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知らない世界にとばされた。  作者: 茶碗蒸し
20/21

本当の音色

 ユアは俺の声に答えてくれたものの、その後、部屋に向かって走った。

 俺は、ユアの後ろ姿が見えなくなるまで見続けた。

 いや、それよりしなくてはならない事があるんだ。

 俺は目の前のドアを開けて、ヨーラの部屋に入る。

「蓮斗……」

「蓮斗さん」

 ヨーラとマアが呟く。

「ヨーラ、ごめん。話すよ、色々。……聞いてくれるか?」

「はい!」

 ヨーラの返事を聞いて、俺は長い時間をかけて事情を話した。想いは言わずに、隠していたことのこれからすることだけを。

「そんな作戦を……」

「ごめん……黙ってて」

 俺は目を合わせずに謝った。

「どうして……黙ってたんです?」

 ヨーラの問い。

「それは…………言えない」

「それはヨーラの為ですよ」

 それに答えたのはマアだった。

「マア!」

「この期に及んで、まだ隠そうとするんですか?」

「くっ……」

「言いたい事だけ言って、他を隠すなら、嘘吐いてるのと一緒です」

「……」

 言い返せない。マアの言っている事を否定できないのだ。

「これ以上は、私からは言いません。言うか、言わないかは蓮斗さんが決めて下さい」

 言うと、マアは部屋から出た。

「私の……ため?」

 控えめにヨーラが聞いてくる。

「……ああ、俺は、お前にずっと教えずにいるつもりだった」

 俺は意を決して少しずつ話すことにした。

「ずっとって、いつまで?」

「永遠に、教えるつもりは無かった」

「なんで? 私を信用してくれてもいいじゃない! ……ですか」

 ヨーラはいつになく大きな声で言う。

「傷つくと思ったから」

「それは……」

 少し考えて、ヨーラは言う。

「聞いて、それで敵が見つかったら、傷つくよ。だけど、蓮斗に隠し事されて、不安になるのは、それより全然辛いんだ!」

「……ヨーラ……」

 意識せずに呟いていた。

「ごめん」

「いいよ、ばーか」

 ヨーラは弱弱しいパンチを俺の胸に当てた。


 ドアを開けると、すぐ近くにはマアがいた。

「ありがとう」

 俺が言うと、

「いえ!」

 マアは元気よく返した。

「マア。頼みがある」

「言うと思ってました」

「ヨーラは避難させておいてくれ」

「行くと言うと思いますけど?」

 その通りだろう。

「あいつも、立場は分かってる筈だ」

「……解りました。善処します」

「ああ、頼んだ」

「ええ!」

 善処という言い方が気になったが、ここはマアに任せよう。


 作戦開始日。

 俺とセグンドさんとロスさんはロスさんの部屋にいた。

「では、セグンド。お前とはここでお別れだ」

「はい」

「作戦通り、修練場で待っていろよ?」

「了解です」

 ロスさんが念を押すと、俺は言った。

「んじゃ、いってきます」

「いってらっしゃい」

 セグンドさんの優しい返事が聞こえた。


 それから数分が経ち、セグンドは窓から外を眺めた。

 修練場に窓は無い。

 セグンドは修練場に入り、剣士達に合図をした。

「蓮斗とロスは外にいますか?」

 セイルが言った。

 それを聞いて、セグンドはいつもの笑みを消して言う。

「ああ、やるなら今だろう」

「はいっ」

 剣士達が返事をすると、彼らは階段を上っていった。

 ヨーラの部屋がある階に着く。

 セグンドはそのまま階段を上りきった。


 俺はセグンドさんを見つける。

「やっぱり、敵ですか。セグンドさん」

 言うと、セグンドさんは驚き、そして警戒する。

「何故ここにいるんですか?」

「魔法を使えば俺達の偽者も作れるそうです」

 セグンドさんの問いに俺が答えると、ヨーラの部屋からマアが出てきて、発光している杖を窓の外に振るう。すると、外にあった俺とセグンドさんの偽者は消えた。

「そういうことですか。なら、言ってくれたらよかったのに」

「今更、とぼけないで下さいよ。なんですか? その持っている剣は」

 俺の言葉にセグンドさんの笑みは消える。

「これは……敵の侵入を警戒して……」

「では、何故ここに?」

 歯切れの悪い返しなので問い詰める。

「敵がいるかもしれないと……」

「ほう? では、そのまま動かないで下さい」

「な、何故です?」

「何故? 捕まえるからですよ」

 何を当たり前なことを聞いているんだ?

「は?」

「まさか、この階に剣を持ってきて敵と認識されないとでも?」

 そりゃあ、無いよな。

 さすがに気付いているだろう。

 俺は自分で言いながらもそう思った。

「その通りだ」

 ロスさんの部屋からもロスさんが出てきて言う。

「とにかく、あんた達は敵ってこと」

 ロスさんの前、俺の後ろにあるヨーラの部屋からユアも出てきて言う。

「くっ、やるぞ」

「了解」

 セグンドさんの声に剣士の誰かが反応する。

 相手は剣士だ。近付かれる前に攻撃するのが得策。

「ユア! マア!」

「オーケー」

 俺の言葉にユアが返事をする。

 俺は走ってユアとマアの後ろに行く。

「ヒエロ・リアルス」

「サクレード・ランサー」

 ユアとマアが叫ぶと、ユアの杖からは氷が出てきて、一人の剣士にぶつかる、ではなく、氷づけにした。

「なっ」

 セグンドさんが短い声で驚く。

 すると、俺のすぐ近くの窓が突然、割れる。そこから突風が入りこむ。

「フッ」

 短い声でフードを被った男も入ってくる。

 どうなってんだ? 

「蓮斗!」

「気にするな!」

 ユアの心配そうな声に返事をする。

「こちらへ、来てもらおう!」

 フードの男は言うと、壁に手を付けて、そこの壁を壊す。

 さらに、突風を発生させる。

「ぐ、ぁっ」

 俺とその男は風に吸い込まれ、そのまま落ちる。

「なに……あれ?」

 ユアの驚愕した声が聞こえた。


「蓮斗!」

 ヨーラは蓮斗が落ちたのと同時に部屋から飛び出した。

「ヨーラ……エストゥディオ!」

 セグンドは叫ぶ。

 その怒声はヨーラには聞くに堪えないだろう。

「すみません、皆さん」

 ヨーラは謝り、

「ロスさん。少し下がってくれる? いっきにきめるから」

 ユアはロスに指示を出す。

「え? ああ」

 ロスが下がると、ヨーラは杖を前に出す。

「アイス!」

 ヨーラが言い、ユアとマアは杖をヨーラの杖に触れさせて、

「「リアルス!」」

 魔法を発動した。

 杖の先端からは氷が発生し、それが凄い勢いで増えて、ヨーラの前をほぼ凍らせた。剣士ごと。

 辺りに冷気が包み込み。3人は魔法を終了させた。


「ぐぁあ」

 俺はそのまま落ちて、地面にぶつかった。

 風で勢いが弱まったものの、なかなかの衝撃だ。

 フードの男は俺を休ませる気は無いようで、俺が起きあがる前に切りつけてくる。

「剣!」

 手首のミューテイトを起動させて剣型にすると、剣を受け止める。

「お前……」

 太陽の逆光でよく見えないが、少し見えるフードを被った男の顔は……。

 フードの男は力を入れて、剣がだんだん俺に近付いてくる。

 受け止めきれないッ。

「蓮斗!」

 ユアの声が聞こえる。

「明日、一時に宿屋前に来い」

 フードの男がそう告げたとほぼ同時に、

「ヒエロ・リアルス」

 ユアは魔法を発動させ、氷がフードの男にせまる。フードの男は風に吹き飛ばされたかのように空を飛び、逃げた。

 俺は城に近付く。

「サンキュー、ユア」

 俺が下からユアに言う。

「怪我とかは?」

「大丈夫!」

 ユアの心配そうな声に返事をすると、

「ホントですか? 良かったです」

 とヨーラが安堵した。

「ヨーラ? なんで?」

「手伝いたかったんです」

 俺の問いにヨーラはそう言い、

「すみませーん」

 マアが俺に言う。

「ははっ」

 俺は笑って、平穏が訪れたことを祝った。


20までいつのまにやらきました。


読み続けてくれたら嬉しいです。

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