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モスクワで各国の首脳を集めて和平条約の他に大国首脳会談を予定していた。そのため全権は俺が、副官として松岡洋右、佐藤尚武の二名を指名した。ベルリンで行われた前会議には日独英三カ国首脳が集まり改めて日独英三国同盟を世界に発表すること、ソ連の処遇等が決められた。一方の米伊仏もローマで会談したがその内容は俺達には不明だった。その六大国を始めとした対ソ戦を行った各個首脳がモスクワに集合して村松も特騎隊と共にモスクワ入りした。会談は大クレムリン宮殿で九月二日から行われた。
「ソビエトは解体、主要な共産党幹部は戦犯として裁判にかける。」
そう主張したのは日本の総統である俺だ。
「待たれよ竹内総統、イタリア王国はその提案に賛成しかねる。」
生徒会長の大塚だ、普段は仲がいい。
「どういう事か伺えないかな大塚名誉首相。」
「竹内総統、我イタリア王国は今回の戦争に関してのソ連の処罰はもっと甘くするべきだと考える。若干の領土割譲、賠償金のみでいいと考える。」
「異議あり、今回の戦争の発端はソ連軍によるフィンランドへの侵略である。すなわちソ連に開戦責任はあると考える、そしてソ連という国家を牛耳っていたのは共産党であり、共産党は中華民国、スペインにも内戦という惨禍をもたらしたのであり、十分な害であるといえる。即ちこれを取り除く事は重要だと考えるがどうかな大塚名誉首相。」
「解体しても分離した国家の治安は保証できるのかね竹内総統。」
「それよりも脅威なのはソ連が再び牙を剥くことである。二年間の戦争が終わって又この広大な大地でイタリア軍はそんなに戦争がしたいのか。」
机を叩いた。
「むしろ治安を保つために現政権に続投させて我々が監視すればいいと思うのだが。」
「そこまでの余力が今の連合軍に無いことは貴殿も十分承知のはずだ、我国を始めとする戦時国債を発行した国は勿論、そうでない国も国庫は空に近い存在であり、挙句ソ連に軍隊を常駐させろだと。ふざけてるのかイタリア政府は。仮に軍隊を常駐させたとしてソ連軍が本気で反乱したらせいぜい各国二個師団が限界な常駐軍は瞬く間に壊滅するのがオチだ。そのような未来が分かっているのなら脅威を取り除くべきだ。それともソ連の安全性を貴国が保証してくれるのかね。大塚名誉首相。そもそもこんな多民族国家だ、分割させてやっても良いだろう。」
「多少の領土割譲なら構わんが国を崩壊させるのは良くない。」
「共産党を壊滅させる事が最重要である。それを行わなくては今回の大戦争の意義がわからない。共産主義を潰す戦いじゃなかったのかこの戦争は。こんなことでは世界中が納得せん。」
「それはそうだが・・・。」
「ならばよかろう、ソビエト連邦は解体の上共産党首脳は裁判にかける。異論はあるか。」
誰も手を挙げない。
「宜しい、では次に解体後の国境を制定せねばならないのだ。我帝国としてはハバロフスクを首都とした極東管区の土地を有する東シベリア共和国、ノヴォシビルスクを首都としてウラル管区とシベリア管区を合わせた西シベリア共和国、そしてモスクワを首都として残りのソ連領土を有するロシア民主共和国の三分割がいいと考える。」
「それでは民族の独立ができない。」
「もう一つ、チェチェン共和国を作ればいいのではないか。」
「そんな適当な計画に賛成できるか!」
イタリアの大塚名誉首相に変わりアメリカの塚本終身大統領が反論してきた。
「その計画を煮詰めるのがこの会議だろう。」
「それはそうだが・・・。」
「この四つで良いと思うのだが他の国はどうかね。」
「我大英帝国は大日本帝国の意見に賛成する。」
「ドイツも同じだ。」
「我等中華民国も日本を支持する。」
「オーストラリアもだ。」
「インド独立政府も日本を支持しよう。」
今回の戦争にインドの独立と引き換えに多数のインド兵を前線に送り込んだイギリスは約束通りインドを独立させた。
「カナダは反対だ。」
イギリス連邦で唯一反対票を投じたカナダの意見は多数決の結果によって無視された。反対国はカナダ、アメリカ、イタリア、スペイン、オランダ、フィリピン共和国、フランス、ポルトガルだった。フィリピンは1ヶ月前に独立したばかりである。
「ソビエト連邦は四つの国に解体されます。又、共産党の戦犯リストは各国憲兵が作成し、1ヶ月後の会議で逮捕する人間を決め、逮捕を開始します。以上。」
議長を務めていたスイスの今井首相が締めくくった。
「直ぐに憲兵隊に連絡して戦犯リストを作らせろ、いいか、絶対に共産党員は逃すなよ。」
「はっ!」
翌日モスクワで連合軍による戦勝記念パレードが行われた。日本からは一個独立重戦車大隊と二個機械化歩兵師団、一個機甲旅団が参加、クレムリンから街を望む各国首脳が見ている中で堂々と行進する日本軍は一番活躍した国が務める先頭を進んだ。二式重戦車を先頭に中戦車、軽戦車の機甲部隊が続き、さらにその後方に大量の爆撃機を引き連れた戦闘機に上を守られながら機動車や歩兵戦闘車に乗った歩兵が続いた。最後尾は自走砲が空砲を発射しながら前進した。その圧倒的な兵力は世界各国に報道された。そして、俺と宮本は岡の招きで空路、ベルリンに向かった。ベルリンの総統官邸で厚いもてなしを受けた後ベルリン条約の会議に入った。
「次の敵は米伊仏の三カ国だろう。アメリカ海軍はフランス政府の許可をとってマダガスカルにインド洋艦隊を置いた。ジブラルタルもスエズも我々が押さえているため地中海への侵入路は押さえているも同然だが伊仏が総力を持って奇襲をかければスエズも危険にさらされる。そうした場合紅海の入口に当たるソコトラ島に海空軍の基地を置くことで地中海への海上輸送ルートを断つことができ、又アフリカへの兵站基地にもなると思われるので、そこに基地を建設し艦隊を常駐させるべきでは。」
俺が述べる。
「確かに妙案だな。」
これは岡だ。
「あぁ、潜水艦基地も置いておけばインド洋で通商破壊戦が行ないやすくなるしな。」
「よーし、我がイギリスは賛成だ。早急に基地を作ろう。」
「続いて第二次日独英三国同盟だが、堂前が治めるデンマークも入れ、スカンジナビア同盟も入れたヨーロッパ同盟を結んで欲しいんだ。俺もオーストラリアやインド等を巻き込んだアジア太平洋同盟を築き米伊仏に対抗する。」
「分かった。」
「そして、報告だがイランが最近勢力を拡大していることは知っているな。」
「あぁ。」
「俺達がもといた世界の地図で言うと東はインダス川から西はイラク、シリアまで勢力を拡大しているのだが、問題なのはその軍事力が戦車M4シャーマン、戦闘機P40、つまり完全にアメリカから支援を受けている。これは我々にとって脅威である。英国領のエジプトや我国の同盟国予定のインドに国境を接しかねないからな。後、お前らの近くで言うとバルカン半島は完全に内戦に陥る。ギリシャを支援するべきで、その背後のトルコとも関係を結んだ方が良い。そうするとギリシャはイタリアに支援を受けた敵に集中できるからな。」
「おう。」
「そしてここに日独英三国同盟の締結をマスコミに宣言しよう。」
そう言うと主玄関から三人で外に出てマスコミに日独英三国同盟の締結とサインした議定書を見せた。そのまま俺は宮本とロンドンへ飛んだ。
「竹内、お前にどうしても見せたい物があって来てもらった。」
そう言うと一つの扉をあけた。
「これは。」
そこにはパソコンが動いていた。
「見ての通りパソコンだ。」
「何故パソコンが。」
「あぁ、転生時に自作パソコンの部品を持ち込んで実に部品ごとに研究し、十一年間たった去年の終わりに完成したんだ。Wi-Fiはないからオフラインでの作業しかできないため、ネットは繋げないが有能だよ。」
「んで、これを日本に譲渡してくれるのか。」
「あぁ、だが条件がある。」
「それは。」
「戦車だ。我国の戦車は正直強くない。で、日本の戦車が欲しい。」
「いいだろう。設計図を送るよう手配する。」
「頼んだ。パソコンは輸送船で送らせる。」
「ああ。」
俺は東京へ帰った。
「新たに海兵隊を設立する。」
帰って翌日、四軍の代表を集めて提案した。
「海軍陸戦隊から抽出する兵力をメインとする。そして陸海空の戦力を持ち上陸作戦の主力を担う部隊となってもらう。異論は。」
「ありません。」
「よし、では軍備の話はこれまでだ。東シベリア共和国総理のグリゴリー・セミョーノフに会わねばならんからかな。」
東シベリア共和国はセミョーノフ、西シベリア共和国はアンドレイ・ウラソフ、ロシア民主共和国は選挙が始まったばかりでまだ決まっていない。両シベリアとしてはおそらくモンゴル、満州、ひいてはその親玉である大日本帝国に近付いて身の安全を確保したいのだろう。俺は石油の採掘権を得ることを条件に承諾した。シベリアにある油田とガス田に目を付けた。この世界では村松がある程度開発していたのでそれを転売するだけだった。転売先は満州国だが二千キロのパイプラインにかかる建設費用は現在の価値に直すと実に四千二百億円であり、軍の施設工兵等も投入しても三年五ヶ月はかかる計算である。ただし村松は前もってアジア方向にノヴォシビルクまでパイプラインを建設していた為に二年半で建設できる予定だった。ハバロフスクを通して満州国へと通ずるルートで建設が始まった。更に昭和第一次大艦隊計画が開始された。
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