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EP 2

光の勇者(?)、農場に降臨

 ピカーーーーーッ!!

 カイト農場の上空に、直視できないほどの光の柱が降り注いだ。

 どこからともなく荘厳なファンファーレが鳴り響き、白い羽根(魔力製)が雪のように舞い散る。

「おお、見よ! 神の降臨だ!」

「いや、あれは悪魔だ! 逃げろぉぉ!」

 保護されたばかりの難民たちが、パニックを起こして逃げ惑う。

 光の中からゆっくりと降りてきたのは、白銀の鎧に身を包み、背中に光り輝く翼を生やした金髪の美青年だった。

「やあ、迷える子羊たちよ! もう大丈夫だ! 救世主サルバロスが来た!」

 彼は空中でポーズを決め、キラリと白い歯を見せた。

 その姿は、絵本に出てくる勇者そのものだ。ただし、演出が過剰すぎて逆に不気味だが。

「ひぃぃッ! また来た! また国を壊しに来たんだ!」

「許してくれ! もう何もないんだ!」

 難民の老人たちが地面に頭を擦り付けて震える。

 しかし、サルバロスはそんな彼らの恐怖を「畏怖と感謝」だと脳内変換していた。

「ハハハ! そう怯えるな。君たちが迷子になったと聞いて、わざわざ追いかけてきてあげたんだよ。優しいだろう?」

 サルバロスは優雅に着地した。

 その足元には、なぜかレッドカーペットが自動的に敷かれている。

「……うわぁ、すごい!」

 そこに、パチパチパチと拍手をする音が響いた。

 カイトだ。

「すごいよ! 全身ピカピカだね! LEDかな? それとも発光ダイオード魔法?」

 カイトは目を輝かせてサルバロスに近づいた。

 純粋な好奇心。悪意も恐怖も微塵もない、ただの「珍しいものを見る目」だ。

「……ん?」

 サルバロスの眉がピクリと動いた。

 通常、彼の登場シーンでは、民衆は感動して泣くか、恐怖でひれ伏すかの二択だ。

 こんなふうに「動物園のパンダ」を見るような目で見られたのは初めてだった。

「君は……この農場の主か? 私の高貴なオーラに目が眩まないとは、なかなか見どころがあるね」

「うん、僕カイト! 君、魔法使いなんだね。その背中の翼、どうなってるの? 飛ぶ時邪魔じゃない?」

「こ、これは高位精霊魔法による顕現であり……ええい、触るな!」

 カイトがペタペタと鎧を触るので、サルバロスは思わず払いのけた。

 調子が狂う。なんだこの田舎者は。

「……おい、サルバロス」

 そこへ、低い声が割って入った。

 魔王ラスティアが、腕組みをして睨みつけていた。背後には鬼神龍魔呂と魔族宰相ルーベンスも控えている。

「あら、久しぶりね。……相変わらず安っぽい演出だこと」

「おや? 君は……『災厄の魔女』ラスティアじゃないか」

 サルバロスは驚き、そしてニヤリと笑った。

「なるほど、道理で豊かな土地だと思った。魔王に、3柱、それに魔界の宰相まで……。随分と豪華な顔ぶれが揃っているね」

 彼の目が、値踏みするように農場を見渡した。

 生命力に満ちた野菜。

 溢れんばかりの魔素。

 そして、飼い慣らされた神話級の怪物たち。

(……素晴らしい。前の砂漠の国なんて比じゃない。ここを支配し、この高慢な連中を跪かせ、そして最後には……)

 サルバロスの脳裏に、農場が炎に包まれ、カイトやラスティアが絶望の表情で這いつくばる光景が浮かんだ。

 ゾクゾクするほどの快感が背筋を走る。

「決めたよ」

 サルバロスは両手を広げ、大げさに宣言した。

「この地は素晴らしい! だが、まだ未熟だ! 私がしばらく滞在し、この農場を『至高の楽園』へと導いてあげよう!」

「はぁ? 何言ってるのよ。帰れ」

 ラスティアが即答する。

「まあまあ、ラスティアさん」

 カイトが止めた。

「せっかく来てくれたんだし、手伝ってくれるなら助かるよ! 人手はいくらあってもいいからね!」

 カイトはサルバロスの手を取り、ブンブンと握手した。

「よろしくね、サルバロスさん! まずは堆肥作りからお願いできるかな?」

「た、堆肥……? この救世主にか? フフ……面白い冗談だ」

 サルバロスは引きつった笑みを浮かべた。

 農作業などする気はない。

 彼がするのは「奇跡」のバラ撒き。

 汗水垂らして働くことの無意味さを、この愚かな農夫に教えてやるつもりだった。

「……フン。精々調子に乗るといい」

 龍魔呂が、去り際のサルバロスの背中に冷たい視線を送る。

 その手には、いつの間にか包丁が握られていたが、カイトの手前、まだ鞘に収められていた。

 こうして、最悪の客人がカイト農場に招き入れられた。

 地獄へのカウントダウン(あるいは、サルバロスの教育的指導へのカウントダウン)が始まったのである。

 次回、奇跡の安売り!

 「奇跡の安売り」へ続く!

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