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11.町に入る前に(静視点)


「…うん、やっぱ味は一緒かな」



そう言った茜の顔は何かしわしわだった。顔の真ん中にパーツを寄せた感じっていうか、そんなキュッて感じの顔。

まだ『短縮調理』ショックが残ってるらしい。ていうか明日は我が身かこれ?レベル5で習得したやつだもんな…

てか、最大MPってどうにかして増やせないのかな。聞いたら千晴が答えてくれた。



「レベルアップするとHPとMPは増えるらしいよ。どのくらい増えるかは人によるみたいだけど」

「え、レベルアップ…してるよな?でも全然増えてなくない?」

「あ、スキルの方じゃなくて自分自身のって意味。あたしら全員レベル1だから」

「…そういえば、そっちのレベルもあったな。確かに私たちぴかぴかのレベル1…」

「人そのものの資質と、職業にも左右されるって本に書いてたよ。剣士だったらHPすごい増えるけど魔術師ならMPがすごい増える、みたいな」

「あー…今のあたしらの職業って、あれ、あんまよくない、よね…?てかお針子ってどう成長するかサッパリなんやけど」

「低レベルの場合は変わりやすいし矯正利くみたいだけどね。でもレベル10の魔術師が剣士になるのはほぼ無理らしいよ」



せやろな???

とんがり帽子被ったヨボヨボのじいちゃんが剣振ろうとしてギックリ腰になるとこ想像しちゃったじゃん!

あたしの魔術師のイメージも大概ひどいな。



「職業かー…まだ1日だし、変わってないよね…さっさとシーフ卒業したいけど」

「私、変わったよ!」

「ほんと!?やったな涼!」

「リオくん、破壊者クラッシャー返上か!何になった!?」

「詐欺師!」

「…はい?」

「詐欺師!!!泣きたい!」

「何でやねん!!!」

「…まあ、同級生と思ってたら突然24歳の未来人だって告白されたし、あたしらから見たら騙されてたようなもの…?」

「狭山さんの意見に納得したー!そりゃ詐欺師って言われるね!ろくでもねえな私の職業の遍歴!履歴書に書けない!」

「…履歴書とかいう発想が出てくるのか。こういう時、涼が大人って実感するよね…」

「よしよし、大人なリオくん、今日も運転よろしく」

「了解しました!明日か明後日には着くといいなあ」

「あー、なるほど。じゃあ今日は一日移動に費やす感じ?」

「あ、狭山さん、森で採取したい?今日もする?」

「…や、今日は移動しよ。あたし今日ほぼスキル使えないし、新しい果物とか見つけてもアイテムボックスに入れられるかどうか」

「あー、ほんのちょっと魔力使うっぽいもんな。数値にしても1にもならんけど」

「うん、今日は昼食夕食のためにMP残しときたいし」

「この世界、マナポーションとかないのかな?千晴知ってる?」

「あったはずだけど、入手難度高そうだったかな」

「マナ…何それ?」

「あ、涼知らない?MP回復するポーションのことやで」

「あー、あったら便利なやつか」



涼には必要なさそう…レベル1で既に100だし。

これ、魔術師タイプのステータスってことかな?うーん、あんましっくりこないけど。

そんなわけで、今日は一日移動になった。あたしはいつも通りスキルを使って経験値稼ぎ。

召喚したハンカチに刺繍するだけで経験値になる。最初チクチクしまくっても大した経験値にならなかったけど、自分で出したハンカチを使うとかなりの経験値になる。

ただ裁縫するだけじゃ駄目だったらしい。やってることは同じでも、糸を通す布が召喚したものなだけで大分違う。

やっぱり被服スキルって名前だけあって、大元は『召喚したもの』を加工するとかそういう方向なんだと思う。

全然関係ないその辺の布じゃ大した経験値にならないし、本にも似た感じのこと書いてた。

レベルが上がると、服を作成する、加工する作業が派生するみたいだけど、今はまだない。てか糸もいらなくなるみたいなこと書いてたけど、本当かな。

盗んできた糸にも限りがあるし、本当に糸を消費しなくて済むなら早くその方法が欲しい。

まあ、糸くらいなら町で買えそうだけど。…いや、この世界だと糸って高いのかな。

まあ心もとなくなってきたら縫った糸外してもう一回使うけど。貧乏くさいとか言うな。

そんなことを考えてたら、待ちに待ったものが。



《スキルがレベルアップしました》

《被服スキルレベルが5になりました》

《召喚マナ消費量が減少します》

《召喚内容が増えました》

《保存対象が増えました》

《加工が可能になりました》

《糸紡ぎが可能になりました》



「ん?何ソレ?」

「え?どうしたの静」

「あ、ごめん千晴。今レベルアップして」

「ほんと?おめでとう!」

「え、シズっち5になった?やばそうなの覚えてない!?あたしの二の舞にならないでね!」

「なーにーーー?何の騒ぎーーーーー?」

「静がレベルアップしたってーーー」

「おめでとーーーー」

「リオくんいいから運転に集中!」

「はーーーーーーい」



『加工』と『糸紡ぎ』…今まさに考えてたやつかな。

うん、茜と同じでパネルにメニューって表示されて『加工』が選べるようになってる。『糸紡ぎ』は…ないな。

これは、布や服などを加工できるものだ。そのまんま?いやだってそうとしか言えないし。

あたしの召喚する布製品は全部白一色だ。で、『加工』を使って色を変えたりできる。

ストックしておいたハンカチをアイテムボックスから出して…これに『加工』を使う。

色と質とサイズを変えられるらしい。色は結構バリエーションあるけど、質やサイズはそうでもない。あ、タオルハンカチみたいなのにもできるっぽい。

サイズもそこまで大きくならないし、小さくもならない。基本サイズから大幅な変更は無理っぽいな。多分服もそうだろう。

ハンカチのサイズを小さくして、色を薄い水色にしてみた。千晴と茜が「おおーーー…」って言ってた。



「う…結構魔力減った、かも…?」

「うわ大丈夫!?もうやめとく!?」

「や、大丈夫、そこまででもないと思う。多分、柄とか入れたらもっと使う気がするけど、一色ならそうでもないっぽい」

「なるほどな。模様やら柄は刺繍で何とかしたらそれらしいのになるかな?」

「静、これって自動修復の対象になるの?」

「ううん、加工はそのまま固定化させるものだから白に戻ったりしないしサイズもこのまま」

「ああ、まあそうだよね」

「生地をちょっと厚くして、色変えたりすれば…まともな服に見えるかな。町に行っても違和感ないものが出来る、と思う」

「あ、それがあった!そっか、今の白シャツ白ズボンは…確かにちょっと…町を歩くには恥ずかしいな」

「もうこれパジャマの認識だしね…パジャマで森を徘徊するなって話だけど」

「あたしらしかいない空間はともかく、確かに町はこれだと無理かも。超ナイスなタイミングで覚えてくれたな、シズっち」

「四人分の服か…いけるかな。いや、やらんと」



あともうひとつは『糸紡ぎ』。これは、自分の魔力を消費して糸を作るものだ。さっき考えた『糸を使わなくなる』手段である。

自分の思う通りの太さと色を選べる。…でも、これちょっと怖いな。

茜の『短縮調理』タイプの派生能力な気がする。多分これガッツリMP使うやつだ。

ちょっとだけ使うならそこまででもないけど、糸って作業に必要なものだから長時間使い続けることになる。

何か感覚的に、糸を1メートル出します!完了!系じゃなくて針を布にさしたら、糸が生成されてぬいぬい中はずっと針の穴のあたりに糸が発生し続けるっぽい。

もちろん留めまでやったらそこに糸が実体として固定される。魔力で実物に近い糸を生成し「続ける」タイプのやつらしい。

すぐMPが尽きるやつだ絶対。



「…確かに、それっぽい。じゃあこっちが短縮調理系だな…?」

「でも想像でしかないし、一回使ってみない?ハンカチの端っこに小さい丸とか三角とか刺繍するとか」

「あー、それくらいならシズっちなら1分かからないし、いいかも?」

「…うん!やってみる。やらんまま怯えてもしゃーない!今日スキル使えなくなっても町に着くまでまだ1日2日あるし!多分大丈夫!」

「何なら1日森で採取とかするのに使って町に着くの遅らせてもいいんじゃない?どの道今のままじゃ町入りづらいし、茜がいると食材増えるし」

「確かに。明日とか森に行ってもいいのでは…?」

「白一色の服着た14歳の女が四人って、どう見てもヤバイやつやんな」

「服の準備できるまで、引き延ばさないと目立つやつ!」

「目立つのよくないね。町じゃ隠密かけるわけにもいかないし、あと万が一あの城に噂でも飛んだらまずいよ」

「うぇっ、それだけは避けなきゃ」



でもそっか、今となっては1日くらい遅れても問題ないのか。キャンピングカー恐るべし。

ひとまず、言われた通り『糸紡ぎ』で出した糸でハンカチに刺繍してみよう。白いハンカチだから糸は別の色…青とかでいいや。

針をさして、丸の形を………



「もっっっろ!」

「糸の強度!」

「見事にぶちぶち切れるね…」

「無理!あたしにはまだ早かった!またレベル6でお会いしましょう!」

「ヤケクソ!」



結構魔力消費もあるし、集中してもうまくいかなくて焦るし、ここまでにしておこう。これ続けてもMP尽きるだけだわ。

ある意味茜と同じタイプだ。今のレベルじゃ使いこなせない系って意味で。まだ加工は使えそうだからこれは良かったけど。



「明日から『加工』を頑張ろうと思います。『糸紡ぎ』は封印します」

「う、うん…それがいいと思う」

「茜のと一緒で使いこなせたらめちゃくちゃ使えるようになりそうだけどね。多分静のも、そこらの糸より丈夫になるよ。将来的には」

「まだ見ぬ将来よ…今来いよ…」

「しばらくは普通の糸で作業するしかないなー」

「次の町で買いこもうか?静のスキルには必要だし」

「んー…着いてから考える。それより必要なものあったらそっち買わないとだし。お金こそ限りがあるし」

「あー、お金も稼がないと…バイトさえ出来ない年齢で稼ぎを気にすることになるなんて」

「リオくん以外1円も稼いだことない子供だしね」



この世界には冒険者ギルドってのがあって、冒険者がいる。

登録に特に資格は必要ない。強いて言うなら10歳以上でないとお断りってところか。クリア済みなので、問題はない。

ギルドカードっていう身分証ももらえるし、うまくいけばお金も稼げる。根無し草も多いけど、そこそこ成功しやすい職業らしい。

そのためか、冒険者は多い。成功してるかはともかく、犯罪さえ犯さなければ一定の地位は確立されてる。

けれど、危険が多く、時には命を落とすこともある。そんな職業だ。魔物退治は油断すれば死にかねないからだ。

冒険者で大成した人もいるため、平民や食い扶持に困る貧乏人には憧れの職業扱いされている。

実際は問題も多いらしいが、総合的にまともな職種である。不正には厳しいし、非人道的な行動をとった冒険者には罰則が発生したりもする。

登録した町でしか行動できないこともなく、別の町を拠点にするのも自由。あたし達みたいに移動したい人間にとっては大助かりの職種だ。

なので、トランタの町に着いたら冒険者登録をするのは決定事項。

本来は登録してすぐ別の町に行く予定だったけど、しばらく滞在してお金稼いで次の町を目指そうって話になった。

ええ、キャンピングカーさんがいますからね。追手を振り切るために滞在は悪手ってことだったけど、追手なんてしばらく来ないだろうからと予定変更になりましたとも。

登録してすぐ出立なんて目立つから、しばらくは町で新人冒険者をやって、お金溜まったから次の町行きますーって感じに見えるようにしたいらしい。

最初は目立ったとしても移動する方が安全って判断で予定してたけど、うん、今はね…

宿代と食事代がかからないだけで、普通の冒険者よりはお金は貯めやすいはずだ。普通は宿代とかで稼ぎが飛ぶらしいから。

それに、冒険者登録すれば、職業も『冒険者』になるんじゃないかなって下心もある。あたしらの職業ひどいからな。


能力検証を三人でやったためか涼がちょっと拗ねたけど、どういうものかを説明したら真剣に考えてくれた。

それで、やっぱりしばらくは封印した方がいいなって話になった。



「ところでさ、波川さん、帽子って召喚できる?」

「帽子?うん、リストにはあるよ。召喚してないけど。…いる?」

「冒険者やるならあってもいい。頭の防御ができるから。でもそれだけじゃなくて、変装のため」

「えっと、帽子被って変装ってこと?」

「うん。で、加工で…帽子に耳当てつけたりとか、そういうのって出来る?」

「出来るよ。てか加工は結構思い通りにできる。何ならシルクハットみたいな形にも変えれるし三角帽子みたいなのもできる」

「静のスキル、結構自由だね」

「そっか…ならさ、カツラみたいなのってどう?」

「へ?ヅラ?」

「帽子と髪の毛がくっついてる感じの被り物って出来ない?この世界、黒髪珍しいから変装を考えるならまず髪色どうにかしないとって思って」

「!あー、確かに!」

「そっか、それなら帽子被っただけで違う髪色の人間と思わせられるんだ。地毛は帽子の中に入れちゃえばいいし。涼よく気づいたね?」

「うわうわうわ、それ確かに必要!明日新規召喚で帽子出すわ!で、加工でいじってみる!」

「案外、変装らしい変装はそれで済むかも。髪型どうする?今と同じ感じ?まったく別の感じ?静の作りやすい方の方がいいかな…?」

「波川さん次第だけど、別の方がいいと思う。何なら私アフロでもいいと思ってる」

「リオくん、めっ。それはやめなさい」

「駄目に決まっとるやろがい。涼、職業に芸人て出ても知らないからね」

「絶っ対そんなん作らんからな」

「あい」



いいこと言ったと思ったらこれ!頼りになる大人なのかそうじゃないのか悩むからやめて???

とりあえずってことで、千晴が涼からもらったノート(無地)のページちぎってあたし達の前に置いた。

これで、どういう帽子と髪型のデザインにするか、絵で描こうってことだった。

確かにそれいいかも。言葉よりイメージしやすいし。

そして頼りになるのかならないのか微妙な大人が一言。



「私、男のフリしようと思う」

「…その心は?」

「女四人の子供はいらんトラブル招きそう。絶対舐められるだろうし」

「なるほど…それはあるかも」



納得できる意見だった。

確かに、うん…考えてみたらカモもいいとこじゃん。

返り討ちに出来る力があるならまだしも、あたし達のスキルは戦闘に向いてない。

強請り集り目的のムキムキとか来たら抗えない。一人でも男がいたら牽制にはなるかも?



「だから短髪のカツラにしようと思う。毛量が多くてもさっとしてる感じなら田舎の小僧っぽくない?」

「ああ、いいかも。てか涼は元からショートだし地毛隠しやすそう」

「そうなると静が一番隠しにくいかな?ロングだし」

「切ろうか?」

「それは最終手段かな。髪大事にして、静」



いや別にそこまで思い入れがあるわけじゃないし。

必要ならバッサリいくよ?今だと髪型変えて気分転換、なんて余裕ないもん。

せいぜい三つ編みとか、ポニテかツインテか…あれ、結構あるな。



「てか、狭山さんも男装しない?」

「何で巻き込んだ?別にいいけど」

「あ、いいんだ?」

「この中で、男のフリして違和感なさそうなのが私と狭山さんだけ。身長的にも」

「あー…確かに二人とも中性的な顔だよね。髪もショートだし、向こうでもたまに間違われてたもんね」

「てことは、服も男っぽくしないとか」

「波川さんに超負担かけてるけど、大丈夫?」

「ん?問題ないない。経験値も稼げそうだし。ただMP消費がなー」

「2~3日準備に充てる?ゆっくり進んでもいいし…」

「おっ森も行くか?」



そんな感じで予定が決まった。

茜と涼は男設定で行くらしい。男二人と女二人ならそこまで違和感もないだろうと。

設定として、田舎の村で兄弟みたいに育った四人ってことにしようと決まった。

親が死んで村ぐるみで育てられただか誰かの家で育てられたか。

この辺は「親はちょっと…」って言って悲し気な顔をすれば多分それ以上突っ込まれないとか悪い顔で涼が言った。詐欺師の職業、変更利かなくならんかこいつ。

まあ、意見としてはアリ寄りのアリだったけど。

そんな感じで14歳になったから独り立ちも兼ねて冒険者登録しに来た。それがトランタの町に訪れた理由ってことになった。

冒険者ギルドはそこそこの規模の町にしかないから、田舎から出てきた子供が登録に来るのはよくあることらしい。それに紛れるつもりだと。

ちなみに冒険者登録は本名じゃなくても一応いいらしい。当然本名推奨だけど。貴族がお忍びで登録とか、離婚した夫から逃れたくて本名出したくないとか割とあるそうだ。

ただ、問題が起きた時に偽名だと判明すると、かなり入念に調べられる。今までの経歴も丸裸にされるレベルで。

それをわかってるなら、偽名でもいいそうだ。というかまともな人が偽名使う時はまっとうな理由だったり犯罪と縁遠い人が多いので、暗黙の了解になっている。

あたし達は犯罪に関わる予定ないし、違反行為でもないから偽名にしようってことになった。万が一、王城から問い合わせ入って探されたら事だし。



「偽名どうするの?本名から遠いと反応できないし、近いやつ?」

「私決めてる。リオで行く」

「茜がつけたあだ名じゃん」

「絶対反応できるなって思って」

「あれ、あたしのせい…?」



そもそも何で「りょう」が「リオ」なの。

気づいたらそう呼んでたから理由知らんかったな。

聞いてみたら茜が名前を噛んだのが理由らしい。涼と呼ぼうとして「りおょ!」とかいう謎発音になったとか。どうやって発音すんのソレ?謎奇跡起こさないで?

あと涼も小さい頃は自分の名前が呼べなくて「りお」とか「いお」って言ってたらしい。ああ、それでか。

それで何となく「リオ」と呼ばれるのに慣れてしまってるらしい。



「じゃあ涼はリオで決定かな?」

「うーん、じゃああたしはシズ…シーズー…」

「犬か?」

「苗字でもいいんじゃない?私苗字からとるならサメとかにするし」

「強そうじゃん」

「映画に出そうだなー。フカヒレ…あ、ごめん、信じられないって顔で見ないでリオくん」

「…あたし千晴だし、ハルにしようかな」

「あー、異世界的にもあんま違和感ないかも?ちーちゃんて呼べなくなるけど」

「そっか、和名はアウトって程でもないけど違和感持たれるか」

「うーん、なるほど。で、男っぽい…かどうかはともかく、あたしアキにする」

「そういや茜って秋生まれだっけ。年中食欲の秋とか言ってたけど」

「忘れてちーちゃん」

「アカネとアキ。まあ近いっちゃ近いか。うん、私もいいと思う」



ちょ、待って待って。サクサク決まるやん。

しかも割とかっこ可愛い名前に!あたしネーミングセンスないんやけど!



「あとはシズっちだけか。思いつく?」

「ううん…なみかわ…しずか…頭文字でナシ、ナッシー」

「別のもの想像しそうだからやめようシズっち」

「何想像した?あたし恐竜」

「それネッシーでは?私はヤシの実モンスター」

「は?梨のゆるキャラ想像したのあたしだけ?マジで?」

「ふな…茜、それは駄目なやつ!」

「言いたい放題か!?」

「ごめんて」

「うう、ナミ…和名っぽいか。ナズ…ナズってどう?」

「あー、和名には聞こえないしいいんじゃないかな?私センスないから信用ならん評価だけど」

「うん、いいと思う!…結局全員性別迷子な名前になったな!」

「何てこと言うの茜」

「まあ、うん、トランタの町だけの性別設定になるかもだし、いいのでは?」

「それもそっか」



でも素が出ないよう練習しようってことで、今から茜と涼は男言葉で話すことになった。

って言っても、一人称変えたくらいかもだけど。茜は「俺」で涼は「僕」でいくらしい。

あたしらは変わらず…と思ったら、千晴はちょっと丁寧な言葉に変えるらしい。

「私」で、ですます口調にするんだとか。え、これ、あたしも変えた方がいいパターン?



「好きにすりゃいいんじゃね?」

「うん、無理のない範囲が一番だと思う。僕も一人称以外ほぼ変わんないし」

「そうですよ。それに半端なキャラ付け程滑稽なものはないです」

「丁寧な言葉で辛辣キャラに転向かなハル!?わかったよあたし素で行くよ!」

「あ、名前も今から変える感じ?いいけど。えーと、リオくんとナズとハルか…」



わいわい騒ぎつつ、今日を過ごした。

カツラ帽子(涼命名。ひどい)はデザインだけは決まった。

茜は赤髪の前髪長めの短髪、涼は深緑の外はね気味の短髪、千晴は背中までのストレートの茶髪。

あたしは水色のウェーブで、今と同じくらいの長さのロング。邪魔になるので左右で分けて髪は結んでいる。

ツインテールとか言って茜が騒ぎだしたけど、帽子被ってるから普通に肩あたりで結びますが?



「帽子のせいで、ツインテが封印されただと…!」

「アキ兄さん、自重して」

「リオくん、兄さんって何?…あ、兄弟みたいに育ったって設定のやつか。あた…俺が年長になるのか?」

「単純に身長で決めた。一番高いし。実年齢なら僕が最年長」

「24歳だしな。まあいいけど、じゃあ全員身長順で決めようか。俺が長男でリオくんが次男。ナズが長女でハルが次女の末っ子でいい?」

「いいよー。男役二人が兄貴ね」

「あ、末っ子が一番丁寧な言葉遣いじゃ違和感ありますね。どうしましょう?」

「いや、いいと思う。上の三人が割と適当だからしっかりした設定で行こう」

「リオ兄も含むでそれ!?」

「僕がしっかりしてるように見えるのか!これでも24歳だぞ!見ろ14歳に混じって同レベル会話してるこの惨状を!」

「惨状とか言うなや」

「リオ兄さんの設定を採用しましょう」

「そだな。てかち…ハルは俺たちの中で一番成績いいし優等生キャラはハマってる気がする」

「アキ兄さん、名前と一人称慣れてくださいね」

「うす」



てことはハルの服も大人しめのデザインと色の方がいいか。茶髪だし、スキルのこともあるし地味目で行こう。

サイズも変更できるようになったし、それぞれ採寸してもらう。

アキ兄が158cm、リオ兄が157cm、あたしが150cm、ハルが147cm。体格は…リオ兄が細いなとだけ。あ、あたしらは標準だから!てかハル胸でかいな!?

紙に書かれたカツラ帽子と、隙間に描かれた服のデザイン。これはアキ兄だけだけど。

これを今からあたしが作るのか。スキルがある影響か、役立てる喜びかはわからないけど、わくわくしてきた。



狭山茜=アキ(料理)

村雨涼=リオ(無機物干渉)

波川静=ナズ(被服)

林千晴=ハル(隠密)

茜さんの偽名、ほんとの由来はアキアカネ(※トンボ)だったりする…

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