SS正也成長記録
あけましておめでとうございます!
3が日迄は正月と聞いた!
全く問題無い!
〓月×日 書き初め
本日より此処に息子正也の成長を記す。事の起こりは十月程前、妊娠が発覚し……。
「何々……?正也成長記録?全く、出産したばかりで何やってるんだ」
「うわぁ、返せ夫ぉお!」
「ダメだ。大人しく休んで居なさい。というか何だこの変に堅苦しい文章」
「見るなぁ!見るんじゃない夫ぉお!」
「うわっ、しかも10年物。これを毎日書くつもりか?」
「あ、当たり前だ!母親になったんだぞ」
「三日で飽きなきゃ良いけど」
「何だとぉ!」
毎日欠かさず書くことを此処に誓う。夫許さん。
〓月×日 真理
正也は3歳になった。来年保育園に通うことが決まり、何時ものはしゃぎっぷりから更に何割増しで傍若無人。
「ねぇねぇお母さん、来年っていつくるの?」
膝辺りの布地を引っ張りながら聞く息子。可愛いけど、あんまり引っ張らないで。服が伸びるから。
「うーん、明日がいっぱい来たら、だな」
中々良い返答が出来た。これくらいの子供には正直に言った所で理解出来ないだろうしな。
息子は私の言葉に首を傾げる。いっぱいが理解出来なかったか。なら何と言うかな、等と考えて居た所。息子が一言。
「お母さん。明日が2回目にきたら、明日じゃなくてあさってって言うんだよ?明日なんていっぱいこないよ?
バカじゃないの?」
かいしんのいちげき!!
o-_-)=○☆
いや、そうなんだが……。そうなんだが……。確かにその通りなんだが、何だか物凄く納得行かん。
本日より息子を子供と侮ることは止めることにする。
〓月×日 買い物
息子との買い物は戦いだ。あの手この手で欲しい物を買わせようとして来る。
私が余所見をすると直ぐに買い物かごにお菓子が侵入するし、オモチャの前から動かない。
しかし息子が他の子と違うのは駄々をこねない所だ。勿論、それは良い子であるという様な生易しい意味ではない。文字通り、欲しい物を手に入れるのに手段を選ばないのだ。
今日がそうだった。
「お母さん!コレほしい!」
見ると朝にやっている特撮のオモチャだ。値段を見ると1400円。子供用の癖に中々良い値段する。
「ウチは働いているのは夫だけだからな。そんな物を買う余裕はないぞ。戻して来い」
息子相手に頭ごなしのダメは禁句だ。即座に“何で?”の連射攻撃が来る。理由も合わせて説明しないと納得してくれない。
「どうしても?」
「どうしてもだ」
「そっかぁ、ざんねんだなぁ。あきらめよー、お金がないんじゃしかたないよね」
母親になったということを実感するな。賭けても良い。この顔は絶対に諦めていない。
「あー、そう言えば前にお父さん言ってたなぁ……。このびようクリーム良いにおいだなって」
突然、息子は私に聞こえる様な声の大きさで独り言を言い出す。釣りだろう。だが悲しい哉、分かっていてもついつい反応してしまう。
「どんな奴だった?」
「えー、そんなこときゅうに言われてもなー。おれ子どもだからわすれちゃった」
可愛く頭を叩く振りをする息子。そんな仕草何処で覚えてきた。
「もしこれを買ってくれたらおもい出すかもしれない」
そう言って先程のオモチャを再び差し出す息子。
だから何処で覚えてきたそんな台詞。
「ぐぬぬ。ふんっ、残念だったな。情報よりもそのオモチャの方が高い」
確かに気にはなるが、それでも1400円も出す程じゃない。甘かったな。
「そっかぁ、ざんねん。じゃあお父さんに買ってもらおう」
「夫でも結果は同じだと思うぞ?」
「ううん、そんなことないよ。となりに女の人連れてたことバラすぞって言ったら買ってくれるもん」
「お、女の人!?」
待て、聞き捨てならん。どういうことだ。
「うん、キレイって言ってた。あ、これ言っちゃいけないんだっけ」
慌てて口元を抑える息子。だがそんなんで吐いた言葉は止まらない。益々怪しい。
「吐け」
私は息子の襟首掴むと揺らしながら聞く。
「ぐえ〜くるしいよ〜」
苦しがる息子を放すと睨み付ける。
「もうっ、首しめられてわすれちゃったよ!」
先程と同じ様に軽く頭を叩く振りをする息子。
「分かった。それを買えば良いんだな!」
阿吽の呼吸で理解出来た私は引ったくる様にそのオモチャを取り上げると急いでレジで清算した。
「さぁ、キリキリ吐け」
胸ぐら掴みながら聞けば息子は余裕の笑顔。
にっこりと微笑んだ息子はこう言い放った。
「お母さんだよ」
……。
………。
…………。
「へ?」
「だからぁ、このあいだ3人でデパート行ったじゃん」
や、やられた〜〜っ!!
Σ( ̄□ ̄)!
そう来たか……。そうか。確かに良く考えれば幾ら夫でも息子連れて逢い引きはせんだろう。私のバカ。
だが待て、隣に歩いて居た女が私ということは夫は私にキレイって……。
「へぁ!?」
「あ、まちがえた。キレイじゃなくって、“世界一キレイだよ”って言ったんだった」
「〜〜〜っ!!」
先程と同じ様にやっちゃった、みたいな顔して慌てて口元を隠す息子。
もう遅い。
というか分かってやってるだろ息子!
「そうそう、おもい出した。お父さんが良いって言ってたびようクリームはデパートにあった青色のびんのやつだよ」
息子との買い物は戦い。今回は私の完敗だな。
参りました。(__,)/~~
負けたのは良いんだが、息子の将来がどうなるか酷く心配だ。詐欺師とかにならんだろうな……。
さて、デパートに行くとするか。
〓月×日 保育園
「あれ、そう言えば保育園って入園準備とか無かったっけ?」
夫がそう言った瞬間、世界が、凍り付いた。
「わっ」
「わ?」
「忘れてた〜〜!」
不味い。不味いぞ。既に初日は明日だ。
「はぁ〜〜。先輩って仕事は優秀ですけど偶に大ポカやらかしますよね」
「敬語やめてくれっ!頼むから!」
急に出てきた敬語に私は思わず抱き付いて夫に懇願する。先輩呼びも敬語も、ベッドの上でやられたら昔を思い出して燃えるかもしれないが、今やられても恐怖でしかない。
心の距離が開いた気がする。
「はぁ、準備は僕がやるから。そこで休んでて。身重なんだし」
そう、現在二人めを妊娠中だ。この子に対して記録を付けるかどうかは考え中。面倒だし、一緒にしても良いかと思っている。
「私も手伝うぞ!元々私のせいだ!委せっきりなのは良くない!」
「あ、いや、そうじゃなくて……」
夫は何故か頭を抱えると、徐に私の肩を掴む。
「僕も仕事持ち帰ってるんですよね。気持ちは嬉しいんですけど、これ以上仕事を増やされても困るので、部屋の隅で一ミリも動かないでくれます?(怒)」
「……はい」
オブラートの外れた夫の本音、グサッと来た。
夫の(悪い意味で)厚い信頼。
咽び泣きたい。(>_<。)
〓月×日 入園式
夫は仕事の為一人で息子の入園式に参加。新入生は10人程度。ウチの子と同い年は6人位だろうか。
息子は性格も性格。友達は出来るだろうか。他の子に迷惑など掛けたりしないだろうか。かなり心配だ。
後ろでパイプ椅子から見てると園長先生のお話し中既に集中が切れたのか隣の子と小突き合っている。かと思いきやその場に横になってうたた寝をし出した。自由だな。
大物なのは良いがあまり母をハラハラさせないでおくれ。心臓に悪い。
保育士の皆々様方。是非ぶっ叩いて教えてやって欲しい。そうじゃないと聞かないんだウチの子は。
そんなこんなで30分程で式は終了し、親は帰る時間になる。勿論、2、3時間後には各々迎えに来るのだが、今までずっと一緒に居た両親と別れるのは確かだ。その証拠に周りでは「お母さんいかないで〜〜!」「いっちゃヤダー!」等と感動のお別れシーンが展開されている。
では当の息子はと言うと……。
「じゃあね」
と、いたって軽いものである。
……いや、面倒なのは確かだし、別に周りの子の様に泣き喚けとまでは言わないが……。
……もうちょっと何か無いだろうか。せめてこう、私の服の裾をぎゅっと掴むとか、目に涙を溜めるとか、有るだろう?色々と感動的なのが。
私がモヤッとした思いを抱いているのを他所に息子は近くに居た女の子と話していた。
「えっと……。その子はどうしたんだ?」
息子に聞くとその女の子はビクッと驚いて、自分が話し掛けられたと思ったのか、見ている此方が可哀想になる位震えながらおずおずと喋り出した。
「ひぅ!……えっと……。その……。さ、さくらです……。4さいです……」
女の子は非常に愛らしく片手を4にして差し出す。別に聞いては居ないのだが、こんな風にされると何でも許してあげたくなってしまう。実に女の子らしい。
この子を見てると何故だか灰色の子供時代を思い出すな。そうだよな……。女の子ならこうあるべきだよな……。
どうして強さを求めて居たんだろうか。我ながら思考が分からん。(¬_¬)
怯えるさくらちゃんを息子は小突いた。
「むぅ、何やってんだよ。もっとむねをはって大きいこえ!じしんもって!さっき言っただろ!」
ん?
「ムリだよぉ……。お母さんもきてないし、こわいもん。ムリだもん。たすけて、まさや〜」
んん?
「ムリじゃない!おれがいる!どうなっても助けてやるから気にすんな!」
んんん?
「ほんと……?」
んんんんんん!?
「やくそく!ぜったいに守る!」
おい待て、息子コラ。どういうことだ説明しろ。どう見ても初日の感じじゃ無いだろう。
っとに手が早いのだな。こういう所は夫に似なくて良かったんだが……。
帰ったら詰問だからな。覚えておけよ息子。
指切りをし出す息子達を後目に息子の大物さ加減に呆れつつ今夜の緊急記者会見に思いを馳せる私であった……。
〓月×日 友達♂
息子が初めて咲良ちゃん以外の友達を家に呼んだ。
何か心に込み上げる物があるな。母親としての肩の荷が1つ降りた気がする。
その子は実に礼儀正しかった。会うや否や即座に自己紹介をして、家に上がる時は靴をきちんと揃え……。良くウチの子と友達になってくれた物だ。正直接点が見付からない。
気になった私は不粋とは思いつつも人となりを見るため色々聞いてみることにした。
「いつもは何をして遊んでいるんだ?」
「本を読んだり、カードで遊んだりしています」
この年齢で読書とは……。大した趣味だな。だがやはりウチの子とは合わなそうだ。息子はふとした瞬間に家の中から消える物だから探すのに苦労するんだ。探検ごっこは良いが探す方の身にもなれと言いたい。
「そうか。偉いな。ウチの子を宜しく頼む。そそっかしくて見てられん」
「はい!」
「所で、大きくなったら何になりたいんだ?」
この質問をしたのは単に興味本位だった。特に用も無く、軽い話題転換のつもりだったのだが、その返答は私の予想の斜め上を行くものだった。
「社長になります」
( ; ゜Д゜)
「……そうか。頑張ってくれ」
「はい!」
息子の友達であることを深く納得すると共に、私はこの子を心の中で社長と呼ぶことにする。
〓月×日 社長
社長はそれから毎日の様にウチに来るようになった。息子を連れて外に出ていくこともあれば、ウチで遊ぶこともある。
ウチで遊ぶ時は大抵咲良ちゃんと一緒で、社長は咲良ちゃんと息子が何やら遊ぶ隣で静かに本を読んでいる。偶に顔を上げてまるで親の様な顔で二人を眺めては直ぐに視線を本に戻す。
私は最初本を読むのが趣味と聞いた時はてっきり絵本かと思っていたが、社長が読んでいたのは何やら字ばかりの分厚い本だ。到底4歳の子供が読む様な類いの物ではない。
社長が完全に無視されている状況を見るに見かねた私は社長に話し掛けた。
「一体何を読んでいるんだ?」
「いえ、これは難しいので、読んではいるつもりなのですけど、ついつい目が滑ってしまいます」
それを聞いて少々安心した。これで全部理解できています等と言われてもさぞ対応に困ったことだろう。
「舞戸卓也著の『現代における経済学の国民的体系』です」
( ; ゜Д゜)
「ず、随分と難しい本を読んで居るのだな……」
「はい!3、4年後には社長になるつもりなので」
( ; ゜Д゜)
社長は私が思っていたよりも大物なのかも知れない。
勿論著者名は適当。
前回のSSで
ハヒフヘホ全部埋めるに当たってヒとホが中々埋まらなかった……。
最後まで男と気付かれなかったハッシュに黙祷。




