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外伝・ある貴族の御令嬢に転生した少女の物語~それぞれの思い~過去の女の場合

数名の方に出してほしいと言われたあの女性の話です。










はっきり言って、メイラは怒っていた。


それはもう、その室内に誰かが一歩足を踏み入れれば意味も無く即座に土下座して謝罪の言葉を繰り返すほどの怒りを彼は纏っていた。


そしてその怒りを含めた眼差しを『女』に向けた。

『女』はそれに気づかない。

それどころかメイラの服を肌蹴させるように撫でまわす。


メイラはどちらかと言えば温厚な性格をしている。

残虐王と裏で呼ばれる父王やそのフルコピーである兄。

その2人に比べればメイラなど優しすぎるほどに優しい。

何よりイリスに危害が及ばない限りは、ある程度の事は見逃してくれるだろう。


だがそれでも許せる事と許せない事がある。

これは許せない事だった。

あまりの怒りに血管が数本切れかける。


「っ、はぁ・・・ん・・・」


『女』はうっとりと眼を細めメイラへの愛撫を続ける。

それをさり気なく諭すが『女』は夢中になり聞く耳を持たない。

というか聞く気すらない。


呆れたものだ。


一応この『女』は貴族に嫁いだはずだ。

そこで必要最低限の、否、貴族に相応しい【礼儀】を教え込まれたはず。

ならば知っているであろう。


王族の許可なく王族に触れた場合、文字通り首と胴体がオサラバするという事に。


ちなみにこれは庶民の場合であるが貴族でも適応される。

最低でも腕は失う。場合によっては目や耳。体の一部を失うはめになる。


常識である。

どこの世界に王族の許可なく王族に触れる馬鹿がいるのか。


(・・・・・・・・・・・ここにいるんですよねぇ・・・)


怒りを通り越して呆れかえった。


それでも『女』の手がやむ事はない。


「・・・・・・・・・・・・最終忠告です」


「ん、はぁ・・・メイラ?」


気安く名前も呼ぶし。

一体、何様のつもりなんでしょうかねぇ。


「今すぐ、その薄汚い手を離し消えなさい」


キョトンと、意味が分からないという顔を女はした。


「ん・・・どうしたの、メイラ」


「その手を離せと言っているんです」


「なにをそんなに怒っているの?昔、わたしがあなたを捨てたから?」


そんな事、どうでも良い。


「あなただけなのよ。愛しているのは。夫との間に愛情なんかないの。愛しているわメイラ・・・だから、ね?」


濡れた唇は色香を纏い、男の激情を誘うであろう。

サラサラと髪がなびくたびに香る匂いは最高級の香水の香り。


体は昔よりも丸みを帯びている。

胸も、腰も、尻も、

全てが・・・男を誘う為に作られた物。

それを考えると、


「気持ち悪いですね」


「・・・・・・・・・・・え?」


「気持ち悪い、と言ったんですよ」


愛しいイリスとは正反対だ。


イリスの唇はあんなにベタベタ変な物を塗っていない。

だから僕に不快感を与えたりしない。


イリスの香りはいつも良い香りだ。

多分、石鹸の匂いだろう。

自然な香りでとても落ちつく。


イリスは、こんな風に汚らわしくない。

こんな風に男を誘ったりなどしない。

とても自然体で、いつも輝いていて美しい。


そんなイリスとはなにもかもが違う彼女。


「なぜ僕はあなたなど愛していたのでしょうね」


今思えば愚かであった。

この女のどこを愛していたのだろうか?


香りも、体も、存在も、

全てが汚らわしい。


本当に、どうして愛したのか。

今では本当に愛していたのかさえも分からずにいた。


彼女に抱く感情はただ1つ。

【無関心】

ただそれだけ。


そもそも彼女の存在すら忘れていた。

他人に言われて【そういえば、そんな女いたなぁ】というその程度の認識になっていた。


「メイラ?」


「あなたなど、どうでも良いのですよ」


女の顔がいかにも【傷ついた】とばかりになる。

俯いて震える体。

溢れる涙。

微かに開く真っ赤な唇。


か弱い女性の振りをして、彼女はメイラに寄りかかった。


だがそこで彼女は気づいてしまった。

どれだけ演技をしたとしてももうメイラの心を手に入れる事は出来ないという事に。

彼が自分を見る目にはもう愛情とか、そういった感情は見えない。


そう。

彼の眼は語っていた。


オマエナド、シラナイ


・・・と。


離れていく。

彼が、わたしの元から・・・


咄嗟にメイラと、女は小さく呟いた。

意識をしていないと聞こえないほどの、小さな呟き。

それでもメイラには十分届いた。


けれど、メイラが女の顔を見る事は2度となかった。

その場に、昔の彼女との関係を知る者がいたのであればきっと戸惑っていただろう。

あれ程愛した女に向ける【目】ではなかった。


怒りでもなく、愛でもなく、


無関心という名の感情。


「さようなら。レイゴット伯爵夫人」


















「イリスイリスイリス。イリスはとっても良い香りですね。香水の香りですか?違いますよね。石鹸の香りですか?」


「どうでも良いから胸に顔うずめて嗅ぐんじゃねぇぇええ!!!!!」


「メイラ様ズルイです!!アイリーンにも分けて下さい。というか嗅がせて下さいませ!!」


「・・・・・・・・・・・・・いつからこの国は変態だらけになったんでしょうかね?」


「「お前まだいたの?」」


「・・・・・・・・こんちくしょーーー!!!!!!!!!」








メイラがキレる前に呆れたという感じで。

メイラはイリスに実害がない限り動きません。危害を加えたら動きます。

そしてその前にアイリーンが独断で動きます。

アイリーンの情報網は完ぺきなんです。


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