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03.情報収集


異世界もといこの城に来た初日は、城内の軽い案内だけで終わった。

というか、歩いていい区画はここまでだと知らしめる意味もあったんだと思う。

それに気づいてたのは、何人いただろうか。少なくとも見慣れない城にはしゃいでた『攻撃スキル』持ちは気づいてないらしい。


一日目。

物置から出た私は、昨日案内された資料室に直行した。

他のみんなはそれぞれの場所で朝食だろうけど、私は「お前に食わせるものはない」と言われたので、何も食わずに移動した。

幸い水だけはどうにかなった。この城は水の魔道具も豊富に使われていて、手洗い用や洗濯用の水さえ飲用可だったからだ。

だから顔を洗ってるフリしてこっそり水は飲んでた。煮沸が必要だったら面倒だったな。

誰も教えてくれなかったけど、水を『鑑定』してみたら『飲用可』と出たのだから間違いない。

こうして私はとりあえず命をつなぐことは出来た。


資料室は無人で、ボロい貼り紙に使用ルールが書かれてたので、それを読んで理解した。

勝手に禁止されてることやっちゃって追い出されたらたまったもんじゃないし、ルール教えてくれって城の人に尋ねてもちゃんとした答えが返ってくるか不明だったし。

長年そこに貼られて放置されてたであろう貼り紙の方が信用出来た。

それに、このルールで間違いないって確認も出来たから大丈夫。ルールは至って単純。普通に本を読んでるだけで問題ないものだ。

持ち出し禁止とか、本を破ったりラクガキするのは駄目だとか、そんな小学生レベルのルール。


守れねえ奴が城勤めしてるわけなくね?と思ったけど、机にラクガキを見つけて納得した。

ああ、調べもの中に思いついたことをその辺に書き留める研究者気質の奴がいるわけね。メモ帳持ち歩けよ。いやこの世界にメモ帳あるか知らんけどさ。

多分、そうやって本にも書き留める奴がいたんだろう。ルールに記載されたことに納得した。


一通りルールを確認して、調べものを始める。

まあやっぱり調べるならスキルについてから、だな。疑問に思ったこともあるし、疑問を潰しておこう。

あのおっさんが言ったスキル名と、鑑定板に表示されたスキル名が微妙に違ったこと。これからだ。

通称か何かで言っただけなのか、それとも全く別のスキルなのか。


結果、まったく違うスキルだと判明した。

しかもあのおっさんが言ったスキルは全部下位互換のスキルだ。メジャーなスキルとも言えるだろうが。

自分の中で、知ってるスキルだと解釈した?普段ならまだしも、王族のいる前で?仮にも勇者のスキルを間違うって懲戒免職ものでは?

ぼく仕事できませんって自己紹介してるのか?


スキルの鑑定を調べても、誤認するなんて記述はない。ならあの鑑定板が悪いのか?でも私の目にはちゃんと表示されてるように見えたし…

本棚を漁って魔道具の本を探す。鑑定板の仕様を調べようとして、原因らしきものがわかった。

『鑑定系』の魔道具は水晶だとか板だとかルーペだとか数種類あるが、共通してるのは当然魔力で稼働すること。

それで、流した魔力の質だとか量だとか、その結果を見る者の知識だとか、色々な要素が混じって、稀に記載内容にブレが出ると書かれていた。


例として、毒草を鑑定した場合。

一般人が見ると『毒草。毒の草』くらいの内容。錬金術師が見ると『毒草(良質)。毒を含む草。解毒ポーションの材料』と詳細まで出る。

必要な情報は得られはするが、内容の密度が違ったりするらしい。

そして、毒草をまだ3歳くらいの子供が見ると『草。にがい』くらいの情報になる。

まだ『毒草』という単語を知らないから、毒草がどういうものかを知らないからこうなるそうだ。


つまり、あのおっさんは、そういうスキルがあると知らないから、自分の中の知識にある一番近いスキル名を言っただけなのではないか。

『被服』を『裁縫』、『料理』を『調理』と判断したように。

私達はなまじスキル名なんて知りもしないから、色眼鏡を通してないとでも言うべきか、それでそのままの情報が写ったのではないか。


一応筋は通ってる気がする。これは…言わないでいた方がいいな。本人達には言ってもいいだろうけど。

いや、でも少し調べたら誰でもわかるし、あえて教えることもないか。…一緒に逃げる人以外には。

うん、私でも3時間調べただけでわかったことなんだ。大丈夫、できるできる。疑問に思えば調べるだろ。

…この時の私は、彼らを自分と同じように考えていた。でも思えば私地味にイレギュラーなんだった。中学生がそんな面倒やりたがらないって思い当たらなかった。

というか、よし調べようって言いそうな子は、一緒に連れ出した林さん(秀才)くらいのものだと気づいてなかったのだ。


利用初日(転移して二日目)はスキル関係を調べて終了。

次の日は、この世界について調べた。当然地球でも日本でもないここは、何と呼ばれる世界なのか。

この国の名前は「ラージフール王国」。神から勇者召喚の術を教わり、魔族を押し返した。その時に召喚された勇者が命名した国名らしい。


当時は国というより人間族の集落や町がいくつかあって、魔族に攻め入られた時に集結したのだとか。

魔族の力は圧倒的で、数で勝る人間族は徐々に減り、滅ぼされるのではと絶望した時に神から勇者召喚の術を教わった。

そして召喚に応じた勇者10名。見事に魔族を返り討ちにし、押し返したのだという。

その戦争で勇者の数は半減したが、残った勇者は国を興し…というか、国の基盤を固める知識を授けて世界を巡る旅に出た。

初代国王は勇者を献身的に支えた、とある町の町長をしていた男らしい。勇者たちは異世界人の自分たちの血を王族に残すのは良くないと言ったそうだ。

それならせめてと、国名だけでもということで、勇者たちがつけたのだと。



『…いい話のように残してるけど、勇者これ扱いにブチギレてたろ』



きっと記載されてない裏話が腐る程あるはずだ。クソみたいな内容の。

想像だけど、魔族が攻め込んできたのは本当らしいが、理由は人間に逆に侵略されて怒ったからじゃね?

そう思った理由は、この世界の世界地図。

人間族、魔族、獣族、森族、精霊族が住むらしいが、領土はそれぞれ同じくらいだ。

人間族と魔族の領土は隣り合ってて、大きな森で分断されてる。通称魔の森。というか、それぞれの領土はこの魔の森で区切られてるらしい。


で、ですね。本によると、戦争の発端となった魔族の攻撃を受けたって言われてる場所。ここ、多分魔族領なんですよね。

魔族の突然の猛攻に必死で森を抜け…って書いてるけど、これ魔の森のことでは?ってことは、森の向こう、つまり魔族領に何故か人間がいたってことでは?

先に攻め込んだのお前ら(人間)じゃねえの?って思ったわけですよ。ほんとのことは知らんけど。

魔の森じゃない森ってたくさんあるし。この王都の近くにも森はあるけど、魔の森とは全然関係ない。魔物も少ないし、狩猟森とか呼ばれてるらしい。

さほど危険じゃないっぽいし、逃げ出すとしたらこの森通って足跡消すのも手段かもなあ…

まあともかく。多分というか絶対、自分たちのことしか考えずに勇者を食いつぶして利益だけ得てたんじゃないかなって。


最初は穿った見方せずに歴史書呼んでたけど、今の私達の扱いと違ったんだなーってのが勘違いだと気づいた。多分この国の奴らの性根は変わってない。

勇者は国に自分の血を残したくなかったんだ。特に王になろうって一族と混じりたくなかった。だから旅に出るなんて言って去った。

国の名前にせいいっぱいの怒りを込めて。多分こっちの世界にはない単語だったか、翻訳されない単語だったんだろう。

直訳したら「ラージフール」って「大きい」「馬鹿」よね。つまり大馬鹿。初代勇者が残した、勇者へのメッセージかもしれない。

この国、馬鹿だから逃げろっていう。


神様さあ、何でこんな国に勇者召喚とか授けたんだよ。滅ぼされて当然の種族では?同じ人間だと思いたくなくなってきたよ。

いや、こっちの人間族が隅々までクソなのかはまだわからないけども。

でも多分、魔族と戦ったのは勇者たちだけで「自称献身的に支えた」奴らって勇者に任せて何もしてなかったんだと思う。

ちょーっと探しただけだけど、勇者の手記とか、勇者の残した言葉とか全然ないもんよ。

普通、勇者って有名人の残したものって遺物とか偉人とか、そんな感じで残すよね。

何も知らない僕達を、この世界の人達はとても親切にしてくれて…とか、そういうメッセージ的なの一切ないってどういうこと?扱いが知れるよねマジで。

捏造してないのはいいけど、勇者の言葉なんかわざわざ残しても仕方ないとか思ったのかもな。だとしたらマジで見下しきってるなオイ。



『…どうにか、勇者召喚ってのをこれ以上出来ないようにしたいな。神がもっかい授けたら意味ないけど』



最初に私達がいたあの部屋。多分召喚のための部屋。床と、壁にもいくつか魔法陣らしきものが書かれてぼんやり光ってた、はず。

どうにか崩せないか。消すか書き足すかで台無しに出来ないか。ああいうのってちょっと違ったら台無しになるよね。

柱一本なくなったら家が崩れて倒壊するみたいに。

ふと、資料室の壁に手をついて考えてみた。あの部屋はもう入れない。私達が歩いていいとされる場所から外れている。

直接は何も出来ない。けど、間接的になら?

あの壁と床の陣を崩せないか。消せないか。まったくの、無意味に出来ないか。



『…どうにか、して…』

(いいよ。どうしたらいい?もう悲しいことに使われるのを見るのはつらいんだ)

『………っ!?』



驚いて、思わず肩が跳ねた。壁に触れてた手を引っ込めて思わず体を抱きしめるように両手を胴に巻き付けた。

どくどくと音がする。心臓の音が早い。

少し落ち着いて、ああ、と思った。



『スキル、発動したかぁ…』


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