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傾世の暗殺者異世界に物申す  作者: 伊賀良太郎
第2章〜災王軍襲来
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102 二つの被害

『だからだな。私が聞いているのはだ。何故貴様と私がこう離れて居るんだ!合同の捜査では無かったのか!』


そんなサリナからの説教にバナーは真面目そうな顔をしてコクコクと適当に頷く。表面的な内容は聞いているのだが、説教の怒りの部分には一切関知しない。こういう反応が出来る様になったのも、ヴァインズの騎士団に入団してサリナと一緒に過ごすことが増え、結果的にこういった説教されることが激増したからである。お陰でどうすれば怒られずに済むか、ではなくどうすれば反省している様に見えるかについて上手くなったのは自然の帰結だろう。


『オイ!聞いているのか⁉︎』


サリナが魔法具の水晶からはみ出んばかりになって怒鳴っている。相当向こうの水晶の真ん前に顔面を突き出しているのだろう。かなり怒っている証拠だ。


「いや、聞いてるッスよ。だから言ってるじゃないッスか、合同に調べるったって事件現場が2つあるんスから一緒に回るより2つの隊で別々に調べた方が効率的でしょう?」


『何だその言い草は⁉︎私をバカにして居るな!知って居るんだぞ!

だいたいお前という奴はだな!この間だってふらっと2週間も留守にしたかと思ったら帰ってからも散々私と会うのを避けてただろう!私がどれだけ心配していたか!私がどれだけ寂しかったか!帰ったら直ぐに顔を出せ!いつもお前は報告しない!勝手にふらっと何処かへ行って傷をこさえて来るんだ。待ってる此方の身にもなれ!お前は昔っから変わらない!同期の時だってお前は……』


サリナはこの間、と言うが2年ほど前の話であり、バナーが未だ将軍になって無かった頃の話である。バナーとしては一々昔の話を、という気分であり何度も釈明をしたことである。本当は1週間もしない内に戻る予定だったのが、ちょっとだけ目算が狂ってしまっただけの話なのだ。


「いや、だって会ったら怒るじゃないッスか」


『当たり前だ‼︎

いいか⁉︎私は何もお前が憎くて言ってるんじゃ無いんだ!

……いや、むしろ憎からず思ってるからこそこうして心配させるなと忠告を、だな……』


急にどもどもと水晶にサリナの全体像が映り、顔を背けているのが見えた。勝機と見たバナーはさっさとこの説教にケリを付けようと話をぶつ切りにする。


「あー、ハイハイ。分かったッス。んじゃ、こっちも捜査があるんで。お達者で!」


『えっ、いや、待て!おい、まだ私の話は終わって……』


まだ向こうでサリナががなっていたがバナーは勢いで通信を切ると、数秒して直ぐに同期を促す水晶の振動がして、更にその数秒後には短文送信のメッセージ魔法まで届き始めた。着信音が煩かったので通信妨害の札を貼っつけて無視する。


「んじゃ、水晶頼むわ」


外向き用の顔を捨ていつもの心持ちきりりとした顔になるとバナーは水晶と台を近くに居た者に預ける。本来水晶による通信は据え置き式のかなり大規模な魔導装置が無ければ発動しないのだが、これはそれをかなり小規模化したもので非常にデリケートかつ希少であり、それを整備する者が常に側に必要なのだ。そのためヴァインズではかなり位が上の者でしか扱えない。

バナーが頼むと台の前にやって来たのが20歳を少し越えた辺りの女性である。


「はいはーいはーい!このバルネクラス・サルネスト・ルチルネにお任せー!」


バカみたいな名前だが、これでいてこの国1の魔道工学技師である。恐らく全地域でも1、2を争う実力を持っているだろう。かなり顔立ちが整っており、これで性格が良ければ言うこと無いのだが。魔法具キチで、魔道鍵の試作品を盗られた時の荒れっぷりを思い出すとげんなりするが、ここで愚痴っても仕方ないだろう。


「さて、仕事に戻るとしまスかね」


部下にしっかり見張っとけよー等と冷やかしながら現場に行く。今回バナー達第2騎士団に与えられたのは洞窟の一部崩落調査。既に調査を始め盗賊ギルドのアジト本部であることは判明している。サリナは勇者が仕留めたという盗賊ギルドアジト調査だ。一応二手に分かれるという事でバナーは一応抑えて置いた場所の1つであったので、まさかと思って此方を選び調べに来たのだ。

そしてその結果はーーーーーーー。


「ひっでぇな。こりゃ」


惨状。


その一言に尽きる。

手足の吹っ飛んだ死体。頭を千切られた様な死体。焼け焦げた死体。持ち主の分からない腕が天井の照明具に引っかかりそこの下には硬くひび割れた血の跡。死体の周りに広がる濃い赤がこの洞窟を斑らに染め上げている。

正直あまり見たく無い類の光景だった。


「この状況作った奴の神経疑うね。マトモなヤツじゃない」


うっかり本性が出てしまい辺りを伺う。近くには誰も居ない様だ。一応雑な偽装なのでそこそこバレている様な気がするが、それでも怠る理由にはならないだろう。


「ん?コレは………?」


洞窟の壁や天井、地面のあちこちに尖頭型の小さな穴が沢山空いているのに気付き、その1つに顔を近付ける。


「何だ?コレ」


注目しているバナーの後ろ。もやの様なモノが彼に近づく。


「ん?何?父さん」


バナーが後ろを振り返ると、そのもやは屈む様に小さくなり近くにあった他の後をなぞる。


「………………」


「ふーん、ジュウコンねー。何?それ?」


「………………」


「ジュウ、ね。何か物騒だなぁ」


バナーが呟くと同時に廊下の方からドタドタと走る音が反響し、それを察したもやは消える。

その直ぐ後扉が開かれバナーの部下が勢い良く流れ込んで来た。


「どうしたッスか。そんな慌てて」


息を切らしてヘタリ込む兵士にいつもの調子で声を掛けると兵士は堰を切ったように話しだした。


「ご、ご報告が!勇者がぁ、勇者が魔王を討ち取ったとりましたぁあああ!」




「は?」




「はあ!?」

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