本当の音色
ユアは俺の声に答えてくれたものの、その後、部屋に向かって走った。
俺は、ユアの後ろ姿が見えなくなるまで見続けた。
いや、それよりしなくてはならない事があるんだ。
俺は目の前のドアを開けて、ヨーラの部屋に入る。
「蓮斗……」
「蓮斗さん」
ヨーラとマアが呟く。
「ヨーラ、ごめん。話すよ、色々。……聞いてくれるか?」
「はい!」
ヨーラの返事を聞いて、俺は長い時間をかけて事情を話した。想いは言わずに、隠していたことのこれからすることだけを。
「そんな作戦を……」
「ごめん……黙ってて」
俺は目を合わせずに謝った。
「どうして……黙ってたんです?」
ヨーラの問い。
「それは…………言えない」
「それはヨーラの為ですよ」
それに答えたのはマアだった。
「マア!」
「この期に及んで、まだ隠そうとするんですか?」
「くっ……」
「言いたい事だけ言って、他を隠すなら、嘘吐いてるのと一緒です」
「……」
言い返せない。マアの言っている事を否定できないのだ。
「これ以上は、私からは言いません。言うか、言わないかは蓮斗さんが決めて下さい」
言うと、マアは部屋から出た。
「私の……ため?」
控えめにヨーラが聞いてくる。
「……ああ、俺は、お前にずっと教えずにいるつもりだった」
俺は意を決して少しずつ話すことにした。
「ずっとって、いつまで?」
「永遠に、教えるつもりは無かった」
「なんで? 私を信用してくれてもいいじゃない! ……ですか」
ヨーラはいつになく大きな声で言う。
「傷つくと思ったから」
「それは……」
少し考えて、ヨーラは言う。
「聞いて、それで敵が見つかったら、傷つくよ。だけど、蓮斗に隠し事されて、不安になるのは、それより全然辛いんだ!」
「……ヨーラ……」
意識せずに呟いていた。
「ごめん」
「いいよ、ばーか」
ヨーラは弱弱しいパンチを俺の胸に当てた。
ドアを開けると、すぐ近くにはマアがいた。
「ありがとう」
俺が言うと、
「いえ!」
マアは元気よく返した。
「マア。頼みがある」
「言うと思ってました」
「ヨーラは避難させておいてくれ」
「行くと言うと思いますけど?」
その通りだろう。
「あいつも、立場は分かってる筈だ」
「……解りました。善処します」
「ああ、頼んだ」
「ええ!」
善処という言い方が気になったが、ここはマアに任せよう。
作戦開始日。
俺とセグンドさんとロスさんはロスさんの部屋にいた。
「では、セグンド。お前とはここでお別れだ」
「はい」
「作戦通り、修練場で待っていろよ?」
「了解です」
ロスさんが念を押すと、俺は言った。
「んじゃ、いってきます」
「いってらっしゃい」
セグンドさんの優しい返事が聞こえた。
それから数分が経ち、セグンドは窓から外を眺めた。
修練場に窓は無い。
セグンドは修練場に入り、剣士達に合図をした。
「蓮斗とロスは外にいますか?」
セイルが言った。
それを聞いて、セグンドはいつもの笑みを消して言う。
「ああ、やるなら今だろう」
「はいっ」
剣士達が返事をすると、彼らは階段を上っていった。
ヨーラの部屋がある階に着く。
セグンドはそのまま階段を上りきった。
俺はセグンドさんを見つける。
「やっぱり、敵ですか。セグンドさん」
言うと、セグンドさんは驚き、そして警戒する。
「何故ここにいるんですか?」
「魔法を使えば俺達の偽者も作れるそうです」
セグンドさんの問いに俺が答えると、ヨーラの部屋からマアが出てきて、発光している杖を窓の外に振るう。すると、外にあった俺とセグンドさんの偽者は消えた。
「そういうことですか。なら、言ってくれたらよかったのに」
「今更、とぼけないで下さいよ。なんですか? その持っている剣は」
俺の言葉にセグンドさんの笑みは消える。
「これは……敵の侵入を警戒して……」
「では、何故ここに?」
歯切れの悪い返しなので問い詰める。
「敵がいるかもしれないと……」
「ほう? では、そのまま動かないで下さい」
「な、何故です?」
「何故? 捕まえるからですよ」
何を当たり前なことを聞いているんだ?
「は?」
「まさか、この階に剣を持ってきて敵と認識されないとでも?」
そりゃあ、無いよな。
さすがに気付いているだろう。
俺は自分で言いながらもそう思った。
「その通りだ」
ロスさんの部屋からもロスさんが出てきて言う。
「とにかく、あんた達は敵ってこと」
ロスさんの前、俺の後ろにあるヨーラの部屋からユアも出てきて言う。
「くっ、やるぞ」
「了解」
セグンドさんの声に剣士の誰かが反応する。
相手は剣士だ。近付かれる前に攻撃するのが得策。
「ユア! マア!」
「オーケー」
俺の言葉にユアが返事をする。
俺は走ってユアとマアの後ろに行く。
「ヒエロ・リアルス」
「サクレード・ランサー」
ユアとマアが叫ぶと、ユアの杖からは氷が出てきて、一人の剣士にぶつかる、ではなく、氷づけにした。
「なっ」
セグンドさんが短い声で驚く。
すると、俺のすぐ近くの窓が突然、割れる。そこから突風が入りこむ。
「フッ」
短い声でフードを被った男も入ってくる。
どうなってんだ?
「蓮斗!」
「気にするな!」
ユアの心配そうな声に返事をする。
「こちらへ、来てもらおう!」
フードの男は言うと、壁に手を付けて、そこの壁を壊す。
さらに、突風を発生させる。
「ぐ、ぁっ」
俺とその男は風に吸い込まれ、そのまま落ちる。
「なに……あれ?」
ユアの驚愕した声が聞こえた。
「蓮斗!」
ヨーラは蓮斗が落ちたのと同時に部屋から飛び出した。
「ヨーラ……エストゥディオ!」
セグンドは叫ぶ。
その怒声はヨーラには聞くに堪えないだろう。
「すみません、皆さん」
ヨーラは謝り、
「ロスさん。少し下がってくれる? いっきにきめるから」
ユアはロスに指示を出す。
「え? ああ」
ロスが下がると、ヨーラは杖を前に出す。
「アイス!」
ヨーラが言い、ユアとマアは杖をヨーラの杖に触れさせて、
「「リアルス!」」
魔法を発動した。
杖の先端からは氷が発生し、それが凄い勢いで増えて、ヨーラの前をほぼ凍らせた。剣士ごと。
辺りに冷気が包み込み。3人は魔法を終了させた。
「ぐぁあ」
俺はそのまま落ちて、地面にぶつかった。
風で勢いが弱まったものの、なかなかの衝撃だ。
フードの男は俺を休ませる気は無いようで、俺が起きあがる前に切りつけてくる。
「剣!」
手首のミューテイトを起動させて剣型にすると、剣を受け止める。
「お前……」
太陽の逆光でよく見えないが、少し見えるフードを被った男の顔は……。
フードの男は力を入れて、剣がだんだん俺に近付いてくる。
受け止めきれないッ。
「蓮斗!」
ユアの声が聞こえる。
「明日、一時に宿屋前に来い」
フードの男がそう告げたとほぼ同時に、
「ヒエロ・リアルス」
ユアは魔法を発動させ、氷がフードの男にせまる。フードの男は風に吹き飛ばされたかのように空を飛び、逃げた。
俺は城に近付く。
「サンキュー、ユア」
俺が下からユアに言う。
「怪我とかは?」
「大丈夫!」
ユアの心配そうな声に返事をすると、
「ホントですか? 良かったです」
とヨーラが安堵した。
「ヨーラ? なんで?」
「手伝いたかったんです」
俺の問いにヨーラはそう言い、
「すみませーん」
マアが俺に言う。
「ははっ」
俺は笑って、平穏が訪れたことを祝った。
20までいつのまにやらきました。
読み続けてくれたら嬉しいです。




