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知らない世界にとばされた。  作者: 茶碗蒸し
8/21

洞窟探索①

 俺が朝起きて、顔洗いやら歯磨きやらを済ませた時、ノックの音は聞こえた。

 ドアの先にいたのはユアだ、俺はマアとはあまり仲良く無いので、妥当だろう。

 なんでも、今日行く洞窟の作戦会議をするそうだ。

 俺はユアについていき、ユアの部屋に招かれる。

 俺は言われた通りに部屋に入ると、マアがいた。

 そして、今。

「洞窟についての作戦会議って言っても……」

「情報は無いわよね」

 マアとユアが言う。

 洞窟、か。

「その洞窟は何処どこにあるんだ?」

「それが、分からないのよ。暗い、とか。強い化け物がいる、とかは言ってたんだけど」

 抽象的な事しか教えてくれないとなると、自分で見つける必要があるのかもな。

「もう一度聞いてきますか?」

 暗くて、魔物が強い洞窟……

「いや、行った事あるな」

「本当?」

 ユアが聞いてくる。

「ああ、金稼ぎの時にたまたま、な。案内もできるぞ」

「あ、ありがとうございます」

「おお」

 あの時はオークに苦戦したが、魔法の使えるユアとマア、それから俺も魔法を使えるようになったんだ。大丈夫だろう。

「ただ……」

「何?」

「化け物が強いって言うのは本当だ。だから、出来れば他の方法がいいんだが」

 出来れば、の話だが。

「と言われても、これしか無いからねぇ」

 ユアが言う。

 それはそうなんだが、

「うーん、お前達の世界からマアみたいに助けが来る事は無いのか?」

「無いわね。私の部屋にマア以外が入るとは思えないし」

 ユアは即答した。

 ユアの部屋にはマア以外が入らない? 普通に暮らしていてそんな事があるのだろうか?

「え、親は? 一人暮らしなのか?」

「そうね。親は死んだから」

 さらっとユアは言う。

 だが、ユアの顔はけっして明るくは無く、内に悲しみを秘めているのが顔を見るだけで分かってしまう。

「ごめん、嫌な事思い出させて」

 無神経だった。これ以上の詮索はよそう。

「いえ、いいのよ。ああ、そうだ。セレスの事は勘違いしないでね?」

「ん?」

 マアの事で何か勘違いをしただろうか?

「セレスは魔法を使えるけど、犯罪者では無いわ。マアの親が国を守るために特別に魔法の使用を許されている人なの、だから、それを継ぐ事になるであろうマアは魔法の練習をしてるってわけ」

「へえ」

 なるほどなぁ、あっちの世界にも色々あるんだな。

「……」

 マアは黙っていた。

「じゃあ、行きましょう?」

「いや、やらなきゃいけない事があるから、ちょっと待っててくれ」

「え? ああ、うん」

 俺はやらなきゃいけない事をする為に、宿屋を出た。


 城の前。

「つまり、化け物を倒す代わりに王女に会わせろ、と?」

「ああ」

 俺は面会する条件として洞窟の化け物を倒す事が成立するか聞いてみたのだ。

 終わった後に徒労だった、じゃ嫌だからな。

「確認してこよう。待っていろ」

 そう言われてから10分くらいが経った頃、帰ってきた。

「いいそうだ。私達もそれには困っている。頑張ってくれ」

「ああ」

 こいつに応援されるとは思ってもみなかったな。

「それから、多分強い化け物がいるのは原因がある筈だ」

「原因?」

「例えば、更に強い化け物が他の化け物を引き連れている、とか」

「へー、了解」

 俺は城に背を向けて、宿屋に向かう。

 へえ、ボスまでいるって訳ですか。


 俺が宿屋に戻る。

 そういえば、俺の部屋って固定されてんだよな。

 俺、ユア、マアは何日も宿屋を使っている為、代金を払うといつも同じ部屋を使わせてもらえるのだ。

 なんとなく、感謝しなきゃなと思いながらも階段を上がり、自室に向かう。

 二階に着くと、俺の部屋のドアにマアが寄り掛かっていた。

「どうしたんだ?」

「あの、ユアの事も、勘違いされてると思うので、説明しておきたいなって」

 マアは控えめに言う。

「とりあえず、中で話そう」

「え、はい」

 マアは部屋に入ると、おじゃましますと言ったが、これは何も返さなくていいやつだよな。

 俺は椅子に座る、マアも反対側の椅子にありがとうございますと言い、座った。

「で、なんだ?」

「今日の、ユアの話です。あれだと、まるでユアが悪者のような言い方でしたので、弁明しようかと」

「あ、ああ」

 確かに、今日のユアは少し自虐的に思えた。しかし、それだけの為に俺を待っていたとは。よほどユアと仲が良いんだな。

「昔から、ユアは空間移動魔法の研究をする事を義務のように考えていました。子孫から研究され続けているその魔法を、自分の代でおろそかにする訳にはいかない、と」

「なるほど」

 その一族に課せられた使命という奴だろうか。

「そして、ユアの親が魔法を研究している事が知られてしまい、勿論、捕まえきます。懲悪ちょうあくという決まりを破る者を取り締まる仕事をしている人がいて、その人達がユアの家に行きました。そして、ユアの親が懲悪をくいとめている間に、私は逃げたとユアが言っていました。見殺しにした、とも。だから、ユアは魔法を使う事をやめなかったんです。死んでしまった親の為にも。だから、ユアは悪くありません」

 マアは悲しそうに語った。

「ああ、悪くないな」

「では、長話をすみません。失礼します」

「ああ」

 もし、ユアが魔法を完成させる、という使命を背負っていたなら、もう解放されたのだろうか?

 マアが部屋に入ろうという所で、ユアが部屋から出てくる。

「あら、蓮斗。帰ってきてたの?」

「ああ」

「じゃあ、セレス。行きましょう? 洞窟」

「は、はい。そうですね」

 そして、俺達は気まずい雰囲気のまま、街を出た。


「はぁ、やっと着いた」

 ユアは疲れの溜まった声で言う。

「確かに、遠かったですね」

「うーん、そうかな?」

 俺はそんなには感じなかったけど。

「そうよ! 遠いなら遠いって言ってくれればいいのに」

「悪い」

「だいたい、遠くないって思うなら、あの鮮やかな夕焼けを見なさいよ!」

 俺は言われた通りに鮮やかな夕焼けを見る。太陽から今も放たれている光は、木々をオレンジ色に染め上げている。

 そういえば、俺が初めて来た時も夕焼けだったっけ。

「え? ああ、綺麗だよな」

 夕焼けに見惚れて、俺は遅れながらも感想を言う。

「ちがーう! 時間が経ってるって事でしょ! もういいわ。行きましょ!」

 ただ、求めるいるのは感想では無かったようだ。

「ああ」

 てか、なんで俺、こんなに怒られてるんだ?

 ユアが行ってしまうので、俺とマアは急いでついていく。

 ユアが洞窟に入ると、すぐにユアが見えなくなった。

「相変わらずの暗さだな」

 すぐそこに居る筈のユアが見えないなんて。暗いにも程があるというものだ。

「まったく。何も見えないわね。エルセンデル!」

 ユアは洞窟に苦情を言い、エルセンデルと唱えた。すると、ユアの杖から光が放たれる。太陽ほど明るくは無いが――というかそんなに明るかったら今頃死んでるが――懐中電灯なんかより全然明るい。

 光は全方位に放たれている為、ユアの顔も洞窟内も見渡せる。

「な、なんだそれ!?」

「光を灯す魔法ですよ。エルセンデル!」

 マアは俺に説明しながらも光を放つ魔法を唱える。

 マアの木出来ていて上部には青い宝石がある杖が発光する。

 というか、杖に魔法で光を灯すというのはどういう原理なのだろう。つっても、魔法に原理なんか聞いても意味無いか。

「マジかよ」

 俺は置いてけぼりにされたような気分を味わって、呟く。

「蓮斗もやりなさい。簡単だから」

「ああ、杖」

 ユアに急かされてミューテイトを杖の形にするものの、簡単なのだろうか。ユアにとって簡単、とかだったら、俺にとっては難関なんだよなぁ。

「エルセンデル」

 適当に唱えながらも、杖が光るという事をイメージしながらやると、俺の杖も光る。

「さ、行きましょう」

 ユアが軽く言う。

 この光を灯す魔法はあまり精神力を消費しないようだ。

 だが、油断は禁物。ユアやマアのように魔法に慣れているならいざ知らず、俺は初心者だ。

 この魔法の疲労が少なくても、塵も積もれば山となるかも知れない。

「行きましょう? 蓮斗さん」

 マアに言われる。

 どうやら、考え事をしている間にユアは進んでいるようだ。

「あ、ああ」

 慌てながら行く。

 この洞窟、初めて来た時は暗いという所にしか目がいかなかったが、結構な広さだ。俺、ユア、マアが居ても窮屈きゅうくつじゃない、というか人は6人が並んでぴったりぐらいだし、縦は天井まで3メートルはあるだろう。

 どんな荷物を運ぶのにこのスペースがいるんだよ。

「なあ、ユア」

 俺はユアの横まで歩いて言う。

「何?」

「俺が敵を切るから、ユアとマアは援護えんごしてくれないか?」

「うーん、そうね。私もマアも近接戦闘ができない訳じゃないけど。蓮斗に任せるわ」

 ユアは少し悩んでそう言った。

「え? 近接戦闘、できるの?」

「ええ、例えば杖を鋭い形に変えて、突き刺すとか、色々ね。ただ、蓮斗の方が得意だし」

「へぇ」

 そういえば、初めて会った時に杖を鋭くする魔法、使ってたっけ。

 そうして、洞窟内を進んでいくと、目の前にオークがでてくる。

「敵だ。二重使用ダブル、剣」

 俺は杖に手を触れさせて言うと、手に白いミューテイトが絡みつくので、引き抜く。すると、もう剣の形になっていた。

 俺はその剣でオークを叩く。切るでは無く、叩くになってしまった。

 やっぱり、ミューテイトの軽さじゃ切る事はできないか。

 すると、オークが持っている木の棒を当てにくる。俺は避ける。

「蓮斗。その化け物は2体いるわよ」

「2体!?」

 俺は周りを見渡すと、確かに2体いた。

「フエゴ!」

 ユアは魔法で出した火の玉をオークにぶつける。

 すると、天井から何かが俺にぶつかってくる。

 顔を爪で切られる。

「なんだ?」

 俺が狼狽している内に、オークが接近してきていた。

 かろうじて俺がオークの攻撃をかわすと、もう一体のオークも攻撃してくる。

 避けられないッ。

 来るであろう痛みに備える。

「フエゴ」

 だが、オークの攻撃が当たる前にマアの攻撃が当たったようだ。

 だが、俺の目の前にいるオークが攻撃しようとしてくる。俺は剣でそのオークの木の棒をはじくと、

「フレアテメント!」

 俺はミューテイトを重くする魔法を発動させた。

 同時に杖から光は消える。

 俺の剣は俺の記憶でオークがいた場所を通る。そして俺の剣はオークを切り裂いた。

「蓮斗!」

 突然、光が消えたからだろうか。ユアが心配そうな声を出す。

 ただ、今はまだ安全では無い。

 もう一体のオークが近くにいるからだ。ここに生息しているという事は、おそらく暗闇でも見える。つまり、今すぐに俺に攻撃してくる可能性もあるという事だ。

 俺は一歩下がる。

「エルセンデル!」

 俺の杖に光を灯すと、さっき俺が居た位置に木の棒を振るオークがいた。

 俺は動かなかったら痛みに悶えていただろうという恐怖と誰もいないのに木の棒を振るオークの滑稽さに対する笑いの入り混じった感情が芽生えた。それは油断。

「フレアテメント!」

 俺はもう一度剣を重くすると、オークを切ろうとする。

 その時、後ろからキーという鳴き声が聞こえた。

 振り返ると、コウモリのような化け物が5匹ほどいた。おそらくは俺の顔を切った奴らだろう。

 そいつらはまっすぐに俺に向かってくる。

 俺はオークに切りかかろうとしていた為、回避行動がとれない。

「フエゴ・リアルス」

 ユアの声だ。洞窟内に響き渡る。

 ユアが出したのは火の玉では無く、火の柱だった。ユアの杖から一直線にコウモリ型の化け物と俺の間に出現する。

 そして、俺に襲いかかろうとしたコウモリ型の化け物は火に飛び込んで行った。

「蓮斗さんッ」

 マアの声。

 おそらくは何かを危惧しているのだろう。

 だが、それは言われるまでも無い。

 俺は振り向きながら剣を振る。

 俺の剣が重くなっているイメージはまだ途切れていない!

 剣は木の棒とオークを切り裂いた。

 そして、金貨10枚に姿を変えた。

「ふぅ」

 俺は一安心し、近くにあるオーク2体だった金貨10枚とコウモリ五体だった金貨10枚を拾い上げる。

「おい! 1500ケインだぞ!」

 俺は喜ぶが、ユアは全く喜んでいなかった。

 ユアが俺に近付く。

「動かないでね」

 言うと、俺の顔に杖を近付ける。

「レクぺラシオン」

 ユアは魔法を唱えると、俺の顔にあった切り傷は全て消えた。

「ありがとう」

「うん、どうする? マア」

「一度戻りますか」

 マアが提案する。

「なんでだよ。まだ問題は解決されて無いだろう」

「そんなのどうでもいいのよ」

 俺の反対に更にユアは反対した。

「え?」

「結構危なかった。私はあんたが死んじゃうんじゃないかって思ったわ。これ以上は危ない」

「……」

「それに、あなたは剣を重くする魔法で相当消費している」

 ユアの目は冷えきっていた。冷静なのか冷徹なのか。

 俺の為に帰ろうと言っていて、この意見は絶対変えないと言うような。

「わかった」

 俺が承諾して、俺達は街に帰った。

結構進みました。

実は進む速度というのは私はあまりコントロールできないのです。

書いてるうちに勝手に決まる感じで。

話によっては凄い進むし、話によってはあまり進まなかったりします。

私的には結構進んだかなと思います。

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