14 メルト外伝 紅の墓標3
遅れてスイマセンm(__)m
この場所に掲載される予定だった優人の始まりは本編と時間が離れ過ぎたため
次回本編に書こうと思います
それと……
皆様反応を下さいッ!
寂しすぎて死ぬかと思いました
感想でも酷評でもポイントでもブクマでもなんでもいいので!
お詫びとして
後書きに魔王の副官のとある一日を記す事に致しました
冒頭のみですがお楽しみ下さい
貧しい。
というのが王都の冒険者ギルドを見た者の大抵の感想である。
年季の入った木造建てである会館は、所々崩れ、外と繋がっているのが見てとれる。
魔法具で外の天気に関わらず適温に保たれているはずなのだが、それでも少し寒いように感じられるのは気のせいだろうか。
最近、ギルド長の活躍の景気の波により冒険者ギルドは活気づいているが、それはここまで及んではいないようであった。
そんな質素と言うより貧相と言う方が似合いそうな会館は外見とは裏腹に中では喧騒が飛び交う。
オラ!酒寄越せ!
バカ言え!コレは俺ンのだ!
彼らにとってこの程度の建物は日常茶飯事であり、魔法具で適温に保たれているだけマシなのだ。
彼らが此処に居る理由としてはここが酒場も兼ねる以外にもう一つある。(これが一番大きい。と言うかほとんどなのだが)
それは情報だ。
顔繋ぎ、強者の情報、クエストの噂、罠の乗り切り方。
少し考えただけでこれだけのメリットがある。
少しの情報に命を賭けざるを得ない彼らにとって天上の鐘の音ともおぼしき物なのである。
ギルドにとって酔っ払いの世話という手間は増えるが、そんなもの金で冒険者を雇えば良いだけの事であるし(なにせここには冒険者が腐るほど居る訳であるし)、例えそいつが酔っ払っても違約金をたんまりせしめる事ができる。
外の酒場よりもかなり割高では在るが、そんなもの情報料と割り切れば安い物である。
因みにこの考えもギルド長の功績の一つだ。
始まった当初こそ費用等で赤字だったものの、今では収入の一翼を担う程の収益を誇る。
そんな喧騒の中で一人の少女が受付嬢に啖呵を切っている。
「何で!冒険者ってクエストを受ける人でしょう!?それでも冒険者なの!?早くしないとトルダが殺されちゃう!」
まるでレコードのように何度も繰り返すそのやり取りに対して些少ならずも辟易しているのか受付嬢は幼児に対する口調のそれに少し険がこもる。
「だからね?犯罪者を助けると言うことは出来ないの?あなたも野放しの犯罪者に殺されたりしたら困るでしょう?」
犯罪者を助ける。
普通の犯罪者だとて犯罪幇助として捕まり兼ねないそれを、貴族に対して犯罪を犯した者を助けようと言うのだ。
手打ちは確実だろう。
そんなもの誰が受けると言うのか。
クエスト等出すだけムダであり、出す事はギルドの評判すら下げることに繋がる。
詰まる所受付嬢の返事は自らの組織、ひいては自身を守るための返事であり、当然の返答であると言える。
「違うもん!犯罪者じゃないもん!家族よ!?お金ならあるの!」
そして少し動かすだけでジャラリと鳴る程中身の入った革袋をカウンターの上にドンと置く。
その浮浪児のような小汚ない外見とは裏腹に袋の口から溢れるのは金貨ばかりである。
空気が変わった。
それは好意的な物など欠片も無い。
例を出すなら、どうやって奪おうか、どうやって回りの奴を出し抜こうか。
と言ったドロリとした害意に満ちた物だ。
しかし、その意識も直ぐに消沈する。
否、雑多にある害意が一つに集約されると言った方が適切である。
何故なら一人の冒険者が動き出したからだ。
B級冒険者、ラタである。
通常であればそこらの軍隊の指揮官である大将すら敵わない圧倒的な上位者であるB級。
そのB級冒険者の中でも特に気性の荒いのがラタなのだ。
彼に目を付けられる位なら諦めるし、むしろ手助けをして顔を覚えて貰った方が利口な生き方だと言えるだろう。
B級と言うと少し間の抜けた雰囲気となるが実力としては震え上がるばかりである。
階級的にはG〜SS級の10段階在るが、現在オウルフ達が引退してから空席であるSS級、現在は存在しないS級見込みが審査の間だけ在籍するA+級や、町の清掃や御用聞き等の仕事の残念さやある程度の実力を示せば新人でも免除される事から上級冒険者からは冒険者扱いされていないG級等が有るため、上級から見れば7段階、実質的には8段階だ。
つまり、実際にいる冒険者の中で上から三番目に強い階級なのだ。
一般冒険者がD級であると言う事からすれば凄いことが理解出来るだろう。
この王都で言ってもB級冒険者は彼らのパーティだけなのだ。
冒険者全体から言っても千人にも満たない。
「お嬢ちゃん、その依頼はな。俺たちが受けてやるよ」
言葉だけ見れば非常に素晴らしい事故犠牲の様にも見えるが、顔は隠しきれない悪意のような物がうかんでおり、恐らく彼の中では既に彼女は金貨を奪われ弄ばれているのだろう。
受付嬢も見て見ぬ振りだ。
強い者にはへりくだる。
それがこの支部の本部に反するやり方であったし、弱者が搾取される弱肉強食なんて物はこの世界では日常茶飯事なのだ。
「ほんと!?」
普通ならその少女の生殺与奪は彼の手に握られるだろう……。
そう普通なら……。
しかし彼らが居れば話は別だ。
「オイ!ふざけんな!俺の手からも牛串取りやがったな!お前昨日の飯屋の事反省してねぇのか!」
「騒ぐなハッシュ……。今二日酔いなんだ……」
「反省はしてる。次は床に落ちきる前に食べきるつもりだ」
「大丈夫か?お前魔術師なんだから禁酒したらどうだ」
「反省してねぇ!頼むぞオイ!そんなんだからウチはトラブルばっかなんだよ!」
「量はそんなに飲んでない。どうも酔いやすい体質なんだ。それと禁酒させたいならメルトに言ってくれイグマ。半分はコイツのせいだ」
「それもそうだ」
「コレは俺のせいじゃない。文句ならオメガに言ってくれ。それと俺が何したってんだガルシア」
「お前……人に無理矢理飲ましといてそう言うこと言う?」
「ホ、ほらメルトくん早く行こうよ。こんな入り口で留まってたら迷惑だよ?」
「全くだ。お前は俺の主なんだからもっとしっかりしろ。酒で記憶を飛ばすな」
「みんな寄ってたかって俺を目の仇にしやがって!俺が何したってんだ!」
「色々?」
「ひでぇなオイ!誰か俺に人権をくれ!」
「そら被害者が言う言葉だ。加害者が言うんじゃない」
まぁ、この会話で分かると思うが一応、当時A級だったメルト達だ。
入って来た所から順に説明していけば、メルトとハッシュの二人の手には牛串が握られており、どうやらギルドに寄る途中で露店にて牛串を購入したようである。
単に牛を焼いて塩コショウを降っただけで筋ばったあまり味の無いものだが、メルトは安ければあまり問題は無いらしい。
ハッシュはメルトのついでに買っただけであろうが、それでも自分の物が取られれば人間誰しも怒りもする。
いつもの調子で声を荒げ、昨日の飯屋の件を叫弾した訳であるが、今回のみは事情が違った。
ガルシアが二日酔いだったのである。
二日酔い特有の頭痛に加えて更に横で大声を出されては堪ったものではない。
しかもそれがほぼメルトによってもたらされた(無理矢理飲まされた上の)二日酔いであればイグマに対して愚痴を溢したとしても仕方の無いことであろう。
飯屋に対しての反省も的外れであり、更に無理矢理飲ました事も忘れているようでは完全に加害者だ。
人権を!等と叫んでも認められる筈など無いのであった……。
一通りのバカ騒ぎが終わればどこか唖然としているようなB級冒険者を睨み付ける。
会話のヘルツが常に高い彼らであるが、トラブルに対して鼻が効く。
これもトラブルに巻き込まれ続けた一つの証左であると言えよう。
「ああン!?ガンつけやがって誰だてめぇは」
その言葉に至ってめんどくさそうに。
「あ?冒険者だよ」
ギルドに来ている時点でそりゃあそうだろう、と思う答えだが、案の定B級冒険者のラタは気に入らなかったらしい。
「ふざけんな!」
彼の怒りを体全体で表したような大振りの拳がメルトに叩き付けられる。
バシィ!
当然、そんな拳がメルトに届く訳がない。
顔に傷をつける寸前でメルトの手のひらに収まる事になる。
ザワザワザワ……。
今まで死んだなコイツ、と言う憐れみの満ちた目を向けていた冒険者達がにわかに騒ぎ出す。
ラタのパンチを止めたのだ。
それも二十そこそこの若造が、である。
「さっき……メルトって言ってたよな!?もしかして……本人?」
「バカ言え!メルトって言やぁあの夕碧のリーダーだぞ!」
A級と言えども二百人近く居る。
リーダーだけでも四十人程度。
とても覚えられないという訳ではないが、それでも少し大変だろう。
では、何故覚えていられたのか……。
夕碧の騎士団。
たった5年という短い歳月でA級まで登りつめた化け物であり。
更に最年少記録を次々と塗り替えていたからだ。
そして顔が覚えられていないのは昇級までがあまりにも早すぎたために他ならない。
閉鎖的な冒険者の世界では(噂はともかく)真実の伝達は酷く遅いものなのだ。
「ちょっと!この人手伝ってくれるって言ってたのよ!?酷いじゃない」
そろそろ反撃しようかとギリギリ拳を握り潰し始め、ラタが悲鳴を上げだした所で横の少女から待ったがかかる。
何となく被害者っぽいから救おうかと思ったのだがこうなっては余り助けようという気が起きない。
「はいはい。受けてやるから黙っとけ」
この投げやりな言葉に敏感に反応したのはイグマだ。
「ちょっっとぉぉぉおおおお!」
予めギルド内の会話を盗み聞きしていた彼としては犯罪者を救う等堪ったものではない。
「言質は取ったからね!」
ホクホク顔で念を押す少女とは違いイグマはの顔は真っ青である。
「貴族に逆らうってどうなるかわかってんのか!?手打ちとか普通だからな!?」
言いよるイグマにメルトはただめんどくさそうにするばかりだ。
「やっぱてめぇも俺と同ぽぺパガッ!」
俺と同じように少女を食いものにする気だったんじゃねぇか!正義面すんな、と言いたかったようだがそんな事を悠長に聞いていられるほどメルトは気は長く無い。
綺麗に壁にぽぺパガられた男を尻目にメルトは言葉を紡ぐ。
「そんな物、いくつやって来たと思ってる。ガルシア!」
ガルシアに怒鳴ると我が意を得たりとばかりに饒舌に語り出す。
「うい!多分ここらでそういうことをやるのは学院に通ってる子爵の子供だった筈だ。……小物だな」
「貸しは?」
更に聞くメルトに対してガルシアは不適に口の端を吊り上げると傲岸不遜を絵にかいたような口調で話し出す。
「あるよ。俺を誰だと思ってる」
「さっすが侯爵様!パーラ家の高利貸しの名は伊達じゃないね!!」
ハッシュが調子良く言えばガルシアの目が危険な程吊り上がる。
「お前……その名をどこで聞いた……」
ガルシアにとって社交界の金狼よりも嫌なあだ名である。
「えっ?パルタさんからだけど」
「後でコロス」
目がマジだった。
(世界の平和のためにパルタさんには生を諦めて貰おう)
あの目のガルシアに忠言を言うのは自殺行為である。
ハッシュは前にあの目になった時は周囲五キロが焦土と化したからなぁ、等と思い出しながら心の中でパルタさんに全力で同情しているとメルトは少し苛立っていた。
「んなことぁどうでもいい。で、どうするんだ」
「犯罪奴隷にして解放する。んで、本来なら費用が要るんだが……まぁ、そこは貸しを消費しても良いだろう」
流石に懐もそろそろ限界だしな、という現実的な側面からもガルシアは指摘する。
確かに最近弁償やらメルトの食費やらで懐事情が厳しいのは確かである。
「流石だな。パーラ家の高利貸し殿?」
特大の地雷を踏み抜いたのはバレインだ。
その瞬間、ガルシアは骨格が無くなったかのようにユラリとバレインの元へ薫り寄る。
貴族特有の青い目が、さながら夜の車のテールランプのように尾を引いていた。
「おいデカブツ、もう一度、俺の、目を、見て、言ってみな」
ザリッ。
ゆっくりと引き絞るように放たれた六つの言葉の弾丸は歴戦の戦士のバレインですら後退りする程の威力を有していたらしい。
「わ、悪かった」
絞り出すような謝罪の言葉にガルシアは息をついた。
「ふぅ、良かった。お前を殺さずに済んだ」
(あっ、言ったら殺す事は決定なんだ……。)
ガルシアにとって仲間を殺す程に嫌な物らしい。
ハッシュが案外近くに迫っていた恐怖に震えていると横から少女が。
「ちょっと!早くしないとトルダが殺されちゃうわ!」
という爆弾発言を投下する。
そんならこんな所に居るなや、という話ではあるが流石に無力な少女にそれを押し付けるのは酷である。
「それを先に言え!サッサと行くぞ!」
慌ててそのままギルドの外に飛び出すが、少女は栄養不足も手伝ってかちょこちょことしか歩けない。
「ああ!もう!」
焦れったくなったメルトは少女を無理矢理肩に担ぐ。
「ちょっ!放しなさいよ!」
重い荷物を持つような持ち方であり、少女は抵抗するが、哀しいかな、力の差は歴然だ。
「どこに行きゃあいい!?」
どうやら短気なメルトは行く場所も聞かずに飛び出したようだ。
全くもって呆れた話だが、まぁ、いつもの事と言えばいつもの事である。
走り出す前に聞いただけでも評価すべきである。
「広場!見せしめに殺すって!」
広場と言えばこの近くということになると奴隷売り場の横だ。
そこに向かって全員で走る最中ふと、メルトはあることに気がつく。
「そういや、まだ名前聞いて無かったな。お前、名前は?」
どうやらメルト名前も聞かずに依頼を受けたようである。
解決した事柄に名前も言わずに立ち去る、なんて良く聞く美談ではあるが、逆に依頼人の名前を聞くのを忘れるなんてあまりないのではないのだろうか。
まぁ、そんな珍事件にならなかった事を良しとするしか無いのだが……。
その疑問に少女は答える。
「ニトルネ!ニティって愛称を呼んでいいのはトルダだけだから!」
そこに関してのみニトルネは強い拘りを見せた。
メルトとしては別にどうでもいいという側面は捨てきれなかったが、それでも少女の家族に対する行動力を評価し。
「分かった。急ぐぞ」
とだけ短く答えた。
そうしてたどり着いた広場は……。
「何でこんな街中に魔族がいるんだよ!俺ののんびりライフは!?」
「てめぇイグマ!依頼の中でもサボるつもりだったのか!?」
「ハッシュ!黙ってろ!とっとと魔族共を追い返すぞ!」
阿鼻叫喚の地獄と化していた……。
魔王への人物評価は一種独特である。
何が独特かと問われればそれは評価の食い違いだ。
例えば人間達としての思いとして一番多いのは「怖い」である。
これは確かにそうであろう。
元々人間という種族は排斥が伴う生き物であり、それにのっとった物だ。
そしてその評価は間違っているという訳ではないが、あまり正しくはない。
もっと魔王に近づいてみよう。
とある元皇帝の評価だ。
アレほどの残虐な奴は見たことがない。血も涙も無いような奴だ。
この人物は魔王と数日程会っただけではあるが、この評価としては酷く的を得ている。
更に近づこう。
魔王副官ロレック。
あれほどのお優しい方はどこを見ても居られない。まさに天が我らに遣わせてくれた贈り物、いや神そのものだ。
そしてこの評価も正しいと言える。
魔王の評価が独特である。と言うのは、全く違う評価が全て的確に彼、魔王フォルダを表して居るからだ。
そしてその評価は彼に近しい者程評価が高いようだ。
何故そんな事が起こり得るのか。
その疑問に答えを出すためにロレックのある一日を見ていこうと思う。
次回ロレックのとある一日1(仮)




