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サー・マジョ  作者: さかな
第一部 異世界の魔女
10/22

009 エルフ王の依頼4

 

 

 

 織姫が再びこの世界へと訪れて、というか強制的に連れて来られてからもう日が落ちてしまった。

 その時間は数時間といった所で、物凄く長く滞在しているわけではない。

 それでも今日という日には色々な事があり、織姫は案内された部屋で一人考えていた。


(はぁ……。どうしてまた私がこっちの世界に来なきゃいけないのよ。確かにこっちの世界は現実を忘れさせてくれるけど、こっちもこっちで大変だからあんまり変りはしなわね)


 王宮の従者に連れて来られた部屋はとても広く、織姫が一人暮らししている部屋とは比べ物にならないほどの広さであった。

 そんな部屋に織姫は一人。他の皆は別室へと連れて行かれている。

 だだっ広い空間で、フカフカのベッドにその身を託しながら考えている織姫の表情はどこか少し虚ろな雰囲気を纏っていた。


(それに本当に私はこの世界で魔女なんだよね……。アヴァンの剣を折った時、本当にこの世界では自分が化物なんだって思っちゃったよ)


 自分の事を化物だと比喩する織姫は、先ほどよりも虚ろな瞳になり何かを思い出しているような表情へと変った。

 その虚ろな表情のままベッドから降りる織姫。そして大きく開けている窓の方へと向かっていった。


(今日のエリスが言ってた事が本当なら、私が神獣を倒さないとこの国の人たちが皆死んじゃうんだよね……)


 窓ガラスに手を当てながら見渡せる王都【アスタリア】の町並みを見ながら、更に織姫の表情が曇っていった。

 夜の【アスタリア】を高台にある王宮から見れば、城下町の明りがひしめき合いその輝きは美しく見る者全ての心を煌かせるようだった。

 だが、今の織姫の心にはその美しさが響かないみたいで、悲しそうな表情のままその明りを見つめていた。


 コンコンッ


 静寂を保っていた室内を扉が叩かれる音が響き渡った。


「私だ織姫、アヴァンだ」


 その扉を叩く主はアヴァンだった。

 エルフ領王宮騎士団長。その肩書きの通りアヴァンの剣の腕は本物なのだろう。魔女補正が付いている織姫には一太刀も入れることは出来なかったが、エリスの一言で瞬時に自分の剣を止める事が出来るのは達人の域に達していたからであろう。

 アヴァンの剣が止まっていなければ織姫の腕が落ちていたところだ。


 そんなアヴァンの声を聞き、悲しい表情が和らぐ織姫。そして織姫はいつもの調子になり


「どうしたの?」


「昼間の件で少し話がしたいんだ。悪いが部屋に入れてもらってもいいか?」


(あのイケメンが私の部屋に入りたいって言ってる……? 確かに昼間はイザコザがあったけど、もしかして私に惚れた?)


 アヴァンが来た事に対してポジティブな思考を巡らせる織姫。

 そして織姫はニヤニヤ顔を直し、扉を開けるのであった。


「夜にすまないな。ではじゃまするぞ」


 そう言うとアヴァンが部屋の中へと入って来た。

 だが、アヴァンは部屋に入ってきても何も話そうとはしない。そのせいで訪れる静寂。

 空気の音が吐息が聞こえるくらい静まりかえってしまっていた。そんな雰囲気に耐えかねたのか、織姫が口を開く。


「それで、なにしにきたの?」


 ベッドに座り扉の前で立ち尽くしているアヴァンへと問う織姫。

 そんな織姫の質問にアヴァンが答える。


「昼間に織姫へと剣を向けたことを謝りたかったのだ。私は自分の感情を抑える事が出来ず、織姫に酷い事をしてしまった……。それに、他の者にも酷い事を言ってしまった……」


 俯き謝罪の気持ちを伝えるアヴァン。その顔はとても苦しそうな表情だった。

 昼間の時に織姫が許すと言っていたのに、それでもアヴァンは自ら謝罪をしに来た。それが意味している事とはいったいなんなのか。


「あのさ、その話はあの時に全部終わった話しでしょ? 個人的に謝りに来る姿勢は良いけど、やりすぎると面倒くさいよ」


 冷静に言う織姫の言葉には重みがあった。

 社会人として当然の事を言っているのかも知れないが、その言葉をアヴァンが理解するのにはまだ幼かったのだろう。


「全てを承知で来ている。それでも私は謝らなくてはいけなかったのだ……。自分の幼さや、自分が捉われてしまっている過去を全て織姫には話さなくてはいけないと思ったのだ……」


 アヴァンの表情は悲しみを帯びていて、それとは相反するように微笑んだ。

 そんなアヴァンを見た織姫は


「分かったよ。話は聞くから取り合えず座りなよ」


 そう言い織姫は自分が座っているベッドの横を叩き、ここにおいでと言っているようだった。

 そんな織姫に応えるようにアヴァンは織姫の横に座った。


 織姫よりも少し身長の高いアヴァンは常に鎧を身に纏っているせいかその体躯を把握する事が難しい。だが織姫の隣に座ったアヴァンの体はどこと無く華奢で、綺麗でサラサラな長い銀髪からは良い香りが漂った。


(やべぇ……。すげーシリアスな感じなんだけど、男とベッドに二人で座るなんて久し振りすぎてなんか興奮してきた……。つか髪の毛サラサラ。それにまつげも長いし、すげー綺麗な顔してる。マジでイケメンだ。このまま美味しく召し上がってしまおうか)


 真剣な表情を浮かべる織姫の脳内はただの淫獣そのものだった。だが、そんな織姫の思考を読み取ることの出来ないアヴァンは話を始める。


「改めて、昼間は本当にすまなかった。王の御前であのような失態……、エリス様が言ったとおり、私は騎士団長の名を穢す結果になってしまった……」


 一度頭を下げアヴァンは話す。その姿を見ている織姫は


(あーマジでこの子可愛い。このまま酒でも飲ませてどうにかしちゃうか? いやいや、そこまでやったらなんだか私が惨めになる……。止めておこう)


 真面目な話しをしているアヴァンに失礼だと思えるくらい、織姫は話しなんて聞かずにアヴァンをいやらしい目で見続けている。

 だが、そんな織姫もアヴァンの話しに耳を傾ける事になる。


「私は本当に未熟だ。エルフ王に拾って貰った時から……、いや父と母を失ってしまった時から何も変わっていない……」


「今の話しどういう事……?」


 不安げな表情になる織姫。そんな織姫を見てアヴァンは少し微笑む。きっとその微笑みは織姫に必要以上に心配をかけない為なのだと思う。

 そんな優しさを見せるアヴァンは織姫を見つめながら口を開いた。


「私は孤児なのだ。15年前、私は家族を何者かに殺された。独りぼっちになってしまった私は生きていくのに精一杯で家族の死をちゃんと悲しむ余裕すらなかった……。生きるために悪い事もした。食べ物を盗んだり他人を騙したり……。そんな生活が数年過ぎたある時、私の目の前にエルフ王様が現れたんだ」


 過去の情景を思い浮かべながら、どこか遠くを見ているような瞳で話すアヴァン。

 そんなアヴァンの話しを静かに聞いている織姫。


「そして私はエルフ王に拾われ王宮で暮らすことになった。その時の私は10歳で同年代の従者がいなかった事からエリス様のお相手をする事になった。幼いエリス様はとても可憐で美しかった。だがそれと同時に全てを持っているエリス様が憎く思ってしまった時期があった……。こんな話しエリス様にしたら即打ち首にされるだろうな。それでも私はエリス様が羨ましかったんだ……」


 俯き苦笑を浮かべるアヴァン。そんなアヴァンの話しを聞くことしか出来ない織姫。

 そんな織姫の表情にきっとアヴァンは気がついている。それでもアヴァンは話し続けた。


「そしてエリス様のお付になり2年が経った時だった。私はその時12歳でエリス様は10歳だったな。王宮の庭で遊んでいる時、急にエリス様が私を見ながら語り始めたのだ」

 

 

 ◆

 

 

 8年前。王宮庭園。


「もうエリス様ー、そんなに急がなくても大丈夫ですよー」


 幼き頃のアヴァンがエリスを追いかけながら言う。

 この時のアヴァンはまだ騎士ではなくエリスの従者。格好も紳士的な服を身に纏っていて、小さな従者がそこにはいた。


「もうアヴァンったら、本当に何も分かっていないわね。時間というものはあっという間に過ぎ去ってしまうのよ。だからこそ私は今日という日を謳歌しなくてはいけないの」


 エリスの言っている事を理解出来ていないアヴァン。それどころかエリスを追いかけるのに精一杯でその声すら聞こえていない様子だった。

 そしてやっとの思いでエリスに追いつくアヴァンはその場に崩れ落ちて息を切らしている。


「本当にアヴァンは情けないわね。これくらいでどうしてそこまで疲れられるの?」


「お言葉ですが、エリス様……、はぁ、エリス様が御自信で思っている以上にエリス様の足は速いのですよ。はぁ、はぁ、そんなエリス様を追いかけるだけで私は一苦労です」


 言葉の節々に切れた息を漏らすアヴァン。そんなアヴァンの言葉を聞いてエリスは微笑みながら言い返す。


「はぁ……。それは私の足が速いのではなくて、あなたが遅いだけよ。アヴァンはもう少し運動をしたほうが良いわ。それにちゃんと食べてる? ちゃんと食べないと成長しませんよ」


 母のように説教をするエリス。そんなエリスを見てアヴァンも微笑んだ。

 だがその微笑みは過去の事を思い出しながら作ってしまっている微笑で、アヴァンどこかで未だに過去を引きずっていた。


「まぁいいわ。アヴァンが疲れてしまっているのならゆっくりしましょう」


「な、何を仰いますかっ!? わ、私なら大丈夫なのでもっと遊びましょうっ!」


 従者の身分で主に気を使わせてしまった事に焦っているアヴァン。だがそんなアヴァンを見てエリスは話し始める。


「いいのよ。それにアヴァンには話したい事があったから」


 ふざけていた表情が真剣なものへと変わるエリス。そして


「私はね全てを持っているのよ。財も地位も何もかも……。私は王家に生まれてきた事をずっと後悔していた。でもね、アヴァンと出会えて私は少し変われたと思うの」


 青く輝きを見せている空を見上げながらエリスは言う。

 太陽がエリスを照らし、アヴァンはそんなエリスの影の中にいた。


「つまらない毎日だった。周りには大人しかいなくて、卑しい大人の会話、駆け引きで使われる言葉。そんなものを毎日聞いて私は育った。だからかしら、きっと歳相応に無邪気にはなれないわ。きっとこのまま私は王家を継いでエルフ領を統治する未来が待ってるって思ってた。でも、そんな私の前にアヴァンが現れてくれたわ」


 空を眺めていたエリスの瞳はアヴァンへ向き、その瞳を前にアヴァンは何も言えない。

 それほどエリスの瞳は強いもので、信念というものがそこには確かに存在していたのだ。


「アヴァンが来てから毎日が楽しくなった。灰色だった世界がどんどん色づいていって、そして私には夢が出来たの。こんな美しい世界を守りたい、どんな種族だって関係なく皆で笑いあっていたい。それが私の夢。でもこの夢は私一人ではどうしようも出来ないわ……。だから━━」


 言いながらエリスはアヴァンへと手を伸ばした。そして


「私の剣になりなさい、アヴァン」


 アヴァンの目の前にいるエリスは本物の姫君で、堂々と力強い瞳でその手を伸ばしていた。

 その手を掴むのを躊躇っているアヴァン。エリスの顔を見ることが出来ずに俯いた。


(こんな私がエリス様の剣になる事なんて出来ない……。卑しい気持ちを抱いていた私には、エリス様の夢を共に叶える事なんて許されないんだ……!! 私はエリス様に何もしてあげられない……)


「私の手を掴んではくれないのね……」


「ち、違いますエリス様っ!! ただ、私は……」


「そうね、アヴァンが私の剣なんて似合わないわ。だから、アヴァンはアヴァンらしく私の隣にいてちょうだい」


 そう言うエリスの笑みはとても優しく、アヴァンの心を動かさせた。

 どんな結果になってものエリスはアヴァンを信じきっていたような瞳をしていて、現状を受け入れられずワガママを言う素振すらみせない。

 エリスは王家の娘。ワガママを言ったとしても誰も咎める事は無い。だが、そんな自信の立場を分かっていてもエリスは自分の夢を強要はしないのだ。それがエリス本人が上辺だけではない夢を描いている証拠になる。

 そんなエリスを見て、アヴァンは強く拳を握る。そして


「申し訳御座いませんでしたエリス様。私の覚悟が足りないばかりにエリス様の夢を否定してしまう形になってしまいました」


 膝をつきエリスの目の前で懺悔を始めるアヴァン。そんなアヴァンを見かねたのか


「何言ってるのよ。そんなに重い話でも無いんだからそんな格好しなくても━━」


「私の名はアヴァン・ハイム。この名を主に捧げ、この身を剣と化して主をお守りする事をここに誓います。これより私は、エリス様の剣です」


 エリスの言葉を遮ったアヴァンは、簡易的な契約の儀を始めた。

 それは形式ばったものではなく、アヴァンの気持ちをエリスに伝える為に行われたようなものだった。何の準備もしていなくて、ただただ王宮庭園で行われている遊びのような儀式。

 それでもエリスは自分の気持ちを理解してくれたアヴァンを


「アヴァン……。ありがとう……、アヴァンっ!!」


 そう言いアヴァンへと抱きつくエリス。

 アヴァンの胸の中でエリスは泣いているように見えた。だが、そんなエリスを見ていても何も言わないアヴァンは、ただただ微笑みながらエリスを抱きしめているのであった。

 

 

 ◆

 

 

 過去の話を織姫へとしたアヴァンは気持ちが解放されたかのように微笑んでいた。

 自分の過去を曝け出すのはとても困難な事で、今日の今日に出会った織姫にどうしてアヴァンが話したのかは分からない。

 エリスの剣になるという契約はきっと本人達しか知らないことだ。それを織姫に話したアヴァン。そんなアヴァンに織姫は


「そんな事があったんだ……」


 優しく微笑み、アヴァンのことを見ながら言う織姫。だがその表情はどこか寂しさを纏っていた。


「だから私はエリス様に忠誠を誓う騎士なのだ。なにがあろうと私はエリス様を守ろうと思っている。それが私の生きる意味だから」


 織姫を見つめ、自分の志を伝えるアヴァン。だが


「アヴァンの言いたい事は分かったよ。本当にエリスの事を大切に思っているんだね。でも、どうして今のアヴァンはそんなに辛そうなの……?」


「何を言っているんだ……?」


 織姫の言葉を理解出来ていないアヴァンは、驚いている表情を浮かべた。だがその表情は苦しみが帯びている表情で、織姫にはその意味が分かっているのかもしれない。


「だってさ、なんだか昔の話をしている時のアヴァンは楽しそうだったのに、話が終わりに近づくにつれて苦しそうな感じだった。私にはどうしてアヴァンが苦しいのか分からないけど、きっとアヴァンはあの苦しいの所の話しを私にしにきたんじゃないの?」


 アヴァンを見つめ、少し悲しそうな表情で言う織姫。そんな織姫の言葉にアヴァンは


「織姫……。貴様は本当に凄い奴だな……。私の心が読まれているようだ。それも魔女の力なのか……?」


「魔女とか関係ないよ。私はアヴァンよりも生きてるし、色々な汚い部分も見てきてる。だからなのかな、昔から苦しんでる人の事ってすぐに分かっちゃうんだよね」


 ベッドから立ち上がる織姫。そして


「だから全部話していいよ? 私で良いならアヴァンの気持ちぶちまけて良いんだよ……?」


 優しく言う織姫の言葉を聞き、そんな織姫の笑みを見たアヴァンの感情はもう止まらなかった。


「私は……、私は悔しかったのだっ!! 魔女である織姫が現れて、私では神獣を倒せなくて、エリス様は私じゃなくて織姫に頼ったのだっ!! それが悔しかった……、私はエリス様の剣なのに、どうしてエリス様は私を頼ってくれないっ!! 私はエリス様が望めばこの命を捨ててでも神獣を━━」


 バチンッ


 室内に大きな音が響くわたる。その音は誰かの頬を叩いた音で、その瞬間部屋の中に静寂が一瞬だけ訪れる。

 そして


「なにが命を捨てるだよ……。そんなつまんねぇ事で命なんか賭けてんじゃねぇよっ!!!!」


 織姫の怒号。そして叩かれた頬を押さえているアヴァン。

 そんなアヴァンは織姫を眉間を寄せながら見つめる事しか出来ていなかった。


「エリスが言ったのか? 死んでも神獣を討伐しろってエリスがいったのかよっ!!」


「そんなこと……、そんなことをエリス様が言うわけないだろうっ!!」


 織姫の言葉で我に帰ったのか、それとも頬の痛みで怒りを覚えてしまったのか。アヴァンは織姫に激怒する。


「それでも誰かが犠牲にならなくては神獣を止める事は出来ないんだっ!! エルフ領の民の命と、私の命を天秤にかけてみろ。誰がどう見ても私の命のほうが軽いに決まっているだろっ!! 私の命で全ての民を救えるなら私は本望だ」


「それが違うって言ってんだよっ!!」


 間髪いれずに織姫の怒号が再び響き渡る。


「お前の命の方が軽いだって……? 確かにお前を知らない奴からして見たらそうかもしれないな。でも、エリスにとってお前の命はエルフ領の民の命と天秤にかけられないくらい大切なものだろっ!! どうして分からないんだよ……、どうしてエリスの気持ちが分からないんだよっ!!!!」


 響き渡る織姫の声。そして再び静寂が訪れる。織姫の息を切らした声だけが聞こえて、アヴァンは何も言えなくなってしまってた。

 感情的になっている二人は、この静寂で冷静になっていく。


「誰も死んで欲しくないんだよ。エリスは皆が笑っている世界を夢見てんだろ……? その世界にはアヴァンもいるんだよ」


「私も、いる……?」


 眉を顰め言うアヴァン。

 その声がアヴァンの気持ちを全て曝け出しているような感じがする。

 何もかもを失ってしまって、大切なものを守れなかったアヴァン。だからこそ自分の全てをとしてでも大切なものを守りたいと思っていたのだ。


 自分の過去を後悔する日々。何も出来ず両親を失ってしまった現実。それが全てアヴァンの重荷になっていて、身動きが取れなくなってしまっていたのだ。


「アヴァンだってエリスが笑っている世界が見たいだろ?」


「……あぁ」


「だったらエリスも同じだ。アヴァンが一緒に笑っている世界を見たいって思ってるんだよ」


 そう言い織姫はアヴァンを抱きしめた。

 そんな織姫の胸の中でアヴァンは


「私は、エリス様の隣にいても良いのか……? 私は、エリス様の剣になれているのか……?」


「そんなの私が知るか。エリスに直接聞けよ」


 そのままアヴァンは織姫の胸の中で泣き続けたのであった。


 戦いが始める前夜に……。



 





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