『ペル・N・スパーコナ』
ーーー堅苦しく高級そうな椅子に身を預け、体が沈み込むのを感じとる
「ふぅ、ひとまずはこんなものか。」
眼前にあるのは先程まで書いていた報告書、そのすぐ横にはティーカップ。
カップを持ち上げ その最中に気づく
「…冷めているじゃないか」
よく見ると机に置かれた蝋燭の火も消えかかっている。それほどまでに集中していたのか…。
半ばまで持ち上がったカップの、冷えた紅茶を見つめる
仄暗い書斎の中では、深紅より深い紅は吸い込まれそうなほどのモノだ
「ステラ、か…。」
思わずふっ、と頬が緩んだ。良い名をつけられたものだ
冷えた紅茶をグッと飲み干し、ワタシは背面に聳え立つ大きな本棚に目をやる。高い天井まで届く本棚にはぎっしりと本が詰まっている場所もあれば、隙間があり本が傾いている場所もある。
この本の何割かはワタシの著書。または軍や国の偉いさんに渡すための報告書だ
ワタシの名はペル・N・スパーコナ。ありふれたごく普通のニンゲンだ
まぁニンゲンと言うには少しばかり珍しい容姿をしているが故に、人間に信じてもらえない時もあるがね。
雪を思わす白い肌、鮮血で染め上げられたような紅い瞳、絹にも見紛う長く伸びた白銀の髪、オマケに夜空より暗く深い帽子とローブ。
…こう羅列してみると、案外ワタシの容姿は人間離れしたものかもしれない。
なんて自分語りを心の中でしてみる。丸1日人と会話しなかったくらいでこうなってしまうとは、ワタシもまだまだ甘いのかもしれない。
「とりあえず、これを国の要人に提出しに行こう」
立ち上がり、金糸や銀糸、赤など様々な糸で織られた絨毯を踏みしめる。その重厚な感触は案外嫌いではない。
レースの手袋をはめた手で書類を持ち、扉の前まで歩いてゆく。
扉を開けて、ぽつりと呟いた
「大丈夫だ、ーーーーー。ワタシは、まだーーー。」
くじらのはらです。急に連投してすみません。早く読んでほしかったんだ!
次回は念願のコメディパートです。おたのしみに
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