表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/142

第64話 『異世界げーせん七人ミサキ』〜奇妙な遊戯〜

春の夕暮れ、町外れの小路に妙な違和感が立ちこめていた。

石畳の向こうに、突如として木造の建物が現れたのだ。看板には朱色で「げーむせんたー」と書かれている。町人も猫もいない、まるで時空の隙間にぽつんと浮かぶ小屋のようだった。


「……なんですかね、あれ。」

高道が首をかしげる。

「おや、面白そうなものですねえ」

マキビは目を輝かせ、手をすり合わせる。

「入ると出られなくなるとかじゃないだろうな……」

朧丸が眉間に皺を寄せて警戒する。

「でも……何か匂うな、この場所……ワクワクする匂いが、わたし……入ってみたいです!」

猫又が耳をピンと立て、尾をくねらせながら言う。

「ちょっと待まってよ、油断すると何かあるかも」

座敷童も小さく肩をすくめて、でも目を輝かせている。


マキビがにっこり笑う。「まあ、俺たち七人で行ってみましょう。こういうの、悪くないよね。」

タヌさんも頷いた。「面白がるのは得意だからねえ。」

「わたしもついていくよ、楽しそう!」

猫又が右前足で火をお洗いながら応える。

「ワタシも猫又さんと一緒に冒険したい!」

座敷童が跳ねながら手を上げる。

猫又も笑みを返して、軽く尾を振る。


ことのは堂の面々七人は、意を決してその「げーむせんたー」に足を踏み入れた。扉を押すと、背後の町角はすっかり消えており、代わりに薄暗い廊下が奥へと続いていた。窓も外の景色もなく、ひんやりとした空気だけが漂う。

「……あれ、出られなくなってますね」

高道が立ち止まると、目の前に七人の少女たちが現れた。七人ミサキと名乗る彼女たちは、にこやかに手を振る。だがその笑顔はどこか妖しい。

「やあ、ようこそ。ここではゲームで勝たないと、出られないんだよ」

一人のミサキが指を鳴らすと、廊下の壁が光り、さまざまなゲーム盤が浮かび上がった。すごろく、絵合わせ、羽付き、そして見たこともない不思議な盤や色とりどりの札。

「……ゲームで勝てば出られる、と。」

高道は腕を組む。「心理学的に言えば、君たち七人の計画は我々の楽観バイアスを刺激する仕組みですね。」

「らっかん……ばいあす?」

座敷童が首を傾げる。

「簡単に言うと、人は『自分ならうまくやれる』と楽観しすぎて、リスクや失敗の可能性を低く見積もる傾向があるんです。ここに入る我々も、無意識に『すぐ勝てるだろう』と思い込んでいる。それが狙いでしょうね」

ミサキたちは笑いながらゲーム盤に手を伸ばす。「さあ、最初は簡単なやつだよ」

しかし、朧丸が手を出すや否や、盤が光り、手足が勝手に動き出す。まるでゲームの中に体ごと吸い込まれるような感覚。

「うわあ、動かない!?」

猫又が驚きの声を上げる。だがマキビは落ち着いている。「ふふ、ここは君たちの遊び場、でも我々だって負けないさ」

最初のゲームは見た目より難しい。謎解きパズルなのだが、盤面は毎ターン変化する。

「なるほど、これも楽観バイアスの罠ですね……」

高道が呟く。普段なら簡単に解ける計算も、盤面が少しずつ変わるだけで「すぐ終わるだろう」という油断が積み重なり、何度もやり直す羽目になる。

一方、朧丸は理不尽な状況を楽しんでいる。「これは…意外と燃えるな。」

タヌさんも笑いをこらえきれず、「やっぱり冒険はこうでなくちゃ!」

ゲームを進めるうちに、七人ミサキたちの狡猾さも見えてきた。どうやら我々の心理的バイアスを逆手に取る設計らしい。

「楽観しすぎると、簡単なはずの勝負も苦戦する、か……」

高道は冷静に分析しながらも、内心は少しわくわくしていた。

廊下の奥から、座敷童がひょっこり顔を出す。「ねえねえ、高道、次のゲームは何かな?」

「さて……次はカードゲームらしい。油断せず行こう」

だが、笑顔の七人ミサキはまだ余裕そうだ。彼女たちはこの空間の主である、高道たちは空間から出るためには必ず勝たねばならない。

高道は深呼吸を一つして、仲間たちを見渡す。「みんな、いくぞ……」


その瞬間、廊下の壁が光を放ち、次のゲーム盤が姿を現した。

「次は……本当に手強そうだな」

朧丸の目が輝く。猫又が耳をピンと立てる。タヌさんは尾を振り、マキビは軽く肩を叩く。

ことのは堂の七人は、異世界の奇妙なゲーセンで、運命のゲームに挑もうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ