EP 10
【真理】やっぱり「良い男」が一番の美容液♡
カランコロン……♪
BAR『龍魔呂』に、新たな客がやってきた。
扉を開けて入ってきたのは、農場の主であるカイトだった。
「こんばんはー。……うわっ、すごい匂い」
夜の畑の見回りを終えたばかりのカイトは、首にタオルを巻き、額に薄っすらと汗をかいていた。
泥のついた長靴は外で脱いできたようだが、その姿は「働く健康的な青年」そのものである。
「お疲れ、カイト。……ホットミルクでいいか?」
カウンターの中でグラスを拭いていた龍魔呂が、静かに声をかける。
「うん、お願い。Sランク牛の搾りたてで」
カイトはカウンターの端に座り、タオルでゴシゴシと汗を拭った。
無造作にかき上げられた前髪から、健康的な汗の雫が滴り落ちる。爽やかな色気だ。
一方で、カウンターの中でシェイカーを振る龍魔呂。
薄暗い照明の中、法被をアレンジしたバーテンダー姿で、氷を砕くその横顔。こちらは大人の色気の極みである。
「お待たせした」
コトリ、と純白のホットミルクがカイトの前に置かれる。
「ありがとう、龍魔呂さん。はぁ~、沁みるねぇ」
その、何気ない男二人の光景。
それを見ていた女性陣(ルチアナ、ラスティア、フレア、リベラ、ルナ、リーザ、キャルル)の間に、奇妙な沈黙が落ちた。
「…………」
「…………」
全員の視線が、カイトの喉仏が動く様(ミルクを飲む姿)と、龍魔呂の逞しい前腕(グラスを拭く筋肉)に、完全に釘付けになっていたのだ。
「……ねえ、みんな」
沈黙を破ったのは、創造神ルチアナだった。
彼女は手元の『SK-∞(金貨5枚)』のボトルをそっとテーブルに置き、うっとりとしたため息をついた。
「結局さぁ……。地球の高い化粧水も、確かに効くけどさ」
「ええ……」
魔王ラスティアが、頬杖をつきながら深く頷く。
「こうやって、極上の『イイ男』の無防備な姿を眺めながら、美味しいお酒を飲むのが……」
「一番、お肌にハリとツヤが出ますわよねぇ……♡」
不死鳥フレアが、頬を極限まで赤らめて(少し発火しながら)身悶えした。
「分かりますわ……! 心臓がトクトク鳴って、血流が良くなるのが分かります!」
リベラが犬耳をピンと立てて鼻息を荒くする。
「な、なるほど……! これが『女性ホルモンの活性化』……! しかもタダ(無料)!!」
リーザがサンプルの袋を放り出し、目を血走らせて男たちをガン見し始めた。
「りゅ、龍魔呂さんの腕の筋……! カイトさんの汗……! あわわわ、私、化粧品のゴーレム浴びた時より、今の方がお肌が熱いですぅ……♡」
キャルルに至っては、ウサ耳をパタパタさせながら、鼻血を出しそうな勢いで興奮している。
そう。
何万円もするデパコスも、必死で集めた試供品も、世界樹の朝露も。
**『眼福(イイ男)』**がもたらす、内側からの劇的なホルモン分泌には敵わなかったのである。
「「「それな~~~~!!!」」」
夜のBARに、美女たちの完璧にハモった同意の声が響き渡った。
「ブフォッ!?」
カイトが思わずミルクを吹き出しそうになる。
「な、なに!? 急にみんなしてこっち見て……!」
カイトは身震いした。
先程まで美容談義に花を咲かせていた女性陣の目が、完全に**「肉食獣」**のそれに変わっている。
舐め回すような、ねっとりとした『視姦』の集中砲火。
「……チッ」
歴戦の処刑人である龍魔呂でさえ、その異常な殺気(欲望)を感じ取り、思わず背筋に冷たいものを感じて一歩後ずさった。
「カイト、俺は奥でグラスを洗ってくる。……後は任せたぞ」
「えっ!? ちょっ、龍魔呂さん逃げないでよ! 僕一人置いてかないで! 食べられちゃうから!」
カイトの悲痛な叫びを背に、龍魔呂はそそくさと厨房へ避難していった。
「カイト様ぁ~♡ 汗、私が舐め……いえ、拭いて差し上げますわぁ~♡」
「カイト、その首筋の汗、魔王に吸わせなさい!」
「カイトさん! 私のツヤツヤのお肌、触ってみますか!?」
「ひぃぃぃっ! やめて! 寄らないで! フローラルな匂いがキツい!!」
逃げ惑うカイトと、目を血走らせて群がる美肌の乙女たち(+奥からこっそり見ている龍魔呂)。
カイト農場の夜は、今日も今日とて、騒がしくも色気に満ちた平和な時間を刻んでいくのだった。




