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05.最後の準備


七日目以降は調べものとスキルレベルアップに費やしていた。

まあ私と林さんのスキルは成長してませんけどね!それでも、経験値は溜まってると思いたい。

特に林さんは、私達の夜の報告会の時はスキルを使って、声が漏れないようにしてくれてる。

それでもまだレベル1なんだから、かなり経験値が必要なスキルなのかもしれない。めちゃくちゃ凄いスキルだし。


日を追うごとに、私達への当たりも強くなってくる。面と向かって役立たずの無駄飯ぐらいなんて言うし。

は?私飯もらってねえよクソが。単語覚え直してから言え。出直して来い…いややっぱ来なくていいわ。

私は変わらず、狭山さんのスキルで出した果物で生き繋いでいる。りんごもみかんも日本仕様でしたよ…!うまい。

九日目、私達のスキルレベルは、私が2、狭山さんと波川さんが4、林さんが1だ。

狭山さんと波川さんは上がったばかりだから、次のレベルアップは多分今までの感覚的に数日かかるだろう。

酷い時は暴行未遂なんてことも起き、この日の報告会で潮時だなと話をした。



『どうする…今夜、行く…?』

『待って林さん。まだ準備もしてないし、狭山さんと波川さんの魔力もほぼない。早くても明日の夜だ』

『あー、せやな…』

『リオくんは大丈夫?今日ほんとに殴られる直前で…』

『極限状態だと動きがスローに見えるって本当だったわ。私の顔じゃなくて壁殴ったあのクソ騎士の顔傑作だったんだけど』

『拳、割れてたらしいよ。正直ざまあって思ったよね』

『千晴、それマジ?ウケる。まあ回復魔法あるっぽいし問題ないやろ』

『とりあえず、リオくんが気にしてないことはわかった』

『回避華麗すぎてアンコールって言いそうになったわ』

『鬼かシズっち』

『二度と出来ない選手権に応募できるタイプのやつなので嫌です』



ついでに言うならあんなクソ騎士の顔、もう二度と見たくない。

真顔で吐き捨てると、それもそうだなとわかってくれた。



『リオくんのためにも心情的には今夜出たい、けど…確かにどっかでスキル必要かもって思ったら、明日の方がいいかな』

『私、実は脱出のタイミング、林さんのスキルレベルが上がったらって考えてたんだよねえ』

『えっ?』

『あー、わかるわかる。隠密がキモって部分あるし』

『レベル上がってたらより安心になるな、確かに』

『あ…ごめん』

『ん?ああ、別に必須って考えてたわけじゃなくて、出来たらいいなーって思ってたくらいのやつ』

『でもさ、実際、ちーちゃんのスキルレベル1で城から出られる?』

『うん、それは問題ない。林さんに騎士の巡回ルート確かめてもらったから。私達がこっそり行けば大丈夫。認識阻害レベルで何とでもなる』

『…他人にまでってなると、どうしてもそのくらいが限度なんだよね…』

『充分じゅーぶん!さ、移動時に気を付けることは?はい、茜!』

『はい!出来るだけ離れず密集して移動すること!その分ちーちゃんの負担が減るから!』

『はいオッケー!』



クイズ番組かな?エアボタンを押す仕草してるんじゃありません。

けど認識は間違ってない。範囲が広がればそれだけ林さんの負担が増える。ついでに効力も弱まる。

なので出来るだけ近づいて…手を繋いだり、電車ごっこみたいに前の人の肩を掴んだり、そうやって効果範囲を狭めようという話になっている。

林さんの負担は大きいものの、その条件だと持続は2時間を超えるそうだ。

目的地まではここ(個室エリア)から20分くらいだし、余裕で城から出れる。



『そういえば、涼が言う目的地ってどこ?城を見回った限りそれっぽいのなかったけど』

『騎士の巡回ルートから外れた場所。そこのドアから城の外に出れる』

『そんなとこあったの?まああたしも全部見回ったわけじゃないからなー…』

『うん、ただ誰も寄り付かないだけあって、ちょっと汚い。床はかろうじて掃除されてるけど、窓枠とかに埃あるから鼻と口押さえた方がいいかも』

『あー、なるほど。そういう場所ね。リオくんよく見つけたな、そんなとこ』

『くしゃみ厳禁か。マスクあれば出すのにな。ない…』

『さすがにそういうの遮断できないからなー………あ?』

『え、何?千晴?』

『ちーちゃん?』

『………レベルアップ、した…』



今???全員で目を見開いて驚く。

いや、ナイスタイミングすぎでは?神かな?



『ちょ、ちーちゃん!詳細、詳細!』

『あ、うん、でも消費魔力量が減ったのと効果範囲広がったくらい、かな?』

『いやいやいや大歓迎すぎる。つまり持続時間伸びたことと同義じゃない?』

『うん、隠密もちょっとの動きくらいなら魔力消費せずに維持できるようになったから、指の動きくらいならノーコストで変えられそう』

『ほほう?ハンドサインできるじゃん』

『シズっち、シズっち。隠密されてるとサイン見えねえ気がします』

『ほんまや』

『林さん、少しの動きって…それ、例えば台車にダンボール乗せたやつとかだとどうなるの?』

『え?台車に…?』

『うん、台車もダンボールも動きはしないけど、車輪だけ回る状態というか、ちょっと押してガラガラーって移動する場合って隠密どうなるのかな』

『…んーと、消費はない、かな。車輪は同じ場所で回ってるだけだし、隠密の範囲って場所じゃなくて「そのもの」に被せる皮みたいなものだから』

『ダンボールの蓋が開いてて風圧でパッカパッカしてるのは消費する、びっちり閉められてたら台車の上で振動で多少ズレても消費しない、って感じ?』

『そう、そんな感じ。台車そのものの形っていうか、シルエットが大きく変わらない限り、台車が滑走してても魔力は消費しない』

『…すごくね?え、凄いよねこれ?こう思うの私だけ?』

『や、あたしでも何かすごいってことはわかったよ涼』

『凄いかな…?でも何で台車で例えたの?』

『いや、ちょっと気になったから』

『………?』



そこまで話して、脱出は明日の夜決行と決定した。

だから、明日はそれぞれ魔力の消費を抑えるそうだ。

と言っても、狭山さんと波川さんが日課のようにやってた「新品の召喚」をしない程度のものだけど。


そして、林さんのスキルレベルが上がって、効果が上がったことで、私はずっと決めかねていたものを決めた。

そう、私の「召喚」である。ずっと悩んで今の今まで確定してなかったのだ。

ほぼ決めてはいたけど、本当にこれでいいのかを決めかねていて、あと一歩後押ししてくれる何かが欲しかったとも言える。

そして、その後押しが、林さんのレベルアップだ。これなら、この効果があるなら、「これ」を召喚しても問題ないはず。

消灯の時間が近づいてたので、私はこの辺りで三人の部屋から出た。あの物置にいないと面倒なことになるだろうし。


「あれ」を召喚することに頭がいっぱいで、私は言おう言おうと思っていた「私スキルあります」宣言をまた忘れたことにしばらく気づかなかった。


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