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傾世の暗殺者異世界に物申す  作者: 伊賀良太郎
第1章〜魔王暗殺〜
11/107

11 夢魔の主

優人の始まり



――――優人 視点――――――――



気付いたらそこにいた。


取り合えず二人の安全確認。


……大丈夫みたいだな。


酷く時代錯誤の甲冑を来た不審者達から二人を守るように動く。


そこでようやく安心し、周囲の観察に移る。


真っ赤な絨毯にシャンデリア。かなり豪華だが少しでかいホールのような場所だろうか。


最後に覚えているのは、殺人事件に巻き込まれそうになった記憶。


最後に男に殺されそうになり、その瞬間光に包まれた事。


見た瞬間GALがついに二人をターゲットにしたかと思ったが、男にしろこの突然場所が変わったのも俺なら気付いていたはずだ。


可能性は低い。単純に咲良がトラブルを引き込んだ可能性の方が高いくらいだ。


とすると他が原因か……。


言葉は通じるようだ。しかも日本語で。


口元をみれば明らかに日本語ではないため、何らかの力が働いていると見られる。


女が勇者がどうのこうのと言ってるが、どうも話を聞いていると異世界らしいな。


話としては良く分かる。

正也に勧められてゲームをやった時にもそういう設定はよく出てきた。

……が、正直興味の無い話だ。しかし優しい二人は断らないだろう。生活の拠点を移すとして、二人の衣食住に頭を回しながら適当に話しながら聞いているとある一つの言葉が俺を貫いた。


特殊な能力をお持ちとのことで……。


ギクリ。まさかコイツ地球での生活とか盗み見てんじゃないだろうな……。


心当たりがありすぎるんだが……。


ステータスについては特に問題無い。魔力について分からなかったが為に少し時間がかかったが、その程度だ。


自らにある不可視のエネルギーを見つければ後は早い。

そのエネルギーを捧げるだけだ。


どこかに管理しているものが存在しそうだな。


二人は苦労してるがどうとでもなるはずだ。


しかし、スキルの事を聞いた時に異変は起きた。


後ろを……振り向けない。


部屋の温度が下がる。重圧を感じる。肌に刺さる程の殺気。



……そんなものじゃない。


地の底に這いつくばるような絶望。


恐怖だ。


知らぬ間に後ろにスッと忍び寄るような根源的な恐怖。


ドロリドロリとしたまとわりつくような恐怖は振り向く事を拒否する。


振り向いたら、姿を見たら、目を合わせたら……。


俺の目の前に存在する事全てが、変わってしまうのではないかという恐怖。


その根源的な恐怖に俺は出会った。


どうやらその恐怖はイテナと言うらしい。


勇者召喚され俺達と同じ立場のようだ。


その事に対して頭によぎったのは三つ。


この恐怖と一緒に過ごす事の絶望。


コイツを利用して二人の安全を確保出来ないかという打算。


そして、コイツが魔王なんじゃないのか?という疑念。



この三つの思いは直ぐに打ち破られる事になる。


何故ならこの男は魔王暗殺を引き受けると言ったのだ。


しかも、一人で。


自作自演だとしたらもう少しマシな奴を選ぶだろう。


恐らく勇者なのだろう。


……信じがたい事に。


そしてその報酬のお金は金貨等が使われるようだ。


これは価値を知っておかなくてはならない。


「その金貨というのはどのくらいの価値なんですか?」


本来ならこんなカモ丸出しな質問は騙されるだけなのだが、隣に自動恐喝機がある場合は話が別だ。

他の場所ではまず聞けないし、ここで聞いておくべきだろう。


「そっ、そうですね。価値というのは難しいかと……」


まぁ、そりゃそうだ。

マルクスも金は沢山の動物の中に動物という概念が歩いている事だとかなんとか言っているし、これ程表しにくい事もないだろう。


チラチラとイテナを窺いながら話す貴族に同情しながら更に聞く。


「どういう種類があるのかと、それで何が買えるのかと、貨幣同士の価値基準で結構です」


「それでしたら。そうですね、種類としては価値の小さい順に鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨とありましてそれぞれ十枚で次の硬貨と同一価値とされます。

それで買えるのは……」


……少し覚えきれないな。


「すみませんメモを取るので少し待って貰って良いですか?」


「あっ、どうぞ」


ポケットを探って手帳を探して見るとボールペンが無い。


あちゃあ〜。


あのドンパチで落としたか……。


確かに激しかったし、今着ている服に汚れが無いのも、破れてないのも、自分に怪我がないのも本来おかしいのだが現実的に学生鞄ごとない中で筆記用具が無いのはキツイな。


「正也、何か書くもの貸して」


「書くもの?」


何も入れていないのに胸ポケットから探すのは正也の癖だが今回は違った。


「あれ、ごめん。何か入ってた」


胸ポケットから出てきたのはボールペン。


しかも……俺のだ。


……おかしい。


落とす事は可能性としてはいくらでもある。


しかし、それが人のポケットに入る等天地がひっくり返っても無理だろう。


明らかに人為的な物だ。


仮定その一、誰かが盗んでポケットに入れる。


第三者は却下。

俺に気づかれずにポケットから抜き取り、正也に気づかれずに胸ポケットに入れる等普通に考えて不可能だ。


最有力は正也。

しかしこれも却下。

動機も無いし、胸ポケットから出した表情からしても無い。


そもそも正也が俺に気づかれずにペンを抜き取るなど不可能だ。


俺の感覚は磨かれてるし、非常時なら兎も角、普段は無理だろう。


仮定その二、俺の意思による移動。


物覚えはいい方だし今日の事だ。


忘れる訳がない。


が、これが一番確率が高い。


鎌をかけるか。


「なぁ、正也、俺に何か隠してる事ない?」


「いやぁ、何も?」


瞳孔の開き具合、呼吸の乱れから嘘だな。


問題はどんな隠し事か、ということだ。


「そう言えば、お前、今日随分静かだな。本来ならもっと取り乱してもいいんじゃないか?」


「えっ、そりゃあ男に銃突きつけられたりして……混乱してたし」


目線と爪先が横にずれた。どうもここから逃げたいらしい。


さて、一か八か。


「そうか……俺、記憶無くしてんだな」


「なっ……」


大当たり。


短期間だけの記憶無くしてんだ。自然になった訳じゃあるまい。


「全部話せ、」


取り合えず最後にボールペンを確認したのは今日の放課後、明日の予定の確認のためだ。


「あの男の辺りから全部だ」


そして俺は全部聞いた。


神に会った事、俺を生き長らえさせるために3人でこの世界に渡った事。


「結論として、お前ら騙されてるな」


「「ええ!?」」


「恐らく男も神の手先かなんかだろう」


自分で貶めたのを自分で救って、親密度を上げる。

詐欺の常套手段だ。


しかも自分で決めさせたように見せてその実他に選択肢がない。


「どうして分かったの?」


「恐らくその苦しんで肩を揺すられた時に記憶が無くなる事を見越して正也のポケットにボールペンを忍ばせたんじゃないかな。もちろん、フェイクも使ったんだろうけど」


「何か…。やっぱすげぇな優人」


「いやぁ、多分賭けだったと思うよ?」


多分フェイクは血文字かな?

手帳が強引に破られてたし、金具の部分に血がついていた。


まぁ、何て書いたかかはそれこそ神のみぞ知るって所だけど。


さて、クソ神。


貴様は俺の敵認定だ。必ずこの借りは返すからな。



――――貴族シスクス 視点――――――――


舞踏会の後、密かに執り行われている貴族の研鑽会。


元々ここに集まっている貴族達には似合わない会だが、はりつめたような静寂がそれにも増して建前という言葉を強く教え込んで来る。


ここに来て静寂がこの場を支配しているのには訳がある。


それは単純に言質を取られない為だ。


たった一言でどんな派閥につけられ、どんな噂が流れるか分からないのだ。


現状、貴族が力を持っている為に社交界は足の引っ張り合いの様相を呈している。


例えば、ある貴族が酒の席で無礼講だ。と言って悪口を言ったとする。


それが格下の貴族ならまだいいが、格上となると大変だ。


これは忘れろよ?と言って貴方の悪口を言ってきた。きっと貴方を蹴落とす腹積もりに違いない。と密告される事だって無いわけではない。


狭い社交界。一度沈んだらもう終わりだ。


代が変わっても誰それの息子だとして不利益を被る事になる。


故に最初は探り合いとなる。


誰が誰の派閥か、この派閥に対してこの言葉は言っても良いか。


キチンと言葉を整理してからでなければ主導権を握る事は出来ない。


「さて、では此度召喚された勇者、皆さんはどうお思いですかな?」


主導権を握ったのはヒキガエルのような太った伯爵だ。


しかし主導権は薄い。というよりほぼ投げ出してると言って良いだろう。


このままでは話が進展しそうにない……。


仕方ない。私が一石投じるか。


「私は素晴らしいと感じましたよ?」


本来ならこの程度の言葉では彼らに対して不敬では?と思う程に素晴らしいダンスだった。


派閥に縛られたこの身がが恨めしい……。


そんなつまらない物さえ無ければ素直にこの喜びを分かち合えただろうに……。


「特務を任された者が言うとは……。確かにそれだけの事はありますな」


王太子派閥の私の言葉に四大貴族のブラームス卿が同意する。


ほぼ対立している二つの派閥が同じ意見という事でどうもなる事は無いだろうと一気にそちら側の話題にシフトする。


「ええ!宵闇の勇者殿はまさに勇者と呼ぶに相応しく、気品ある立ち回り!神が舞い降りたかと思いましたぞ!」

「いやいや、何をおっしゃるシャクト卿!素晴らしいのは守護の勇者殿ですぞ!あのお相手を素人と感じさせないエスコート!こんなことはどの貴族でも出来ますまい!」


本来なら覚えを良くして貰う為の台詞なのだろうが心がこもっているように聞こえたのは気のせいでは無いだろう。


心なしか二人の顔は興奮で上気しているし、聞いている者も大きく頷いている。


「斬滅の勇者殿もわしら程ではないとは言え合格ラインじゃろう。どうやら中々侮れませんな?」


そう、斬滅の勇者殿も悪かった訳ではない。


多少ぎこちなくはあったが、基本は押さえていたようだし言葉が通じないという程でもないだろう。


「付け入るとすれば慈愛の勇者辺りであろうか……」


このブラームス卿の言葉にシャクト卿が思い出したように続けた。


「ああ!あの、何度も転びかけていた!」


どうやら二人の印象が強すぎて、忘れていたらしい。


本来なら貴族にあるまじき行為だと眉をしかめるべきなのだろうが、どうもそういう気になれん。


それ程素晴らしかったのだ。


寧ろ覚えていたブラームス卿を讃えるべきであろう。



ふぅ。さっさと帰って今宵の余韻に浸りたいものだ。


こんな会はさっさと終わってくれないだろうか……。


大いに盛り上がっている様子からするに後2時間は帰してくれそうにない……。


――――王太子グレン・パルメノ・リコール=ヴァインズ 視点――――――――



私は着替えに付いて来ようとする侍女に今夜は気分が優れないため休む。と断り、一人で執務室に向かう。

確か仕事が少し残っているはずであり、それを終えれば今日の予定は終了である。


明日に回す事は避けたいのでちゃっちゃっと済ましてしまおうと上品なしつらえの扉を開ける。



……大変稚拙であるのだが、ここは一つ擬音の力を借りたいと思う。



ドドン!!



そこにあったのは丈夫な造りの机の上に置かれた羊皮紙の山!山!山!


つまり仕事!仕事!仕事!


思わず頭痛のする頭を押さえながら天を仰いでしまう。


神よ!!私が一体何をした!?


……全く、一体何をどうしたら私が居なかった3時間程度の時間でこれ程の仕事がたまるんだ!!



しかも私は未処理の仕事は右に置き、終わった物から順に左へ積み上げていってるはずだ。


しかし現状として左右関係なくうず高く積まれている。


つまり未処理、処理済みの物を分ける事から始めなければならないのだ。



余計な仕事を作ってくれた羊皮紙を運搬した者に心の中であらんかぎりの悪態をつき、束を確認していく……。



……ない。…ない。ない。ない、ない!ない!ない!!


処理済みの物が……ない。


えっ?


えっ?


今日中に全部やれと?


嘘だろう……。


取り合えず、悪態を付いていても仕方がないので床も使って机の右側に全て置きさっそく一束に目を通し始める。



次いでに愚痴もこぼしていく。


「はぁ、誰も彼も私を苛めて一体何が楽しい……そもそもこんなに仕事があるのはクソ親父のせいだ……。

好き放題権力使いやがって!誰が尻拭いすると思ってんだ…っ…!

女の尻ばかり追いかけ回しやがって!今は男子は俺だけだから助かってるが男子でも生まれたらどうすんだ!

一気に世継ぎ問題だろうが!

しかも貴族政策なんぞ取りやがって、脳みその腐った貴族に何が出来る!!重税に貴族の不始末!暴動が起きるぞ!これ!」



そして案件を注意点を書き、差し戻しにする。そして次の案件に目を通す。


「大体からして選民意識が強すぎるんだよ!

貴族だけで国が回る訳ないだろう!

案の定私の所に仕事が集まっているではないか!誰かあのクソ親父を暗殺してくれないものか……」


いや、暗殺は仕掛けたのだ……。

失敗してカウンターアサシンを置かれたが……。私の名前が出なかった事が幸いか……。



そして案件に了承の印を押し、次の案件に目を通す。


「暗殺してくれたら名前を変える事を条件に即時釈放してやろう!

いや、それどころか重臣として一生重く用いてやる!

フフフ、それで私が王となった暁には選民意識の強い貴族を濡れ衣を着せて葬り去る。

そこら辺りは奴らに任せて置けば良いだろう。

そして空いた席に優秀な平民を乗っけてやる!

暴動は収まるし私の仕事は減る!」


所詮叶わぬ夢だろうが……。どこかで失敗するのがオチだ。

それでも夢くらい見てもいいじゃないか……。

ちょっとくらい許してくれ……。



ポン!了承の印を押し、次の案件に移る。



「貴族も貴族だ!

今勇者がどうのこうのと話合っていたが、そんなの全く意味がない!

大体からして今回は勇者召喚の必要は無かったのだ!

勇者など呼び込まなくともS級を幾つか入れた編成に引退したオウルフ等一人にご足労願えば済んだ話だ!

そのS級がやられた時の私のクソ親父を見直した時間を返せ!

夢魔がやられた時に気付いたわ!

イテナ!!

どう見てもこいつじゃないか!

厄介事だけ呼び込みやがって!!

後処理する方の身にもなれ!」



差し戻し部分を細かく書きもう一度持って来るように書き入れ、次の案件に移る。



「問題なのは夢魔で調査する事を提案し、実際に実行した貴族が殺されている事だ……。

いや、報告書では心臓の病とのことだが絶対にコイツの仕業だ。

賭けてもいい。

こんなのと事を構えるのは危険だ。

まずはご機嫌を取って……。

あー、頭痛い。

冒険者ギルド長みたいな天才的な頭脳少しでも分けてくれないだろうか……。これでも毎朝ギルドに向かって少しでもあやかれるようにお祈りしているんだが……。

今のところ余り効果は無いな」



ポン!了承の印を押し、次の案件に移る。



冒険者ギルド長。

それは私が唯一尊敬する人物である。


天才的な頭脳を有し、支部長会によるギルド長任命を6期連続で満場一致にて任命されている。


こなす仕事量は他を圧倒し、多方面で活躍するも交渉は彼の専売特許とも言える程の才能を有し、最大兵力の譲歩を引き出す。さらに傭兵のような活動をしているS級との交渉は最早伝説と化している。


いまだ会った事はないが、是非ともお会いしたいものだ。



ポン!


「畜生。全く終わらないな……ハハ……これはまた徹夜かな」


こうしてまた彼が眠る事なく夜が更けていく……。

遅くなってすいません!m(__)m

前書きを本編の中に入れなかったのは優人の方が主人公ぽかったからです。

まだ優人の暗躍は続きますのでよろしければお読み下さい。

本当に遅れました。すいません!

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