第65話 『異世界げーせん七人ミサキ』〜奇妙な遊戯 続き〜
廊下に浮かぶ次のゲーム盤は、まるで巨大な将棋盤のようだった。駒には異形の妖怪や江戸の町人の姿が描かれ、手を触れると盤上に光の線が走る。
「……これ、動かすのか?」
朧丸が目を丸くする。
「ええ、でも油断すると一瞬で盤面が変化する」
高道が呟く。「楽観バイアスの本質はここにある。我々は“簡単に勝てるだろう”と考えすぎている。だから思わぬ罠に引っかかる」
座敷童が興奮気味に飛び跳ねる。「みんな、がんばれー!」
タヌさんも笑顔で応援する。「こういうのは、笑って楽しむのが一番です!」
高道は少し微笑んで、「あのね、君たちも参加するんだよ? 応援だけじゃだめだからね」
座敷童はぴょんと跳ねて、手をパタパタさせながら「えーっ、でも応援してるほうが楽しいもん!」
盤の中央に駒を置くと、七人ミサキの一人がにやりと笑った。「さあ、勝てるかな?」
すると突然、駒が勝手に動き出す。
「うわっ! 俺の駒が勝手に動いた!」
朧丸の叫びに、猫又は落ち着いた声で指摘する。「盤の意図通りに動くと、こちらが罠にかかる。焦らず、動きを観察しないと」
高道は冷静に分析する。
「ここで重要なのは、“勝てるだろう”という楽観ではなく、“どうすれば勝てるか”の現実的評価だ。焦らず順序を追えば、必ず打開策はある」
盤の駒が次々と動く中、朧丸は力任せに飛びつく。
「これは…楽しいぞ!」
だが、高道はじっと動きを見極めてから駒を操作する。すると一手ごとに盤面が安定し、少しずつ有利になっていった。
「ふふ、やはり理論で攻めると違うね」
マキビは微笑みながら、ふわりと紙風船のような護符を盤の横に置く。
「これ、ちょっとした補助。妖怪系の仕掛けには意外と効く」
一方、七人ミサキたちは笑顔のまま巧妙に妨害してくる。
「楽観しすぎると罠にかかります、焦らず行こう。勝てないわけじゃない」
高道は仲間たちに声をかける。
最初は力まかせだった朧丸も、徐々に高道の作戦に合わせて動き、猫又は盤面のパターンを分析する。タヌさんは笑いながらも要所を押さえる。座敷童も時折アイデアを出し、盤面を味方につけるようになった。
やがて、最後の駒が正しい位置に置かれる。光が瞬き、廊下の壁が溶けるように消えていく。外の町角が目の前に現れた。
「やった……勝ったのか?」
朧丸が息を切らして言う。
「うん、楽観バイアスに気をつけて冷静に対処した結果だ」
高道がにっこり笑った。
次の瞬間、光がぱっと消え、背後の廊下がゆらりと揺れた。気がつくと、ことのは堂の軒先に立っていた。石畳の上には、いつもの町角と、春の柔らかい夕暮れの光。げーむせんたーの建物が、すっかり消えていた。
七人ミサキは少しくやしそうな顔で微笑む。「ふふ、やるじゃない。でも次もあるかもね?」
マキビが肩をすくめる。「ふー、次はゆっくりこたつにでも入って遊びたいな。」
座敷童がぴょんと跳ねて、「やっぱりここに戻るとホッとするね!」
猫又も尾をふりふりして、「でも楽しかったです、また挑戦してみたいです!」
タヌさんは満足そうに笑い、「いやー、冒険の後の帰還ほど気持ちいいものはありませんねえ」と手を拭った。
高道は深呼吸し、町角に伸びる影を眺めながら、小さく呟く。「楽観バイアスも、仲間となら克服できるんだな……」
その言葉に、夕暮れの風がほんの少し微笑むように吹き抜けた。
この回はいつか絶対リライトして話を膨らませたいです。




