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07.脱出の後


一応街道に沿って進んだ。人通りのおかげか道が均されてるから、進みやすいと思ってのことだ。

けど、多少の悪路でも問題なく進むスーパーカーだった。すごい…揺れない…私、車酔いするのに…

車酔いするのに何でキャンピングカーなんて選んだと言われそうだけど、必要だと思ったからである。

あと運転手は酔いにくいとも言うのでそれを期待していた。

車を走らせながら頭の中で地図を浮かべてたら、メーター付近にパネルが立ち上がった。



『…カーナビついてた…』



便利さの塊か。

元より、最初に行こうと思っていた町がある。それを思い浮かべると、パネルに黒い点が表れた。

目的地はここ!と言わんばかりである。ありがとう。これなら迷わず行けそうである。


今は夜なので移動してる商人も馬車も冒険者もいない。轢く心配がなくていいね。

ライトもあるしカーナビもあるので進むのに問題はない。でも、昼間より負担になるのは間違いない。

三人に宣言した通り、王都からある程度離れた場所で停車した。

森の近く、岩場と川がある場所だ。降りたら普通にキャンプ出来そうな場所である。降りないけど。

まあ、遮蔽物ある場所の方が何となく安心できるかなーと思ってのことである。



『…止まった…?』

『リオくん?』

『ここに停車して今日は休もう。もういい時間だし』

『…うん、もう三時過ぎてるしな…』

『マジか。よく時間わかったな?』

『そこに時計が』

『マジだわ』



気づかなかった。席に座ってたら見やすい場所にあるのか。

一応、一通りは見たつもりだったけど、細かいとこまで見てないからな。

三人は、走ってる間は窓から外を見てたらしい。そういう仕様なのか、暗かったけど一応景色は見えたようだ。マジか。

まあ、代わり映えしない風景だったから楽しんだわけじゃなさそうだけど。


しかし、規則正しい生活をしてた(強要されてた)からか、眠気やばいな。いつもなら寝てる。ついでに空腹だけど無視する。

何なら三人も眠そうである。けど、寝るわけにはいかないという思いだけで起きてるんだろう。

巡回の騎士の見回りが大体日付変わって少ししてからだから、12時~12時半頃。そこから合流するのに10分前後。合流後に扉まで移動に15分前後。

城を出て船に乗って王都脱出するまで何だかんだ30分以上かけてる。そこから車に乗って移動で、今。うん、緊張続きで精神的にも疲れるなこれ。

話をしようと思ったけど、これ、寝た方が良さそうだな。



『今日、もう寝ようか』

『え?でも…』

『多分、話始めても途中で寝落ちると思う。私も』

『う、確かに…?何だかんだ規則正しい生活だったしな…』

『でも気になって寝れない気もするぅ…』

『横になったら寝ると思うよ。体もだけど緊張状態長く続いたから精神的にも疲れてるはずだし』

『あー…うん、そうかも?』

『そうそう、シャワー浴びて今日はもう寝よう。今付与されてる隠密って林さんが寝ても持続するよね?』

『え、待ってリオくんもっかい言って!?』

『へ?隠密って林さんが寝ても…』

『そこじゃない!その前!』

『涼、シャワー?シャワーって言った!?もしかしてあるの!?』

『ああ、あるよ。ちっちゃいけど。無理すれば二人入れるくらい?そっちの後方のドア、左側がシャワー室と脱衣所と洗面所。右側がトイレ』

『待ってトイレもあんの!?』

『あるよ。ないと不便じゃね?あるやつ選んだし』

『リオくん…』

『はい?』

『ありがとう…マジでありがとう…!』

『シャワーさえ浴びれないの、地味にストレスやったよな…』

『汚れ、溜まってる感じしたもんね…やっぱ拭くだけじゃ駄目だったっぽいよね』

『ちなみに、そのはしご上ったら寝室。割とデカめのベッド1つしかないけど、詰めれば四人くらい寝れると思う』

『涼、愛してる』

『リオくん結婚しよ』

『軽率に告白された』

『静も茜も色々限界だったっぽいね…』



どうやらシャワーとベッドという単語を聞いて、即寝る方にシフトしたらしい。

時間も時間だし、その方がいいよ。波川さんが人数分のタオルとシャツとズボンを出して配ってた。あと下着も。

下着?と思ったら、今召喚できるようにしたらしい。ああ、念のためスキル使わず魔力温存しようって話になってたからな。

今こそ使い時と思ったんだろう。もう今から寝るわけだし。


ちなみに隠密は一回かけたら意図して切らない限り持続するらしい。

当然、その間は魔力を消費し続けるけど、対象がキャンピングカーで動かないものであること。あと経験値稼ぎにもなるから隠密かけたままの方がいいらしい。

放置してても今なら数日は保つとのことだったので、お言葉に甘えることにした。多分レベル上がってったら普通に1ヶ月とかかけ続けられそうである。



『時間も時間だ。狭いけど二人ずつ入ろう。石鹸とかは何かデフォルトで設置されてるのがあるから、それ使って』

『マジかリオくん。至れり尽くせりでは…』

『普通の石鹸だけどね。肌に良いお高いやつとか欲しければ今後それぞれで買って。あ、デフォルトのやつは無くなったら私の魔力で補充できるタイプのだから』

『至れり尽くせりでは…(二回目)』

『もうここ一通りの生活出来そう…』

『石鹸にこだわりとかないから、デフォルトのでいいです。ありがたく使わせてもらいます』

『よし、茜と千晴班、シャワーいただきます!』

『ます!』

『深夜テンションやな!?いってら!涼はあたしと入ろな!』



後がつかえてるのもあってか、15分ほどで出てきた。烏の行水か?お湯が使える幸せ…!とか言いながら泣きそうになってた。

脱衣所からドライヤー(デフォルト設置)持ってきて、髪乾かしなさいと告げてから私もシャワーへ。

波川さんと一緒にざーっと浴びて、すぐに出た。それでも20分くらいかかった。もう4時近いな…

はしごを上って2階というか、ロフトみたいな感じなので1.5階?まあ何でもいいけど。

多分6畳くらいの空間だ。ていうかこのキャンピングカー、空間拡張されてるっぽくて、どう見ても外から見た以上の空間が広がっている。2倍以上ありそう。

我ながらとんでもねえもん選んでしまった。後悔?してませんけど何か。



『固くない…寝がえりうってもゴリって音しない…』

『背中、冷たくない…タオル重ねなくていい…』

『布団…ふわふわ…』

『そっちの環境も大概だったんだな…』

『リオくん程じゃない』

『涼ほどじゃない』

『涼ほどじゃない』

『フルボッコ!』



いや、私意外と快適だったけどな?

何か室温もそれなりに保ってくれてたっぽいし。まあ床は固かったけど体痛めるほどじゃなかった。

つくづく、スキルと『彼ら』にお世話になりっぱなしだったなぁ。


まあそれはともかくとして、おやすみなさい。

そう言ったら三人ともおやすみと返してくれた。

ただそれだけなのに、泣きたくなるくらい嬉しかった。

部屋の環境に不満はなかったのに。自分でも意外だと思ったけど、一人しかいないというのは寂しかったらしい。

挨拶が返ってくる。そんな小さなことが嬉しかった。


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