滝本浩二の供述
埼玉総合病院、私は入院している滝本氏を訪ねた。
「滝本さん、私埼玉県警の三木と申します。お話を伺ってもよろしいでしょうか?」
「まだ、頭がふらふらするので、手短に、お願いします。」
頭に包帯を巻き、骨折しているのか右足を吊っている。
「それでは、事故の状況がどういったものだったのか、教えていただけますか?」
「どういう状況って…とにかく凄い衝撃で、頭打って、あとは救助の人が車内から引きずり出してくれるまで、気を失ってたよ。」
男は思い出すのも嫌そうに語っている。
「それでは、研究所のことですが、特殊実験室について教えていただけますか。」
「ああ、あそこは本当に特殊でね。所長のカードキーが無けりゃ誰も入れないし、うっかりそのカードキー持ったまま中に入ってドアを閉めたら、本社に連絡して技術者呼ばないとドアを開けられない。元々は実験に重大な問題が発生したら完全封鎖できるようにするためなんですがね。」
「分かりました。ご協力ありがとうございます。」
次に井上氏を訪ね、聞き込みをすることはなかった。どの刑事が訪ねても犯行当日のことは次のように供述している。
「その日は、やらなければならない実験があったので、朝の9時頃には所長に特殊実験室の鍵を開けてもらいました。そして、私は中に入ってずっと実験をしていたんです。そろそろ腹がへったから、食事を取ろうと思い、所長に連絡したけれど反応がない。そこで警備員に連絡したらこの騒ぎです。捜査に来てカードキーを見つけてくれた刑事さんに鍵を開けてもらうまで、私はずっと実験室の中にいたんです。」
確かにそれしか言うことはないだろうと私も思う。井上氏に聞き込みをしても新たな供述は得られないと判断した。
私はここまでの3人の証言をもう一度思い返し、整理してみた。私の頭におぼろげながら浮かんでいた考えが段々と固まってきた。
そして、私はある所へと向かった。
数時間後、私の推測通り、目的地であるものを手に入れたのだ。私は急いで本部に連絡を取った。
「警部、報告があります。容疑者を1名に絞りこむことができました。」
「本当か!?」
「はい。残念ながら現段階で物証はありませんが、容疑者3名の中で犯行が可能だった者が1人だけ存在します。犯行が可能だった唯一の人物、それは……」
以上で本編は終了です。皆さんからの意見、ご感想をお待ちしております。なお、現在正解者は二名です。