第五話[夢]
崩壊した街の中。
私は手を繋ぎ走っていた。
違和感があった。
私の記憶では過去の自分はうしろの方だった。
今の自分は前の方で手を引いてる側だった。
過去の夢にしては、やっぱりなんか違っていた。
それに夢のはずなのに意識がはっきりしていた。
手を繋いでいる相手の顔が見えた。
(・・・私?)
永遠の国。
休日。
私とヒカリは街中でカガミさんと久しぶりに会っていた。
カガミさんは、ある事件で行き場を失った私とヒカリを養子として引き取ってくれた人だった。
両親が見つかるまでということで色々生活面でお世話になった。
私とヒカリはカガミさんと話をしていた。
「二人とも元気ですか?」
カガミさんはわたしとヒカリを見て「・・・元気そうで良かったです」と言い、クスッと笑った。
「仕事も順調そうですね、噂を聞きましたよ」
私は「はい、順調です」と笑顔で答えた。ヒカリはカガミさんに「武器商人になったって本当ですか?」と聞くと、カガミさんは困った表情になった。
「ええ、あの人は一度思いつくと強情ですからね」
あの人とは、この国の王様アラタのことだった。
私は苦笑いした。
「大変そうですね・・・」
カガミさんは「ええ」と言うと「二人も武器に興味があれば見に来てください」と私とヒカリに笑顔を向けた。
「カガミさん・・・?」
通りかかった女は三人の間にまざった。
「二人共仲良いわね〜♡」
私は「うん、そうだよ」と当たり前のように言った。
ヒカリも頷いたあと「僕たち幼い頃から一緒だったからね」と言った。
女は「ああ!なるほど、そっかそっか♡」となにかに納得していた。
カガミさんは女を睨んで「サクラさん、勝手な詮索は善良な行動とはいえませんよ?」と冷たく言うと、サクラさんは、どこか冷めた笑顏になり「私はとっくの前に罪人よ?勝手なことを言っているのはあなたの方でしょう? ・・・それとも私を捕まえる?」と言った。
カガミさんは黙り込んだ。
「二人共、また会いましょう」
サクラさんはそう言うと、うしろへ振り向いて歩いて行った。
黙ったまま、サクラさんのうしろ姿を見ていたカガミさんを察して、私とヒカリは追求しなかった。