私は猫である。名前は、えっと……。
本当に世話が焼けること。
今日もぽかぽかあたたかい。
私はいつものポジションでのんびりひなたぼっこをする。
こんな時間がずっと続けばいい――そう願ってしまうのは、いつか終わりがくることを知っているからだ。
――ほら、今日もあの足音がやってきた。
「まるちゃーんっ!」
道の先から走ってくる、黄色い帽子の女の子。
ブロック塀の上でたたずむ私を、彼女はきらきらした瞳で見上げる。
仕方がないのでひらりと地上に降りると、小さい手が私の頭をなでてきた。
まぁ、気持ちいいからよしとする。
なにしろ私は心の広いお猫さまなのだから。
初めて会った時彼女はもっと小さかったけれど、その瞳は今と変わらずきらきら輝いていた。
「あなた、まるちゃんね!」
……なにその変な名前。
私には手下1号がつけたエリザベスという高貴な名があるのに。
「まんまるだから、まるちゃん!」
……どう見てもスレンダーでしょうが。
どういう目ん玉してるんだか。
「おめめがまんまるで、かわいい!」
……えっ、そう?
私どっちかというと切れ長美人じゃない?
以来、彼女は私にかまってくる。
少しのどを鳴らしてやると「まるちゃんうれしそう!」と喜ぶ。
こっちはサービス精神でやっているだけなのに無邪気なものだ。
そうこうする内に月日は経ち、今日も私はひなたぼっこをしている。
いくらか歳は重ねたものの、まだまだ現役の美猫だ。
「まるちゃんは今日もかわいいね」
大きくなった彼女の手が私の頭を優しく包む。
私がのどを鳴らすと彼女はうれしそうに微笑んだ。
――その時
「あっ、エリザベスここにいた」
最近低くなり始めた声が私を呼ぶ。
瞬間、私をなでる手が止まった。
「……浩太くん?」
彼女が呼んだのは手下1号の名前。
呼ばれた彼は「あ、みどりちゃん?」と驚いた顔を作る。
――さて、ようやくこの時がきた。
立ち上がり手下1号の元に歩く私が振り返ると、ぽかんとしていた彼女が小さく笑う。
「あなた、エリザベスっていうんだ」
イエスの意味で一声鳴き、手下1号を見上げるとその顔は真っ赤に染まっていた。
――ほら、手下1号。
昔からこの子をずっと見てたこと、私知ってるんだから。
せっかく勇気出したんだし、頑張りなさいよ。
私の視線に気付いた手下1号は、小さく頷き口を開いた。
「……あの、これからエリザベスに餌あげるけど、うち来る?」
「……うん、行く」
――まったく、本当に世話が焼けるんだから。
一仕事終えた私は二人を残して先に歩き出した。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
本作は『猫と子どもの話』というテーマで書いた作品です。
ねこ、かわいいですよね(*´꒳`*)
ついついグッズとかあると手に取ってしまいます。
道ばたで姿をお見かけするとラッキーな気分になるのは私だけでしょうか。
あと、個人的に全身青な超有名ネコ型ロボットも大好きですv
つんとして見えるお猫さまですが、実はすごく飼い主想いだったりして……? と想像しながら書いてみました。
猫飼いさんからするとギャップがあるものなのでしょうか?笑
お忙しい中あとがきまでお読み頂きまして、ありがとうございました。
【追記】
歌川 詩季さんからイラストを頂きました!
ねこの日イラスト、かわいいですにゃーฅ^•ω•^ฅ
歌川さん、ありがとうございました。