捜査会議
埼玉県警○○研究所殺人事件捜査本部
「各員、捜査結果の報告を。」
「はい。被害者は今田竹幸、43歳男性。現場となった研究所の所長です。死亡推定時刻は午後12時前後。現場に残されていたトロフィーが凶器であり、それで頭部を強打されたものと思われます。」
「現場の状況は?」
「遺体が発見されたのは、研究室です。辺り一面に書類が撒き散らしてあり、遺体の手元に落ちていた用紙にhe play HBrという書き込みが確認されました。被害者によるダイイングメッセージと考えられます。」
「彼は臭化水素を演じる?どういう意味だ。まあいい。次。」
「第一発見者は警備員畑中常吉50歳。特殊実験室にいた井上一透研究員から、研究室にいるはずの所長と連絡がとれないので確認するよう頼まれ、様子を見に行ったところ遺体を発見したとのことです。」
「なぜ、その研究員は自分で様子を見に行かなかったんだ。」
「それが、その実験室は特殊な構造をしていまして、入り口は一カ所。しかも所長専用のカードキーを使い、部屋の外側からしか鍵を開けられないんです。そのカードキーは現場となった研究室の所長のデスクの引き出しの中に入っており、それを使って他ならぬ私自身が実験室内の井上研究員を解放しました。」
「アリバイは完璧か。他の容疑者は?」
「その日、研究所にいたのは被害者、警備員、井上氏の他に二人。副所長の滝本浩二46歳男性と被害者の妻、香織29歳です。」
「そのどちらかが犯人ということか。」
「いえ、実は妻の香織氏は犯行時間に浮気相手と密会していたと供述しており、利用したホテルから現場まで急いでも片道30分。フロントの証言や防犯ビデオの映像から、その供述は正しいものかと…」
「なら話は簡単だ。副所長しか犯人はいないだろ。滝本氏は今どこでどうしてるんだ?」
「それが…入院してるんです。」
「何?」
「事件当日発生した踏切内で電車がトラックと衝突した大事故。あの電車に乗ってたんですよ。滝本氏が。事故発生時刻は11時30分。その3時間後に救助されてるんです。」
「何!?それでは、皆アリバイが成立しているのか?」