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迷宮遊戯  作者: ヘロー天気
インフラダンジョン編

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 サービスエリアはダンジョンの領域なので、魔核や迷宮核はその敷地内に居る者の心情を概ね読み取る事ができる。


 攫われてきたらしい修道少女に助けを求められた街づくり好きな迷宮核は、奴隷狩りの商隊員を速やかに制圧すると、檻馬車の中の者達も含めて被害者達を保護した。


 手順通りにやれば安全だと高を括り、大いに気を抜いていた奴隷狩り達は、不意打ちの麻痺毒の罠を食らって碌な反抗も逃亡もできずに無力化された。



 街づくり好きな迷宮核が奴隷狩り達を拘束して身柄を確保していると、麓の魔核が問う。


『こやつらは吸収せんのか?』

「賞金首が居るかもしれないから、色々片付けてから検討するよ」


 テラコーヤ王国側の冒険者ギルドや、連絡の付く領地の衛士隊、私兵団、騎士団から出ている手配書リストには、該当する人物は見当たらない。

 が、ヴィヴァーレ王国側で手配されている可能性もある。


「――と、一人アウトだな」

『ふむ、耐性持ちか』


 麻痺毒から早々に回復した奴隷狩りの一人が、通信用らしき魔道具で仲間に連絡しようとしたので、絞めて吸収する。


 そうして得た情報によると、奴隷狩り集団の本隊である盗賊団のアジトが、国境地帯にあるらしい事が分かった。

 近隣の村や集落から集めて来た大勢の商品(奴隷候補)をアジトに捕らえているのだとか。


「これは、冒険者向けの案件だな」


 街づくり好きな迷宮核は、吸収した奴隷狩りの記憶情報を纏めつつ、西の森の魔核に迷宮通信網(ダンジョンネット)の準備を促した。



 ちなみに、今現在の魔核達の役割だが、西の森の魔核がダンジョンの領域全体を俯瞰して迷宮通信網を取り仕切り、管理している。


 中腹の魔核は領域内にある街全体を管理しており、建物や設備を修繕したり、正常に稼働しているかの監視業務(見守っている)


 麓の魔核は各施設に設けられている設備の他、迷宮自販機のような設置物の機能全般を管理。初利用者の個人登録とクリアメダルの発行を担う。


 特定の人物を調べる時など、麓の魔核に人物照会をして貰えば直ぐに分かるし、領域内に居れば中腹の魔核が現在地を特定してくれる。そして西の森の魔核を通じて即座に連絡が取れる。


 街づくり好きな迷宮核は、領域化地帯と街を拡張しながら、魔核達と連携して臨機応変に動くのだ。


「さて、それじゃあ救出依頼を出すとしよう」




 ※ ※




 最近ハイスークの新領都に移転した冒険者ギルド本部にて、緊急依頼が発せられた。


 ヴィヴァーレ王国との国境付近に奴隷狩り盗賊団のアジトがあり、そこに捕らわれている被害者の救出と盗賊団の討伐もしくは捕縛という内容。依頼者はイレギュラーダンジョンとなっていた。


「おお! ここのダンジョンからの依頼か」

「こりゃ報酬はかなり期待できそうだな。受けるか?」

「うーん、うちは対魔物専門だからなぁ」


「俺達は受けるぜ。討伐隊に人数制限は無いんだろ?」

「我々も受けよう。ヴィヴァーレの奴隷狩りには個人的に思うところがある」

「それじゃあ私達も便乗しよっか?」


 緊急依頼の救出討伐隊に複数の冒険者パーティーが名乗りを上げる。

 血気盛んな若者冒険者パーティーに、熟練冒険者が集まったパーティー。女性だけで構成されたパーティーも参加の意思を表明した。


 受付で全員のクリアメダルが精査され、実力的に問題なしと受理された。彼らは皆、穢れ山迷宮ランドの訓練施設を三層以降まで踏破している猛者達であった。


「しかし、ヴィヴァーレ王国との国境地帯とは……また随分と遠いな」

「ああ、テラコーヤ国内なら今は距離はほとんど関係ないんだぜ」


 最近ここに辿り着いた、まだハイスークに来て日の浅い冒険者が呟くと、新領都ができる前からこの城下街のギルド施設を利用していた若い冒険者が、意気揚々と説明する。


 高難易度だったり、急を要するが遠方まで赴く必要があるような依頼では、転移陣の利用が可能になっている。


 転移先の領地にはイレギュラーダンジョンから事前に連絡が入り、冒険者を領地内に転移させる許可を領主から得る仕組みになっていた。


 イレギュラーダンジョンが関係各所との連絡や手続きを担ってくれるおかげで、その領地に冒険者ギルドの支部がなくても冒険者を迅速に派遣できるうえ、各種事務処理も実にスムーズ。


 王都カンソンに本部を構えていた冒険者ギルドが、ハイスークの新領都に移転を決めた理由の一つでもあった。



 そんな冒険者ギルド本部内にある転移陣から、三組の冒険者パーティーで構成された討伐隊が、ヴィヴァーレ王国との国境付近にある休憩場所(サービスエリア)に転送された。




 ※ ※



「派遣された討伐隊は三組のパーティーか。冒険者ギルドは実力的に問題ないと判定したみたいだけど、君から見てどう?」


 街づくり好きな迷宮核は、依頼を受けた冒険者パーティーへの支援内容を練りながら麓の魔核の意見を問う。


『こやつら全員、迷宮施設の三層を踏破している。斥候組の戦闘力はやや心許ないが、他の二組が速攻の突破力と持久戦の粘り強さを持っておるから、バランスは悪くない』


 吸収した奴隷狩りの記憶知識から得た盗賊団の規模程度なら、十分対応できる範囲だろうと、麓の魔核は分析した。


「そっか。なら特別装備の貸与までは必要ないかな。ポーション類の消耗品を多めに出しとくか」


 サービスエリアの一画で出発準備を整えている討伐隊にポーションの詰め合わせセットを支給し、保護した被害者達を休ませるべく簡易宿舎を建てた。


 被害者のほとんどがヴィヴァーレ王国の村や集落の住人だったので、彼らの事はテラコーヤ側の国境を接する領地の領主から、ヴィヴァーレ王国に連絡を入れてもらっている。

 ヴィヴァーレ側から迎えが寄越されるまで、この安全なサービスエリアの簡易宿舎で寝泊まりさせるのだ。


 修道少女の三人はサマラヴォイ聖国出身の巡礼者という事で、彼女達は近くの教会に身を寄せるつもりらしい。教会から聖国に連絡が行くのだろう。



「討伐隊の準備が整ったみたいだな。あとは教会行きの三人組を道中で見守るくらいか」


 サービスエリアで待機する保護された被害者集団。盗賊団の討伐と、捕らわれた人々の救出に臨む冒険者集団。この領地にもある教会を目指す修道女達で、それぞれ行動を開始した。


 討伐隊には盗賊団の規模や詳しいアジトの位置を始め、奴隷狩りの記憶情報から確認した限りの内部情報、救出対象のおおよその人数など、有用な情報をこれでもかと渡してある。

 緊急事態に備えてポーションの詰め合わせセットも支給しているので、是非とも討伐と救出を成功させて、無事に帰還することを祈るばかりだ。


「一応、アジトのある方向に配管ダンジョンを伸ばしておこうか」


 サービスエリアの地下からシールドマシン型ゴーレムを出撃させ、討伐隊の向かう先へと掘り進める。

 あくまで保険的な処置だが、万が一、今回の討伐隊が対処できないような強敵に遭遇したり、何か想定外のトラブルがあって危機的状況に陥った時は援護に入れるように。


『随分と甘やかすではないか。お気に入りの冒険者でも居たか?』

「別にそういうのじゃないよ。イザって場合の備えだから」


 麓の魔核が『過保護』だと揶揄するが、街づくり好きな迷宮核は、人間社会のあらゆる場面に介入できる下地作りの一環でもあると説明する。


「最終的に、誰がどこに居ても俺達の手が届くようにしたいな」

『おお、全てを支配する件の構想だな!』


 少し前に街づくり好きな迷宮核が語った、地上型ダンジョンの最終形態。人間社会との一体化による共存共栄の構想。

 麓の魔核は、全人類を支配するという到達点を思い描いて魅力を感じているようだが、街づくり好きな迷宮核は微妙に思考の方向性を修正する。


「君が施設で鍛えた冒険者がさ、目の届かないところで敗北してたら、何か嫌じゃない?」

『ん……それは、確かに口惜しく思うだろうな』


 街づくり好きな迷宮核の指摘により、『自分が鍛えた人間』という意識を強められた麓の魔核は、単なる魔素(まそ)(もと)であった人間に対する認識に、微妙な変化が起きていた。



『……』

『――』


 その様子を見ていた西の森の魔核と中腹の魔核が、何とも言い難いジトーッとした視線のような雰囲気を醸し出しながら、街づくり好きな迷宮核に意識を向けてくる。


「……? どうかした?」

『こやつ……』

『――』


 いともたやすく麓の魔核の意識に変化をもたらした事に、西の森の魔核と中腹の魔核は、危機感を覚えたり焦りを募らせたりしたようだ。


 本来、ダンジョンの魔核や迷宮核にとって天敵たる冒険者達と友好を築き、一領地の主から早々に信頼を得て協力関係を結んだ異端の迷宮核。

 恐らく、ダンジョンの歴史上類を見ない大規模な地上型ダンジョンを成立させている異界の魂。


『人たらしの魔核たらし』

『――』


「なんだそれ?」


 何かディスられてる? と疑問に思う、街づくり好きな迷宮核であった。





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― 新着の感想 ―
手厚い福利厚生に拍手! おやつ(ポーション)付きの遠足かな? 盗賊の討伐にて、さらなる経験値を得た冒険者一行がホッカホカな魔素と名声を持って帰る予定とか優秀か! しかも根回し(地下だけに)を兼ねての穴…
王都なのにどんどん主要施設の本部が抜けていってカンソンの名にふさわしくなって行く……。
麓の魔核は育成ゲームにはまりつつあったりする?
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