第一話[気持ち]
永遠の国。
景色はどこか懐かしさを感じられるような色に染まり、子供達は帰りを誘われた。この景色が愛しく感じて寂しさも感じられた。子供達が帰る中、夕飯や次の朝ご飯の準備が出来るよう、街に市場が出されていた。生活費を稼ぐためや、食材や薬の調達目的で、みんなこの場所に集まっていた。
私は生活費を稼ぐためだった。軽い袋を持ち上げると「依頼の品持ってきましたー」と薬の材料が入った袋を女に渡した。
女は渡された袋の中身を確認した。
「どれどれ・・・」
どのくらいあるか袋を開け確認すると、袋を閉じ、ポケットから小さな袋を取り出し、小さな袋から小銭を取り出すと、「はい報酬」受け取ってくれと渡してきた。
私は、渡されたお金を受け取ると財布にしまった。
女は笑顔で私にお礼を言ってきた。
「いつもありがとね」
「いえ、いつも頼ってくれて嬉しいです」
「そう?じゃあ次も遠慮なく頼らせてもらうわね」
「はい!」
私が元気に頷くと、女は笑顔で言った。
「最初は不安だったけど、本当に今回は頼れる人で良かったわ。過去にもあなた達みたいな団があったんだけど・・・、それがもう最悪でさ、役に立つどころか犯罪にまで手を染めてたのよ」
「そうなんですか?」
「ええ、でも・・・あなた達は違うみたいね。まぁ、そんな団でも昔は違ったみたいなんだけど・・・。人は変わるとも言うけれど、変わらなくたっていいことだってあると、今再び実感したわ。話に付き合わせてごめんなさいね。また次回も仕事以外で必要なとき訪ねてきてちょうだい。傷薬に毒消しに・・・身体を治す薬なら何でも売っているから」
私は薬屋の女に手を振って別れた。
途中でヒカリと会った。
「ハルカも仕事帰り?じゃあ一緒に帰ろうか」
ヒカリは両手で大きな袋を抱えていた。
「なにそれ?」
「ああ!これ?日頃の感謝だって食材貰ったんだ」
「そうなんだ?今日の夕飯楽しみだね」
ヒカリは「うん」と頷いた。
二人は歩行者道をしばらく歩いていたら、兵が二人、道の先で話していた。土道路には罪人を運ぶ馬車が止まっていた。
「あとは任せた」
「はい、責任をもって管理します」
片方は私服姿だが、女兵だということは二人は仕事上知っていた。
ハルカは女兵の名を呼んだ。
「レイカさん」
レイカは二人の存在に気づくと、兵に対しての堅苦しさは消え、愛想良く話しかけてきた。
「ハルカさん、ヒカリさん」
もう一人の方の兵は、三人の親しげな様子を見ると気を遣った。
「では、私はこれで・・・」
レイカは兵に罪人の身柄を任せた。
「・・・はい、よろしくお願いしますね」
兵は、「ええ」と返事を返すと、馬車に乗り、馬を止めて待っていた兵は再び馬を走らせた。
パカ・・・パカ・・・。
「仕事帰りですか?お疲れ様です、・・・何か困り事とかないですか?出来ることなら手伝いますが・・・」
ヒカリはもうすぐ祭りだったことを思い出すと、「じゃあ次の祭りの治安維持をお願いできますか?」
と聞いた。
レイカは「ええ勿論です」とニコッと笑顔で応えた。
空が少し暗くなり始めた頃。
「もうすぐ夕飯の時間ですね、兄を待たせているのでそろそろ行きますね」
レイカは二人の横を通り過ぎると、そのまま歩いていった。
二人は再び帰り道を歩いた。
小屋みたいな拠点に着くと、二人は小屋の中に入った。
二人は玄関で靴を脱ぐと、廊下を通り、居間のドアを開けた。
居間でアキは椅子に座り本を読んでいた。二人は居間に入ると、ドアを閉めながら「ただいま」とアキに言った。アキは二人が帰ってきたことに気づくと、「おかえり」と言った。
アキはヒカリから袋を受け取ると、台所に立って夕飯の準備を始めた。
二人はそれぞれの部屋へ行き、日記を書いた。今日はなんの仕事をして、達成できたか、報酬はなにか。
ハルカは日記を書き終えると居間へ行った。居間ではアキが夕飯の準備をしていた。ハルカは、準備を手伝った。
料理が出来上がると、アキは食器に料理をよそいながら「ヒカリを呼んできてくれ」とハルカに頼んだ。
ハルカは言われた通りヒカリを呼びに行った。
コンコンコン。
ハルカは部屋に着くと、ドアを叩き、ヒカリを呼んだ。
「ご飯出来たよ」
ヒカリの声が返ってきた。
「あ・・・、ちょっと待って!」
しばらくして、ドアが開いた。ヒカリは姿を現すと「いい匂い、今日の夕飯も美味しいだろうね」と居間の方を見た。
ハルカはヒカリがドアを閉めたあとに、居間へ身体を向けると「美味しいよ。・・・だって、気持ちと感謝の食材で作ったものだから」と最後にヒカリの方へ笑顔で振り向いた。