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EP 4

マグナギア・トーナメント(予選)

 地下闘技場は、異様な熱気に包まれていた。

 観客席にはオークやゴブリン、そして仕事を早退してきたルーベンスや、ラーメン屋台を休憩中のデュークたちが陣取り、ポップコーン片手に声援を送っている。

「さあさあ! 始まったよ『第一回・天魔杯マグナギア・トーナメント』!」

 実況席のキュルリンがマイクで叫ぶ。

「予選第一試合は、神々の対決! 赤コーナー、『紅の彗星』ルチアナ! 対する青コーナー、『野性の牙』フェンリルだー!」

 ガシャン、ガシャン!

 リングインしたのは、2体の実物大マグナギアだった。

 ルチアナの機体は、真っ赤に塗装された軽量級タイプ『ルージュ・ヴァルキリー』。

 フェンリルの機体は、四足歩行の獣型タイプ『メタル・ウルフ』。

「フフフ……。見せてあげるわ。通常の3倍のスピードを!」

「オラァ! 噛み砕いてやるぜ!」

 コックピットの二人が吠える。

 試合開始のゴングが鳴った、その瞬間だった。

 ズババババババババッ!!!!

「なっ……!?」

 ゲスト解説席に座っていたドワーフ王ガンテツが、ゴーグルをずり落とした。

 見えない。

 速すぎて、機体の姿が見えないのだ。

 リング上で交錯するのは、紅い光と銀の閃光のみ。

 衝撃波が防弾ガラスをビリビリと震わせる。

「あわわわ! 速い! 速すぎて実況できません!」

 神の反射神経は、機体の限界性能を遥かに超えていた。

 ルチアナがコンマ1秒で数百のコマンドを入力すれば、フェンリルは本能直結の操作でそれを回避する。

 ギギギ……バキィッ!!

 金属音が響いた。

 両者の機体が、互いの動きに耐えきれず、関節部から火花を散らして同時にダウンしたのだ。

「あーっと! 両者、機体損壊により引き分けー!」

「くっ……! 私の反応速度にサーボモーターがついて来れないなんて!」

「チッ、脆い機体だぜ!」

 ルチアナとフェンリルが不満そうにコックピットから出てくる。

 ガンテツは震える手で髭をさすった。

「ば、馬鹿な……。あの機体はリミッターを解除したプロ仕様じゃぞ? それをオーバーヒートさせるほどの操作技術じゃと……?」

 ドワーフ王の常識が揺らいだ。

 ここはただの娯楽施設ではない。魔境だ。

 †

 一方、バックステージの整備ドック。

 決勝戦を控えたカイトは、愛機の最終調整に入っていた。

「うーん、やっぱりパワーが足りないかなぁ」

 彼が整備しているのは、黄色いボディの重装甲タイプ。

 元々は建設作業用の機体だが、カイトの手によって異様な改造が施されていた。

「よし、追加装備だ!」

 ジジジジジッ……!

 カイトは溶接魔法で、機体の両腕に巨大な金属の爪を取り付けた。

 それは武器ではない。

 伝説の金属オリハルコンを鍛造して作った、「超硬質・耕運爪ロータリー・クロー」だ。

「これなら深く耕せるぞ! あとはエンジンだね」

 カイトは機体の背面ハッチを開けた。

 そこへ、様子を見に来たガンテツが通りかかった。

「おい若造。どんな機体を作っとるんじゃ……ん?」

 ガンテツの目が点になった。

 カイトがエンジンルームに押し込んでいるのは、通常の魔石ではない。

 バチバチと獄炎を放つ、赤黒い結晶体。

「そ、それは……まさか『始祖竜のうろこ』か!?」

「あ、おじいちゃん。そうだよ、ポチから貰ったんだ。これ、すごく燃費がいいんだよね」

 カイトは平然と答えた。

 始祖竜の鱗は、一枚で国中の電力を賄えるほどのエネルギー炉だ。それを単体のロボットに積むなど、正気の沙汰ではない。

「ば、爆発するぞ! 機体が持たん!」

「大丈夫! 冷却装置に『氷精霊石(フェンリル製)』を使ってるから!」

 カイトは鱗の横に、絶対零度を放つ青い石をセットした。

 超高熱と超低温が循環し、無限のエネルギーが生み出される。

「よし、完成だ! 名付けて『汎用農作業決戦兵器・耕運丸こううんまる』!」

 カイトが機体を起動すると、ブオオオオンッ!と重低音が響き、ドック内の空気が震えた。

 その姿は、どう見ても二足歩行のトラクター。

 だが、放たれているプレッシャーは、魔王城の守護ゴーレムを遥かに凌駕していた。

「ひぃぃ……。なんじゃその化け物は……」

 ガンテツは戦慄した。

 こやつ、本気だ。

 ロボット相撲をする気ではない。

 この地下闘技場ごと、大地を耕す気だ……!

「さあ、おじいちゃん! 決勝戦で会いましょう!」

 カイトは爽やかな笑顔でサムズアップした。

 ガンテツは冷や汗を拭い、自分の愛機『アイアン・カイザー』へと走った。

「ええい、負けてたまるか! ワシの技術の全てをぶつけてやるわ!」

 そして迎えた決勝戦。

 リングの中央で、鋼鉄の巨人と、黄色いトラクターが対峙する。

 次回、決戦!

 「決戦! トラクター VS 超兵器」へ続く!

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