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外伝・ある貴族の御令嬢に転生した少女の物語~その食生活の違い~







イリスは転生者である。


よって、主食がパンな世界に置いてイリスがもっとも欲しいものと言えば米である。

他に味噌、醤油、小豆などなど。


砂糖と塩は元からあるためどうでもいい。

蜂蜜も採取しお茶も作った。

味噌も醤油ももしかしたら大豆に似た食材さえ手に入れれば出来るかもしれない。


だが、米だけは無理だった。


あのふわふわの食感。微かに漂うなんとも言えない香り。

噛めば噛むほど甘くなり、美味しい。

日本人に無くてはならない食材。


それが、米。


それがいま、


「・・・・・・・・・・・・・・あった」


涙が溢れて止まらない。

なんで?

なんでここにあるの?

どうしてこんな場所に・・・


震える手がそれに触れた。

まだ、暖かい。


あぁ、美味しそう。


ジュルリ


意識しなくても涎が出た。

ダラダラ出る。止められない


「・・・・・食べて、良いかな?」


食堂にあるんだから食べても良いはずだよね?良いよね?


そっと辺りを見渡す。


今は誰もいない。いつも見張っている侍女も、護衛もいない。

否、護衛はちゃんと部屋の外で待機しているからいる事はいるんだけどここにはいない。


=証拠隠滅も可能。


ゴキュリと唾を呑んだ。


手の中では真っ白いお米を握ったもの・・・つまりおにぎりがある。

中身はなに?・・・梅干し?おかか?それとも・・・ツナ?

あぁ、感激だ。この世界におにぎりが存在していたなんて・・・今まで気づかなかった5年間が無駄に思えてきた。


匂いを嗅ぐだけで溢れだす涙と涎。

出来たてなのかポカポカと湯気まで立っている。


これを用意したのは誰かしら。もしかしてメイラが・・・違う。メイラはおにぎりなんてしらないもの。

とすればアイリーン?前に日本食について語り合ったし・・・それとも知らない貴族からの贈り物かしら。ここの貴族ってうわさ話には敏感だし。


それにしても、


「・・・・・・食べたいなぁ・・・・・・」


真っ白いおにぎり。5年ぶりの日本食。

わたしは転生したとはいえ根っからの日本人。

パンよりご飯。パンよりご飯なんです!!


「・・・もう!!我慢できない!!」


震える手を押さえて口に運んだ。

ガッツガッツと勢いをつけてかっ込む。


米本来の甘い味が口いっぱいに広がった。

塩っけもなにも無いけれど美味しい。とにかく、美味しい。


「うっぅ・・・うぇ・・・」


5年ぶりの日本食。

なんちゃって料理じゃなくて、本当の日本食。


涙が溢れて止まらない。

そして―――静かな部屋にガチャンという硝子の割れる音が響いた。


「・・・・・・・・ん?」


おにぎりを持ったまま振り返る。


部屋の前に侍女が1人立っていた。その足元には真っ赤な色の液体が零れていて豪華そうな絨毯を汚している。

あ、割っちゃったのかな。


「ひゃぁいじょぉぶぅ?」


食べたまま声を掛ければ意味の分からない言葉になった。


ヤッバイ。手から離さないと・・・あぁ!!でも離したくない。

でも食べ物より怪我の方が大事。うん!!・・・残りは後で食べよう。


そう思い食べかけのおにぎりをバスケットのあるテーブルに置くと侍女が慌てて近寄ってきた。

はしたないと言われそうで気まずさのまま目を逸らすと侍女はその食べかけのおにぎりを見て、


「き、きゃぁぁあぁあぁぁあぁあぁぁぁあああ!!!!!!!!!」


悲鳴を上げた。











「にゃぁぁぁあああ!!!!!」


「お仕置きです!!!」


「知らなかったんだもん!!!」


怒りに身を任せたメイラが荒々しく服を脱がそうとする。


「いやぁぁああ!!!脱がさないでぇぇええ!!!」


「あれは毒なんですよ!!なぜ食べるんですか!?」


「お米だったんだもん!!お米だったんだもんんん!!!」


「食べ物じゃないんですよ!!・・・あぁもう!!効かなかったから良かったものを、一歩間違えれば・・・恐ろしい!!」


恐ろしいのはあの毒おにぎりだ!!!こんちくしょう!!!!!!


床に散らばったおにぎり・・・じゃなくて毒の塊を見るとさらに涙が溢れて止まらない。


「なんで毒がおにぎりの形しているのよっーーーー!!!!」


この日、イリスは天国と地獄を味わったという。
















「あ、毒効かないんだからおにぎり食べちゃダメ?」


「また一晩中お仕置きされたいんですか?」


「・・・・・・・・・・毒なしの無事に食べられるおにぎり探してきてよ!!!」


「イリス様~~~」


「あ、アイリーンそれ!!!」


「イリス様のご説明通りにおにぎりとやらを作ってみました。勿論材料は違いますが・・・」


「美味しい!!十分美味しいから!!(がっつがっつ)」


「・・・・・・・・・・・・・・・アイリーン」


「そんなに怖い顔をなさらないで下さいな。ちなみに食材提供者はエイリックです」


「エイリック」


「あ~~~・・・材料追加!!急いで!!俺の命があるうちに!!」














実はイリスさんチート設定があるわけでもないのに毒が効かない体質でした。

あれ、あのオニギリもどきの毒は別に誰かがイリスを暗殺しようとしたわけじゃありません。ネズミとか、モグラ退治用に使おうと練ってて偶然おにぎりっぽい形になっていてたまたま持ち場を離れた時にイリスが来て食べちゃったと。不運な事故です。

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