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EP 8

氷の彫刻と熱い視線

 カイトが持ち込んだ「ルビーベリー」を使ったカクテル『ロッシーニ・スペシャル』は、女性陣に大好評だった。

「ん~っ♡ 甘酸っぱくて最高だわ!」

「龍魔呂の作るカクテルは、どうしてこうも体に染み渡るのかしら……」

 ルチアナやラスティアが、うっとりとした表情でグラスを傾けている。

 店内は甘い雰囲気で満たされていたが、カウンターの中の龍魔呂は、眉をひそめてアイスペール(氷入れ)の底を覗き込んだ。

「……む。氷が切れたか」

 今夜は客が多い。特に興奮した女性陣の体を冷やすために、大量の氷を消費してしまったようだ。

「……少し待っていろ。すぐに用意する」

 龍魔呂はバックヤードの巨大冷凍庫を開けた。

 そこから取り出したのは、普通の氷ではない。

 狼王フェンリルが魔力で生成した、**『絶対零度・永久氷塊』**の巨大な塊だ。鋼鉄よりも硬く、決して溶けることのない伝説の氷である。

「えっ、龍魔呂? そんな大きな塊、どうするの?」

 ルチアナが尋ねる。普通のクラッシャーでは歯が立たない硬度だ。

「……削る」

 龍魔呂は短く答えると、静かにシャツの袖をまくり上げた。

 バッ。

 露わになったのは、バーテンダーのスマートな制服の下に隠されていた、歴戦の筋肉だった。

 無駄な脂肪が一切ない、鋼のように引き締まった前腕。浮き上がる血管。そして、無数の傷跡。

 それは、「男の色気」という暴力そのものだった。

「…………ッ!!」

「はわっ……!」

 カウンターの女性陣が息を飲んだ。

 グラスを持つ手が止まり、視線が龍魔呂の腕に釘付けになる。

 龍魔呂はそんな熱視線に気づく様子もなく、一本のアイスピックを逆手に構えた。

「……フッ」

 短く息を吐き、集中を高める。

 かつて、暗殺者時代に培ったナイフ捌き。それを氷に応用する。

 『鬼神流・氷結彫刻きしんりゅう・ひょうけつちょうこく

 チュンチュンチュンチュンッ!!!!

 凄まじい音が響いた。

 龍魔呂の腕が残像とかした。

 アイスピックの先端が、神速で氷塊を突き、削り、形を整えていく。

 硬度を無視したその技術は、もはや芸術アートか、あるいは剣舞のようだった。

 カラン、コロン……。

 わずか数十秒。

 龍魔呂が動きを止めると、まな板の上には、宝石のように美しくカットされたダイヤモンド型の氷と、複雑な造形の「氷の薔薇」が完成していた。

「す、すごい……!」

 リーザが目を輝かせる。

「……フェンリルの氷は硬いが、純度が高い。良い氷だ」

 龍魔呂は額の汗を拭い、何事もなかったかのように袖を下ろした。

 そして、ダイヤモンド氷をグラスに入れ、新しいカクテルを作り始める。

「……待たせたな。次は何にする?」

 その涼しい顔。

 圧倒的な技術と、垣間見えた野生的な肉体美。

 そのギャップに、女性陣の理性は限界を迎えた。

「はぁぁぁん……♡ あの腕……あの血管……!」

 特に反応したのが、炎の化身である不死鳥フレアだ。

 彼女はカウンターに身を乗り出し、熱っぽい瞳で龍魔呂の腕を見つめた。

「ねえ龍魔呂ぉ……。その氷みたいに、私も削ってくれない?」

「……何?」

 意味が分からない龍魔呂。

「もしくは、その鍛え上げられた腕でぇ……思いっきり締め上げられたいぃぃん♡(物理的に)」

「……フレア様、酔いが回りすぎだ。水を出そう」

「水じゃ足りないわよぉ! あなたの愛の力で鎮火してぇ!」

 暴走するフレア。

 他の女性陣も負けてはいない。

「ずるいわよフレア! 私もあの筋肉に触りたい!」

「あの腕枕で寝たら、どんな悪夢も消し飛びそうですわ……!」

 技術を見せただけなのに、なぜか肉体目当てのゾンビのようになった美女たちに囲まれ、さすがの鬼神も少し困惑した。

「……やれやれ。今夜は随分と気温が高いな」

 龍魔呂は首を傾げながら、冷房の設定温度をさらに下げるのだった。

 忠誠心、技術、そして肉体美。

 全てを見せつけた龍魔呂に対し、ついに女性陣が最後の問いを投げかける。

 「で、結局誰が好きなの!?」

 次回、龍魔呂の答え!

 「誰が一番? 龍魔呂の答え」へ続く!

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