表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/120

EP 9

本当の恐怖

 龍魔呂の拳によって半死半生となった魔人サルバロスは、地面に転がりながら安堵していた。

 痛みは激しいが、龍魔呂が拳を収めたからだ。

(……助かった。殺されはしなかった……。この隙に逃げて、いつか必ず復讐を……)

 だが、その安堵は一瞬で凍りついた。

 龍魔呂が下がった背後から、さらに強大で、さらに禍々しいプレッシャーを放つ影たちが歩み出てきたからだ。

「……ねえ、みんな」

 扇子をパチンと鳴らし、魔王ラスティアが艶然と微笑んだ。

「私達、最近暴れてないのよねぇ。ストレス溜まってるし、ここで舐めて貰ったら困るし?」

 その隣で、黒いコートを羽織った竜神デュークが、憐れむような目でサルバロスを見下ろした。

「……運がいいな、貴様。始祖竜ポチが居て良かったなぁ、サルバロス」

「え……?」

 サルバロスが意味を理解できずにポカンとする。

 足元では、小さなポチが「グルルル……(仕方ねぇな、後始末は俺かよ)」と面倒くさそうに唸っていた。

「さあて、責任は取らなきゃね、魔人君♡」

 不死鳥フレアが一歩前に出た。

 その背中から、真紅の炎が翼のように噴き上がる。

「楽しみだわぁ……♡」

 ボォォォォォッ!!

 フレアが優雅に舞い始めた。

 それは死を呼ぶ演舞。

 彼女の周囲に、太陽の如き熱量を持った8つの炎が出現する。

 炎は有機的にうねり、やがて8つの巨大な炎龍へと変貌した。

「え? え? ちょっ、待っ――」

 サルバロスの顔が引きつる。

 熱い、ではない。存在そのものが蒸発する熱波だ。

「『不死鳥紅蓮のフェニックス・クリムゾン・ダンス』!!」

 フレアが指を弾く。

 8匹の炎龍が、一点集中でサルバロスに殺到した。

 ドゴォォォォォォォォンッ!!!!

「ギャアアアアアアアアッ!!!!」

 サルバロスは一瞬で焼かれた。

 再生能力など意味がない。細胞の一つ一つ、魂の欠片に至るまで、神炎が焼き尽くし、炭化させ、灰へと変えた。

 そこには黒い染みしか残らなかった。

「ふぅ! スッキリ♡」

 フレアは汗一つかかず、晴れやかな笑顔で振り返った。

「ポチぃ! お願い♡」

「ぐるるる(あいよ)!」

 ポチが吠えた。

 『時空回帰』。

 始祖竜の権能が発動し、サルバロスの周囲の時間だけが巻き戻る。

 灰が集まり、炭になり、肉になり、皮膚になり――。

「――ッ!! ひぃぃぃッ!?」

 サルバロスは悲鳴を上げて蘇った。

 死の激痛と恐怖の記憶を残したまま、五体満足で復活させられたのだ。

「な、なんだ……今、俺は死んで……!?」

「……おい」

 ガシッ。

 復活した瞬間に、首根っこを掴まれた。

 見上げれば、氷の瞳をした狼王フェンリルが立っていた。

「全火力を出せるのか。……次は俺だな。良いサンドバッグだ」

 フェンリルの背後に、無数の氷槍アイスランスが展開される。

「待て待て、フェンリル」

 デュークが割り込んだ。彼は楽しそうに拳をポキポキと鳴らしている。

「久々に3柱(俺・お前・フレア)の同時攻撃を試さないか? あいつ(サルバロス)なら死なないし、実験台に丁度いい」

「あら♡ 面白そう♡」

 フレアが再び炎を灯す。

 氷と炎と闇。

 世界を滅ぼせるエネルギーの混合実験。

 サルバロスは顔面蒼白で首を振った。

「や、やめろ……許してくれ……!」

「駄目だわ」

 フェンリルは冷酷に却下した。

「混合魔法だと一瞬で死ぬ。それでは恐怖を味わえん。……コイツは氷牢責め(ひょうろうぜめ)にするんだ」

 パキパキパキッ!

 フェンリルの魔力がサルバロスを包み込む。

 体感時間を引き伸ばされ、神経を直接凍らされ、指先から一本ずつ砕かれては再生させられる、終わらない拷問コースが確定した。

「ひ、ひぎぃぃぃぃぃッ!!」

 サルバロスの絶叫がこだまする。

 死んで逃げることも許されない。

 神々による「教育」という名の無限地獄は、彼が「人助けの喜び(=石運び)」に目覚めるまで、延々と続くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ