ミューテイト
俺の父親の研究グループは世界を揺るがす発明をした。
形状記憶変化物質という記憶させた形に電化製品の数千~数万分の1の電力で変化させる事ができる物質を発明させたのだ。
更に、それだけでは留まらず、生体電流(人間の体内に流れる電気)を利用して形を変化させる事ができるようにしたらしい。
親父は、俺に手渡して、説明した。
「これを手にはめてみろ」
白い、リストバンドだった。
俺は指示に従いはめる。
「そこの黒いスイッチを押せ」
リストバンドには一つだけ黒い場所があり、俺はそこを押してみた。
すると、俺がリストバンドだと思っていたその物質は、俺の生体電流を使い、形状を四角く変えた。
薄さ一ミリの直方体となったそれは俺の手首から落ちようとする、俺は慌てて空中でキャッチした。
「おいおい、我々の研究の成果だ。落とすなよ? まぁ、落としても壊れはしないがな」
親父がおどけて言うが、耳に入らなかった。
これ、形状が変わった?
「親父、これって」
「おう、形状記憶変化物質、ミューテイトだ」
「ミューテイト? それがこいつの名前」
「ああ、その画面を見てみろ」
俺は直方体に変わったミューテイトを見てみる。
その画面には白い背景に黒い文字で剣、盾、鞭、など色々な単語があった。
「何コレ?」
「ためしに剣を押してみろ」
また、俺は言われた通りに剣を押すと、形状が変わり、剣の形になった。持っていた部分が柄となった為、落とす事は無かった。
「まさかとは思っていたけど、すげえな」
「すげーだろう? ただし、振り回すなよ? マジで切れるやつだから」
「おいおい」
どうやら剣は本当に切れる物らしい。
「で、どうやって戻すんだよ」
「黒い所を押せ」
黒い所を探すと、柄の一番下の部分にあったので、押す。
すると、ミューテイトは直方体に戻る。
「質量が小さくなってねえ?」
「よく気付いたな。それは圧縮してるのだ」
「えぇ? 本当にすげぇな」
「だろう?」
親父は自慢げに笑う。
「って、なんで武器ばっかに変形するんだよ?」
「その方がかっこいいからな」
「はぁ」
一理ある。
「まぁ、他にも自転車とかを記憶させてある」
「それは便利だな」
「フッフッフ」
意味深に笑う親父を見て、話題を根本に戻す。
「って、欲しくなっちゃったじゃねえか。俺に操作方法を教えてどうすんだよ?」
「ああ、そうだった。使いやすかったか?」
どうやら使いやすいか確かめる為に俺に使わせたらしい。
「え? ああ、そりゃもう」
「そうかそうか」
そして、俺はまた親父は世界を驚かせるのかと思った時、世界が揺らいだ。
「あはは。成功しちゃったみたい」
笑い声、俺は確かめる為に後ろを振り向くと、女がいた。
俺の母親は出かけている。この女は知らない。
いや、それ以前にここはリビングだ。玄関から入って来るなら、俺の後ろはありえないだろう。
そして、もう一つ、上半身のみが90度でこちらに入って来ていて、下半身はその女の後ろにある、黒やら赤やら、グネグネと色んな色が混じっている丸いゲートに消えている。
おかしい!
考えた時間十秒。
俺はそのゲートに吸い込まれた。
そして、異世界へ。
どうも、初めまして。
いきなり彼らは異世界にとびましたが、わからない事が色々あると思うのです。
例えば、主人公の名前とか。
そういうのは次、明かされます。
名前は必ず、明かされます。
もう、すぐに!