レベルアップ
朝になると、俺はすぐに森へ向かった。
三人分の宿屋代と食費を稼がなければならないからだ。
正直、俺に魔法はさっぱりなので、できることがそれぐらいしか無い。
「そういえば、こういうのって進んで行けば行くほど敵も強くなって金も多く手に入る……よな?」
俺は森を一直線に進んでいく事にした。
途中にいたリンゴ君を倒しながらも進んでいくと山が見える。
山は木々が生い茂り、高さは結構高い。明確に何メートルかは分からないが、山頂が雲に覆われて見えないのだから、俺に登れる高さでは無い。
「というより、まず山に着くまでに相当時間が掛かりそうだよなぁ」
森では木が沢山あった為、山など見えなかったか気付かなかったが、ここら辺はそこまで木も多くないので、山が見えたのだ。
山が大きいから、見えても辿りつくまでにはものすごい時間がかかるだろう。
登りはしないけど、あの山は強い化け物がでそうだよなぁ。
俺は山と街を見る。
帰る頃に日は沈まないだろう。
「よーし、行ってみますか!」
ユアとマアは森にいた。
やはりそこから山は見えない。
「解析? この世界をですか?」
マアの声が森に響き渡る。
「ええ、そうよ。そうすれば出られるかもしれないじゃない?」
「でも、そんなの出来ないですよぅ」
「やってみなきゃ分からないじゃない!」
弱気なマアに渇を入れるかのように大きく言った。
「それはそうですけど……でも誰にも教わりませんでしたよ?」
「まぁ、そうね。でもやらなきゃ」
マアは義務感があるようなユアの言葉を疑問に思った、が、言ったのは別の言葉。
「なんで森なんです?」
「ああ、私達って初めて来た時、森に居たじゃない? だから、ここなら何かしらの手がかりが掴めるかもって思ったのよ」
「へえ、さすがユアです」
「そう? じゃ、はじめるわよ!」
「はいっ!」
「ふぅ、やっと着いたぜぇ」
声に疲れを滲ませて呟いた。
俺は今、山のすぐ近くにいる。
周りの木々はオレンジ色に染まっていた。
別に季節が秋だから、という訳ではなく、夕暮れだからだ。というか花が咲き誇っているし、気候から考えて今は春だろう。
「正直、登る気はしないな。疲れたし」
山の麓には洞窟がある。
「誰が掘り進めたんだよ」
徒労だろうと思ったが、よく考えたら、この世界は俺の願望を一瞬の間に構築している可能性すらあるので、誰も掘り進めていないのかもしれない。
「ちょっと行ってみるか」
これまた徒労になるかもしれないが、俺の好奇心が行けというので行く。
「強かったらすぐに撤退しよ」
言葉に出して決意を固めると、洞窟に入る。
薄暗いし、辺りはよく見えないな。
「帰ろ」
俺は洞窟に背を向けて、街に向かって歩く。
全然、稼げてねえよ。どうしよう。
すると、俺の後ろから音が聞こえる。
俺の後ろは洞窟だ。つまり、この音は洞窟内にいる化け物か人間の可能性が高い!
振り向くと、俺と同じくらいの身長の化け物がいた。
豚のような顔に薄汚れた服を纏い、二足歩行をする化け物だ。手には木の(結構太い)棒を持っていた。
仮装パーティーに参加する人間の可能性も捨てきれないな。
「あの、こんにちは。人間さんですか? 返事が無い場合は倒しちゃいますけど?」
化け物は返事をせずに近付いてくる。
「了解。化け物君。今回は武器持ちだな。剣!」
俺はミューテイトを剣型に変形させる。
この場合、俺はいつもミューテイト(リストバンド型)を左手に装着している為、剣も自動的に左手に持つ形となる。
オーク(蓮斗命名)はウッドスティック(蓮斗命名、木の棒の事を指す)を振り下ろしてくるので、俺はそれを剣で受け止める。
「盾」
俺は剣の柄に手を触れさせて言うと、俺と右手を黒い質量が包み、次の瞬間には盾になっていた。
オークはまたもや縦に振ってくるので、盾を斜めにして受け止め、威力を殺して、オークの右脇腹に剣を当てる。
だが、感触は切ったというより打ったに近かった。
俺は剣を見てみるが、血の跡が無い。
「剣で切れないほどの皮膚の固さ……か」
へぇ、面白い。
ユアとマアは宿屋の前にいた。
「蓮斗……帰ってこないわね」
ユアは宿屋の前を歩く。落ち着かないのだ。
「うーん、もう暗いですよね」
辺りは暗くなり、街灯に頼らなければあの光の差し込まない洞窟と同じほどの暗さとなっていただろう。
「ちょっと、探しに行ってくるわ」
ユアが言う。
「待って下さい。ユアさんが行ってすぐに蓮斗さんが戻ってきたらどうするんですかぁ~」
「でも!」
「大丈夫ですよ。ここらへんの化け物にやられるほど蓮斗さんは弱くないです」
ユアを落ちつかせる為にゆっくりとマアは言った。
「そう……なんだけどさ」
「待ちましょう?」
「……わかった」
「おーりゃぁああああ」
おもいっきり剣を振り下ろすとバシュンという音がしてオークは金貨になった。
「いち、にー、さん、よん、ごー、ん? えと、10枚!? ってことは500ケイン!? やったぜ!一時間近く掛かった激闘の成果だ!」
周りはもう完璧夜だな。
俺はすぐに街に向かった。
すると狼を見かける。
この暗闇なのによく見つけたな、俺。
「剣っと」
とりあえず近付いて切る。と狼は金貨になった。
「え? 一撃? 俺、強くなってる? いや、おかしいだろ。オークに勝っただけで俺の腕力は上がらねえって」
あるいはゲームみたいにレベルアップしたとか? なーんてな。
いや、俺の願望で構築されてるなら有り得るかも。
俺は金貨を拾うと、街に向かった。
俺が宿屋の前に着くとユアが駆け寄ってきた。
「蓮斗。遅い!」
「わりい、ほら。これ」
俺はユアにポケットにしまっていた金貨を見せる。
「え? これ何枚?」
「13」
「ホントに? えと650ケイン! って、すごいけど帰ってくるの遅いわよ。心配したんだからね?」
「心配?」
ユアが心配するというのがイメージできなくて聞き返す。
「そうよ、悪い?」
だが、ユアは気に入らなかったようで不機嫌になってしまう。
「いやっ、全然」
「これからはもう少し早く帰ってきなさい。わかった?」
ユアがいつになく威圧的だ。
「はい」
俺とユアとマアはケーキを食べた店で食事をした。
この店、ケーキを食べにしか来てないから気付かなかったけど他の料理も結構ある。
「解析はどうだった?」
「うーん、それなんだけど。やっぱりこの世界は私の空間移動魔法を軸に作られているわね」
「軸に?」
難しい。
「つまり、私の魔法を元にして、この世界を構築するっていう別の魔法にしているのよ。私の魔法の副作用か、あなたの願望が原因かは分からないけど」
「おそらく、俺の願望だな」
空間移動魔法にそんな限定的な副作用が起こる訳が無い。
「それで、その魔法は私の世界の魔法には無いロジックが使われてるのよ。それが分からないと壊し方も解明できない」
「うーん」
「まさに打つ手無しです」
マアが言う。
「いや、あるにはあるだろう」
「え!?」
「この世界には杖が売ってるんだから、魔法はあるんだ。分からないならこの世界の魔法師に聞けばいい」
この世界の魔法師なら、この世界の魔法のロジックも知ってるだろうしな。
「そうか!」
ユアが驚く。
「明日、この世界の魔法師を探しておいてくれ」
「あなたも手伝いなさい。私達もお金稼ぐの手伝うから」
「え? ああ、その方が効率的かもな」
「ええ」
さて、どうだったでしょうか?
今回はなんとも普通な回でした。
一歩前進という感じでしょうか。
そろそろ、蓮斗達がこの世界について分かりはじめた所です。
これからも読んでいただけると嬉しいです。




