休日・ケルテル
俺達は1500ケインという膨大な金を持って、夜に宿屋に着いた。
洞窟では化け物に会わなかったが、森では当然会った。
ただ、ユアは凄い勢いで街に向かい、俺とマアはそれについて行くのに精一杯だったので、結果としては会った化け物は全て無視した形になる。
「3部屋使わせてもらいます」
俺は店員に言いながら300ケインを出す。
「ありがとうございます」
店員は受け取る。
「ではいつもの部屋をお使い下さい」
店員が言うので、俺、ユア、マアは階段を上り、2階に行く。
「残りはいくら?」
ユアが言う。
「1200ケインだな」
「じゃあ、私が使わせてもらうわね」
「全部か!?」
「ええ」
何に使うんだ。こいつ。
「蓮斗さん。ユアにも何か考えがあるんですよ」
「そうかなぁ?」
俺はポケットから1200ケイン出すと、ユアは俺の手からそれを奪い取る。
「じゃあね」
ユアは軽く別れを告げると、階段を下りていった。
「どんな考えがあると思う?」
「すごい考えです」
「そうか」
俺は部屋に入った。
大丈夫かな……。
俺は服を洗濯機に入れる。
そして『洗濯開始』のスイッチを押す。
すると洗濯機はギュルギュルという音をたてて、すぐに音が無くなる。
「早いよなぁ、相変わらず」
俺は洗濯機から服を出すと、完璧に乾いていた。
「もう乾いてるし」
俺の家の洗濯機もこうだったらなぁ。
まぁ、同じ服を着るっていうのは抵抗があるけど。
俺は浴室に行き、『風呂』というボタンを押す。
こちらもまたギュルギュルという音をたてて風呂はもう沸いた。
俺は風呂に入った。
俺が風呂から出て、服を着た所でノックが聞こえた。
「はい?」
ドアを開けると、ユアがいた。
「私の部屋に来なさい」
「お、おう」
俺はユアと部屋に入る。
部屋にはマアがいて、あと大きなビニール袋があった。
「な、何それ?」
「ああ、これ?」
ユアは近付いてビニール袋の中を見せる。中には、
「野菜?」
「そう、正解!」
やっぱりか、だが、
「な、なんで? 料理でも作るの? 多くない?」
明らかに多い。10人前でも作るのだろうか?
「違うわよ。杖に食べさせるの」
「は? え?」
ついにおかしくなっちゃったか? 元々電波ちゃんっぽかったけど。
「言わなかったっけ? 精神力を使って魔法を使うじゃない? それを物で代用できるって」
「あー、そうだった。なるほどな」
そういえば、会ったばかりの時、そんなこと言ってたような。
「はい、そういうことです」
マアは袋から野菜を出して並べながら言った。
「ほいっ」
ユアは野菜に触れさせて吸い込んでいく。
トン、トンと杖を触れさせる度に野菜は消えていく。
「なんというか異常な感じ」
俺の呟きは意にも介さずに続ける。
吸い込んでいく度に水晶が赤くなっていく。
「赤くなってない?」
「ああ、これはどれだけ代用できるかを表しているのよ。真っ赤になるまで吸い込めるわ」
そして、20個ほどあった野菜が10個になった所で杖が真っ赤になる。
「いや、余っちゃってるけど」
「さ、蓮斗も」
「へ?」
俺も、何をするんだろうか。
「私の杖をコピーしたんだから、できるわよ。実際、魔法は発動できる訳だし」
「そうかなぁ?」
「杖を物に触れさせて、吸い込めって思えばいいのよ」
随分な無茶を言う。
「杖」
とりあえず、ミューテイトを杖の形にする。
そして、杖を野菜に触れさせる。
イメージだ。さっきのような野菜が杖に取り込まれる感じ。
俺は目を閉じてイメージする。そして、目を開けると野菜はなかった。
「うわぁ、出来た」
「よし」
俺はそのまま野菜を吸い込みまくるが、上の方にある水晶型の白い球体が黒くなって行く。
「なんか、黒くなってるんだけど」
「あなたの杖は黒に変わるのね。濃くなるまでやれば、多分、重くなる魔法も結構な回数使えると思うわよ」
「な、なるほど」
俺は言われた通りに野菜全てを杖に取り込む。
「明日は遊びませんか?」
マアが突然、提案した。
「え?」
なんというか、意外だった。
「ほら、二日連続で洞窟に行くより、1日遊んでから行った方がいいじゃないですか」
「うん、そうだな」
その意見には賛同できる。
「じゃあ、行きましょうか!」
とユアも賛同すると、
「はい!」
とマアも言った。
「ところで、金は残ってるのか?」
「ええ、1200ケインほど」
ふう、良かった。
「じゃあ、大丈夫ですね」
俺は待ち合わせ場所である、よくケーキを食べに行く店の前に来ていた。
「ここが待ち合わせ場所なのか。絶対、最後はここに戻ってくるだろ」
俺は思いながらも待つ。
すると、マアが走って寄って来る。
「すみませ~ん、お、お待たせしましたか?」
息を整えて無いのにマアは言う。
「いや、全然待ってないよ。あとはユアだね」
「は、はい」
まだ息が整わないようだ。
「大丈夫か?」
「は、はい。あ、りがとう」
頑張ってお礼を言おうとしてくる。
「もう、いいから。大丈夫」
「はい」
わざわざ走って来なくても良かったのになぁ。
まだ30分も前だ。俺は1時間前からいたけど、それは礼儀としてだしなぁ。
「走ってこなくても良かったんだぜ?」
「はい、ただ居たので。走っちゃいました」
「ははっ、性格が良いんだな」
「へっ、いや、そんなこと無いです」
「俺は良いって思うよ」
「あ、そうですか」
マアは顔を見せずにそう言った。
ユアが前に見える。
「お待たせー」
歩きながら大きく手を振って言う。
「おう! 待ってたぜ」
「ごめんごめん、でも待ち合わせ時間まだでしょ? いつから居たのよ」
「さっきだな。じゃあ、行こうぜ」
すると、ユアはマアの事を見て言った。
「ええ、セレス? 大丈夫? 顔、真っ赤だけど。風邪?」
「あ、いえ。大丈夫です。はい」
動揺しすぎだろ。
「そう? 無理しないでね」
「はい、じゃあ、行きましょう!」
「うん!」
ユアは返事をするとよくケーキを食べる店に入ろうとする。
「って、おい。そこ入るのか?」
「ええ、その為にここを待ち合わせ場所にしたんじゃない」
「マジかよ。生粋のケーキ好きだな……」
「そう?」
俺達は店に入って椅子に座る。
「ケーキ3個、ください」
ユアが注文する。
「かしこまりました」
店員は綺麗にお辞儀すると、下がった。
「この街も、色々遊ぶ場所があるわよねぇ」
「そうなのか?」
俺には武器屋とかがあるイメージしか無い。
「ええ、ケルテルとかが出来る場所もあったわよ?」
「ケルテル?」
なんじゃそりゃ?
「魔法でトゲの付いた風船を操って闘うゲームですよ」
マアが説明してくれる。
「へえ」
「じゃあ、このあと遊んでみる?」
「おう、でも、俺風船を操る魔法なんて使えないぞ?」
「大丈夫です。精神力さえあれば自動で発動するようになってるんですよ」
「そうなのか」
すると、店員がケーキを持って近付いてくる。
「ケーキでございます」
店員は俺らの前にケーキを置いた。
「ありがとう」
ユアが言う。
「いえ、では失礼します」
そして店員は次の仕事に移る。
うん、美味しそうなケーキだ。
「じゃあ、食べましょう?」
「ああ、いただきます」
「いただきまーす」
「いただきます」
ケーキを食べる。
うん、相変わらず美味いな。
「おいし~」
「本当、これ美味しいですよ!」
マアは喜びながら言う。
「うん、一度セレスにも食べさせてみたかったのよー」
そうなのか。
「うん、ありがとう」
「え? ええ」
俺達はケーキを食べ終わると店を出て、ケルテルが出来るという店に来た。
でも、ケルテルって俺、知らないんだよなぁ。
この世界は俺の願望がベースになってるけど、少しはユアの願望も入ってんのかな?
「さ、やるわよー」
ケルテルは本来、4人でやるものらしく、3人では半端だ。
「じゃあ、マアとユアでやれよ」
「何言ってんのよ。2対1で妥当だっての」
ユアが強気に言う。
「へえ、言うなぁ。マア、倒そうぜ!」
「え? はい、頑張ります!」
「フッフッフ、来なさい。貴方達がどれだけ小さいか思い知らせてやるわ」
なんかラスボスみたいな雰囲気出してるけど。
10ケイン入れると、机に開いている穴から風船がでてくる。
「蓮斗さん。その杖を握って下さい」
机には棒が付いている。これの事だろうか?
俺はその棒を握る。
「前に倒すと、前に前進します」
俺は棒を前に倒す。すると風船は前に動いた。
「あまいわぁ!」
俺の風船はクルクルと回りながら前に動くが、ユアの風船は一直線に俺の風船に向かってくる。
「危ない!」
マアが叫ぶが、もう止まらない。
俺の風船とユアの風船がぶつかった時、俺の風船だけが割れた。
「何?」
「このゲームを分かってないようねぇ、蓮斗。風船にはトゲが一つしか付いてない。つまり、上手く操作してそれをトゲ以外の部分に当てなきゃいけないのよ!」
「なにぃ!?」
驚愕。それを先に言ってくれれば。
「大丈夫です。このゲームは1人2個風船を使えます。すぐに出てきますよ」
マアが言う。
「ああ」
「心を静めてイメージすれば風船は回転せずに飛んでいきます」
「ああ」
マアの風船はユアの風船とぶつかる。トゲとトゲがぶつかり、風船と風船がぶつかる。
「やるわね、セレス!」
「負けられません!」
「へえ、今日はいつになくやる気じゃない」
「今日は、今日だけでも!」
またぶつかり、二人とも割れない。
そして、俺の2つ目の風船がでてくる。
俺は激しい闘いを繰り広げているユアの背を取り、襲いかかる。
「くらえええ」
「クッ、しまった!」
パァンという音。
ユアの風船が割れた。
「やるわね、蓮斗。あまく見てたかも」
「へっ、俺は負けず嫌いなんでな」
そしてユアの風船がでてくる。
「それは、私もよ!」
ユアの風船は綺麗な弧を描いて接近してくる。
「クッ」
俺はトゲをぶつけに行くが、かわされる。
そして無防備になった俺に襲いかかる。
だが、その角度ではトゲが当たる事は無い。
「あっ」
マアが何かに気付いたように言う。
ユアの風船は俺の風船に当たり、俺は動かされるが、割れる事は無い。
フッ、避けきった。
パァン。
なんだ? 風船が割れる音?
俺が見るとマアの風船が俺の風船のトゲに当たって割れていた。
「私に囚われすぎよ、蓮斗」
「バカな。悪い、マア」
「いえ、大丈夫です。これもユアの作戦ですので」
「ああ」
全員、残り1個。
ユアの風船が近付いてくる。
俺はユアの風船をかわす。
そしてマアがユアに攻撃しようとする。
ユアがかわす、そしてその先には俺の風船。
「まんまと引っ掛かったわね、セレス。これで蓮斗は終わりよ」
すると、マアはトゲをユアの方に向けた。
そうか、なるほど。
「へえ、代わりに貴方が負けるつもり?」
違う。
俺はトゲじゃない部分でマアに当てる。
「なっ」
そのままマアの風船はユアに当たった。
「えぇえええ」
ユアが言う。
「よっしゃー」
「やったぁ!」
俺とマアがハイタッチする。
「あ、その」
マアはやり終わってから恥ずかしがってるようだ。
「私が……負けた!?」
宿屋に向かう道。
「そんなに落ち込むなよ」
ユアは負けてものすごく落ち込んでいた。
「ええ、でも、今日のセレスは強かったわ。なんか今日は勝つみたいな事言ってたし」
「え? あれは、その」
「ああ、ありがとな! マア」
マアの顔が赤くなる。
「ふぁ、はい!」
大丈夫かな?
「じゃあ、明日は洞窟ね。頑張りましょう!」
「はい」
「おう!」
そして俺らは宿屋に向かった。
一休み、というやつですね。
この小説には多いかもです。
ただ、多分次回は結構進むので、その前にこういうのを挟んでおくと後に良いのです。
では次回!(も読んでくれると嬉しいです)




