第1話 もうバレた
白亜が足を踏み入れたのは、白を基調とした巨大な建物だった。
壁も床も天井も、どこまでも清潔な白。だが、ところどころに赤・青・緑の紋章が刻まれている。
「ここが……光色三原色協会か」
胸の奥が、少しだけ高鳴る。
世界の秩序を守るために作られた組織。
人手不足なのは間違いないが、認められなかった者は容赦なく審査は落とされる。
表向きは「黒魔法を少し扱える見習い魔道士」それが、俺が提出した適性診断。もちろん偽装だ。
ここで自分が本当は白魔道士だと言うことをバレてはいけない。
バレれば敵組織のスパイを疑われて最悪処刑。
なんでリスクを負ってまで黒魔道士としていたいか?それは……
(かっこいいから!!)
光色三原色協会・中央演習場。
「本日の新人公開適性試験を開始する!」
観覧席には協会員だけでなく、市民や他部門の魔道士も集まっていた。
他部門。光色三原色協会には5つの部隊に分かれる。
1.戦闘特化部隊
2.魔法研究部隊
3.治安維持部隊
4.施設管理部隊
5.秘密監査部隊
ここで見せる実力によって、各部隊に配属される。故に能力を隠す意味はない。
白亜は、一歩前へ出る。
「月白白亜。黒魔道士」
一瞬、空気が凍った。
「……は?」 「黒、だと?」 「冗談だろ……?」
黒魔道士は珍しく、そして最強であり、ざわめきが一気に広がる。
だが白亜は、ためらいなく右手を掲げた。
「証明すればいいんですよね」
赤・青・緑。
三色が同時に灯り、次の瞬間――
すべてが溶け合い、深い黒へと沈む。
その瞬間は一瞬で、普通の人には黒しか見えない。
「彩殺」
白亜は静かに呟く。
闇でも破壊でもない。
“すべてを受け入れた結果としての黒”。
演習用の結界が、音もなく消えた。
「……認定する」 「黒魔道士だ」
審査官の声は震えていた。
施設管理部隊の人物らしく人は
「バカな…あの結界を容易く?」と驚いている。
実際に混ぜれば黒は使える。
その根源が“白”であることを除けば。
その様子を見ていたある人男性は疑問を抱く。
(”あの人”の黒魔法とは魔法の感じが少し違くないか?)
パチンッ!
「では、君は次の最終試験に…」
そこまで審査官が行った時、
「待ってください。」
ゆっくりと歩いてくる男性。
「その子の最終審査はワイがやります。」
「うそっ…あの人」「まじか!?」などと周りは騒がしくなる。
「あの…」
審査官が混乱していると
「君はもう次の子の審査しちゃって。」
「は、はい!」
すぐに返事をして審査官は元の定位置に戻っていく。
(あの人が来た途端、妙によそよそしくなったな…)
少し警戒する白亜に対してその男性はゆっくり近づいてきて
パチンッと指を鳴らす。
白亜が気づいた頃には、少し高級感のある部屋に移動していた
(瞬時に移動した!?)
「さて、」
「君、黒魔道士じゃないよね?」
その男性は、気づけばもうくつろいで紅茶を飲んでいた。
それよりーーー
バレた!!!
(しかもこの人…相当強い。)
「な、なんでそう思うんですか?」
妙な圧に無意識に慎重な敬語を使う白亜。
「ワイは微かに見えたよ。」
「君が複数の色を混ぜてるところ。」
白亜は頭を抱える。
(そこまでバレちゃってるのか…てか!どうやって!?)
思わず顔に出してしまう白亜。
(あっ!)気づいた時にはもう遅い。
「その顔…できるって感じの顔だね。君本当は5歳以下だったりするの?」
適正が決定する5歳以下では、複数の色は使えるためこの男性は、俺が5歳以下だと思ったらしい。
「そんなこと…出来るわけ」
その様子を見て不気味に微笑む男性は紅茶を置いて。
「まぁいい。とりあえずワイも自己紹介といこうかな。」
「ワイは”治安維持部隊隊長”三條琉。よろしくな。」
改めて三條さんは自己紹介をする。隊長としってすぐに白亜はかしこまってお辞儀をする。
「”黒魔道士見習いの”月白白亜です。よろしくお願いします。」
「黒魔道士…ねぇ〜」
わざとらしく復唱する三條に白亜は心の中で苦笑いをする。
(これは…バレてるな。しかも隊長…)
「とりあえず、君は最終審査合格にしとく。」
(しゃーー!ラッキー!!!)
心の中でガッツポーズを決める白亜。けれども……
「とりあえず、君はワイの治安維持部隊に入ってもらう。」
すぐに嬉しさが、天から地の底に叩き落とされる。
(あくまで見守るって事ね…)
「もう行っていいよ〜」
右手で手を振りながら、左手で紅茶を飲む三條に少し戸惑いながら
「ありがとうございました。えっと…隊長?」
三條が治安維持部隊隊長なら俺の隊長ってことだよな?と思いながらお礼を言う。
白亜がドアに手を伸ばしかけた時、再び後ろから
パチンッ!と鳴り…
目の前には短い髪の女性、落ち着いた感じの青年、そして隣には背の小さい女性が立っていた。
「隊長から話は聞いた。」
「ようこそ!治安維持部隊へ!君たち新人隊員。計2名を歓迎する。」




