84.クインシド
『妹を連れて来てくれたことには感謝する。それはそれとして、我はハゲではないのだぞ』
「ごめんて」
「うん、毛のない種類の蜘蛛ってことはわかってる。ノリで言ってごめん」
「ラテちゃんを悪く言われてキレちゃいました。ごめんなさい」
「真っ先にする主張そこでいいの?お兄さん…」
『男はハゲと言われたらブチギレろ、と教わったのだぞ』
「誰だ蜘蛛にそんなこと教えた馬鹿野郎は」
『人間族なのだぞ』
「同族だったわ!」
「アキ兄、落ち着いて」
オーレンの森、浅層と中層の間くらいの場所。
ここが、シルスパイダーの新たな縄張りなのだそうだ。前とあまり変わらない場所なのは、この辺りは住みやすい環境なのかもしれない。
呼びかけに応じて出てきた一匹のシルスパイダーは、長にしてラテの兄だそうだ。
彼が新たな長になっているのは、前の長の子供というのも理由なのかもしれない。
単にこの個体が残ったシルスパイダーの中で一番強い可能性もあるけど。
『それにしても、あまりタランチュラらしくないのだぞ…』
『あるじさまの影響みたいですのー』
『テイムか…まあ、この三人でなくて良かったと思うべきか…』
相当ハゲ呼ばわりしたことを恨んでいるらしい。
僕とアキ兄さんとハルを見て言っていた。
でも先に喧嘩売ってきたのはそっちだろ。
『あるじさまは、服を作れるですの。わたくし、お手伝いしてるですの』
『なんと…服とは…手伝いとは母様のようにか』
『ずっとお母様みたいになりたいと思ってましたの』
『その口調も、母様の真似か?最初は驚いたのだぞ』
『目標だったのに、タランチュラになって、遠ざかった気がしたですの。だから、覚えてる限りで、お母様に近づきたかったですの…』
『…まあ、何でもいいが、我は妹という感じがしなくて戸惑ったのだぞ』
『じゃあお兄ちゃんの前では戻すのー』
『…む?そ、そうか…』
「えー、あたし達の前ではー?どっちの口調も可愛いのにー」
「妹、属性…だと…!?」
「あっややこしくなるから、リオ兄黙ってて」
「あい」
ひどい。
でもアキ兄さんやハルも呆れた目で見てたから大人しく引っ込みます。
『えっと、お母様みたいになりたいから、この口調のままで頑張るですの』
「そっか。可愛いからいいや!」
『そうか、妹よ。…いや、ラテだったか』
『お兄ちゃん?』
『謝らせて欲しいのだぞ。すまなかった。妹なのに、それに気づかず暴言を吐いてしまったのだぞ…』
『…信じてもらえないだろうなって、そんな気はしてたの。だから、大丈夫なの』
「大丈夫じゃないよラテ!予想はしてても傷ついたのは間違いないでしょ!だから謝罪はちゃんと受け取ろう?」
『…あるじさま…』
『その通りなのだぞ。我が悪かったのだ。許して欲しいとは言わない、でも謝らせて欲しいのだぞ』
『ゆ、許すですの!もういいの!妹って呼んでくれるだけで、嬉しいの』
ラテが許したなら、まあいいか。
ちゃんと謝ったし、お兄さんもラテの口調が記憶と違ったから妹じゃないって思ったんだろうし。
しかも種族も変わってたなら、なおさら結びつかないだろう。
でも汚らわしいってのはマジで腹立ったけどな。本人(本蜘蛛?)に反省が見えるからまあ言及しないけど。
多分彼が一番後悔してるだろうから。
『それで、旅に連れて行きたいという話だったか』
「あ、そうです!ラテを連れて行きたくて」
『好きにするがいいのだぞ。元より、群れから離れて過ごしていた妹だ。今更戻って来いとは言えんのだぞ』
「あ、確かに…?」
『お兄ちゃん…』
『だが、この群れの長は我だ。旅が終わった後や旅の途中に顔を見せるなら歓迎するのだぞ。タランチュラであれど、妹が兄に会いに来るのは当然のことなのだぞ』
『…お、お兄ちゃん…!』
『いつでも会いに来るのだぞ、妹よ。…いや、ラテ。我はここにいるからな。他の仲間に文句は言わせないのだぞ』
タランチュラを招けば、諍いになるかもしれないのに。
それでも、妹を選んだのか。
長としては失格、兄としては合格だろうか。
…彼にとっては、死んでいたと思っていた家族が生きていたことが嬉しくてたまらないのかもしれない。
もしくは、それくらいの我儘が許されるくらいには慕われているか力が強いか。
前の長の息子というのも大きいかもしれないが。
『…でも、ラテ、タランチュラなの。もしあるじさまと離れたら、タランチュラの本能に負けるかもしれないの…』
『ん?どういうことなのだぞ?』
このあたりで、立ち話もどうかと言われ、縄張りの中に案内された。いいのか?
巣を剥がして通り道を作り、大きな木の根元に集まってみんなで座ることに。
テーブル出したらお兄さん飛び上がって驚いてたよ。ごめんて。
どうやら、周りに群れの蜘蛛が様子見に来ているらしい。警戒してるのか一定の範囲には近づいてこないけど。
知ったことかとばかりに、ラテのお兄さんに…面倒だな、ブラザーでいいか?ブラザーに話をした。
僕たちが召喚者であること、ラムとスーとドラゴンがオリジンであること。サンがオリジンの眷属であること。
蜘蛛に表情なんてないけど、もしあったら宇宙猫かシワシワネズミみたいな顔してたかもしれない。
『何という集団に混ざっているのだぞ、ラテ…』
『ラテが一番に仲間になったの。後から仲間になる後輩がみんなラテより凄いだけなの』
『こ、後輩…!お、オリジン様が…』
『ラテ先輩にはお世話になってるです。ご主人様たちの服とかたくさん作ってるとっても尊敬できる先輩です』
『ふ、服…そういえば言ってたのだぞ…まさか、召喚者の着ている服すべて…?』
「あ、そうですよー。ラテの糸を使ってあたしが全部作りましたー。めちゃくちゃ助かってます!」
『あるじさま、被服スキルっていうのを持ってるの。服作りが出来るすごいスキルなの!』
『ほう!』
あ、興味示した。
やっぱりシルスパイダーの本能みたいなもので、服作りする相手には興味出るのかな?
服に限らず、糸を使ってものを作る相手に、かもしれないけど。
ブラザーはオリジンに会ったことはなかったものの、母から話を聞いて概要は知っていたそうだ。
え、お母さんすごくね?思ったよりとんでもない蜘蛛だったのかもしれない。
そしてオリジンを知っているので、召喚者についても多少知っていた。もっとも、御伽噺程度の認識だったようだが。
ちなみにラテはまったく知らなかった。まあ、生後2ヶ月までしか一緒にいなかったし、そんな堅苦しい話をする年齢じゃなかったんだろう。
人間換算でいくつなのかは不明だけど、2ヶ月の赤子にオリジンの話をしたって寝物語にもならんだろうし。
『そうか…それで、主たる召喚者が元の世界に戻る可能性が…そうなると確かに主従は解消されて、本能がタランチュラ寄りになる懸念もわかるのだぞ』
『だから、ここに来たら迷惑になるの。お兄ちゃんの群れを傷つけちゃうかもしれないの。それは嫌なの』
『こればかりは、楽観出来る問題でもないし、無理は言えないのだぞ…』
『好戦的な毒蜘蛛であれば、余が世話をしてもいいである。少々の状態異常や攻撃、ものともせぬである』
『お、オリジンドラゴン様…』
『は?浄化魔法も使えないお前がラテ先輩の世話なんて出来るわけないです。ラテ先輩とは、ラムが一緒にいるです』
『浄化ならわたしなのだ!いくら毒を喰らっても何度だって回復してやるのだ!』
『く…回復手段を持たぬ我が出来ることの何と少ないことか…!耐性はあれど、回復が…!』
おお、従魔組がこぞってアピールを始めた。
どうやら、皆の中にラテを一匹にするという選択肢はないらしい。
ラムとスーがいればラテの毒はほぼ心配いらないだろうし、好戦的になって戦いを挑んでもオリジンに敵うかと言われれば、ラテには無理だろう。
というか、さすがに1500歳が生後1年未満に負けることはない。
何より、ラムはもちろん皆ラテのことが好きなんだろう。
元の世界に戻ったら。
その先がどうなるか、ある意味これは『未来の形のひとつ』なのかもしれない。
少なくとも、僕たちがいなくなった後、その場で解散なんてことにはならないだろう。
もちろん誰かしらがこの世界に残る道もあるだろうけど。
『妹よ、少し待っているのだぞ』
『…お兄ちゃん?』
何かを思い立ったのか、ブラザーが森の奥に走って行った。
周りにいるであろう蜘蛛が部外者を放置したことに戸惑ってるっぽいけど大丈夫か。
まあ、蜘蛛たちもオリジン三体いる場所に変なことしないだろうけど。
ブラザーは5分もしないうちに戻ってきた。
そしてテーブルに、というより、ラテの前に何かを転がした。
「何これ?」
『あっ、大人の味ですの!』
「オトナノアジ!?」
『そう言って子蜘蛛から遠ざけていたのだぞ。本来は生まれて一年経たないと口にしてはいけないものなのだぞ』
「えーと、じゃあこれ食べ物?実…?」
『これはクインシドというのだぞ。苦い。だから間違っても子蜘蛛が食べないように、大人にならぬと食べてはいけないと言いつけてるのだぞ』
「人間で言う、酒みたいなもんかな?」
「あー、そう言われると何となくわかるかも?」
でも何で突然それを持ってきたんだ?
この様子から、ラテはこれを知ってはいても食べたことはないんだろう。
ちゃんと言いつけを守っていたのか。いい子だな。知ってた。
『母様が言うには、これは別名『進化の種』と呼ばれているそうなのだぞ。これを食べると特殊進化先が解放されるとか…』
『特殊…進化先?』
『おや、珍しいです。クインということは、女王系ですね』
「知ってるの?ラム」
『条件を満たした個体が食べると進化先が増えるものです。いいものも悪いものもあるです。これはいいものです』
『そ、そうなのか、ではやはり、これは本物なのか…この森に、少ないながらも自生しているものなのだぞ。我も食べたが…特に何もなく』
『クインなので、オスには無効です。ラテ先輩も…どうですかね。まだ少し若すぎる気もするです』
ラムが言うところによると、だ。
このクインシド、女王ということから恐らくクイーンシードだろう。直訳で女王の種。
曰く、女王の器を持つ個体が食べれば、特殊進化先が解放されるのだという。
進化先はある程度決まっている。シルスパイダーは通常、ベルスパイダーかフォレスパイダーに進化するらしい。
綺麗な糸を好めばベルスパイダーに、特に糸に思い入れがなければフォレスパイダーに。こちらは森の生活に特化するのだとか。
が、このクインシドを食べて、条件を満たしていたら、シルスパイダーからクインシルスパイダーへの進化が可能になるらしい。
ラテのお母さんは、このクインシルスパイダーだったそうだ。
『お母さん、シルスパイダーじゃなかったの!?』
『普段は形状変化でシルスパイダーの姿になっていたのだぞ。と言っても姿形はあまり変わらぬ。やや大型で、スキル『産卵』『眷属操作』を持っているのだぞ』
「産卵…」
『我もラテもそのスキル『産卵』で生まれたのだぞ。これは母様が自分の魔力を分け与えることが出来る。我が強いのも、ラテの魔力が高いのも、これのおかげなのだぞ』
スキルの『産卵』と、スキルによらない産卵は似ているが、自分の魔力が大いに影響するという点で明確に違う。
より強い個体が生まれる確率が高いのだそうだ。その分、MPも消費するし一度に産む卵の数が劇的に減る。
質を取るか量を取るか。ラテとブラザーはスキルの方で生まれ、通常個体より強い個体として誕生したらしい。
僕たちは初耳だったけど、ラテはシルスパイダーという種族の中では飛び抜けた魔力を持って生まれたそうだ。
クインシルスパイダーは、シルスパイダーに稀に現れる、糸をあげたがる個体の強化版だそうだ。
進化しているのでシルスパイダーより強いが、これは戦闘力より綺麗な糸を生成することに特化した種族だという。
ラテがたまに母の糸には敵わない、なんて零していたけど、種族特性だったのか。
『もしかしたら、これを食べれば、クインシルスパイダーかクインベルスパイダーに進化できるかも、と思ったのだぞ』
『………タランチュラから、スパイダーに…?でも、それは無理って…』
『普通は無理なのだぞ。だが、これは特殊進化だ。もしかしたら、と思ったのだぞ…我も確証があるわけではないのだぞ』
『食べてみる分にはいいんじゃないです?ラテ先輩、魔力多いですし、クインシドを食べても問題ないはずです』
大人にならないと食べてはいけない。
それには一応理由があり、子供だと未熟すぎてクインシドに含まれる濃いマナにあてられ、体調を崩しかねないのだそうだ。
が、ラテの場合、生まれついての魔力の強さもあり、クインシドに籠っている特殊な魔力も問題ないと。これはラムが言ったのでほぼ確実だろう。
そして、食べてすぐ進化するわけでもなく、進化先が解放されると言っていた通り、次の進化の際にクインの進化が出現するようになるそうだ。
ラテの今のレベルは47だ。50で進化する…のだろうか?どの道、かなりの経験値が必要なのですぐに判明するものでもない。
だけど、もし、これでスパイダーの進化先が出てくるとしたら。
『タランチュラの、好戦的な本能が、なくなる…?』
それはラテが望んでいたことなのか、声に歓喜が滲んでいた。
オリジンの三匹が言うには、有毒から無毒の種族への進化は無理に等しいが、例外はある。
それは、元が無毒の種族だったこと。ラテはこれに該当している。
元々はシルスパイダー。進化を経てヴェノムタランチュラになった。
なので、進化というより退化に近いかもしれないが、ラテがスパイダー系に進化することは可能らしい。
これが元々タランチュラ系だったら無理だそうだが。
加えて、クインシドを食べることによって引き起こされるのは特殊進化。ラテは条件を満たしている可能性が高い。
なので、クインシルスパイダーもしくはクインベルスパイダーになることが出来るんじゃないかと。
もっとも、これはあくまで予想の範囲。
確実に出来るとは言い切れないらしい。何せ前例がないもので。
『…ひとまず、このクインシドはお前にやるのだぞ。食べるも捨てるも好きにするといい』
『お兄ちゃん…』
『強制はしないのだぞ。何せこれはとんでもなく苦い。我は一度で懲りた。二度と食べたくないと思う程度には苦かった』
『怖くなってきたのー!』
ちなみに、そのまま…生で食べないと効果はないそうだ。
調理できるならワンチャンあったのに…!とアキ兄さんが歯軋りしていた。
これに関しては手出ししちゃいけないやつだったらしい。
「ど、どうする?ラテ…」
「すぐ効果があるわけじゃなさそうですし、保険として食べてしまってもいいのでは…でも、苦いんですよね?」
『苦いのだぞ。我ら蜘蛛、ゲテモノさえも食す種族であると自負しているが、その我らですら苦いと絶叫するくらいのものなのだぞ』
「聞けば聞く程こえーんだわ」
「アキ兄さんには、怖いだろうなぁ…料理スキル持ちにとって、不味い苦い食材って鬼門だろ」
クインシド:特殊なマナの中、稀に発生する種。素材。特定の魔物が食べるとクイン系の進化先が解放される。濃密度のマナを含む劇薬。
劇薬て。
ああ、だから子蜘蛛には食べるなって注意するんだな。
しかし素材になるのかこれ。
「タークさんに渡したら大喜びしそうですね」
「僕もそれ思った」
『クインシドを、喜ぶ…?何者なのだぞ…』
「錬金調合っていうスキルを持った召喚者なんです」
『ああ、なるほど。素材に使うということか。良ければ持って行くといいのだぞ。どうせあっても誰も食べたがらないのだぞ』
「劇薬みたいだしなあ…」
ラテは食うか食うまいか唸りながらクインシドを睨みつけていた。
すぐに結論は出ないと思ったのか、ブラザーがまたその場を離れ、また5分ほどで戻ってきた。
クインシドを三つほど持って。
「三つもいいのか?」
『まだ必要か?あと10ほどあるから欲しければ持ってくるのだぞ』
「あ、意外とあった。いや、これだけでいいです。ありがとう、ラテのお兄さん」
「…これ、もしかしたら、栽培できるのでは…?何となくそんな感じがします」
「あ、ハルも?俺もそんな感じするんだよな」
「マジか。じゃあタークくん喜ぶな。栽培ハマってるっぽいし」
「合流したらあげよっか。アキ兄とハルとタークくんでひとつずつならいいっしょ」
「俺いらねえや。食べれそうにないから、タークくんにあげちゃって。素材と栽培、両方使いたいだろうし」
「あ、なるほど。…私は育ててみたいです。何となくなんですけど」
「スキル保持者が選んだならそれでいいんじゃないか?多分アキ兄さんは料理スキルも関係して、食べ物の栽培は得意だろうけどそれ以外は恩恵少ないかもしれないし」
「なるほどなー。じゃ、そうしよっか。一旦、三つともナップザックに入れとくね」
「はい」
いい手土産が出来てしまった。
ラテも、今決められないなら後日でもいいだろう。
ラテの前に置かれたクインシドも一緒にナップザックに入れてしまえば。
『決めましたの!食べるですの!』
「おっ」
「ラテ、いいの?」
『はい!でもアキ様にお願いがあるですの!』
「何だ何だどうした?俺で力になれること?」
『はいですの!…りんご欲しいですの!』
「へ?」
『このクインシドを食べた後に、りんご食べたいですの!』
「…口直しか」
「あ、なるほど?いいよ。いくつ出す?」
『とりあえずひとつでいいですの。もしかしたら、追加をお願いするかもしれませんの…』
「いいよいいよ、いくらでも」
早速アキ兄さんがりんごを召喚して、ラテの近くに置いた。
それを見たブラザーが興味を示していた。見たことがない果実だったからだろう。
ブラザーの分も召喚して、近くに置いていた。
しばらく不思議そうに見ていたブラザーだが、好奇心が勝ったらしい。恐る恐る食べていた。
一口齧れば後はなし崩しだ。気に入ったらしく、すごい勢いで芯ごと完食した。
『何と…召喚者の世界には、このような美味があるのだぞ…?』
「そうだけど…りんご、人気だなあ」
『うむ、これがあるならクインシドも問題な………ラテーッ!?』
「え!?ら、ラテー!?」
「し、しっかりして、ラテー!ほら、アキ兄が出したりんごあるよー!」
感動してるブラザーに意識向いてる隙にラテがクインシドを食べていたらしい。
き、気づかなかった…
そして足全部投げ出して突っ伏していた。腹がテーブルにくっついてるんじゃなかろうか。
し、死んでないよな…?大丈夫だよな…?
人間で言うならうつ伏せで大の字になってる状態なんだけど。
「ら、ラテ、ラテー!」
『げ………』
「ラテ!?」
『げろまず、なのー…』
「誰ッ!?ラテにゲロマズなんてクソ単語教えたの!」
「一斉に俺を見るな!いや俺の可能性高いと思うけど!」
『ターク様、ですのー…』
「あいつかー!!!」
そういえばアイさんがダークマター生成器って言ってたもんな。
多分それ関係の話をしてる時にぽろっと零れた単語だろう。
ある意味被害者か。本気で怒れないやつかもしれない。
ラテは何とか動けるようになったようで、りんごをシャクシャクしていた。
『おいしい、ですの…』
「もっと食う?まだ後味残ってる感じじゃないか?」
『欲しいですの…』
「よっしゃ食べなさい。食べ盛りは遠慮しない」
「蜘蛛の食べ盛りっていつだよ…」
「リオ兄、つっこまないの」
『だ、大丈夫か、妹よ…!』
『だいじょぶ、なのー』
ブラザーめっちゃワタワタしてんじゃん。
まあ、食べたことあるって言ってたし、味を知ってるからこその反応だろう。
これらの反応を見て食べたいとは思わな…アキ兄さん…?齧ってみようかな、と言い出しそうなその顔は何…?
察したらしいハルに「めっ」て叱られてた。
食べたものの、すぐ効果を発揮するものじゃない。
ラテ自身も特に変わりはないということだった。
『次の進化が楽しみです。ラテ先輩今47なので、50ですかね?』
『100かもしれないのだ。まあどの道すぐ結果は出ないのだ』
『今すぐ進化しちゃっても困るですのー。スパイダーになりたい気持ちはあるですの。でも、あるじさま達にハゲって思われたくないですの…』
「思わないよ!?」
「違うんだごめんラテ!俺たち、スパイダーはハゲって思ってるわけじゃないから!」
「ブラザーの物言いにブチギレてそんな言い方しただけなんだ!ラテはどんな姿でも可愛いから!」
「そうですよ!リオ兄さんの言う通りラテちゃんは可愛い…待って、ブラザーって何ですか!?お兄さんのことですかもしかして!?」
「リオ兄、勝手にそんな風に呼んでたの!?」
「ぎにゃー!心の中だけで留めておくつもりがポロリしたー!」
「ひどい、これはひどいです」
『ぶ、ぶらざあ、なのだぞ…?』
「えっと、兄弟…兄や弟を指す単語だよ。ラテのお兄さんだからそんな風に呼んじゃったのかな、ウチのリオ兄がごめんなさい」
『ま、まあ、それなら間違ってないので構わないのだぞ』
『主…』
ごめんて。
表情筋あったらブラザー絶対しょっぱい顔してるだろうな。
声に諦めが滲んでるもん。
『わたしの時よりマトモな名前が出るのは何故なのだ…?』
「そこ?」
「でも意味ただの『兄』だよ?兄、って呼びかけてるようなもんだよ?あたしら風に言うとアキブラザー、リオブラザー」
「だっさ」
「言い出しっぺリオ兄やろがい!」
『肉よりマシなのだ…』
「ごめんて」
ラテのステータス
名前:ラテ
種族:ヴェノムタランチュラ
年齢:5ヶ月
性別:メス
LV:47(あと375648412)
状態:普通
HP:8354280/8354280
MP:4359832/4359832
スキル:毒牙LV35 猛毒LV48 麻痺毒LV29 石化毒LV25 毒耐性・大LV3 状態異常耐性LV13 蜘蛛糸LV50 糸操作LV47 土魔法LV33 毒魔法LV34 付与魔法LV23 形状変化LV20 魔力感知LV1 熱感知LV28 隠形LV29 強化LV35 念話LV22




