プロローグ[始まり]
開閉の国。
青く広がる空の下、変わり映えのない日々の裏で残酷なことが行われようとしていた。
大きな石造りの城があった。
城の周囲には見上げるほどの大きな城壁があり、扉は無かった。代わりに侵入者が入って来れないよう城門入口左右端辺りに兵が配置されていた。
城門前辺りが騒がしい。人々が集まり、まだかと待ち構えていたからだ。
コツ・・・コツ・・・、と、城門内から僅かだが靴音が聞こえてきた。鎧の擦れる音が主に聞こえるが、だんだんと大きくなり、靴音がはっきりとわかった。人々は音につられ、城門内を確認した。
視線の先に鎧姿の兵達と一人の女が姿を現した。女はウェーブがかった黒髪を揺らし、これから自分が通る道の先をじっと見ていた。女が逃げないように兵は拘束している縄を握ったまま静かに道を歩いていた。女が暴走したときのため、兵達はそれぞれの配置で女を囲みながら歩き、警戒が厳重だった。
「きたぞ!」という誰かの叫びを合図に人々は一斉に女へ罵声を浴びせ始めた。
「騙しやがって!」
「あんたなんか、いなくなればいいのよ!」
人々の怒りの声を聞いても、女は感情が表情に現れているのか、いないのか、冷たい顔のまま崩さなかった。
兵と女は城壁に背を向け、王様のスピーチが終わるのを待っていた。兵は待つのを退屈そうにしていた。
時間が経ち、待つのに飽きたのか、兵は周りに聞こえないほどの小声で女を煽り始めた。
「フッ、あの男も馬鹿だよな・・・、自分の存在を公表し、殺された、お前を捨てて逃げていれば助かってたのかもしれないのになぁ〜あ、お前のせいであの男は殺されたのかもな」
女は罪悪感が表情に現れた。
兵は女の表情を見て、つまらないといった反応をし、再び女を煽りだした。
「フン!あの夫婦は殺される予定だ」
それを聞いた女は怒りを現した。
「なんですって・・・‼」
女の様子を注意深く見ていた人々は再び怒りを現した。
「やっと本性を現したわね!」
「はっ!それがお前の素顔ってことか?」
兵は笑いながら女の背中を押し、人々の前へ突き出した。
それを見た王様は、自分のスピーチを邪魔されたことに憤りを覚え、女を処刑台の上へ連れていくよう別の兵に命令した。
煽ってきた兵は、連れていかれた女にひらひらと手を振った。
女は処刑台の上まで連れていかれ、
そして、――斬首刑に処された。
その姿に、王様、兵、人々は歓喜した。
だがそのあと、不可解にも王様と兵達は謎の死を遂げることになる。
命の国。
崩壊した街の中、子供が二人誰かを探し、走っていた。男の子が女の子を安心させるように、同時に自分自身に言い聞かすようにして言った。
「・・・大丈夫、生きてる。大丈夫」
手を固く握ったまま離れないように走っていた。
このあと二人は永遠の国で養子として引き取られることになる。
――さぁ、物語の開幕だ。