『ステラ』,居住
「ねぇトモカズ!あっちなにがあるかな?」
「トモカズ!あれ!あれなんだろう!」
ショッピングモールの食品コーナーであっちへこっちへ興味を示し動き回るステラ
最初のうちは追いつき鎮めていたトモカズも、段々と疲弊してきている。
「ステラ…ちょっと落ち着いてくれ…。夕飯買いに来ただけだからそんなに暴れないでくれ。」
幾度目だろうか、追いつき落ち着かせる。
「ごめんねトモカズ…。見たことないものばっかりで面白くって…」
叱られた犬のようにしょんぼりとするステラを前にすると怒るに怒れない。垂れた犬耳を幻視してしまいそうだ。
だがそれでも心を鬼にする
「あんまりあっちこっちフラフラしてるとはぐれるからやめてくれ。」
「ごめんなさい…。」
「わかったんだったらそれでよし。俺が食うもんは買ったからステラの分買うぞ。なにがいい?」
「えっと……」
先程とは見違えるほど目を輝かせあれこれ要求していくステラ
数日分の食事の量を買い物カゴに詰め満足そうに微笑む
「2500円…、冒険者じゃなかったらやばかったな……。」
自分用の布団と食料、ある程度の日用品を買い帰路に着いた2人。
「ありがとう、トモカズ」
「どーいたしまして。でもなステラ、あんまり買いすぎるのはやめてくれよ。食べきれないぞ。」
「えへへ、ごめんなさい」
反省しているのか、コイツ…。
呆れつつも、そういう日もあるかと気持ちを切り替える。
「ほら、着いたぞ」
二階建てのアパートが何棟か連なる場所
「ここが冒険者用のアパートだ」
階段を登ったすぐ横の部屋。そこの扉に鍵を差し込み回す。するとカチャリという軽い音が鳴ったと共に鍵が開く。
「ほら、入っていいぞ」
「おじゃましまーす」
「ここに住むんだしただいまでいいだろ」
「じゃあ、ただいま!」
元気よく家の中に挨拶をする彼女を見て、なんだか微笑ましくなるトモカズ
電気をつけると見えてくるのはキッチンと水周り
「荷物はその辺に置いといていいぞ」
「わかった」
丁寧に靴を揃えて部屋に上がるエルフの少女
彼女のいた場所は土足で上がるようなところではなかったのだろうか…
「ねぇトモカズ?ぼうっとしてどうしたの?」
「あーすまんすまん、ちょっとした考え事だ。気にしなくていい」
「もう遅いしちゃっちゃと食べてちゃっちゃと寝るか」
「ねぇ、トモカズ。このお部屋でいつも生活してるの?」
不意にそう問いかけられた
「おう、そうだぞ」
その問いの意味を特に考えることもなく返事をする
「そうなんだね」
「…どうかしたのか?」
「ううん、なんでもないよ。」
綺麗とも汚いとも言えぬ部屋、成人男性の一人暮らしなんてそんなものだろう。
…ただ少し、掃除はしてないが。
「そんなことよりもう遅い時間だから寝るぞ。俺は少しアーシェと明日のことについて連絡取るけど、ステラは先寝てていいからな。」
「うん。おやすみなさい、トモカズ」
「おやすみ」
そう言ってキッチンから部屋に移動するステラを確認した後、スマホの電源を入れる。
"トモカズ、明日のダンジョン攻略はやめてステラの冒険者登録とお洋服を買いに行かない?"
1件のメール、アーシェからだ
"そうだな。冒険者登録済ませてジョブ決めないことにはダンジョン攻略は出来ないしそうするか"
そう送った数秒後に返信が来る
早ッ…。
"OK、集合時間は10時でいいかしら?"
"それで大丈夫だ"
"わかったわ。それじゃまた明日"
最後の返信に目を通しスマホを閉じる。眠気で少しぼんやりしてきた頭を最後に使い、電気を消して布団に入った。
ーー明日は平和な日になりそうだな。
そう思い、目を閉じた。
くじらのはらです。皆さまあけましておめでとうございます。
今年も本作をよろしくお願い致します。
お外でwktkなステラかわいいですね
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