打つ専用の鋭利な小刀をイグマが弾く音が響く。


当然、毒が塗ってあり、刺されば致命傷だ。


現在、イグマと少年は屋根、魔力灯、地面を凄まじいスピードで走りながら相手の様子見をしている。


一連の動作も小競り合いであり、相手を殺す為に放った訳ではない。


そろそろスラム街だ。


スラムに入り更に路地裏に入り込んでいく。


スラムという物の特殊な点はその閉鎖性にある。


無論、金さえあればどんな情報でも手にはいるが自分から(憲兵等には特に)渡す事はない。


こういう荒事にはもってこいの場所なのだ。


そして更にその閉鎖性を高める必要がある戦闘となると戦える場所は限られてくる。


自然、狭い場所になってくるのだ。


何故閉鎖性を高める必要があるかと言えば顔バレを防ぐ為である。


戦闘というのは裏家業三大原則に反する。


原則は職種によって多少違うが大体死ぬな殺すな目立つなである。


理由としては一つに集約される。


派手だからだ。


人の目端を引きやすい事はなるべく避けなければならない。


それが仕事の成功、自らの生存に繋がっていく。


戦闘する夜の者なんてド三流も良いところだ。


どうしても必要な場合は必要最小限に抑えなければならない。


故に入り組んだ路地裏……と言うかほぼ二人以外は入るような隙間すらない壁の隙間で夜の戦闘は行われる。


「ここら辺りでいいか、俺はイグマ。お前、名前は?」


異なことを聞く奴だ……。


勿論、夜の常道からは外れている。


「名前を聞くバカなんて初めて見たよ。普通はいきなり飛びかかるものじゃないかい?」


少年が会話をしようと試みたのは全くの偶然だ。


単にヨキに言われたことをすんなりするのは嫌だという子供じみたもののせいだ。


普通ならいきなり飛びかかられても不思議ではない。


だがイグマはその質問に対して飄々と返す。


「そりゃあ、夜の仕事してる奴の話だろう?今の俺は冒険者だ。暗殺者じゃあない」


その答えに対して少年は明らかに侮蔑の籠った視線を送る。


「へ〜〜。落伍者か。錆びた腕で僕に敵うとでも?」


明らかな挑発だ。


「ああ、思ってるさ。で、名前は?」


それでもめげずに名前を聞く様はさながらナンパ男のようである。


「ツェーレだよ」


明らかに女の名前である。


「?、え?。ん?そりゃあ女の名前だろう?あっ、偽名?それとも親が酒とかでイカれてた?」


ちょっと言ってる事が意味不明だったので聞き返すと不審げに答えが返って来た。


「女の子なんだから当然じゃん」


その言葉にイグマの思考は一時停止する。


「…………。すまん聞き間違いだと思うんだがもう一度言ってくれ」


「? だから僕は女の子」


さっきと同じ言葉を放つとイグマは衝撃に見舞われた。


「!!!!!!!?

!!!!!?

!!!!!!!!!!!」


その驚きようが意味がわからなかったのかツェーレは問いただす。


「どうしたの?どっからどう見ても僕美少女じゃん」


「だって………お前……その……アレ、無いじゃん」


そう指を指したのは丁度胸の辺りである。


いくら小さい子どもだと言っても見れば15、6だ。そろそろ育っていいはずだ、と主張したかったのだが。


輪郭の線もシュッとしていたし間違えるのも頷ける話である。


オブラートに包もうとして失敗したその言葉は少年のいや、少女の心を大きく突き刺した。


その胸は発育が……極微小だったのである。


「ま、まだ後からデカくなるんですぅ!動揺させようとしたって無駄だからなッ!」


胸を庇いながら必死に防御の構えを見せるツェーレ。


「こっ、殺してやるッ!楽な死に方出来ると思うなよッ!」


要らぬ怒りを買ったイグマはタラリと流れた冷や汗を拭うのだった。


口は災いの元とは良く言ったものだ。


こんなことなら喋らなきゃ良かった、と喋った事を後悔するイグマであった……。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



カツン、カツン。


二人で連れだって広場へ向かう。


彼らの中には様子見等という思いは微塵もない。


ただ戦いの前の高揚感に満たされているのだ。


そしてある程度の大きさの広場に付くとどちらともなく剣を抜く。


魔人の抜き方はある種 雑然とした技術の乏しい抜き方だ。


おそらくそういった事に興味がないのだろう。


シュルルルルン。


ブン!


バレインが抜くのは細身の鋭い剣。


辛うじて両刃にする程度の幅はあるがそのままエストック等にしても使える程の幅しかない。


そして胸を張り、右斜めに抜き放った後一度後ろに払い相手の顔に突き付けるように構える。


非常に洗練された動きだが黒いレザーの服を着ているバレインには違和感極まりない。


バレインが修めているのはパルトネ公国宮廷剣術。


貴族チェイナーが考案した剣術である。

流麗で在りながら宮廷剣術の中では一番実践的でパルトネ公国が滅亡した後も広く流布する剣術である。


対して相手の魔人には特定の流派というものはない。


しいて上げれば我流である。


我流とはいうが一から磨き上げてきた一つの流派と呼べる程に完成された剣。


誤解を恐れずに言うならば相手を倒すための剣だ。


「パルトネ流バレインだ」


名前を言った瞬間相手の表情が曇る。


「バレイン……バレイン……どこかで聞いた名だな……」


喉に引っかかった小骨を取り出そうとするような顔だ。


「刀技大会で準優勝したからその関連だろう」


「いや……そうじゃない。違う。どこかで……」


おそらく魔人はバレインの本名キース・バレンタインという名に聞き覚えがあるんだろう。


有名になったものだ、とバレインは自嘲的に笑う。


「まぁいい。流派は無ぇ。クロスバだ」


思い出すのを諦めたのか自らの名を名乗ると剣をだらりと下げる。


格好が騎士であるので違和感極まりない。


剣を抜いた二人が対峙する。


両方とも剣を二振り据えてその内の一振りを構えまるで鏡合わせのようである。


しかしながら一方は剣士の格好をしながら騎士の剣を振るい、もう一方は騎士の格好をしながら剣士の剣を振るう。


体格も全く違う。


バレインは黒に近い紺髪で赤目で陶器のような白い肌を持ちキメも細かく、全体的なガタイも剣士とは思えない程に細い。


クロスバは赤髪に少し青の入った黒目でゴツゴツとした魔人特有の浅黒い肌を持ち、全体的なガタイもガッシリとした筋肉質な体つきだ。


この鏡のようでいてまるで正反対の二人は双方名乗りをあげた。


「「いくぞ!!」」


後は斬り合うのみである。

副官ロレックの日常


――――ロレック視点――――――――


空中から下に見える城下町に向かって声を張り上げる。


18年程前は瓦礫の山だったとは誰も信じられない程に整えられて居り、活気に満ち溢れている。


「陛下ーーっ!どこで御座いますか!」


本当に残念なことですが私の毎日は魔王様を探すことから始まります。


確かに市政を見回りたいのは理解しているつもりで御座いますが警備観点から見れば頷ける事では御座いません!


フォルダ陛下は神より贈られた神の使いにて御座います!


否!神そのものです!!


傷つく等あってはならないことなのです!


例え傷つく事が有ったならば私は自分を押さえる自信は有りません!!


いえ!むしろ憤怒の内に相手の国ごと滅ぼします!


全く一体どこへ行ったのでしょうか。


「ロレック様!陛下がお戻りになられました!」


「了解した!すぐ戻る」


その声が聞こえると直ぐにUターンし、魔王城にとんぼ返りする。


音速に迫る程のスピードは城下町に配慮した速度だ。


音速辺りが一番負荷が高いのだが折角作った城下町を壊す気は無いため押さえたスピードだ。


気持ち的には今すぐにでも会いたいのたが仕方ない事である。


城が見えてくる。


黒を貴重とした西洋式の城で各種防御も備えている城だ。


本来なら守衛の守る門を通らなければならないのだが今回は窓から進入する。


2番目に権力が強いロレックならではの出入口である。


認証の無い物が入ろうとした場合には落雷に撃たれる手筈となっている。


「陛下!どうかご無事で!」


場所は分かる。


おそらくはあの女の所だ。


謁見室の隣に設えられた部屋に向かう。


陛下は案の定ヴァシリッサと共に居た。


「陛下!お怪我は有りませんか!」


勢い込んで扉を開ければヴァシリッサが陛下のお身体をペタペタと触っている。


怪我の有無を確認しているのだ。


私は憤怒に身を焦がした。


陛下は貴様ごとき下級貴族が気安く触れていい存在ではないッ!


四天王パレス様や公爵の娘等陛下にふさわしい相手はいくらでも居る。


「皆が皆同じ事を言う。フン!貴様らと違って怪我をするような軟弱な体は持ち合わせていない」


その瞬間ヴァシリッサの目にも呆れが走る。


「その言葉は怪我をしなかった時におっしゃりませ」


ヴァシリッサがそう言えば私もウンウンと深く頷く。


いくら嫌いな相手でもこればかりは頷かざるを得ない。


「その腹の辺りのシミは血で御座いましょう?血は洗っても落ちぬのですよ」


その瞬間ヴァシリッサは顔を青ざめさせる。


「残される私たちの身にもなられませ!貴方が怪我を……あまつさえ死んでしまったのではないかと身も凍る思いでした」


その言葉が届かなかったのか陛下は不遜な顔をお作りになりこう反論いたしました。


「こんなもの返り血だ」


ヴァシリッサの手前大変申し上げにくいのですが……。


「いえ、飛沫痕が見られませんので陛下の血で御座いましょう」


「早く回復師を!」


ヴァシリッサが恐慌を来たし叫ぶ。


「落ち着け。もう自力で回復した」


「本当ですか!?本当なのですか!?痛みなどは無いのですか!?本当に!?手も足もどこも悪く無いのですか!?」


ヴァシリッサは最早この場で服を脱がそうとするかの如くベタベタと触る。


「ああ、完治した」


やはりヴァシリッサの手前大変申し上げにくいのですが……。


「足を引き摺られているようですが……」


「早く回復師を!」


驚愕に目を見開くヴァシリッサは更に騒ぎ立てる。


ため息を吐かれた陛下はヴァシリッサに睡眠魔法を掛ける。


宜しいのですか?後が大変ですよ?


「ロレック……まさかお前が裏切るとは思わなかった」


その顔を形容するならば魔王は死の間際のカエサルのような顔をしていた。


「御望みならば自害致します。陛下が間違われた時は全力で諌めるのが臣下で御座いましょう。最早貴方は副官ではないのです。自らを大事になさいませ。貴方が怪我をなされば全魔人が悲しみに暮れます。貴方が死になされば全員で後を追います」


「フン!ゴミ屑共にやられる程弱くはない」


「此度はどちらへ」


予想はつきます。陛下に傷をつけられる者は少ないですから。


「悪魔族の反乱があってな」


やはり……。


「だから申したのです!奴隷紋を用いて全員無理矢理言うことを聞かせれば良かったではありませんか!今からでも遅くはありません!!」


魔王陛下は優し過ぎます。


悪魔族を奴隷紋を付けずに放置するなど言語道断です。


陛下に傷を負わせるなど許しがたい大罪!


即刻根絶やしにすべきです!


「それがオメガとの約束だ破る事は出来ん」


なるほど……『契約』か。


ならば仕方がない。


「だとすれば我らにお任せ下さりませ!陛下が自らお出ましになるなど……」


その言葉は失言でした。


私は陛下の優しさを見くびっていたのです。


「役立たず共には荷が重い!」


ああ、そんな悲しげな顔をなさらないで下さい!


確かに悪魔族を相手取る事になれば死人は大量に出る事で御座いましょう。


しかし、既に我ら全魔人400万は陛下の為に死ぬ覚悟は出来て居ります。


陛下が悲しまれる必要など全く無いのです!


我ら全魔人の命より陛下の命の方がよっぽど重う御座います。


是非とも前線立つなどお止め下さい。


私の変化に気が付かれなかったのか陛下が話題を転換なさいます。


「して、最近は親衛隊を見んがどうしたのだ?」


「辺境にて任務に就いております」


陛下に教える必要は無い。


きっと悲しまれるだろうから。


あのような人族(滅ぶべき種族)にすら御慈悲をお与えになる陛下が耐えられる筈はない。


陛下を守る為には軍拡が必要だ。


18年前以上の。


「全ては上手く行っております。ご安心下さい」


「うむ、分かった。任せたぞ」


「ハッ!」


陛下の『全ての命が平等』というお優しすぎる夢。


いずれ私が叶えてご覧に入れます。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



陛下と別れた後斥候から連絡を受ける。


「現在作戦準備が全て整っております」


かしこまる部下に短く指令を言い渡す。


「了解した。作戦に移れ」


「ハッ!」


小気味良く響く追従の声に満足しロレックは続ける。


「研究の方はどうなっている」


「剣、鎧、盾共に試作品はもう出来て居ります。増産体勢に移れるかと」


おお、速いな。流石はデューイ殿だ。


「素晴らしい。何時には行き渡る?」


「数が数ですので3年は掛かるかと」


長い……それでは意味がない。


「急がせろ。職人の宛はある」


確かドワーフに幾人か草がいたはずだ。


「ハッ!」


追従の言葉が響く。


「分かっていると思うが、決して陛下には悟られるな」


この外道なる研究結果は陛下には知られてはならない。


心優しい陛下はきっと心をお痛めになるだろうから。


「心得て居ります」


この者も私と同じ思いだ。


いや、おそらくは皆同じ思いだ。


我らが陛下をお護りするのだ。


何時までも陛下に護られてばかりではいられない。


何時までも役立たずではいられないのだ。


陛下が400万の責任を一手に引き受ける必要は無い。


我らが代わりに背負うのだ。


陛下を危険から遠ざける。


その為には後ろ暗い等と言っていられない。


「では人族(化け物共)に死を陛下(神)に祝福を」


我らの符丁の挨拶を最後に部下が去って行く。


去って行った方向を見れば何やら不穏な動きが見られる。


部下が何やら二人の男から詰問を受けているようだ。


しかもあの男からである。


まさか……。


その場所まで行き声を掛ける。


「その男は私の指示を受けておりますが……何か?」


その言葉に答えたのは相手の従者だ。


「文民は黙っておれ!テセト様が聞いておるのだ」


決して上位者に向けた物言いではない。


別に貴様に言った訳ではないのだが。


侮蔑のこもった一言だ。


軍思想に染まりきった者か……あまり話したい手合いではない。


「いやはは……困ったなぁ。ちょっと気になる事があってさ」


頭の裏に手を当てながらテセトが答える。


やたらに線の細い男だ。


いかにも気弱そうで人族にふさわしい。


「越権行為は困りますよ。例え貴方がいくら四天王だとしても私の方が地位は上なのですからね」


この言葉に従者の顔が一気に赤くなる。


「貴様!テセト様に無礼であろう!」


貴様が私に無礼だ。


幾つ階級が違ってると思ってる。


「ちょっとロイ、言い過ぎだよ」


「ハッ!出過ぎた真似をして申し訳ございません!」


テセトが少し言っただけで直ぐに最敬礼をとる。


やはり軍思想に染まっているな。


「とにかくこの男は私の部下です。使いたければ私を通して下さい」


「貴様ッ!」


この従者は学習をしないのか。


「あはは……ごめんごめん。そんな気は無かったんだ。ちょっと聞きたい事があってさ」


「ええ、気を付けて下さい度が過ぎれば報告をする義務が生じますので」


人族はやはり人族だ。なぜこんな地位を用意するのか陛下のお考えが全く分からない。


「うん、魔王様に目をつけられるのも困るしね」


魔王様と呼ぶな!


陛下と呼べ!


魔王等というのは人族が陛下に勝手に付けたあだ名だ。


「で、何をお聞きになりたかったのですか?陛下におっしゃりたくない事でも?」


「あっ、ううん。そんな大したことじゃないんだ。僕はちょっとメルト君の事を聞きたかっただけだよ」


メルト?知らない名だ。


「ああ、あのオメガの宿し主ですよ」


部下が私に答えを教えてくれる。


ああ、そう言えばそんな名だったな。


「知らないならいいんだ。ごめんね?」


そう言うとテセトは従者を連れて去っていく。


あの男……やはり信用出来ない。


どうすれば追い出せるだろうか。


早く陛下を危険から遠ざけなくては……。

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