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EP 7

カイトの無自覚アシスト

 龍魔呂を巡る女たちの戦いがヒートアップする『BAR 煉獄』。

 カランカラン、とドアベルが鳴り、一人の青年が入ってきた。

「やっほー! 龍魔呂さん、イチゴを持って来たの!」

 カイトだ。

 彼が抱えるバスケットには、宝石のような光沢を放つ、大粒の真っ赤なイチゴが山盛りになっている。

 ポチの魔力とルナの加護を受けて育った、【Sランク果実:ルビーベリー】である。

「畑を見てたら、すごく美味しそうに熟れてたからさ。カクテルとかに使えないかな?」

 カイトがニコニコとカウンターにカゴを置く。

 甘酸っぱい香りが店内に爆発的に広がった。

「……そうか。デザートには良いな」

 龍魔呂はイチゴを手に取り、その完璧な熟し具合を確認して頷いた。

 すると、その甘い香りに誘われた女性陣が、一斉に色めき立った。

「龍魔呂ぉ♡ 私にデザートを作ってくださる?」

 魔王ラスティアが、とろけるような声でねだる。

「あら! 私によ! 私が一番このイチゴにふさわしいわ!」

 女神ルチアナが対抗心を燃やす。

「龍魔呂さん、イチゴミルク作ってぇ! 甘~いやつですわ!」

 エルフのルナがスプーンを持って待機する。

「私にも♡ 天使族は赤い果実が大好きなのです!」

 天使長ヴァルキュリアも身を乗り出す。

「私も……育児疲れにはビタミンが必要だわ」

 聖女セーラもグラスを差し出す。

 全員が「私にくれ」とアピールする地獄絵図。

 その光景を見て、カイトは苦笑しながら言った。

「あはは、モテモテだね、龍魔呂さん」

「……良く分からん」

 龍魔呂は真顔で首を傾げた。

 彼にとって、彼女たちは「騒がしい常連客」でしかない。

 だが、カイトが持ってきた食材となれば話は別だ。

「……オーナー。少し待っていろ」

 龍魔呂の目が職人のものに変わる。

 彼は最も大粒のイチゴを数個選び、ミキシンググラスに入れた。

 ペストル(すりこぎ)で優しく、かつ素早く果肉を潰す。

 シュワァァァ……。

 そこに注がれたのは、キンキンに冷えた**『最高級シャンパン』**だ。

 イチゴのピューレと黄金の泡が混ざり合い、鮮やかな深紅のカクテルへと昇華していく。

「……できたぞ。『ロッシーニ・スペシャル』だ」

 完成したカクテル。

 女性陣が一斉に手を伸ばそうとした、その時。

 スッ。

 龍魔呂はグラスを滑らせ、カイトの目の前に置いた。

「え?」

 女性陣の手が空を切る。

「……オーナー。まずは毒味テイスティングをお願いする」

 龍魔呂は当然のように言った。

「このイチゴを作ったのはオーナーだ。最初の一杯を口にする権利は、カイト殿にある」

「えっ、僕からでいいの? じゃあ……いただきます!」

 カイトはグラスを口にした。

 芳醇なイチゴの甘みと、シャンパンのキレのある酸味。それが弾ける炭酸と共に喉を駆け抜ける。

「んんっ~! 美味しい! イチゴの香りが生きてるよ! さすが龍魔呂さん!」

「……フッ。お気に召したなら何よりだ」

 カイトの笑顔を見て、龍魔呂は初めて今日一番の柔らかな笑みを見せた。

 そして、ようやく女性陣に向き直った。

「……さて。お前たちには残りの分で作ってやる。待っていろ」

 後回しにされた女性陣。

 普通なら「レディファーストじゃない!」と怒るところだ。

 しかし――。

 ドキュゥゥゥゥンッ……!!

 彼女たちのハートは、別のベクトルで撃ち抜かれていた。

(な、なによ今の……。絶世の美女たちを差し置いて、主君カイトに最初の一杯を捧げるなんて……!)

 ラスティアが震える。

(忠義……! なんて硬派な忠誠心なの! チャラチャラしてない所が最高にクールだわ!)

 ルチアナが頬を染める。

(私の優先順位がカイト様より低い……。むしろ、その揺るぎなさが信頼できますわ!)

 ヴァルキュリアが尊さに悶える。

 カイトの「無自覚な食材提供」と、龍魔呂の「ブレない忠誠心」。

 このコンボが、女性陣にとっての「理想の騎士像」を完成させてしまったのだ。

「カイト様……ナイスアシストですわ!」

「龍魔呂、その不器用なところ……好きよ!」

 女性陣の熱視線は、冷めるどころかさらに温度を上げていた。

 カイトはイチゴを齧りながら、不思議そうに首を傾げた。

「なんか、みんな熱くない? 冷房弱める?」

「……いや。客の熱気だろう。放っておけば冷める」

 龍魔呂は淡々と次のカクテルを作り始めた。

 だが、冷めるどころか、次は龍魔呂の「肉体美」に火がつくイベントが待っていた。

 次回、氷の彫刻と筋肉美!

 「氷の彫刻と熱い視線」へ続く!

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