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傾世の暗殺者異世界に物申す  作者: 伊賀良太郎
第1章〜魔王暗殺〜
13/107

13 S級VS傾世 (分身)

――――優人 視点――――――――



ウーンまぁ、お金の価値は実際に暮らしてみないと分からないか。


「では、勇者様に歓待の用意がございます。コチラへどうぞ」


さっきの貴族が料理がどうのこうのと言っている。


殺気に当てられたばかりなのに大した物だ。


ぶっちゃけ興味ない。


「ありがとうございます。しかし無作法者故にお見苦しいとは思いますので……」


はっきり口に出して言った訳じゃない。これなら色々と言い訳も立つだろう。


「心得ております。立食会形式のため多少不馴れでも差し支え無いと思いますが……」


ふーん。沢山貴族呼ぶから見極めさせろって訳ね。


で、貸し一つにもしたい、と。


させるか。


「出来れば余り人を呼ばないで頂けませんか?無作法をさらすのは少し……」


あまりというのがミソだ。


一人だったとしても多いと強弁できる。


「それは……お世話の観点からしてもご希望に沿いかねます」


そう来るしかないよな。


これで現状貸し借り0。


後はその中に利用できそうな奴が居ればいいんだが……。


「では、此方になります」


そう言って扉を開くが、イテナさんだけはそこに行こうとしない。


「どうか致しましたか?」


「ふん、そんなもの時間のムダだ」


凄い同感。


「しかし……」


「俺はサッサと依頼を片付ける。一月か、二月以内にはここに首を持ってきてやる。もし何か連絡が有ればコイツに言え」


そう言って白い金属板を地面に叩きつけるとそれが煙と共にイテナとそっくり同じに変わる。


「しかし……」


そんな貴族の声は届かなかったのだろうか。


「スキルか。少し試したいな」


等と呟くと窓から外に身を投げた(、、、、、)。


そう、飛び降りたのではなく後ろ向きに頭から墜ちていったのだ。


慌てて外を見るが、消えてしまった。


そう、城門に向かって走る姿もないし、屋根に掴まっている姿もない。

もちろん死体だってない。


文字通り忽然と消え失せてしまったのだ。


やっぱり逆らうのは得策じゃない。


だが腹を見せて転がろうが目障りだと殺され兼ねない。


やはり彼についての情報が欲しい。


それが今回の立食会にかかってる。


さて、戦闘(詐欺)開始だ。


――――イテナ 視点――――――――


十メートル四方が土がむき出しになっている中、俺たちは世間話をしつつ待っている。


現在俺たち勇者は兵士訓練施設だかに集合中だ。


何でも訓練だか教唆だか剣で遊びたいんだと。


教官だかが来る間、この何もない中待たねばならまい。


別に訓練で実力を見せるのは構わない。


本来なら身を隠す事を常とする夜の住人がこんなことを考えるのには訳がある。


それはただ単純に本体がやらかしちゃったからである。


いや、俺としては弁護したい。


何しろあんな凄いもの(スキル)があったのだ。


俺だって同じ状況なら狂喜乱舞する。


スキルの優れた点は、その技能を半自動的に行う事にある。


イテナの本体のスキル隠身を基に説明しよう。


自分を他人の意識にのぼらないよう工夫するのは裏の仕事をする者の常識だ。


一流の者なら気配を抑え、顔の筋肉を常に動かし顔の印象を目立たなくする等するだろう。


そのお陰で顔を反らした次の瞬間に顔を聞かれても覚えていない、等と言われるのだ。


イテナはこれくらい出来て当然等と言うがかなりの高等技術である。


だが超一流たるイテナはその程度ではない。


先ほど言ったのは人の意識にのぼっても覚えさせないための技術である。


本来イテナは人の意識に捉えられる事はない。


そのための技術としてまず死角、盲点に入り込む事。


人の後ろを素早く通り抜ける技術だ。


ある意味暗殺者としての基本技能とも言える。


ただし、それは上や外から見れば不自然極まりない動きをすることになる。


そこでイテナが編み出したのが現代社会でサブリミナル効果、又はマインドコントロールと言われる技術だ。


相手の無意識を統制し、意識下の行動を誘導する。死角に入り込むのではなく死角を作り出す。


しかも端から見て不自然に見られないように自身の動きは最小限で素早く、だ。


イテナは知らない事だが、テレビでよくやる相手を誘導して特定の行動をさせる、という行為でも特定の色のペンを取らせるだけでかなりの行程や言葉を要する。


それを歩いているようにしか見えないように差し込むのだ。


想像を絶する労苦だろう。


更に言えばそれが出来るのは一人二人。


相手の人数によって難しさは跳ね上がる。


不気味の谷ならぬ絶望の海だ。


そしてそれをイテナは克服をした。


どうしたかと言うと空白を作るサブリミナルと同時に他の人物にマインドコントロールとなる行為を行わせるサブリミナルを組み合わせたのだ。


瞳孔、筋肉の位置、さらに腕の動き、高周波の発し方、すべてが少しでも違えば見つかるような不可能とも言える物だ。


しかしイテナはそれをものにした。


更に言えば上、外から見られてもいいように印象を薄くするよう顔の筋肉を常に変え、更に骨格、身長すらも印象に残らないように骨を絶えず動かすのである。


魔力察知される可能性のある魔法は使わないし、サーチに引っ掛かる体外に排出される魔力は体内で循環させサーチに引っ掛かる事もない。


この誰にも気付かれずに動くこの歩法をイテナは『ステルス』と呼んだ。


彼のいくつかある奥義の内の一つである。


そしてそれを無意識に行えるようになるまで習熟させた。


しかし、そこにスキルというものが入ると一変する。


半自動的に行うのだ。


その効果は本体を狂喜乱舞させるに相応しいものだ。


例えば、ステルスをするには些細なミスさえ許されない。


視線把握、筋肉運動、視線誘導。


その全てを膨大な計算を元に行わなければならない。


Aは今右を向き3秒後に振り向くからその前にBにこちらを向かないようコントロールとAにこちらを向かせないようにするサブリミナルを送るように誘導して、BがAに送っている間にCに……といった具合だ。


しかし、スキルを使えば隠身というスキルをオンにするだけで事足りる。


オンにしながら歩くだけで勝手に回りが見失うのだ。


これ程凄い物を前に平静を保てるだろうか。


少なくとも今まで苦労して来たイテナには無理だった。


そして目立つというのは次善策だ。


かなり目立ってしまったためにもう一度潜るのは不可能。


そのために光を集め潜みやすいように影を作ろうとしたのだ。


更に表の世界からのこの世界の強者の確認。


最悪分身である。


いくら本体の1/10のスペックと本人と同様の記憶、思考能力を持っていたとしても捨て駒である。


殺されてもいくらでも代えは効くのだ。


そんな事よりも本体が使えて分身である俺がスキルを使えない訳が分からない。


つまり俺は自力でステルスをするしかないのだ。


まぁ、常用してたから大した苦労じゃないんだが……。


ん?そろそろか?


「皆さんオハよッス」


「何がお早うだ。貴様のせいで昼近くになったんだろうが。勇者を待たせる私の身にもなれ。王太子に報告するのは私なのだぞ」


現れたのは対照的な二人の男女。


一人は常にヘラヘラした軟派な男。服装もどこか乱れている。昼近くにもなるのにさっきから欠伸を連発している。


もう一人は背筋はしっかりのび、黒に身を包んだ女。その眉根のシワが美人であることを台無しにすると共に他人に対する厳しさを感じさせる。


「えーと貴方達は……?」


正也が聞くと男の方が答える。


「ああ、スンマセン。皆さんの訓練のお手伝いとこっちが本命だと思いまスけど顔繋ぎッスね」


口調程謝る気がないのか常にヘラヘラしている。


「すまない。コイツはいつもこうなんだ。大将のサリナだ。宜しく頼む」


「同じく大将のバナーッス。ガンガン行くんで覚悟をお願いしまッス」


この言葉に咲良が応じる。


「は、はぁ……お願いしまッス?」

乗せられんな。


「でも、俺らの相手はメルトさん達じゃあ無いんですか?」


その声にバナーは声を荒げながら応える。


「バカ言わないで欲しいッス。S級なんて戦士からしたら憧れなんスよ!そんな人たちに握り方から教わるなんてムリッス!」


「で、実際の所は?」


肩に手を置きながら言えばバナーはスラスラと応える。


「いやー、こっちに顔出せば書類仕事は部下に投げられるんで!出来ればサボりたいじゃないッスか」


「ほーう」


その獲物を観察するような目にようやくバナーは自らの失態をおかした事を知ったらしい。


「し、しまったッス!で、でもS級に憧れてるのは本当ッスよ!?」


「その割りにはお前、この間盗賊んとこのS級パーティの一人を足蹴にしてなかったか?」


静かなサリナのツッコミにバナーの目が泳ぎだした。


「ハハ、ハ、な、何言ってるッスか。ちょーウケるッス。俺が勝てるわけ無いじゃないッスか」


「いや、圧勝だったじゃないか」


その言葉にバナーは大きく目を見開いた。


「ちょ、み、見てたんスか!折角不可視結界の中で闘ってたのに!」


「やっぱりそうだったんだな。道理で報告書がおかしかった訳だ」


「だ、騙したんスね!酷いッス!」


「引っ掛かる方が悪い」


冷静に切り返すサリナにバナーは最早涙目だ。


「こっ、この行き遅れ!アンタなんか一生仕事を恋人にしてればいいんスよ!」


「だろうな。それがどうした」


「ぐぅ、ぐぅぅ」


この返答は予想外だったらしい。


反論する手立てを失っているようだ。


「何故実力を隠していた」


「ひっ、人には色々あるんスよ!」


「私は話しただろう」


幼子をあやすように頭を撫でながら聞けばバナーは語り出した。


「実は昔……」


話し出す瞬間。


「うーい!すいません遅れましたー!」


ハッシュが乱入してきた。


「あ、ハッシュさん!じゃ、説明はしといたんで!後は宜しくお願いしまッス!」


それだけ言うとバナーは風のように逃げ去っていった。


S級を生け贄に捧げたその後ろ姿には憧れという文字は全く読み取れなかった。


「え?」


「チッ!」


その音の方を見ればサリナがキョトンとしているハッシュを親の仇のように睨み付けながら舌打ちしていた。


「え?」


とりあえず……何だこの空気。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「お前な、人の邪魔する奴は馬に蹴られて死んでしまえ、って諺聞いた事あるか?」


サリナは完全に説教モードに突入していた。


「いや、ホントすいません!まさかそんな空気だとは……」


平身低頭して謝る姿には不覚にも同情してしまったし、完全に目の据わったサリナの顔は単純に怖かった。


俺が分身とは言え生命の危機を感じたのはいつ以来だろうか……。


確かに戦闘になれば気づく前に殺れるが、事はそういう問題ではない。


矛先が自分では無かった事に安堵しながらハッシュの後に集まって来ていた他のS級を観察に徹する。


情報は手に入っている。


これだけの時間があったのだ。調べない方がおかしい。


「メルトさんはどうしたんですか?」


優人も同じ事をしていたようだ。


ここに来ていたのは五人一人足りない。


「ああ、奴は墓参りだよ。王都に来ると必ずいくんだ」


イグマが此方をチラチラ見ながら応える。


ん?あいつも夜の匂いがしたし探っていたのがバレたか?


「私があいつの心を開くのにどれだけかかったと思ってるんだ」


「はい……」


「部下に八つ当たりしてくるとする。勇者の訓練をやっておけ!」


「はい……」


ドスドスと立ち去るサリナにお辞儀で見送るハッシュ。


二人の主従は完全に決まってしまったようだがハッシュは数秒で立ち直っていたし、良しとしよう。


ようやく説教が終わったので自己紹介となる。


と、思ったがその前にイグマが此方に近寄って耳元で囁く。


「アンタ、ちょっと顔貸してくれ」


ん?別に良いが?何の用だ?


「ガルシア、悪いけど後頼む」


とりあえず別の場所に移動しようとするイグマについて行く事にする。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「アンタ、あの時の盗賊だろ」


小さいコロシアムのような場所で向き合うイグマが唐突に切り出してくる。


「?、何の話だ?」


「惚けんな、足の運びが同じなんだよ」


本気で分からないんだが。確かに向こうじゃ盗賊連合会を組織したが、別に積極的にはやっちゃいないし、世界も違う。


コイツと接点なんか無いんだが……。


イグマがタガー二本を構えながら吐き出す。


「ふん、あくまでしらをきる積もりなら、力づくで聞き出すまでだ!」


ゴゥ!


という音と共にイグマが一瞬で巨大化する。


凄いスピードで迫って来たのだ。


困ったな。


コイツは俺(分身)のスペックの倍はある。


唯一スピードだけは少し勝ってるが、他は全部負けてる。


攻撃の重さなんか目も当てられない。


それに装備の差も激しい。


こっちは魔力を固めた小刀二つだけだ。


そんじょそこらのナマクラには負けないと自負しているが、所詮は二、三流が良い所だ。


対してあちらはなんか元の世界の物より鋭そうじゃないか?


一体何を使ったらそうなるんだ?


だが、まぁ、自分よりも強い相手を殺すから暗殺者って言うんだがな。


スカッ!


イグマの刀が俺ではなく俺のいた場所の空気を切り裂く。


残念。ハズレ。


後ろから切りつけるが、イグマが即座に前転したため背中を浅く切るだけに留まる。


首から下を切り落とす積もりだったのにな。


意外と革鎧が硬いな。


「転移だと!?空間魔法は伝説だったはずだ!消費がかなり抑えられる召喚の儀式でさえ何十人の魔導士が必要だと思ってる!?」


知らんよ。


それからも順次剣閃をさばいて行く。


いくら攻撃力が違うとは言え受け流せばどうとでもなる。


「くっ、≪影分身≫!」


イグマと影分身で四方から同時に打ち掛かられるが一太刀も浴びる事はない。


危なくなったら転移で逃げれば良いだけの話だし、別にこのままでも十分対応出来る。


「何故だ!」


「経験の差って奴だ」


確かに速いし、一撃の威力も高い。


だが、その程度だ。


最初の数合で動きの癖は大体読めた。


次に来る場所が分かれば避ける事など容易いし、それにその隙をついて攻撃すら入れる事も出来る。


そうすれば怯んだ隙を突いて分身を始末すればそれで終わりだ。


そして一瞬後に喉に刀を突き付ける。


「クソッ分身でもコレか!こんなの頭領以来だ!」


ん?分身?


ああ!成る程!


本体の知り合いか!


本体も困るな。因果は自分で断ち切っといてくれ。


しかしサシで良かった。

パーティで来られたら勝ち目は無かったみたいだしな。


「さて、戻ろうか。ああ、この事は内緒にしておけ。いいな」


魔力エネルギーを存分に使って脅しをかける。一般人なら死んでもおかしくはない。


「俺たちに危害は加えないだろうな?」


睨み付けられるが痛くも痒くもない。


「ああ。益もない」


誰がそんな一銭にもならない事をするか。


「……そっちが守る限りは秘匿してやる」


「それで良いさ」


じゃあ行くぞ。時間の無駄だ。


「それと、あん時スッた金貨返せ」


「……それは本体に言ってくれ」


成る程。道理で革袋の中に金貨が無かった訳だ。



えーと、今回出てきたサリナとバナーは覚える必要はありません

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