表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
知らない世界にとばされた。  作者: 茶碗蒸し
14/21

実戦訓練

 俺はヨーラと会話し、修練場へ戻る。

「ああ、蓮斗さん。どうします?」

 セグンドさんが聞いてくる。

 どうするかの決定権は俺にあるのか。でも、それっておかしいと思う。俺達は北の洞窟の化け物を退治しただけだ。確かにそうとう苦戦した。けど、それで報酬とか大袈裟ではないだろうか?

「えと、訓練に参加します」

「はい。分かりました」

 俺は訓練に参加する為に剣士達に近付く。すると、さっき俺と闘ったセイルという者が近付いてくる。

「お前、強いんだな。ま、あの洞窟の化け物を退治したんだから、当たり前か」

 セイルは俺に話しかけながらも、素振りを続ける。

「そうか」

 俺は返事をしながらもセイルの素振りを見て、同じ事をする。

「ああ、俺達でも退治できなかったんだ。どうやったんだ?」

 退治しに行った?

「お前等でもって、退治しに行ったのか?」

 俺は疑問に思って聞き返した。

「ああ」

「で、結果は?」

「さっきも言ったが、失敗だ。死者こそでなかったが、これ以上続けると危険とロスさんが判断し、あそこの洞窟は諦めていたんだ」

「へえ」

 なるほど、だから俺に対する対応が大袈裟なのか。

「で、どうやって倒したんだよ?」

「俺じゃない。他に優秀な魔法師がいたのさ」

「ふーん」

 そう、俺じゃない。


 夜、蓮斗はもう寝ている時間。

 剣士達は明日も訓練があるというのに、大多数が一つの部屋に集まっていた。それも、こんな夜遅くに。

 部屋を灯すのは必要最低限の杖で(光る魔法がかけられている)、部屋には薄暗い印象がある。

 壁は土で出来ている。

 部屋の中央には円卓があり、そこに剣士達は座っていた。だが一人、鎧を付けず、顔をフードで隠した男がいた。

「状況は? 新しく来たという旅人は強いのか?」

 フードを被った男の低い声が部屋に響く。

「はい、とても強いです」

 一人の剣士、セイルが言った。

「ふん、まぁ、いい。その男に計画が知られなければ、関係無いのだからな」

「ああ」

 フードを被った男の言葉に、剣士達は各々(おのおの)肯定する。

「計画はいつも通り進行する。各自、自分の仕事を続けろ」

 フードを被った男が言うと、剣士達はうなづく。

「あの恨みを忘れるなよ」


 俺は朝、起きると、部屋に食事がある事に気付いた。

 俺は感謝をし、それを食べると、部屋を出た。

 俺の部屋の横に二つの部屋がある。おそらく、ここにユアとマアがいるんだろう。

 起きてるようすも無いし、話さなければならない事も無い。

 俺は修練場に向かった。

 すると、修練場はドアが閉まっていた。

 なんだ、常時開いているものかと思ったが。

 俺はドアを開けようとするが、開かない。鍵がかかっているんだ。

「早く来すぎたか」

 俺は一人、呟く。

「お前は……」

 後ろから声が聞こえたので振り向くと、セイルがいた。

「おう、早く来すぎちまったみたいだ」

「そうか。俺が鍵当番なんだよ」

 すると、セイルは鍵を使い、ドアを開ける。

「サンキュー」

 俺は軽く礼を言うと、修練場に入る。

「あ、あんま早く来るなよ。迷惑だから」

「え? ああ、悪い」

 俺が返事をすると、セイルも小走りで俺に追いつき、追い越す。その後、壁にかかっている剣をとり、素振りを始める。

 何をそんな焦っているんだ?

 俺も剣を取り、素振りを始める。そんな俺を見て、セイルが安堵あんどしたように見えた。


 それから時間が経ち、沢山たくさんの剣士や、セグンドさんが来た。

 そして、最後にロスさんが来た。

「蓮斗殿。訓練に参加しておられるのか?」

 ロスさんは言う。

「はい」

「そうか、集合」

 すると、剣士達がロスさんの周りに集まる。

 うわっ、なんだこれ?

 俺が一言ですぐに集まる統率のとれた光景を見て、衝撃を受けている間にロスさんが話し始める。

「私はもっと強くなる必要があると思う、全員な」

 するとロスさんは俺を見た。

「その為に、蓮斗殿に協力してもらいたい。セグンドと闘ってくれないか?」

「へ?」


 ヨーラの部屋。

「この魔法。何の魔法なんです?」

 ヨーラが訊いた。

「え? まぁ、その……」

 ユアは誤魔化す為の言葉を考えるが、なかなか思いつかない。

 適当な事を言ってはバレるからだ。

 ヨーラは魔法師。となると、研究している段階である程度、どういう魔法であるかの検討がつく。だから、全く違う事を言って、バレて、信用性が無くなるのは避けるべきだし、かといって空間移動魔法などと本当の事を言うのも面倒な事になる。

「あ、いいんです。言いにくい事なら」

 ヨーラは遠慮する。

「あ、ありがと」

 ユアは助かったと思った。

(まぁ、本当の事を言ってもいいんだけど……)

 でも、そうするとそんな魔法できる筈が無いと言われて、協力してもらえなくなるかも知れない。

(そんなこと、ヨーラは言わないと思うけど。万が一って事もあるし)

「さ、続けましょう」

 ユアが考え事をしていると、マアが言った。

「ええ」

「そうですね」


 なんて言ったんだ? この人。

 セグンドさんと闘えと言ったように聞こえたけど。

 てか、ロスさんはセグンドさんはこの若さで二番目の強さまで上り詰めたって言ってなかったか? 勝てる訳無い。

 だが、それと同時に、勝てるかもしれない、試したいという気持ちも湧いてくる。

「どうかな?」

 ロスさんの問い。

「解りました」

 俺は迷い、そして了承した。

「そうか、今回は木刀で頼む」

「はい」

 すると、ロスさんは木刀を渡してくる。俺はそれを受け取ると、修練場の中央に行く。

 他の剣士は壁の方に寄り、セグンドさんは剣の形を模した布の近くにある木刀を取ろうとする。すると近くの剣士が寄っていって、渡した。

「ありがとう」

 セグンドさんは礼を言い受け取ると、俺の前に立つ。

「よろしくね」

「はい」

 俺は返事をすると剣を構える。

 セグンドさんの風格が強いと根拠も無いのに連想させる。セグンドさんの鋭い雰囲気の中にある違和感、多分それはいつも通りのセグンドさんだからだろう。たとえ、初めての相手との戦闘でもいつも通りでいられる異常。

「行くよ」

「はい」

 セグンドさんは鎧を付けているのに、すごい速さで近付いてくる。

 セグンドさんは恐るべき速さで木刀を振る。俺は木刀で防ぎ、後ろに跳ぶ。

 俺は鎧を付けて無いのに、多分、これは俺より速い。

 またセグンドさんは近付いてきて、木刀を振る。木刀で防ぐが、一撃では無く、何度も来る攻撃をぎりぎり防ぎ続ける。

 セグンドさんは淡々と攻撃し続けてくるが、俺は防戦一方のまま追い詰められていく。

 このままじゃ負ける。

 セグンドさんの攻撃が虚を衝くように今までの体を中心に来た攻撃から防御もしていない頭に木刀を当てにくる。

「クッ」

 俺はおもいっきり後ろに跳び、頭を下げて木刀をかわす。

「なっ」

 セグンドさんは短い言葉で驚く。

 今しかない。

 俺は水平にセグンドさんの腹を木刀で狙う。だが、セグンドさんは木刀を垂直にして守る。俺はセグンドさんの木刀ごとセグンドさんに当てる。

「ぐっ」

 あまり効いてないか。

 更に何度も攻撃をする。

 セグンドさんは守り続け、気を窺うがセグンドさんが反撃できないよう攻撃し続ける。

 その時、セグンドさんが無理に攻撃にきた。その隙をつき、首に木刀を当てに行く。そして当たる前に止めた。

「ふっ、完敗です」

 セグンドさんが小さく言う。

「何故、無理に攻撃をしようとしたんです。あのままなら勝てた筈です」

 生意気かもしれないが、それだけが気になった。

「焦り、でしょうか」

「そうですか」

 そんなミスをするのだろうか。闘う前にあそこまでの余裕があったのに。

「ふぅ」

 緊張がとけて、息がこぼれる。

「さすがだな。蓮斗殿」

 ロスさんが俺に近付いて来て言った。

「あ、いえ」

 俺は微妙な返事をしてしまった。なんと言えば良かったのだろう。

 ただ、勝ったという気になれなかった。

「では、訓練に戻りましょう」

「はい」

 俺が返事をすると、剣士達は訓練をする位置に移動を始めた。


「じゃあ、訓練は終わりだ」

 ロスさんの言葉で訓練が終わった。

 すると剣士達は剣を壁にかけに行く。

 俺も剣を模した布のある壁に剣をかけに行く。すると、また剣士達が二人ほど寄って来る。

「かけておく」

 剣士が言ってくる。

「別にいい」

 俺は断るが、

「いいから」

 といって剣士は俺から剣を奪い取り、壁にかけた。

 やはり、そうか。

 俺はロスさんの周りに誰もいないのを確認すると、近付く。

「ロスさん。俺、セグンドさんと闘って思ったんです。もっと強くならなきゃなって。だから、朝早く訓練したくて。ここの鍵を貸してくれませんか?」

 俺はロスさんに思ってもない事を言った。

「ああ、感心だな。後で、ついて来てくれ。渡そう」

「ありがとうございます」

 感謝を述べると俺は部屋に向かった。


 夜。また剣士たちは集まっていた。

「今日はどうなった?」

 フードの男は言った。

「あの、あなたはいつもどこにいるんです?」

 剣士の一人が言った。

「城の中にはいない」

 フードの男が答える。

「じゃあ、今はどうやって……」

「そんな事はどうでもいい。重要なのは計画だろう。穴はいつ開通する?」

「あと6日か7日というところでしょうか」

「そうか」

 フードの男はその言葉を聞くと、立つ。

「では、今日はここまでだ」

 フードの男は出入口の布を手でどけて、出た。

 剣士達しかいなくなった部屋。

「なんだろうな、あの男」

 剣士の一人が言った。

「ああ、いきなり4日前に来て、協力してやるとか言って」

「でも、あいつの作戦は完璧だ」

「ああ、利用できるだけ利用してやるさ」


 朝、俺の部屋にアラームが響く。

 隣の部屋に聞こえないようにすぐに止めると、もう一度寝たいという欲求を抑えつけて、起きあがる。

 5時半。時計で時間を確認すると、ご飯を食べる。

 昨日は7時くらいに行って早いと言われたからな。

 俺はご飯を急いで食べ、着替える。

 そして、修練場に向かった。


 俺は修練場につくと、昨日ロスさんから預かった鍵で開錠する。

 俺は俺しかいない修練場に足を踏み入れた。

 そうして、何回も見た異質な光景を思い出す。一部の壁に近寄ると警戒する剣士達。

 俺は剣を模した布に近付き、布をめくった。

 その先には広い空間。一つの部屋が広がっていた。

さて、どうだったでしょう。

進んできましたね。

普通に過ごすか、違和感を感じとり、裏を探るか。

蓮斗は後者を選ぶ人ですね。

私なら前者ですが、後者の方が利用されにくいでしょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ