005 プロローグ6
全ての雰囲気が一変した。
ジョナサンの呪文と共に姿を魔女へと変えた織姫。そんな織姫の雰囲気は力強いものだとジョナサンは理解していた。そして
「これが私? つか自分で言うのもなんだけど、アラサー女がこんなヒラヒラの可愛い服とか着て良いの? 逮捕されない?」
「なにゆーてねん織姫はん。それがこの世界での織姫はんの本当の姿や」
自分の姿がそんなにも気になってしまうのか織姫はしきりに法に引っかからないかとジョナサンへと問う。
確かにアラサー女がロリータファッションをしているのだ。自分で疑問に思っても仕方が無い。
魔女という言葉を使っているが実際問題、完全に魔法少女の格好をしている。今の織姫を魔法少女とは呼べないが魔女っ娘が限界かもしれない。
というかもう魔女でいいんじゃないかと誰もが思ってしまうだろう。
そんな変死を遂げた織姫だが、未だに敵の居場所を掴めていないのが現実だ。この状況をどう打破するのか、織姫は自身の中で考えている様子だった。
「ねぇオサーン。私変身したけど、全然強くなった気がしないんだけど……。てか、今の私っていったい何ができるの?」
自分の姿を見て、現在の状況を把握し、そして残る疑問。
確かに織姫の服装は変ったが、何が強くなっているのかは分からない。そんな疑問を抱いている織姫にジョナサンは
「なにゆーてはるんですかっ! ピンクのヒラヒラでっせ!? もうなんや色々、手から火とか出せるんちゃいますか? そうや、なにか足りんと思ったら杖があらへんっ!!」
現代の魔法少女と言われる部類の小説や漫画、その他のコンテンツの中でも魔法少女は杖を持っている事が多い。その他にも杖に似た何をを武装していると言う設定がある中、あまり何も持っていない魔法少女はいない。
だとすれば魔女という形でこちらの世界に召喚された織姫もそれなりの装備をしていないとおかしいという事になるのだ。
「杖って、アンタそんなの今更用意できんの!?」
「ワイを誰だと思ってはるんですか。天下のオルヴィウス・サーベント・ジョナサンでっせ? 織姫はこれを受け取ってくださいっ!!」
いつの間にか織姫の肩の上から居なくなっていたジョナサン。そんなジョナサンは織姫へと魔法少女の杖を投げ渡した。
そしてその杖を手に取った織姫は
「おいコラ。何が杖だぁ!? こんなもんただの棒じゃねぇかっ!! なんだあれか? ひのきの棒を装備しましたってか!? 少し硬くて簡単に撲殺できますよみたいなあれか!? お前、あんまふざけてっと盗賊しめる前に殺すぞ?」
もはや女性という言葉を使って織姫を表現して良いのかさえ疑問に思ってしまう。
ピンク色のヒラヒラとしたロリータファッションをしている29歳手前のアラサー女が野球のバット程の大きさの棒を握りしめながら怒っている。
「つかよ。今のこんな格好している私が、こんなリアルに人殺せそうな棒持って怒ってるとかカオスだよな? お前わかってるよな?」
どんなに叫んでも織姫の怒りがおさまることはなかった。だが
「織姫はんっ!! 後ろっ!!」
物凄い形相で織姫に言うジョナサン。それは織姫に危機が迫っているという事を伝えたかったみたいだった。
そしてジョナサンの言葉を聞いた織姫は振り向いた。そして
カッキーンッ
物凄い勢いで飛んでくる浮遊物を装備していたひのきの棒で打ち返した。
これが現代で野球選手だとすれば完全に場外ホームランコースだ。織姫の魔女補正にひのきの棒が加わるだけで最強のスラッガーが誕生してしまう。
浮遊物が迫ったその瞬間に恐怖を感じたのか、織姫は場外ホームランを打った後その場で動かなくなってしまった。
それでも辺りからは何者かの気配を感じている。
その気配は一人ではなかった。
そして恐怖を感じてしまっている織姫の前にはけして姿を現さない敵。それどころかホームランの一件以来、攻撃すら仕掛けようとしてこなかった。
見えない敵といつ仕掛けられるか分からない攻撃に精神と集中している織姫は体力の限界へと向っていた。
(どこだ。どこにいるんだ。この辺りに居るのは間違いない。さっきから気配だけはガンガン感じてる。だけど相手は動こうとしない。でもこっちが動けば確実に的にされる。どうしたらいいのよ)
ストレスだけが蓄積していき織姫の集中力が一瞬だけ途切れた。その時
ビュンッ
織姫の頬の横をかすめる様に飛んでくる物体。その物体は先ほどの浮遊物とは違い織姫の後方にあった木に刺さっていた。
「なにこれ……? 矢……?」
織姫の頬からは血が流れだす。かすった矢が織姫の頬を切っていたのだ。
そして木には矢が刺さっており、相手が自分の事を本気で殺しにきているという事に織姫は気がついた。
それでも相手の位置を特定することが出来ていない。矢が放たれた方へと猛攻を仕掛けても良いが、それは他の敵からの集中攻撃を意味していた。
本能的からなのか、はたまた訓練された思考からなのか、織姫は矢が飛んできた場所へは行かずその場に留まっていた。すると
「織姫はん。もう魔法を使うしか残された道は無いみたいです」
「魔法ってあんた、私はこの世界に来てから1日くらいしか経ってないのよ!? いくら私が魔女だからって魔法なんて使えるわけ━━」
「織姫はんには使えますっ!! なんたってこのオルヴィウス・サーベント・ジョナサンが連れてきた魔女でっせ!!」
織姫の横に並んでいる小さなオッサンは普段の締りの無い顔ではなく、自信に満ち溢れた男の表情で織姫に言った。
その言葉を聞いた織姫は少しの間躊躇していたが、その時間も刹那なもので
「分かった。私やってみる」
そう言い織姫は手に持っている杖を構えた。
(やってみるとは言ったものの、どうやれば魔法が出るんだ? やっぱり魔女っ娘とか魔法少女とか言ってたから可愛いらしい呪文でも唱えればいいのか? でも私28だよ? それやったら完全に犯罪だよね? つーか需要なんてこれっぽちもないよね? あーでもやらなきゃ本気で殺されそうだし、こうなったらやけだっ!!)
「魔法少女の契約の下、全ての純潔を捧げここに我は命じる。炎の精霊よこの私に力を貸して……。ふぁいやーすとーむっ!!」
その言葉を言いながら織姫は決めポーズまでとった。そのポーズは左足を軸に右足を上げ、持っている杖を前方へと伸ばし左手を腰に当てるという素晴らしいポージング。
だがそこまでやったのにもかかわらず魔法なんてものは一切発動しなかった。
ビュンッビュンッビュンッビュンッビュンッビュンッ
数秒の沈黙のあと木々の間から織姫を狙った矢が何本も飛んできた。
その矢を避けながら織姫は叫ぶ。
「おいてめぇオサーンっ!! 魔法なんかでねぇじゃなぇかよっ!! あんな恥ずかしい台詞いってポーズまでとってんのにどういう事だよっ!!」
「わ、ワイだって知りまへんっ!! 織姫はんが魔女なのは確かなのに、どうして魔法がでーへんのや……?」
ジョナサンにも何故織姫の魔法が発動しなかったのか分からない様子だった。
そんな考えを浮かべている最中でも盗賊の矢は雨のように降り続ける。だが一切魔法が使えないのに織姫はその運動神経だけでその矢を全て回避し続けた。
そして魔法が出ないという理由が分からないまま、とうとう敵が姿を現した。
「森の中に入ってきたから迎撃しようと思ったけど、アンタ本当にしぶといね」
一人の男が喋る。
「本当だねアタン兄さん。コイツ等は普通の奴等じゃないよ」
森の中からもう一人の男が現れ言う。
「だけど一番最初の矢をかすめたのは僕だからね、アタン兄さんにイタン兄さん」
なんだか分からないがゾロゾロと森の中から人が出てくる。
「アタン兄さんも、イタン兄さんも、ウタン兄さんも変に格好付けたこと言うのやめようよ」
そして最後にもう一人出てきて、とうとう全ての盗賊が揃った。
そんな盗賊たちを目の当たりにし織姫は驚愕した。それはなぜか
その盗賊は右からハゲ、ハゲ、ハゲ、ハゲだったのだ。そしてそれだけではない、その兄弟だと思われる盗賊たちの顔が全て一緒だった。
あまりにもふざけた現状に織姫もジョナサンも言葉を失ってしまった。そして織姫は思った。
(私はずっとこんなハゲ達に恐怖を感じてたっていうの……? こんな煎餅みたいな顔してるこいつ等に……。ふざけんなよ、私が今までどんな無理難題な商談を成功させてきたと思ってんだ。あーもうなんか吹っ切れたわ)
「ねぇアタン兄さん。この女、よく見ると結構オバサンだよ。それなのにこんなお姫様みたいな服着て恥ずかしくないのかねっ」
ピキッ
辺り一帯に殺気の混ざった空気が蔓延した。その雰囲気は悪魔召喚の儀式をし、その呪文を唱え終わった時のような感じだった。
先ほどまで明るかったのに急に暗くなり紫がかった白い煙が蔓延している感覚にここにいる全ての存在が陥ったであろう。
「も、もうダメや……。みんな殺される……! その盗賊はん達、はよ逃げやっ!!!!」
恐怖に縛り付けられてしまったジョナサンは叫んだ。盗賊達の命の心配をして。だが時は既に遅かった。
「おい、そこのハゲ。今なんつった?」
その殺気は織姫が放っているものだった。
人生の中で色々な経験をし辛いことや楽しい事もあっただろう。だけどこの殺気は人生経験なんかで放てるような代物ではない。完全に織姫の初期スキルだ。
そして織姫は言い終わった後、誰にも見えないくらいのスピードで動き、全ての人が織姫の姿を確認できた時にはもう暴言を吐いた盗賊の懐にいた。
「ひっ!?」
ガシッ
ものの数秒の出来事だった。今の織姫は暴言を吐いた盗賊の頭を掴み、その体を宙へと浮かせていた。
「おいてめぇだよ。私がなんつったか聞いてんだよ。おい、ささっと答えろよっ!!」
「あが、あががが、ああああああああああっ!!」
万力のような力で暴言を吐いた盗賊の頭を握る織姫。このまま握っていたらこの盗賊は生卵を潰されるかのごとくその頭を握りつぶされてしまうだろう。
そして宙に体を浮かされ抵抗できない盗賊はもがく事と悲鳴を上げることしか出来ないでいた。
「あっ!? 何言ってんのかわかんねぇんだよっ!! このままてめぇ殺してもいいんだぞっ!?」
「お、織姫はん……。もうやめるんや……。その盗賊……、気失ってはります……」
動かなくなってしまった盗賊はぐったりとしていて、織姫が手を離せば簡単に地へとその体を落とすことになるだろう。
そんなジョナサンの言葉を聞いた織姫は
「ちっ!! 使えねぇハゲだな」
「ウターンっ!!」
残りの盗賊達は織姫に昏倒させられた盗賊の名前を叫んでいた。何故か、織姫は舌打ちををした後、ウタンを投げ飛ばしたのだ。
先ほどまで盗賊に恐怖を感じていた織姫はもうここにはいなく、盗賊と織姫どちらが悪なのか分からない状況になっている。そして
「おい次は誰だ? いっとけどてめぇら同罪だかんな? 私のこの頬の傷、つけた事後悔させてやるよ。この歳になるとさ、治りが遅いんだ」
殺気を纏った織姫はまさに鬼神のようだった。どんな存在も決して生かしておかない。そんな空気がこの森には蔓延していた。
そんな織姫はゆっくりと盗賊達に近づいていく。盗賊達は恐怖を感じ腰が抜けてしまったのか、先ほどまでの強気な態度はどこにもなくただただ這い蹲りながら逃げるだけだった。
「はーい。鬼ごっこはここまでー。順番におとしまえつけてやるから覚悟しろ」
こうなった織姫を止められる者は誰もいない。盗賊達も罰を下されるその瞬間を恐怖を感じたまま待つことしか出来ないでいた。その時
「んっ……。あれ……? お兄ちゃんです……?」
気を失っていたリリーナが目を覚ました。
◆
今の織姫とジョナサンは森の中にあるボロボロの小屋のような家にいる。
家具が揃っているわけでもなく、寝るための布団すらない。今のこの場所を家だと言っていいものなのか疑問に思ってしまうくらいボロかった。
「どうぞですお姉さん。今日買った牛乳を温めたです」
差し出されるホットミルク。そのコップもまた使い古したとても客人に出すような代物ではない。
そんな代物を織姫は笑顔で受け取った。
「ありがとうリリーナ」
そう言い織姫は一口ホットミルクを啜った。そして
「それでちゃんと説明してくれない? どうしてアンタ達が盗賊なんて事をしてたのか」
織姫は真剣な表情でこの場にいる全員に問う。その言葉はリリーナにも向けられていた。それは何故か
リリーナが目を覚ましたときに「お兄ちゃん」という言葉を発した。それは今の今まで織姫に襲っていたハゲの盗賊集団の妹だったから。
その事実をしるその場で戦闘は終了。というか攻撃的になっていた織姫をリリーナが説得したというのが正解だ。
そして今の織姫たちがいるのはそんな盗賊達の隠れ家だった。
「私から説明するです」
そう言いリリーナは真剣な表情で重たく閉じていた口を開いた。
「見ての通りお兄ちゃん達はちゃんとした兄弟です。でも私はお兄ちゃん達とは血が繋がってないです。お兄ちゃん達は行き倒れていた私を助けてくれたんですっ! でも、そんなお兄ちゃん達も親がいなくて、生きるために必死だったです……。お兄ちゃん達はハーフエルフとい種族なんです……」
「ハーフエルフやて……!?」
リリーナの言葉を聞いて驚きを見せるジョナサン。そして
「ハーフエルフが今の時代にいるわけがあらへんっ!! それに妖精とかよりもハーフエルフの方が伝説みたいな存在やっ!」
「ちょっと、私にも分かるように説明してよ」
織姫を置き去りにし話しが進んでいた。それを制止し織姫はハーフエルフの意味を問いただす。
「ハーフエルフっちゅーんは、多種族と混ざったエルフのことや。いわば混血種。だけど今の時代に、それもこんなに若いハーフエルフがいる事自体がおかしいんや」
「なにがそんなにおかしいの?」
「ワイも文献で読んでるだけの情報しか知らんけど、この世界は今から550年前に大きな戦争があった。その戦争は50年戦争とも言われて、この世界に生きている四大種族達が争った歴史上尤も大きな戦争や」
50年戦争。ジョナサンが言っているように、この世界で尤も大きな戦争だ。
何度も何度も繰り替えられた小さな戦争。そして何度も何度も結ばれた平和協定。だがそんな状況を良くないと思っていた王族達はある事件を境に大戦争を始めたのだ。
「文献に書いてある情報が真実なら戦争を始めたのはサラマンダーや。だけど50年の長い戦争が終わって、今の四大種族平和条約が確立された。その条約があるからこそ、今の時代にハーフエルフがいるのがおかしいんや」
「だから、その四大種族平和条約ってのはなんなの!?」
ジョナサンの言葉が足りない為か、織姫は少しずつ苛立ち始めていた。
「それは前に話しました。四大種族達の利害が一致しない限り関係を持つことを禁ずる。その意味は自分の国から出る事を禁じてる意味になります。ここまで言えば織姫はんもわかってくれますか?」
今の時代にハーフエルフがいる事を否定しているジョナサン。その理由が四大種族平和条約だと言う。その意味を統括すると
四大種族平和条約が確立された為、他国への侵入が困難になった。互いの利害が一致した時だけという事柄を見ればわかるように一般人の入国は許されないという事。
その事実があるからこそハーフエルフ。混血種という存在が今この時代にいる事をジョナサンは否定したのだろう。
だが今目の前にいる人達はまぎれもないハーフエルフだった。
「それならハーフエルフの紋章を見せてみぃ!!」
ジョナサンが言うハーフエルフの紋章。
それは背中の真ん中に刻まれた罪の形を示す円状の魔方陣ののようなものだった。ジョナサンが一度魔法を使ったことがあるが、魔法の発生には空間に一瞬だけ魔方陣が浮かび上がる。
その魔方陣と同じような系統の紋章、いわば入れ墨のようなものがハーフエルフには刻まれる。
どうしてそんなものが刻まれるのか。それは先にも言ったように罪の証を示すものだからだ。
異なる種族が交わる事をこの世界では禁忌としてる。だからそこどんなに愛し合って子を作ろうがその罪が消えることは無いと、自分等の子供の背に紋章が刻まれるのだ。
その紋章こそがハーフエルフの証拠になる。そして
「わかりました」
長男であるアタンが言い、四兄弟は一斉に背を向け服を捲り上げた。
「な、なんでや……。なんでハーフエルフがいるんや……」
ジョナサンは四兄弟の背中を見て言葉を失う。その背中にはハッキリと罪の証が刻まれていたのだ。
だが、その罪の証をまじまじと見た織姫は、小さく呟いた。
「綺麗……」
その言葉を聞いた四兄弟は勿論のこと、リリーナもジョナサンも驚いた表情で織姫を見つめた。
織姫の言った「綺麗」その言葉はどんなに長く生きようが、どんなに誰かに愛されようがハーフエルフには生涯聞くことの出来ない言葉だった。
「お姉さん……。今、何て言ったです……?」
「え? だからその背中の模様が凄く綺麗だって」
「ほ、本当に綺麗って思ったです……?」
「う、うん。だってなんだろう。その模様がハーフエルフの証拠なんでしょ? だったら私はそんなに自分達を卑下しなくても良いって思うよ。だってさ、どんなに人から嫌われても、どんなに自分の事を嫌いになっても、その模様がお父さんとお母さんが愛しあえた証拠だって私は思うから」
優しく微笑みながら言う織姫の言葉は目の前にいる五人の心を強く打ちつけた。その衝撃は苦しいものではなく、自分達がこの世界に存在していても言いのだという事を実感できる言葉だった。
父と母が本当に愛し合ったからこそ出来た紋章。それは忌み嫌われるハーフエルフの紋章ではなく、誰かに大切を伝える為の紋章なんだと伝わってくるようだった。
「お、お姉さん……」
そして涙を浮かべる五人。自分達の存在をちゃんと認識してくれた織姫を見つめ、その感情が爆発した。
泣きながら織姫に抱きつく五人に織姫は
「ちょ、あんた達どうしたの!? まぁこんなに泣いてるなら聞いても無駄か。大丈夫だよ。あんた達は独りじゃないからね。ちゃんと私がわかってあげるから」
五人を抱きしめるように腕を回す織姫。その表情は聖なる母のような表情で、全てを包み込みむ大いなる始まりなのだとジョナサンは思っていた。
こうして今回の事件の全てが解決した。盗賊をしていた奴等は自分達が生きるのに必死であっただけで、決して誰かを傷つけようとしているわけではなかった。
この世界の全ての存在に忌み嫌われているからこその事件だったという事だ。
そしてこの後、織姫がジョナサンを説得しリリーナ含む兄妹はジョナサンの会社で働くことになったのだ。
それは織姫がみせた優しさだったのだろうか、それとも織姫には他の考えがあったのか今は何も分からない。
◆
「ん、んっ」
自室の床で目を覚ます一人の女性。その女性はどうしてかベッドではなく部屋の床で眠っていたらしい。
起き上がり辺りを見渡す。すると部屋の中はビールの缶やらつまみで食べていた渇き物の残骸が散乱している状態だった。
誰かに荒らされた形跡がないため、泥棒が入ったという事はないのだろう。
それでも散らかりグチャグチャになっている部屋。そんな部屋を見たのち女性は時計を見る。その時計が指している時間は、日曜日の午後一時。
「あれ? 私変な夢でも見てたのかな……?」
寝ぼけながら女性はそう呟いた。だがその発言が真実ではないとすぐさま気がつく事柄が起きる。
ピーンポーンッ
女性の家のインターフォンが鳴り響いた。寝起きの女性はその音を聞いて無意識のうちに玄関へと足を運ぶ。
「はーい」
「あ、お届け物になります。えーと、ここにサインをお願いします」
宅急便の格好をしている青年がドアの外にいて。そのお届け物を玄関に置き女性へとサインを求めていた。
寝ぼけている女性はその紙へとサインをし、そのあと宅急便の青年はそのまま帰っていた。
そして部屋の中に荷物を持ちながら入ってくる女性。疑問に思いながらもその女性は届けられた荷物をあけた。その中には
なにやら化粧品のようなものが入っていて、その上になにやら手紙のようなものが備わっていた。
女性はその手紙を持ち読み始める。
『拝啓 華虞夜 織姫様。 この度はワイの召喚につきおーてくれてホンマ感謝してます。織姫はんが帰った後もワイの会社で皆元気に働いてます。まぁゆーても仕事なんか全然ありませんけど……。それでも織姫はんに出会えた事をワイ等は良かったっておもーてます。ですから今回の仕事の報酬を送ります。 ジョナサンより。 PS、また何かあったら召喚させてもらいますんでよろしゅうたのんます』
手紙を読み終わった織姫は目を覚まし。
「え……? あれって夢じゃなかったの……?」
そう呟きながら届けものの中をあさりだす。そして出てきた物は化粧品だった。そして横から出てきた一枚の紙。そこに書かれていた言葉は
『肌年齢が気になる貴女に』
そんな言葉が書いてある紙を見て織姫は叫んだ。
「私はまだピチピチの28歳じゃああああああああああああああああああああっ!!!!!!」
これが織姫と異世界を繋げた初めの物語。それがどんな意味を持っているのか今の織姫のジョナサンも、誰も分からないのである。
だがこの物語の結末をハッピーエンドにするかバッドエンドにするかはきっと、織姫に託されたのであろう。
サー・マジョを読んでいただきありがとう御座いました。
結構適当な話になってしまっています。そして未だに10万文字書けていないという体たらく……。
八月末までに書けるか全然分かりません……。ですがそれでも頑張って書いていこうと思います。
この先の話は現在進行形で書いているので少しUPが遅くなるかもしれませんが、それでも読んでいただければ幸いです。
ここまでの話での感想など承っています。どしどしダメな点や直す点を申し付け下さい。
でわ、さかなでした。